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食パンがキャンバスに!Instagramで話題の“パンアート”って?

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食パンがキャンバスに!Instagramで話題の“パンアート”って?

フォトジェニックなフードがブームになって、もう数年が経ちました。どれも美しくテーブルを彩ってくれますが、食パンにもその波が押し寄せているようです。

“パンアート”と銘打ち、驚くほど緻密なトーストを制作しているのが、アーティストのSASAKI Manamiさん(@sasamana1204)です。SASAKIさんが作る“パンアート”は、まさに“アート”な作品ばかり。その制作の裏側を教えていただきました!

 

“パンアート”は自分自身と向き合う禅修行!?

SASAKIさんは、武蔵野美術大学卒業後、デザイナーとアーティストとして活躍されています。平日はデザイン会社にお勤めで、エディトリアルデザインや、webデザインを中心にお仕事。その一方で、休日などを利用しコンセプチュアルアート作品や絵画を描き、年に3回ほど展示会も行なっているのだとか。またアーティスト集団『衣・化・花』のアートディレクションも担当するなど、チームとしても精力的に活動中です。

ではさっそく“パンアート”についてお話をうかがっていきましょう!

―SASAKIさんがパンアートを始めたきっかけを教えてください。

SASAKIさん(以下、敬称略):新型コロナウイルスの影響で、勤めているデザイン会社が在宅勤務となりました。これまでは通勤に1時間半(往復3時間)もかけていましたが、在宅勤務によって朝の時間に余裕ができました。しかし、その環境下で怠けてしまい、起床時間がだんだん遅くなり、気持ちが沈んでいってしまったんです。そんなとき「楽しみに起きられる習慣をつくろう」と考えたのが、朝食パンアートを始めたきっかけです。

SASAKIさんのパンアート「桜」Instagram初投稿の作品は「桜」。SASAKIさんのパンアートの処女作でもあります。ブルーベリージャムとチョコを使って、モノトーンで仕上げています

―パンアートを始めて、心や朝の生活で変化はありましたか?

SASAKI:外出自粛期間中、身の回りでトラブルがあり、自分の精神をコントロールしづらい時期がありました。そんなとき、何も考えずに作業に没頭できる毎朝の習慣が心の拠り所となりました。1日のどこかで自分のためだけの時間を過ごすことは、自分らしさを保ち、今日と向き合うための、とても大切な習慣だと感じています。

―なるほど、毎朝のパンアートが日々と向き合う時間になったのですね。ちなみに、1作品にかける時間が1時間半〜2時間とうかがい驚きました!作っている最中はどんな気持ちで作業していますか?

SASAKI:パンアートは、具材の様子をうかがいつつも、座禅のような感じで無心になることが多いです。毎朝集中力を高めることで、1日のリズムが整う感覚があります。一方で、普段のイラストは気晴らし的に描くことが多いですね。凝り固まった思考回路やモヤモヤしていた気持ちが、溶けて消えていくような感覚です。同じ“描く”という作業ですが、心と体に与える影響はちょっと違うかもしれません。

 

現代アートから、平安絵巻まで!アーティストならではの視点

―SASAKIさんのパンアートは、「モンドリアン」や「百人一首」など、古今東西をテーマにしていてとてもアーティスティックです。題材はどのように選んでいるのでしょうか?

モンドリアンの代表作「コンポジション」をオマージュしたパンアートモダンアートの巨匠ピエト・モンドリアンの代表作「コンポジション」。

SASAKI:普段メインで制作しているアート作品はオリジナルのテーマで取り組んでいますが、パンアートに関してはほとんどがオマージュです。パンアートは、アスリートでいうところの“準備運動”のような立ち位置で、表現手段として楽しんでいます。

これまでパンに描いた題材は、日本文化や巨匠デザイナーの作品が多く、全て私が尊敬し、好きでたまらないものばかり。パンアートは制作に労力がかかるので、自分が好きな題材でないと心が折れてしまいます。折れてしまったら、私の朝食の時間ももれなく残念なことになるので、それは断固として避けたいんです(笑)。

百人一首のパンアート百人一首から清少納言。まるで筆書きのような書体と、紫キャベツやシラスで表現した十二単が圧巻です!

SASAKI:またInstagramのフォロワーさんの9割が海外の方なので、「日本文化や素敵なデザイナーを知ってほしい!」というモチベーションもあり、パンとテキストで題材の魅力をアピールしています。

―なるほど、“パンアート”にはSASAKIさんの題材への愛が詰まっているんですね!どんな道具で制作しているのでしょうか?

SASAKI:道具は、包丁、バターナイフ、爪楊枝、裁縫針(刺繍針とビーズ針)、ピンセットを使っています。作る際に気をつけているのは、具材らしさを活かし、おいしいトーストにすること。パンアートはあくまで食べ物なのでパン全体で味がまとまるように具材選びにはこだわっています。あと、あまり時間をかけないことでしょうか。長時間作業すると食材の質感も変化してしまうので、ちょうど良いところで手を止めるように心がけています。

―時間との勝負でもあるのですね…!また、何が一番難しいポイントでしょう?

SASAKI:難しいと感じるのは、具材そのものの色や質感を生かし、鮮度に気を配りながら作っていくことです。サワークリームが室温で溶けたり、他の具材の水分で海苔が変形したり、アボカドが変色したり…。制作中にも具材はどんどん変化していくので、冷蔵庫をうまく使いながらパンにのせる順番を考え、味も見た目も満足いく仕上がりになるよう、毎朝戦っています(笑)。

―そんなふうに試行錯誤した“パンアート”を制作後にトーストしていて、焼く前と後での作品の違いが見ていてとても楽しいです。食材はどのように選んでいますか?ちなみに「これはおいしかった!」という作品があれば教えてください。

写真家・Lang Jingshan(郎靜山)の作品をオマージュしたパンアートイカスミとサワークリームの絶品コラボで描いたのは、中国の美術史における先駆的な写真家・Lang Jingshan(郎靜山)の作品

SASAKI:実は、私がパンアートで一番好きなところは、トーストした後に見える意図しない歪みや崩れた表情なんです。焼いたときに変化が大きい具材は積極的に使っています。たとえば、海苔は焼いたときに形と大きさがかなり変化するので、文字、顔のパーツ、直線など歪むと目立つようなパーツでよく使っています。チーズやバジル、たらこも変化が大きいので、使うのが楽しいです。焼く前に整った状態にすることが、焼いた後の歪みを引き立たせるためには大切なことなので、丁寧に作っています。
おいしい“パンアート”はイカスミを使ったトースト!パスタ用のイカスミをスーパーで見かけて、「パンにも合うかも?」と思いチャレンジしました。結果すごくおいしかったので、今後もたくさん使おうと思います。パン用のイカスミを販売してほしいくらいです(笑)!

―これまでの作品の中で、一番のお気に入りと、一番難しかった作品を教えてください。

枯山水のパンアート禅寺の象徴「枯山水」。「パンアートは坐禅のよう」というSASAKIさんの言葉とリンクします

SASAKI:気に入っているのは、「枯山水」と「Gradation/Blueberry」です。「枯山水」は、私が好きな日本文化のひとつで、これをトーストで表現できたことがお気に入りのポイント。海外の方が真似してシェアしてくれるので、この“パンアート”が世界へコミュニティーを広げてくれました。「Gradation/Blueberry」は、オリジナルの作品です。奥行きと厚みを活かしたデザインで、他の作品とは違った魅力があります。

オリジナルデザインの「Gradation/Blueberry」のパンアートオリジナルデザインの「Gradation/Blueberry」。計算され尽くしたブルーベリーのカットが美しい!

オリジナルデザインの「Gradation/Blueberry」のパンアート横から見た「Gradation/Blueberry」。1粒1粒高さを変えてグラデーションを表現!

SASAKI:難しかった作品は、「家紋」「Opposite/Quail egg」です。「家紋」はズッキーニの皮で絵柄を再現したのですが、パーツが小さいので肉眼では見えづらく、ほぼ勘でカットしているんです。「Opposite/Quail egg」は卵の黄身と白身の配置を逆にした作品で、白身を直線に切るのがとても難しかったです。包丁を入れても違う方向に裂けてしまい、運任せでした(笑)。

「家紋」を表現したパンアート日本独特のロゴマーク「家紋」をズッキーニで表現。ベースはサワークリームでズッキーニとの相性も抜群!

パンアート「Opposite/Quail egg」は卵の黄身と白身の配置を逆にした作品たまごトーストもSASAKIさんの手にかかるとこんなにアーティスティックに!

 

お花畑のリサとガスパールがパンアートになった!

今回、PARIS magのために、リサとガスパールのパンアートを作ってもらいました!おなじみのあのふたりが食パンのキャンバスに、かわいく描かれています♪

リサとガスパールのパンアート

トーストした、リサとガスパールのパンアートトーストする前は鮮やかですが、焼くとちょっぴり油絵風に!?

―繊細に描かれていて素敵です!トースト後の雰囲気もかわいいですね。「リサとガスパール」の材料とレシピを教えてください。

SASAKI:ベースはズワイガニのペースト。リサはマッシュドポテト、海苔、赤パプリカ。ガスパールはイカスミ、かぼちゃのサラダ、海苔、赤パプリカ、紫キャベツ。リボンはケチャップ、サワークリーム、イカスミ。お花はかぼちゃのサラダ、ヤングコーン、たらこ、パクチー、ラディッシュを使っています。
まず背景を塗ってから、リサとガスパールを具材で作り、リボンを描きます。最後にバランスを見ながらお花をのせたら完成です。

―「リサとガスパール」のこだわりポイントはありますか?

SASAKI:リサとガスパールが主役になるよう、背景色・お花の色のトーンを揃えています。形を際立たせたいリボンは、パクチーでコントラストをつけました。ラディッシュは、皮のピンクを花びらの柄に見立ててカットしています。

 

自分自身のための朝活から、グローバルなアートへ!

―海外のフォロワーからのコメントが多いそうですが、特に反響の大きかった作品はどれですか?

SASAKI:「枯山水」は反響が大きかったですね。海外の方もレシピを真似してくれているのですが、オリーブを使っていたり、日本で見かけない形のパンだったりと、それぞれ個性があって見ていて楽しいです。日本のデザイナーのオマージュトーストでは、「このデザイナーさん知らなかったけど、すごく気に入った。教えてくれてありがとう」というコメントをいただき、とても嬉しかったです。

―皆さんいろいろとアレンジをして楽しまれているのですね。今後“パンアート”を通じてチャレンジしたい活動などあれば教えてください!

SASAKI:すぐには難しいと思いますが、いつか日本庭園で枯山水トーストを作るイベントを開催したいです。ずっと1人でトーストを作っているので、みなさんと一緒に作れる機会があったら楽しそうだなと思っています。

 

新型コロナウィルスの影響で始めた“パンアート”が今や世界でシェアされるコンテンツに成長!自分を律するために作った作品が、世界の人々を幸せにするなんて素敵な活動ですね。SASAKIさんは今後も新しい“パンアート”を制作していくそうなので、どんな作品に出会えるのか楽しみです。

SASAKIさん、素敵なお話をありがとうございました!

 

 

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