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透明愛好家 tomeiさんに聞く、作品づくりと透明の魅力

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透明愛好家 tomeiさんに聞く、作品づくりと透明の魅力

美しすぎるとSNSで話題の透明スイーツ。見ているだけで、日々忙しなく動く心も身体もスッと落ち着き、その美しさに魅了されます。今回はそんな透明スイーツを生み出し、透明をこよなく愛する透明愛好家 tomeiさんにお話を伺いました。8月に発売された初めての書籍『世界一美しい 透明スイーツレシピ』の見どころや、透明に心惹かれていったきっかけなどをお聞きするうちに、見た目の美しさだけでない「透明」という存在の奥深さが見えてきました。

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透明愛好家 tomeiさん

日常の中にある透明を集める。涼やかで美しい、透明スイーツのSNS投稿が人気。2020年8月、初の書籍『世界一美しい 透明スイーツレシピ』を上梓。

Twitter:@tomeinohito

インスタグラム:@tomeinohito

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「日常に転がる美しい瞬間を、透明に閉じ込める」透明愛好家 tomeiさんの作品づくり

透明愛好家 tomeiさんに聞く、作品づくりと透明の魅力イチゴミルクのゼリーケーキ photo by @tomeinohito

―透明愛好家 tomeiさん。お名前からして透明への愛が伝わってきます。透明を好きになったのはいつ頃ですか?

tomeiさん(以下、敬称略):もともと小さい頃からビー玉やガラスなど透明なものを集めることが好きでした。透き通るものを見ると、まるで時が止まったような瞬間に出会うんです。気持ちが引き寄せられていくというか。今思い返せば、その瞬間の始まりは「水の揺らぎ」「ガラスの陰影」など、日常に転がるものでしたね。

今でも作品づくりのインスピレーションは自然や身近な日常に関するもの。「オレンジに染まった夕焼け」「水中を泳ぐ魚」「ソーダに沈むレモン」など、どれもずっと眺めていたいものです。そんな日々を過ごすなかで出会った美しい一瞬を忘れないように、その時の感じた気持ちを思い出しながら、透明に閉じ込めています。標本を作っているような感覚に近いかもしれませんね。

透明愛好家 tomeiさんに聞く、作品づくりと透明の魅力ライムの皮でスイカ風ゼリー photo by @tomeinohito

―透明って身近にあるようでいて、表現することはとても難しいように感じます。透明をテーマにすること自体、独創的ですよね。

tomei:透明って「何もないこと」の比喩として使われることが多くて、「透明を作る」というのはある意味矛盾しているんです。その矛盾がとても面白いなって。見えないものの存在に目を向けられたら、もっと素敵な未来になるのではないか、そういう小さな願いを込めて作り始めました。

―ないのに存在する。たしかに改めて考えてみると、透明って不思議な存在です。

tomei:そうなんです。私にとっての透明の魅力は「その魅力をひと言では表せないところ」。「ない」けど「ある」という矛盾。この不完全で儚ないところに惹かれているのかもしれません。

合理性を求める世の中でも、時に人は合理的でないものに感情を揺さぶられます。「透明」も「ないのにある」という矛盾を抱えたものですが、本来何もなかったところに「透明」という概念を与えたのは人間なんです。この人間が生み出した「透明」という存在は、時に不合理で矛盾を抱えた人間ならではの温かみを教えてくれます。

 

「透明」だからこそ、想像が広がるtomeiさんの作品

透明愛好家 tomeiさんに聞く、作品づくりと透明の魅力透明なクリームソーダ photo by @tomeinohito

―今まで作られた作品の中でtomeiさんのお気に入りはあります?

tomei:うーん…。最近の作品だと「透明なクリームソーダ」ですかね。シンプルだけど、それでいて独創性があるように意識しました。小さい頃から大人になった今でも、クリームソーダには不思議な特別感を感じます。色を抜いた透明という形で表現することで、「あの幼少期に飲んだクリームソーダの色は何色だっけ?どんな味だったっけ?」といった断片的で曖昧な記憶に寄り添い、昔飲んだ思い出の味を想像できるものにしました。

透明愛好家 tomeiさんに聞く、作品づくりと透明の魅力透明なクリームソーダ photo by @tomeinohito

―色がないからこそ、想像を掻き立てられますね。透明スイーツはもちろんのこと、Instagramでそのお写真がズラリと並んだ様子にもうっとりします。フォトグラファーとしての一面を持つtomeiさんですが、撮影する際のこだわりはありますか?

透明愛好家 tomeiさんに聞く、作品づくりと透明の魅力photo by @tomeinohito

tomei:ありがとうございます。いつも心がけているのは、いろんな目線で撮りつづけることです。例えば横から、上から、ひとすくいしたスプーンなど。そして納得できるまでシャッターを回します。

実は私自身、数年前までカメラを触ったことがありませんでした。だから、始めたての頃はわからないなりにも、毎日写真を撮っていました。日々向き合い続けることで、自分の軸が少しずつできあがっていく感覚。積み重ねの大切さを改めて実感しましたね。

 

純粋に自分が愛せるものを発信していく、心の透明性

透明愛好家 tomeiさんに聞く、作品づくりと透明の魅力色が変わるバタフライピーのアイスティー photo by @tomeinohito

―数年前までカメラを触ったことがなかったとは驚きです!自身の作品を見た人たちに、どのような気持ちになってほしい、どのように感じてほしい、など届けたいメッセージはありますか?

tomei:まず大前提として、自分が心から愛せる作品を作り続けていく。気持ちの面での透明性も大切にしています。写真を通して純粋に好きなもの伝えていくことが、誰かにとっての好きにつながると気づいたんです。お互いの「好き」でつながった空間は、とても穏やかで、心も身体も浄化するような気持ちになります。SNSの匿名性のなかでも、そういう穏やかな空間を作れたら、そして博物館のように皆さんに作品を楽しんでいただけたら、とってもしあわせですね。

透明愛好家 tomeiさんに聞く、作品づくりと透明の魅力浮かぶメロンのゼリーケーキ photo by @tomeinohito

―tomeiさんの将来の夢は「透明な博物館」を作ることですよね。具体的にはどのようなイメージを抱いていますか?

tomei:ガラス張りの建物内に自身で手がける作品のほか、透明にまつわる作家さんの作品を展示するのが夢です。ミュージアムショップには透明のアクセサリーやグッズが並んでいたり、透明スイーツを楽しめるカフェが併設してあったり。まだ世に知られていない作家さんを知ってもらう場所にするのはもちろん、来場したお客さんの心が浄化されるような空間づくりができたらなぁと夢を膨らませています。

透明愛好家 tomeiさんに聞く、作品づくりと透明の魅力浮かぶメロンのゼリーケーキ photo by @tomeinohito

tomei:SNS上でみて楽しむことから、実際に手にとって生活の中に馴染む透明の姿を見れたらいいなと。何より、純粋に私が好きな作家さんを知っていただけると思うと、それだけで十分うれしいですけどね。

たとえば、旅するクリームソーダ職人のtsunekawaさん。tsunekawaさんが手がけるクリームソーダは四季折々の幻想的な世界が表現されていて、まるで季節そのものを閉じ込めたような感覚を覚えます。写真を通して、周りの情景や空気感が自然に心の中に流れてくるたびに、畏敬の念を抱きます。私にとって、とても尊敬する方の1人です。

まだ他の作家さんとお会いする機会が少ないですが、透明愛好家の発信を通して繋がるきっかけができたらいいなと思っています。

 

作ったり、眺めたり、飾ったり。買った先を想って作られた『世界一美しい 透明スイーツレシピ』

透明愛好家 tomeiさんに聞く、作品づくりと透明の魅力

―8月19日、初めての書籍発売ということで、現在のお気持ちはいかがですか?

tomei:自分が手がけた本が、どこか遠くにいる誰かの手元に届くと思うと、とても感慨深い気持ちになります。理解されるかわからないという不安を感じながらも、思い切って好きなものを発信したとき、その気持ちに応えてくださった方々がいました。その共感が共感を呼んで、その波が出版にいたるまでの浜辺にたどり着かせてくれたと思っています。居場所を作ってくれた皆さんの温かい応援に、本をお届けすることで応えていきたいです。

透明愛好家 tomeiさんに聞く、作品づくりと透明の魅力SNSで人気の「透明なレモンタルト」のレシピも掲載!

―内容と見どころを教えてください。

tomei:SNSで配信してきた中で反響があった透明スイーツたちをまとめた1冊です。料理を始めたての方でも作れるようなシンプルな材料選び、そして写真の良さが伝わるように試行錯誤を重ねました。SNS上で普段あまり見せていなかった、作るプロセスも載せました。今まで透明愛好家をあたたかく見守ってくださった方やこれから知ってくださる方にも、新しい発見がある本になったらいいなと思っています。

透明愛好家 tomeiさんに聞く、作品づくりと透明の魅力

―最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

tomei:「本棚の奥底に埋もれてしまう本」ではなく、「買った人の先を想う本でありたい」というのが、今回の本づくりのテーマでした。皆さんがスイーツを作ったり、写真集のように眺めたり、お部屋に飾ったり、いろいろな楽しみ方ができる1冊になっています。手に取る瞬間、読む瞬間、読み終わったその先も「透明」が寄り添える存在でありますように。心からそう願っています。

 

 

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