少しずつ気温も上がり、ピクニックやアペロが気持ち良い季節になってきました。明るいうちからお酒とおしゃべりを楽しむなんて最高ですよね。あたたかくなるとシュワシュワ発泡しているお酒をキリッと冷やして飲みたくなるという方も多いのでは?
ビールにシャンパンにスパークリングワインに発泡するお酒はいろいろとありますが、今一番気になるのはなんと言ってもシードル!
フランスのブルターニュ地方で古くから愛されるりんごのお酒シードル。今回は神楽坂にある日本初のシードル専門店『ル ブルターニュ バー ア シードル レストラン』に伺い、ソムリエの涌井さんにシードルの魅力、楽しみ方を教えてもらいました!
シードルを楽しむならまず『ル ブルターニュ バー ア シードル レストラン』
神楽坂のメインストリートから1本入ったところにある古民家のような佇まいの『バー ア シードル レストラン』は神楽坂の人気ガレット店『LE BRETAGNE(ル・ブルターニュ)』の系列店。『LE BRETAGNE(ル・ブルターニュ)』は、フランスにも店舗展開しているということで、本場の味が楽しめると人気のお店です。その系列店である『ル ブルターニュ
バー ア シードル レストラン』は、有機のシードルを中心に約40種類とブルターニュ料理が味わえます。
シードルはりんごを使った醸造酒
シードルとは、りんごを発酵させて作るお酒。フルーティーなりんごの香りと優しい泡立ちの微炭酸で、アルコール度数も低く普段お酒をあまり飲まない方にも飲みやすいのが特徴です。
シードルと言えば、フランスのブルターニュ地方が有名。ワイン作りが盛んなフランスですが、このあたりはぶどうの北限を超えているため、ぶどう栽培が難しくワインが作れなかったので、りんごを作るようになったのだそう。
と、ここまではご存知の方も多いかと思いますが、実際シードルってどんな種類があって、どうやって作っているのかということまでは知らない方も多いのではないでしょうか。今回は、意外と知らないシードルについてのあれこれを聞いてきました。
甘口?辛口?シードルの種類って?
まず、シードルはアルコール度数の低い順に、シードル・ドゥ(甘口)、シードル・ドゥミ・セック(中辛)、シードル・ブリュット(辛口)の3つにカテゴライズされるのだそう。
「発酵が進みアルコール度数が高くなったものを辛口、発酵を早い段階で止めることで糖分が残ったものが甘口です。
アルコール度数が高いと言っても、シードルはワインよりもアルコール度数が低いんですよ。シードル用のりんごは酸味が強く、甘みがないものを使用します。ぶどうよりも糖分が少ないためアルコール度数が高くなりすぎないんです。だいたいビールと同じくらいの2〜4度ほどのものが多いですね。
アルコール度数が低く、りんごの果実味があるので飲みやすい。ちなみにビタミンCも豊富なので、女性にはぴったりなのではないでしょうか」と涌井さん。
ただし、日本のシードルは食べる用の糖度の高いりんごを使って作っていることもあるので、その場合はアルコール度数が高いのに甘口ということもあるとのことでした。
栗のフレーバーが付いたシードル(左)、POIRE(右)
その他に、シードルには洋梨を原料にしたポワレ、アイスワインのように凍った状態のりんご果汁から、氷を取り除いて作ったアルコール度数の高く甘いアイスシードルというものもあるのだそう。栗のフレーバーを付けたものやりんごのシードルに洋梨のフレーバーを付けたものなどフレーバー付きのものも。栗のフレーバーはジビエの季節には人気とのことでした。
数種類のりんごで味を作るシードル
ちなみにシードルは例外を除き1種類のりんごで作られるわけではないということをご存知でしょうか?
シードル用のりんごには210種類もあり、果実の味により甘味の強いもの、渋味の強いもの、酸味の強いもの、そしてもうひとつ甘苦いものがあると涌井さんは言います。そのりんごを組みわせて味を調整して作るのです。
7月〜11月に収穫されたりんごは、選別、洗浄を経て皮ごとすり潰され、雑味になる種や芯を取り除きます。絞ったりんごをタンクで寝かせ、その後、タンクで発酵させて作るのですが、その後の製法で品質に大きな違いが出るのだそう。
ワインなどの品質を管理するAOC(Appellation d’Origine Contrôlée*)で認められるシードルは、その後りんご果汁を添加し、ビンの中で2次発酵させたのもののみ。その他、AOCの基準にはりんごから絞る果汁の量が決まっていたり、寝かせる期間が決まっていたり厳密な審査項目があります。ちなみに、シードルでAOCを名乗れるのは、ペイ・ドージュ(Pays d’Auge)とコルヌアイユ(Cornouaillais)の2つの地方だけです。
ビン内で二次発酵しているものは色が濁っていることが多いです。
AOCに認められていないものでも、きちんとビンの中で2次発酵させているものはあります。ビンの中にオリがあるものがその印です。
その他、販売されているものの中には2次発酵させていないもの、2次発酵前に果汁の代わりに砂糖を加えるもの、タンクの段階で炭酸を注入するものなどもあるそう。もちろん味や泡の細かさなどで違いが出るのですが、好きな味わいは人それぞれなので、いろいろ楽しむ中で好みのシードルを見つけられるといいかもしれませんね。
また、ワインは寝かせるとおいしくなるものもありますが、シードルは時間が経つにつれてコルクから炭酸が抜けていくのであまり寝かさないほうがいいとのことでした。お店にあるものはすでに瓶内での発酵は完了しているものなので、そのときが飲みどころだと思って◎。
*フランスの農業製品、フランスワイン、チーズ、バターなどに対して与えられる品質保証に関する認証。
スイーツと合う!?シードルの楽しみ方
さて、シードルのちょっと深いお話を聞いたところで、気になるのがシードルの楽しみ方ですよね。どのようなお料理と相性がよいのでしょう?
「甘口のものやアイスシードル、ポワレなど糖度の高いものは、スイーツと合います。あと、フォアグラのテリーヌと合わせてもおいしいですね。フォアグラにはよくポートワインが添えられていますが、同じような役割をしてくれますよ。
辛口はお魚やお肉などのメインと合わせてもおいしいです。でも、フルーティーなお酒なので、食前酒や前菜のときに楽しむのがいいと思います。ガスの入った甘いお酒なので、よく冷やして飲むのがおすすめです」と涌井さん。
ちょっとしたおつまみと楽しむアペロタイムには、ぴったりなお酒なのです。
シードルはガレットと相性抜群
ブルターニュではガレットと一緒にシードルをいただくのが一般的(ブルターニュではボレと呼ばれるお茶碗のようなもので飲みます)。それはブルターニュがりんごの産地であると同時にそば粉の生産も盛んだったから。今回は『ル ブルターニュ バー ア シードル レストラン』のガレット料理と共にいただきました。
そば粉のガレットに、有機野菜を神楽坂の老舗の豆腐屋さんの豆腐を使ったディップと一緒にいただきます。
パリッと焼かれたガレットと味の濃いお野菜がとってもおいしいです。シードルもフルーティーな甘さですっきりとした飲み心地。ついごくごく飲んでしまいそうですが、アルコール度数が高くなく、ビタミンCも入っているとなると安心して飲めます。
ガレットでお魚を包んだひと皿も。ソースにもシードルを使っているのだそう。こちらは5度の辛口のシードルといただきました。
ブルターニュは海に囲まれた場所。同じ土地で親しまれているシードル、ガレット、お魚の相性はいいのかもしれないですね。
ちなみに、そば粉に含まれるルチンはビタミンCと一緒に摂ると効果的に吸収できると言われています。ルチンは血流を改善させるので血圧を降下させたり、肩こりや冷え性改善の効果が。またシードルにはビタミンCが含まれているので、もちろんそれ単体でも美肌効果などが期待できますが、ガレットと一緒に食べるとより効果的ということ。ブルターニュで昔から一緒に食べられてきたのには、名産ということ以外にも健康効果としても理にかなっているんですね!
アペロに気持ちよさそうな『ル ブルターニュ バー ア シードル レストラン』の縁側
シードルはアルコールが強くなく、フルーティーで爽やかなお酒。ワインやシャンパンより手軽に飲める金額感もうれしい。ビタミンCも豊富だったり、スイーツと相性がよかったり、女性が喜ぶポイントがたくさんあるお酒なのです。
これからアペロの気持ち良い季節がやってきます。今年はシードルをアペロのお供にしてみませんか?
■お店情報
Le BRETAGNE Bar a Cidre-Restaurant(バー ア シードル レストラン)
住所:東京都新宿区神楽坂3-3-6(地図)
TEL:03-5229-3555
営業時間:[水~金] 17:30〜23:00(L.O.)/[土] 11:30〜23:00(L.O.)/[日・祝] 11:30〜22:00(L.O.)
定休日:月・火
※記事の内容は取材当時のものです。 最新の情報は、お店のHP、SNSなどをご確認ください。
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