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    フランス人ブリュワーが醸すクラフトビール『Yggdrasil Brewing』

    青い海、青い空が似合う街、神奈川県・平塚で、地域密着型のブルーパブ(醸造所併設型パブ)『Yggdrasil Brewing ~イグドラジル・ブルーイング~』を営む、フランス人ブリュワーのダビド・ガーダオさんを訪ねました。

    りんごを発酵させて造られるお酒「シードル」で有名なフランス・ブルターニュで育ったダビドさんは、なんと無類のヘビーメタル好きでバンドにも所属していたという異色の経歴の持ち主。

    「ヘビメタとビールは、最高のペアリング」とダビドさん。

    地元の人をはじめ、クラフトビールマニアやヘビメタ好きにも愛される『Yggdrasil Brewing ~イグドラジル・ブルーイング~』

    ダビドさんの人柄も相まって、連日たくさんの人で賑わいます。そんなダビドさんがブリュワーになったきっかけや醸造のこだわり、平塚にお店を構えた理由について伺います。

    ヘビメタバンドから、クラフトビールのブリュワーに転身


    タップにはそれぞれ、ヘビメタをイメージしたラベルのイラストが。ラベルのほとんどが、イラストレーターでもある台湾出身の奥さまがデザインしている。

    ダビドさんが日本を訪れたのは、1999年のこと。

    ソフトエンジニアやヘビメタバンド、バンドプロモーターなどを経て、「ヘビメタのインスピレーションで自分のビールを醸造したい」と、関東やドイツなどの醸造所で醸造を学んだあと、2018年にブルーパブ『Yggdrasil Brewing ~イグドラジル・ブルーイング~』をオープンしました。

    クラフトビールの醸造家を目指したきっかけについて、「もう40年も前だけど、ブルターニュで祖母がシードル農家を営んでいました。そんな姿を見て育ったので、いつか自分でもシードルやミードを造りたいという気持ちがあったんです」とダビドさんは話します。

    そして、店を構えるにあたって平塚という場所を選んだのは、ブルターニュに似ているという理由もあったといいます。

    「釣りとサーフの文化があって、ローカルなパン屋さん、釣り具屋さん、地元の野菜や魚介を使ったレストランなど、個人店が多いのもブルターニュと似ています」

    暮らす人の良さや気候、街の空気感も気に入っているそうです。

    地元の素材を使った、唯一無二のクラフトビールが味わえる

    『Yggdrasil Brewing ~イグドラジル・ブルーイング~』では、クラフトビールに加えて、自家製の「シードル」やはちみつ100%の「ミード」など、常時8種類が味わえます。

    どれも個性豊かな味わいが魅力ですが、特におもしろいのが使われている素材や組み合わせ。

    地元で手に入る素材はもちろん、各地で出会った珍しい素材を使って実験的に醸造するのがダビドさんの楽しみであり、こだわりでもあります。

    エチオピア産コーヒー豆を豆のまま加えた「Exit Night〜Ethiopia Tour〜」(写真左)は、しっかりとコーヒーの味わいを感じながらも、苦味が柔らか。

    フランス産ホップをふんだんに使ったセゾン「L’insolent」(写真中央)は苦味が少なく飲みやすいのが特徴です。

    福島県で出合ったスーパーフード「さるなし」で造った「Sarunashi」(写真右)は、爽やかなキウイのような酸味が印象的。

    このようにクラフトビールには、地元農家がつくる生姜や唐辛子、お米、秦野にある茶農家の煎茶やほうじ茶、奥さまの出身地でもある台湾のお茶やトロピカルフルーツ、コーヒー豆なども使われています。

    「シードル」もりんごをベースに、甘夏や洋梨、生姜、シナモンなどのスパイス、カベルネジュースなどを加えて、さまざまなフレーバーを。

    「先日は、息子の小学校の敷地内にできた甘夏を使いました」


    ビールやシードル以外に、醸造の際出る麦カスでペットフードも作っている。犬の散歩がてら立ち寄る近所の常連客も多いそう。「麦カスは廃棄されるものだけど、栄養価が高いんです。犬を連れたお客さまに差し上げています」

    ビールの主原料であるホップも、主に平塚産のものを使用。そのほか、日本では珍しいフランス・アルザス産のホップを使います。

    「アルザスはぶどうの産地。だからホップもすごくフルーティで甘みがあるんです。ビールによく合いますね」

    好きなことを自由にチャレンジできるのが、クラフトビールの魅力


    取材直前に完成したという「Sarunashi」は、できたてをタンクから注いでくれた。

    独自の感覚でさまざまな味わいのクラフトビールを生み出すダビドさん。素材の組み合わせは、料理と同じだといいます。

    「これとこれを合わせたらどうなるかな?と常に考えています。それは料理のレシピを考えるのと同じです」

    また、「好きなことを自由にできるし、チャレンジできることが楽しい。ビール造りは日々勉強です」とクラフトビール造りの魅力をそう語ります。

    そして、新しいレシピを試したり、さまざまなイベントに出店したりと、常に新しいことに挑戦しているダビドさん。

    チャレンジすることが好きなんです。いつでも、おもしろい素材はないかと探しています。

    出合ってインスピレーションが沸いたら、まずは造ってみる。もちろん思ったような仕上がりにならないこともあるけど、それもクラフトビール造りの醍醐味です。

    今は、常連さんにもらった台湾のいい烏龍茶があるからそれも使いたいし、伊勢原の青みかんを使ったビールも造る予定。近々収穫予定のフレッシュなホップを使ってビールが造れるのも楽しみですね」

    日々ビール造りを楽しんでいるブリュワーのワクワクが伝わる『Yggdrasil Brewing ~イグドラジル・ブルーイング~』のクラフトビール。

    これからどんなチャレンジングなクラフトビールが生まれるのか、ますます目が離せません。

     

    • ■お店情報
      Yggdrasil Brewing ~イグドラジル・ブルーイング~
      住所:神奈川県平塚市夕陽ケ丘44-7Chateau Aube 1F
      営業時間:月〜金15:00〜21:00、土13:00〜21:00、日祝13:00〜20:00
      定休日:不定休
      HP:https://yggdrasil-brewing.myshopify.com/
      Instagram:https://www.instagram.com/yggdrasilbrewing/
      ※記事公開時点の情報です。最新情報は、公式HPやSNSなどでご確認ください。

     

    文:高野瞳
    写真:飯本貴子

     

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