“チーズケーキ”と聞くと、どんなチーズケーキを思い出しますか?子どもの頃に食べたアプリコットジャムが塗ってあるスフレチーズケーキ?初めて手作りに挑戦し、きれいに焼けなかったベイクドチーズケーキ?それとも海外旅行先で食べた濃厚なNYチーズケーキ?誰しも忘れられないチーズケーキの思い出があるはず…。元フレンチシェフ・田村浩二さんもチーズケーキに魅了されたひとり。そんな田村さんが作る“究極のチーズケーキ”が今SNSで話題になっています。
5月25日にチーズケーキのレシピ本『人生最高のチーズケーキ』が発売になった田村さんに、チーズケーキの魅力、レシピのこだわり、今後の展望についてお伺いしました。
誕生日の思い出だったチーズケーキ
人生最高のチーズケーキの生みの親、田村浩二さん
ミシュランガイドで星を獲得した白金台にあったフレンチレストラン『ティルプス』。そこでシェフとして活躍していた田村さんは2018年7月にお店を離れ、現在は『Mr.CHEESECAKE』の販売を中心に、さまざまな活動を行なっています。華やかなコース料理のラストを飾る美しいデザートも作ってきた田村さんですが、なぜ素朴なチーズケーキを作るようになったのでしょうか?
「子どもの頃、母が毎年誕生日に作ってくれたのがチーズケーキ。それがすごくおいしくて、大人になってからも色々とチーズケーキを食べ歩きました。でも、なかなか『おいしい!』と思えるチーズケーキに出会えなかったんです。だったら自分で作ってしまおう。と思って作ったのが、『Mr.CHEESECAKE』です」。
現在は箱入りと箱なしで販売。美しいデザインが印象的な箱入りは手土産としても人気
田村さんが作るチーズケーキは“幻のチーズケーキ”と称されますが、それにはちょっとしたわけがあります。
「プライベートでチーズケーキを作っているとき、その様子をふとinstagramのストーリーにアップしてみたんです。そうしたところ『そのチーズケーキ食べたい!』『どこで買えますか?』という声をいただいて、最初の頃は購入希望者と直接DMでやりとりして売っていたんです。チーズケーキを買ってくれた人のなかに、グルメ系インフルエンサーの方がいて、『Mr.CHEESECAKE』についてinstagramに投稿してくださいました。そしたら、一気に僕のフォロワーも購入希望者も増えたんです!」と田村さんは当時を振り返ります。
その後、オンラインショップをオープンしました。当時は週に1回の販売でしたが、注文が殺到。現在では、毎週日曜日と月曜日にチーズケーキを発売しますが、相変わらず数分で完売してしまうため“幻のチーズケーキ”と呼ばれるのです。
美しい箱の中に、田村さんからのお手紙が入っていました
田村さんが料理人を志したのは高校時代。親友の誕生日にマルカルポーネのケーキを初めて手作りしてプレゼントしたことがきっかけでした。田村さんの人生の岐路にはチーズケーキが深く関わっているのですね。
冷凍だから楽しめる変化
濃厚なのに軽い不思議な食感
『Mr.CHEESECAKE』は、“飲めるチーズケーキ”と言われるくらい、なめらかな食感が魅力のチーズケーキ。今まで体験したことのない味と食感なのに、なぜかノスタルジーも感じるハイブリットスイーツです。冷凍された状態で届くチーズケーキは時間とともに変化を楽しむこともできます。
「“冷凍”というと、なぜかネガティブに思われがちですが、むしろポジティブに捉えて欲しいです。まずは冷凍の状態でアイスのように食べ、半解凍で中間の食感を楽しむ、最後完全に解凍された状態だとかなり軽い食感になりますよ。こういった楽しみ方ができるのも“冷凍”でお届けするからこそなんです」と田村さんが言う通り、食感だけでなく口に含んだ瞬間の風味も状態によって違います。冷凍の状態ではバニラの香りがしっかりとして、だんだんとレモンとサワークリームの爽やかさが際立ってくる。1つチーズケーキからいろんな食感と風味を感じることができました。
『Mr.CHEESECAKE』はシンプルで素朴なビジュアルから想像できないくらい、上品で繊細な味わい。それはクリームチーズ、サワークリーム、ヨーグルト、生クリーム、レモン汁というチーズケーキの基本材料のほかに、ホワイトチョコレート、バニラ、トンカ豆といった香り高い食材を使っているから。
このひと手間が芳醇な香りの秘密
「どこにこだわっているかと聞かれたら、それは全部です(笑)。でもあえて言うなら、ケーキの型にひとつひとつバターを手作業で塗ることですね。そうすることで焼き上がったときにバターの香りだけがチーズケーキにうつるんです。
1日130〜160個焼くチーズケーキ全てに手作業でバターを塗る作業はかなり非効率。普段、非効率なことはどんどん省いていく主義ですが、この作業は必要な非効率なので省くことができないんです」と語る田村さん。フレンチシェフ時代から最も大切にしてきた“香りを食べる”という哲学が、チーズケーキにも息づいていました。
焼きあがったチーズケーキは全国へ旅立ちます
その手仕事によって生み出される珠玉のチーズケーキは、今では月に2000本売り上げ、なんと47都道府県全てから注文がきているそうです!
幻のチーズケーキを自宅で手作り!
多くのファンを虜にしている『Mr.CHEESECAKE』のチーズケーキ、おうちで作ってみたいと思いませんか?そんな方のために田村さんが手がけたチーズケーキのレシピ本『人生最高のチーズケーキ』が5月25日に発売されました。レアチーズケーキ、NYチーズケーキ、チーズのオードブルなど33のレシピが掲載されています。
「チーズケーキはショートケーキに比べたら失敗しにくく、誰が作ってもおいしくなります。お菓子作りって“このケーキを誰かに食べてもらいたい”と、目的が明確ですよね。相手のことを思い、その人の好みに合うケーキを考え、材料を買って、ケーキを焼く。だからこそ、誰にでも実践できて、誰かの役に立つレシピ本を作りました」。
フレンチシェフならではの技も駆使して作られたチーズケーキ
“香りを食べる”ことをコンセプトに、「ほうじ茶×オレンジ×キャラメル」「ラベンダー×ラズベリー×レモン」「マスカット×かぼす×大葉」といった個性的なフレーバーのチーズケーキレシピも紹介していますが、どれもレシピ通りに作れば失敗はないそうです。
そんな手の内をレシピ本に掲載してしまったら『Mr.CHEESECAKE』の売り上げにも影響が出そう。しかし「僕たちはプロですから、経験から身についたプロの感覚で、レシピより120%おいしいチーズケーキを生み出す自信があります!」と田村さんは言います。
幸せな食卓のためにできること
野球少年からフレンチシェフになり、チーズケーキ職人へと変貌を遂げている田村さん。今後挑戦していきたいことはあるのでしょうか?
「便利な世の中になり、料理する人が減ってきていますが、だからこそ料理人口を増やしていきたいです。家族そろって食卓を囲むおうちでの食事は幸せな時間。僕が高校時代に親友のためにケーキを作ったように、誰かのことを思い、その人のために料理するというプロセスはとても大切です。それは僕の料理人としての基礎となっている考え方でもあります」。
おいしい食事を作るためには、おいしくて安全な食材が必要。しかし上質の食材を作っていても、なかなか認知してもらえない生産者が世の中にたくさんいるのが現状。そんな生産者と消費者をつなげる方法を模索するなど、田村さんは生産者の価値を上げる活動をすでに始めています。私たちも、もっと食材を学び、幸せな食卓を作っていかないといけないですね。
日本には“おもたせ”という文化がありますが、17cmのチーズケーキには現代のスノッブさと日本らしいおもてなしの心が凝縮されているような気がしました。日本文化とSNSが融合したことで一躍有名になった『Mr.CHEESECAKE』は、毎週日曜日と月曜日に発売されるのでお見逃しなく!
- ■お店情報
- Mr.CHEESECAKE
- ■書籍情報
- Mr.CHEESECAKE田村浩二 人生最高のチーズケーキ
- 著者:田村 浩二
- 販売元:ワニブックス
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