こんにちは。菓子・料理研究家の山本ゆりこです。梅雨も明け、いよいよ夏本番ですね!
前回は夏のヴァカンス地でもあるフランス北西部ブルターニュ地方を訪れましたが、今回はそこから東へと向かい、首都パリを有す「イル・ド・フランス」へ。
「イル・ド・フランス」はパリ県、セーヌ=エ=マルヌ県、イヴリーヌ県、エソンヌ県、オー=ド=セーヌ県、セーヌ=サン=ドニ県、ヴァル=ド=マルヌ県、ヴァル=ドワーズ県と8県が集まるフランスの中心圏です。
パリが首府であるイル・ド・フランスということで、パリのお惣菜屋さんについてレポート。そしてレシピは、私がパリのお惣菜屋さんで出会いリピートしている3品のデリをお届けします。
パリジェンヌ気分を味わえるお惣菜を、まずはビールと一緒にどうぞ!
夏野菜のクランブル・サレ(Crumble salé aux légumes d’été)の作り方
上から時計回りに、クランブル・サレ、レバノン風タブレ、モロッコ風キャロットラベ
2000年に入ったくらいからフランスで起こった「シュクレ・サレブーム」。シュクレは「甘いもの」、サレは「塩っぱいもの」という意味です。
甘いタイプしかなかったCake(ケーク)の相棒として、お惣菜系の食材を使って塩味に仕上げた「ケーク・サレ」が誕生しました。
クランブル・サレもこのブームで誕生したものなのですが、キッシュを作るよりも簡単でヘルシー、しかも夏野菜との相性が抜群なんです。
大きく作るとやや取り分けづらいので、1人分のグラタン皿やココットを使って作るのもおすすめですよ。
【材料】(4人分)※20×24×高さ4cmのバット1台分
<クランブル用>
・薄力粉:100g
・オートミール:40g
・パター:80g ※1cm角に切る
・粉チーズ:大さじ2
<フィリング用>
・ミニトマト:1パック(15個以上)
・ズッキーニ:1本(200g)
・ナス:1本(200g)
・玉ねぎ:1個(200g)
・にんにく:1片(約5g)
・オリーブオイル:大さじ2
・塩:少々
・エルブ・ド・プロヴァンス(※1):小さじ1
・粗挽き黒こしょう:適量
※1:エルブ・ド・プロヴァンスはプロヴァンス発祥のミックスハーブです。ない場合は、タイム、ローズマリー、オレガノなどのドライハーブを1種もしくはミックスして代用してください。
【作り方】
1.クランブルを作ります。
・ポールに薄力粉、オートミール、バターを入れ、籾をまぶしながら、ぽろぽろになるまで指先でパターをつぶして混ぜます。
・扮チーズを加えて手でさっくりと混ぜ、使うまで冷蔵庫で冷やしておきます。
2.フィリングを作ります。
・ミニトマトはヘタを除いて縦半分に切り、ナスとズッキーニは2cm角に切ります。玉ねぎは薄皮を除いて粗めのみじん切りにし、にんにくは薄皮と芽を除いてみじん切りにします。
・鍋にオリーブオイルとにんにくを入れ、中火にかけます。
・にんにくが少し色づいたら、玉ねぎを加え、玉ねぎがしんなりするまで炒めます。
・ズッキーニとナスを加え、約2分炒めます。
・ミニトマト、塩、エルブ・ド・プロヴァンス、粗挽き黒こしょうを加えて軽く混ぜ、火からおろします。
3.型に入れて、オーブンで焼きます。
・粗熱がとれたフィリングを型に入れて平らにし、冷蔵庫から出したクランブルを全体に全体にふりかけます。
・180℃に熱したオープンで、クランプルがしっかりきつね色になるまで約40分焼いたら完成。
キヌアを使ったレバノン風タブレ(Taboulé libanais au quinoa)の作り方
キヌアはシリアルの中でもたんぱく質が豊富。パリでもスーパーフードとして人気の高く、オーガニックやヴィーガンを謳ったヘルシー系のお惣菜屋さんでも定番の食材です。
サラダ仕立てにするのがもっともポピュラーな調理法ですが、タブレのクスクス代わりにキヌアを使うとよりヘルシーに。
しかもフランスのタブレではなく、レバノン料理にあるパセリたっぷりの「タブーリ」風にすればダブルでヘルシーに!しかもとってもおいしいのでやみつきになりますよ。
【材料】(4人分)
・キヌア:50g
・水:150g
・パセリ(※葉のみ):40g
・赤玉ねぎ:1/2個(100g)
・ミニトマト:1パック(15個以上)
・レモン汁:大さじ2
・オリーブオイル:大さじ2~3
・塩:小さじ1/4+適量
※葉っぱのみで40gの場合、何本入っているかにもよりますが2~3袋は必要です。
【作り方】
1.キヌアを茹でます。
・キヌアは2回ほど水洗いし、分量の水と一緒に小鍋に入れ、中火にかけます。
・15分ほど加熱し(途中、水分がなくなったら水を足してください)、ふっくらしてきたら、焦がさないように水分をできるだけ飛ばして火を止めます。ふたをして、冷めるまで蒸らしましょう。
・冷めたら保存容器に入れ、使うまで冷蔵庫で冷やしておきます。
2.野菜を切ります。
・パセリは粗めのみじん切りにし、赤玉ねぎとミニトマトは5mm角に切ります。
3.仕上げます。
・ボウルに[1]と[2]、残りの材料を入れて、よく和えます。味をみて足りないようなら塩を加え、味を調えたら完成です!
モロッコ風キャロットラペ(Carottes râpées à la marocaine)の作り方
初めてパリで食べたモロッコ風キャロット・ラペは、フレッシュなオレンジとレーズン、ドレッシングに蜂蜜とクミンを使った甘い味わいのものでした。
モロッコにこのような料理があるのか、フランス人がキャロット・ラぺを「モロッコ風」として、モロッコらしい食材のオレンジやレーズンを加えアレンジしたものなのかいまだに不明なのですが……。
甘くなり過ぎないように、ローストした松の実やシナモンといったモロッコ食材を加えながら、改良を重ねたレシピをご紹介します。
【材料】(4人分)
・にんじん:2本(300g)
・オレンジ:2個
・松の実:20~30g
・クミンシード:小さじ1
・オリーブオイル:大さじ2
・はちみつ:大さじ1/2
・レモン汁:大さじ1
・シナモンパウダー:小さじ1/2
・塩:小さじ1/3+適量
・粗挽き黒こしょう:適量
【作り方】
1.松の実の下準備をします。
・松の実はフライパンで軽く炒り、粗熱がとれたら粗く刻みます。
2.オレンジとクミンの下準備をします。
・オレンジは果肉だけを切り出します。残った薄皮から汁も搾り出してボールに入れます。
・クミンは軽くつぶして香りを出し、ボールに入れます。
3.味付けをします。
・[2]のボウルに<調味料>を加え、フォークなどでよく混ぜます。
4.にんじんを切ります。
・にんじんは表面を薄くむいてから、スライサーで細くおろします。
5.仕上げます。
・ボウルに[4]と[1]を加え、よく和えます。味をみて足りないようなら塩を加え、味を調えて完成です!
パリのお惣菜屋さんでフルコースを!?
ショーケースには、カリフラワー入りのタブレやビーツとラズベリーのサラダなど、組み合わせがおしゃれで味も抜群!
パリのお惣菜屋さんと聞いて、みなさんはなにを思い浮かべますか?
パテやキッシュ?キャロット・ラペやタブレでしょうか?
パリのお惣菜屋さんのショーケースには、色とりどりのサラダや、美しい層状のテリーヌ、黄金色のパイで包まれたパテなどがきれいに並べてあり、食いしん坊な私はいつも釘づけに…。
ここは、今1番好きなパリのお惣菜屋さんのひとつ
フランス語でお惣菜屋さんのことをTraiteur(トレトゥール)といいます。
昔ながらのトレトゥールには2タイプあり、ひとつはシャルキュトゥリ(ハムやサラミなどの豚肉加工食品を販売するお店)と一緒になっているお店。もうひとつは、ブランジュリ・パティスリ(パン屋兼お菓子屋)と一緒になっているお店。
パリのシャルキュトゥリで見つけたらぜひ買ってほしい「プランス・ド・パリ」と呼ばれるジャンボン・ブラン(ハム)。パリで作られる最後の極上のハムと評判の逸品です
数としては前者の方が多いのですが、どちらにも並んでいるのは、オーソドックスで家庭的なフランス料理です。
例えばサラダ系でいうと、キャロット・ラペや根セロリのレムラードソース(マヨネーズのようなソース)和え、クスクスのサラダ「タブレ」は定番中の定番。
お惣菜をいろいろチョイスしてランチを楽しむパリジャンたちのテ-ブル
そのほか、パテやテリーヌ、キッシュやケーク・サレはもちろんのこと、プラ・キュイジネという、温めるだけで食べることができるメインディッシュとマッシュポテトや茹でいんげんなどのつけ合わせも揃っています。
お店によっては、フロマージュ(チーズ)やデザート、ワイン、缶詰なども取り扱っているので、1軒でアペロからデザートまでのフルコースが整うという優れものなんです。
今はもうなくなってしまったリュクサンブール公園近くのキッシュ専門店。お惣菜やケーキ類もあってどれもいいお味でした
ギリシャにベトナム、パリのお惣菜屋さんは多国籍!
もうひとつ、パリのお惣菜屋さんのすごいところは、多国籍であるということ。
一般的なフランス料理だけではない、アルザスやコルシカなどの地方の味をはじめ、イタリアやポルトガル、ギリシャやレバノン、中国やヴェトナム、ロシアなど、さまざまな国のお惣菜屋さんが食料品店を兼ねて存在しています。
そんなパリにも、2002年にローズ・ベーカリーの1号店ができ、ロンドンのようなオーガニックをうたい、野菜をたっぷり使ったお洒落なデリカテッセンが散見されるようになりました。
また、2000年以降の新しい流れとして、「Épicerie fine(エピスリー・フィンヌ)」と呼ばれる厳選された食材やお惣菜を販売する食料品店も増加中。
どちらも伝統的なお惣菜屋さんとは一線を画す存在になっています。
オデオン地区にある伝統を守りながらアレンジも加えているお惣菜屋さん
品揃えも質もヴァラエティーに富んでいて、多国籍。そして、好きなときに、好きなものを、好きな分だけ買うことができる。そんなパリのお惣菜屋さんは、パリの街そのものを表現しているように思うのです。
渡仏の際は、近くのお惣菜屋さんに立ち寄って、リアルなフランスの食文化を体験していただきたいです。予定のない方は、今回ご紹介したレシピでパリ気分を味わってくださいね。
撮影協力|お皿/フォーク&ナイフ B・B・B POTTERS/ BBB&