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フランス人店主がつくる、パンとこだわりの料理。京都・西陣の優しく温かなお店『RIFIFI STUDIO』

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フランス人店主がつくる、パンとこだわりの料理。京都・西陣の優しく温かなお店『RIFIFI STUDIO』

日本を代表する伝統工芸品である「西陣織」。その産地として長い歴史を紡いできたのが、ここ京都・西陣エリアです。

静かな住宅地を歩き、細い路地の奥に見えてきたのが、今回の目的地『RIFIFI STUDIO』。2021年10月にオープンした、パンと地中海料理を楽しめるお店です。

外観は周りの民家に溶け込んでいて、その雰囲気は知る人ぞ知る隠れ家レストラン。木で造られたスプーンの看板を目印に、少し緊張しながら、入り口の扉を開けました。


店主のピチューさん

「ようこそ!」と、にこやかに出迎えてくださったのは、フランス出身の店主ピチューさん。調理から接客まで、たった1人でお店を切り盛りしています。

日本には、ほんの数年前に来たばかり。「まだ日本語のレベルは1だよ」というピチューさんは、なぜここ京都の西陣でパンと料理のお店を開いたのでしょうか?
お話を伺いました。

ポルトガルでの野外レストラン、仙台のパン屋、そして京都・西陣へ

ピチューさんの家族はみんなおいしいものが大好きで、料理上手。ピチューさんもよく家族に料理を振る舞っていたといいます。

そんなピチューさんが料理の道に進んだきっかけは、友人と始めた野外レストランでした。

「2017年頃、友達と一緒にポルトガルで期間限定のレストランを開きました。お店はキッチンカーを使って、廃材を活用して客席を造って。数ヶ月間しかやらなかったけれど、クロージングパーティーには150人くらいの方が来てくれました」。

そんななか、現地で日本人のパートナーと巡り合い、来日。友人の紹介もあって、仙台のパン屋さんに勤めることに。パンづくりを1年半修行をしたそうです。

「僕は、いつか自分のお店を開いてみたいと思っていました。そして日本で住みたい街のひとつだったのが、京都。いっぱい物件を探してみましたが、なかなかいいところが見つからなくって。ちょうど条件が合ったのが、ここだったんです」。

京都・西陣というエリアについて、当時は何も知らなかったピチューさんでしたが、「まずはやってみよう!」と、飛び込んでみることにしたそう。引っ越しをしようと決めてから入居まで、わずか1ヶ月のことだったといいます。

巡り合った物件は、西陣織の元工場。お店の改装は、仙台で働いているときに出会った、イギリス人と日本人のご夫婦(2island traveller)に依頼。半分は飲食スペース、もう半分はギャラリースペースに。ピチューさんも一緒に現場に入って、作業を進めました。

「普通の工務店に頼むと、全部現場の作業はお任せになってしまうと思います。僕がやりたかったのは、どういう風に改装をするのか、一緒に作って学んでいけること。施工は、デザイナーの2人アドバイスのもと、約3ヶ月間現場に一緒に入って進めていきました」。

完成したのは、木の風合いが温かい広々とした空間。暖色の電球の光と、窓からのかすかな風が優しく、時間の流れがゆったりとしているようです。

「料理、1人で用意するから時間がかかるよ。待っていてね」。

全然大丈夫ですよと、窓際のソファに腰掛けて、キッチンからの包丁の音に耳を傾けました。

「Only one rule is “no rule”.」優しさあふれる、こだわりのパンと料理の日替わりプレート


日替わりプレート

テーブルに運ばれてきたのは、日替わりのプレート。パンと一緒に、さまざまな料理が添えられています。思わず「カラフル!」と声に出してしまうほど、色鮮やかな一皿です。

この日、プレートにのっていたのは、2種類の手作りパン。1つ目はフォカッチャ。クミンが良く香り、食感はカリッとハードな感じ。2つ目はクルミパン。ほのかに甘く、ふわっと優しい食べごたえでした。

そしてプレートを囲むのは、彩り豊かな料理。野菜や果物をメインとし、オリーブオイルをふんだんに使った健康的な味付けが特徴です。

「僕のおばあさんは、モロッコ出身。モロッコ料理は、小さい頃から親しんできました。僕なりのアレンジをした地中海料理、みなさんにも食べてもらいたいんです」と、一品一品、ゆっくり丁寧に紹介してくださいました。

プレートのメインは、ズッキーニやナスなどの、夏野菜のロースト。ソースとしてかかっているのは、自家製のチミチュリソース。ニンニクやパセリ、オリーブオイルが使われた、さっぱりとした味わいです。

その他にも、世界最小のパスタ・クスクスを使い、レモンミントのドレッシングで味付けされたタブレ。豆やイタリアンパセリをペーストにした、ハーブのフムス。砂糖とお酢、赤玉ねぎのチャツネ。紫キャベツ、りんご、クルミのサラダ。カラメルとごまがまぶされたチェリートマト。ガスパッチョという、冷たいトマトのスープなど、盛りだくさんの内容です。

食べる順番は決まっているのかな、フムスはパンにつけた方がいいのかなと迷っていると、「Only one rule is “no rule”」とピチューさんが一言。

「たったひとつのルールは、ルールがないこと。このお店では、色々悩まずに、まずは食事を楽しんでほしいです」。

優しい言葉もあって、おいしく楽しくプレートをいただくことができました。

ローカルプロダクトを、自分の目で見て選び、決めるメニュー

ピチューさん自身も、毎日メニューを楽しんで考え、作っているといいます。食材を仕入れるのは、基本的には近所のお店から。旬の野菜などを店頭で確かめて、メニューを決めているそうです。

「日本に来てから知った野菜は、大根や水菜。僕はあまのじゃくだし、流行っているものはあまり好きじゃないんです。それに同じものを作り続けていると、つまらないと思ってしまうタイプで(笑)。だからプレートの内容もよく変えるんです」。

また、少し前に八百屋さんで、きれいな色のキャベツを見つけたピチューさん。どうやって使うかイメージできなかったけれど、買って帰って、さっそくその日のディナーで使ってみたとか。知らない野菜にもどんどんトライして、料理の幅を広げているそうです。

近所の八百屋さんは、規模は小さいけれど、売っている野菜は全部無農薬。たまに、お店の人から「こんな野菜はどう?」とおすすめしてもらうこともあるそうです。

最近では、自分で畑を始めたピチューさん。採れた野菜は、瓶に詰めて自家製のドレッシングに。お客様に出す料理は、なるべくローカルプロダクトを使って、細かな部分でもこだわり抜きたいと言います。

また、メニュー表を見て「コーヒーはないの?」とよく尋ねられるそう。1人でやっているから、コーヒーをハンドドリップする時間がないし、だからといって適当に用意したものを出したくない。代わりにメニューに載っているのは、ピチューさんが知り合いから仕入れたハーブティーや、ナチュラルワイン。

「みんながやっていることを取り入れることもできるけれど、それはうちのお店のポイントじゃないかな。それよりも、ちょっと違うものにフォーカスしたいと思っています」とピチューさんは言います。

「それに、おいしいコーヒー店は近所にたくさんあるからね」と笑顔を浮かべました。

待ち時間も、ゆっくり楽しんで

『RIFIFI STUDIO』の“RIFIFI”とは、もう使われていないフランスの古い言葉。ふざけた喧嘩やじゃれ合いといった、”Funny Fight”のような意味があるそう。

そして“STUDIO”と名付けたのは、ここをカフェやレストランだけの空間にしたくなかったから。お店の半分がギャラリーになっていて、現在はパートナーの作品が飾られているように、今後はもっと活動の幅を広げていきたいとピチューさんは言います。

フランスから遠く離れた、京都・西陣での暮らし。最初は戸惑ったことも多かったそうですが、今ではすっかり気に入っているとのこと。近所の銭湯の番頭さんがお客さんとして来てくれて、店内新聞に紹介記事を載せてくれたこともあるそうですよ。

「外国に行ったときって、みんながんばってコミュニケーションを取ろうとすると思います。僕はまだ日本語レベルが1だけれど、いっぱい話しかけてくれるお客さんも多いんですよ。1人でやっているから、お待たせすることもあります。その分、ゆっくりお店での時間を楽しんでもらえたらうれしいです」。

お店の扉を開くとき、ピチューさんに話しかけるとき、もしかしたらほんの少しだけ緊張するかもしれません。でも、そんな勇気がいるのは最初だけ。細い路地の奥には、優しい料理と、温かい時間が待っていますよ。

 

  • ■お店情報
  • RIFIFI STUDIO(リフィフィ スタジオ)
  • 住所:京都府京都市上京区下竪町152-25
  • 営業時間:10:00~18:00(LO17:00)
  • 定休日:月・火・水・木曜日
  • Instagram:https://www.instagram.com/rififi_studio/
  • ※最新の営業情報は、お店のSNSでご確認ください。

 

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