オフィスビルが建ち並びサラリーマンの街のイメージが強い虎ノ門。2014年に虎ノ門ヒルズができて以降、おしゃれなお店も増えどんどん進化している注目のエリアです。
今回紹介するのは、そんな虎ノ門にあるパンと料理とワインが楽しめるパンビストロ『Blanc(ブラン)』。8坪と小さなお店にぎゅっと詰まったたくさんの魅力を聞いてきました。
肩ひじはらず、気軽に楽しめるパンビストロに
左から、大谷よりさん、和田尚吾さん、大谷陽平さん、和田直樹さん
今回は料理人の大谷さん、パン職人の和田さん、サービス担当の大谷よりさんにお話を伺いました。大谷さん、和田さん、よりさんはもともと同じお店で一緒に働いていたのだとか。なぜ新たな地でお店をはじめることにしたのでしょう?
「以前、一緒に働いていたお店で、自分が焼いていたパンと彼(大谷さん)が作っていた料理を組み合わせたメニューを出したら、バカ売れしたんですよ。そうやってパンと料理を組み合わせてみるっていうのも楽しいですし、お客さんもそういうの求めているのかなと思って。そこがきっかけで、一緒に何かやりたいねっていう話になったんです」と和田さん。
お店のコンセプトは、「肩ひじはらない」こと。それは、大谷さんがパリで働いていたビストロ『Le Verre Vole(ル・ヴェール・ヴォレ)』に影響を受けたから。ワインバーやビストロを立ち上げる人たちは必ず見に行くという名店でありながら、サービスも話し方もフランクで堅苦しい雰囲気もなく、音楽はヒップホップやジャズが流れていたりと常に活気があるお店なのだそう。
「サービスマンはTシャツにジーンズのラフな格好なのに、すごくおいしいワインを飲ませてくれるし、料理も抜群においしくて。それを日本でもやりたいと思ったんです」と話す大谷さん。その後、和田さんもパリの『Le Verre Vole(ル・ヴェール・ヴォレ)』を訪れ、実際に見てみたところ、やりたいお店のイメージが合致し、一緒にお店をはじめることになりました。
大谷さんの奥様であるよりさんは、大谷さんと和田さんは双子みたいだと言います。
「パンだけでも料理だけでも成り立たなくて、一緒にすることで2人の持ち味が生きてくるんです。こんなに才能があって勢いがある2人だから、大きなお店ではなかなか2人のやりたいことができない葛藤もあったので、一緒にお店をできればやれることが広がるんだろうなと思って」と独立を後押しし、2016年4月にオープンとなりました。
パンを楽しむパン、料理と合わせるパン
和田さんは、「パン作りに興味を持ったのは映画『魔女の宅急便』に登場するパン屋さんがきっかけなんです」と少し照れながら教えてくださいました。子どもの頃に観て、パンを作るのってすごくかっこいいと思い、パン職人の道へ。
「僕も料理をやっていたので、料理に合うパンはどんなものだろうと考えながら作ることはすごく大切だと思っています。料理を邪魔するような主張しすぎるパンはビストロとしては良くないので、お互いに意見を出し合いながら『Blanc』風にしています」と和田さん。
お店のスペシャリテ「瓦」
パンのおすすめは「瓦」というカンパーニュ。この大きさにも驚きます。
「お店で粉から起こした種を使っていて、小麦粉は香りの強いものを使っています。吸水率を高くする配合にして、280度の高温で焼いています。外はガリッとしているんですが、中は国産小麦独特のもっちりとした食感を残しています」と和田さん。
パンは店頭のスタンドで購入できます
「材料は産地がわからないものは使わずに、お客様にも安心して食べてもらえるような素材を使うことにこだわっています。だから、作り方も粉から起こした種を使い、イースト菌は極力使わないようにしているんです。粉も国産のものを使っています」と語る和田さん。
新鮮な食材から生まれるビストロランチ
11時から始まるランチは、季節に応じて変わっていくとのこと。取材に訪れたときは、高知野菜のサラダプレートと、ハンバーグと日替わりカレーの3種類。ちなみに、お店で使う野菜は和田さんのご実家である高知から届けてもらっているのだそう。
「週に1度、和田くんのお母さんに高知の日曜市で野菜を買ってきてもらって、送ってもらっています(笑)。ダンボールいっぱいの野菜が毎週月曜日に届くんです。それに合わせて、肉は何にしよう、魚は何にしようって決めています」と大谷さん。
また、和田さんのお母様は最近畑を購入し、ハーブ類も育てているのだとか!本当の家族経営です、と笑顔で話してくれました。
今回は「国産牛のハンバーグとじゃがいものグラタン」をいただきました。ハンバーグがとてもジューシーで、お肉の味がしっかりしていておいしい!直火で焼いたナスをピューレにした焼きなすのソースと合わせるともう絶品です。とろっとしたグラタンの中にはスライスしたじゃがいもが入っていて、シャキっとした食感も楽しい1品。
手前から、バゲット、瓦(カンパーニュ)、ブラン(食パン)※写真は2名分
ランチにはパンとスープがセットで付きます。お店の名前がついた「ブラン」という食パンは、持った瞬間からふわふわでびっくり。生地にマスカルポーネを練りこむことで、軽い食感になっているそう。
「そのままでもおいしいですが、厚めに切ってトーストすれば周りがパリっと、中は溶ける感じでおいしいですよ」とのこと。こちらのパンも購入できるので、気に入ったパンは自宅でも楽しむことができます。
土佐金時というさつまいものポタージュ
また、ディナーはコースではなく、毎日変わるメニューをアラカルトで楽しんで欲しいとのこと。
「料理もパンも楽しんで欲しいと思っています。うちの『瓦』は、顎を使うから、フレンチと一緒に食べるとお腹いっぱいになるんですけど、僕はぜひ顎を使ってもらって、満腹になってもらいたいなと思っています。パンの味がしっかりしているので、さらっとして飲みやすいナチュールワインともぴったり。ワインを飲みながらパンを食べて、料理もつまんでっていうのがちょうどいいかと思います」と大谷さん。
夜はパンも300円で食べ放題ということで、パン好きにはたまりません。前菜とメインを食べながら、パンを頬張り、ワインを飲む。至福のひと時ですね。
高知産の食材が詰まったサンドイッチ
モーニングとランチでいただけるサンドイッチは、和田さんの気分で、「今日はこの食材があるから」とその日その日のいいものを出すため日替わり。
写真は高知県宇佐産のイワシサーディンと山北みかん。イワシは高知県の宇佐の港で漁れたてを加工するため、臭みもなく、身がぶりっと大きいのが特徴。
「使っている食材はオール高知です!親父が市場で青果の卸しをやっているので、旬の果物を提案してくれるんです」と和田さん。
歯切れがよくもちもちとしたチャバタとも相性抜群。イワシとみかんが一緒になることでさわやかなおいしさに。パンに塗られたマスタードもよく合います。
女性に人気!味の変化がおもしろいヴァン・ナチュール
パンとお料理についてご紹介してきましたが、『Blanc』の魅力はまだまだあります。それが、ヴァン・ナチュールという自然派ワイン。
山形のデラウェア100%で造られた、ヒトミワイナリーの「Dela Orange」
「ビオワインとナチュールワインはよく一緒のものに思われがちなんですが、全然違うものなんです。ビオワインは規定の酸化防腐剤の数値をクリアすればいいのですが、ナチュールワインは酸化防腐剤ほぼ0%。100%無農薬で作っている生産者もいるんですよ。通常ワインを瓶に入れるときにフィルターを通してろ過するんですけど、ノンフィルターと言って、無ろ過で造っている人もいます。ナチュールワインというのは、昔から造られていた伝統的な手法で作られるワインなんです。うちで扱っているワインはすべてナチュールワインなので、ぜひ味わってみてください」と大谷さん。
同じワインでも抜栓後すぐ(奥)と時間が経過したもの(手前)で色が違います
「飲んだ翌日のお酒の残り方が全然違うんです。飲んでもすっきり目覚められますよ。あと、ナチュールワインはフルーティーで爽やかな酸味もあって、女性にとても人気なんです。防腐剤をほとんど使っていないため、酸化が早かったり、季節によって瓶の中で発酵したりすることもあります。ワインが生きているので開けてみないとわからないのもナチュールワインのおもしろいところです」とよりさん。ナチュールワインはすいすいと飲めちゃうので、女性だけでその本数開けたの!?って、他のお店の人にびっくりされることもあるそうですよ。
旬の食材を使ったお料理とおいしいパン、飲みやすいナチュールワインは、女性の心を確実に掴んでいるよう。
「今まで虎ノ門は男性の街という感じだったので、女性はこういうお店を欲していたのかもしれませんね。もともと、私たちが丸の内のお店で働いていたので、そのときからOLさんや女性のお客様が多かったんです。だからその感覚を活かして、女性が主体で楽しんでいただけるお店を目指しています。女性が男性を連れてくればいいんです!(笑)」と女性の心を掴んでいる秘密をよりさんが教えてくれました。
気取らないお店の雰囲気に、おいしいパンと料理とワインのマリアージュに、そしてスタッフの明るさと軽快なトークに思わず笑顔がこぼれるはず。
仕事帰りにひとりでさくっと飲みに行くもよし、友人と会話を弾ませながらゆっくりと過ごすもよし、モーニングやランチなどそのシーンによって色んな楽しみ方が見つかるのではないでしょうか。
- ■お店情報
- Blanc(ブラン)
- 住所:東京都港区虎ノ門1-11-13 1F(地図)
- TEL:03−6273−3164
- 営業時間:[月〜金曜日] 7:00〜9:00、11:00〜14:00、17:00〜22:45 、[第2、第4土曜日]11:30〜
- 定休日:第1・3土曜日、日曜・祝日
※記事の内容は取材当時のものです。 最新の情報は、お店のHP、SNSなどをご確認ください。
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