日本でもクリスマスのお菓子としてすっかり定着したシュトーレン。11月も終わりに近づくと、今年はどのお店のシュトーレンにしようかな、そろそろ予約しなくちゃ…、とそわそわするのは私だけでしょうか?最近はオンラインでお取り寄せできるものも増えており、全国各地のシュトーレンを食べられるようにもなってきています。
本場ドイツでは、もともとシュトーレンは今のような豪華なお菓子ではなく、素朴なパンの一種だったそう。だから日本でもシュトーレンは、パン屋さんでよく見かけるのですね。
今回はそんなシュトーレンの歴史や文化とともに、この冬おすすめのシュトーレンを紹介したいと思います。
ドイツで生まれたクリスマスのお菓子シュトーレン
シュトーレン(Stollen)とは、ドイツでクリスマスシーズンに食べられる伝統的なお菓子です。諸説ありますが、ドイツ東部ザクセン地方の都市ドレスデンが発祥の地で、中世の時代にキリスト教の司教に贈呈したクリスマスの贈り物だったとされています。
日本ではクリスマスと言えば昔からホイッププリームと苺でデコレーションされたクリスマスケーキが定番ですが、ドイツではこのシュトーレンが定番です。ちなみに日本でシュトーレンと呼ばれていますが、ドイツ語Stollenの正しい発音は“シュトレン”です。
シュトーレンはドイツ語で「坑道」、つまり地下を掘った通路を意味しています。生地の中央にマジパンを入れて作るレシピもあり、トンネルのような形をしていることに由来しているそう。そして真っ白に粉砂糖がかかったシュトーレンは、「白いおくるみに包まれた幼子イエス・キリスト」をイメージしていると言われています。
クリスマスの4週間前からちびちび食べる楽しみ
ドイツでは、キリスト教のアドベント(クリスマス・イブの4週間前からイブまで)の期間に、シュトーレンを薄くスライスして少しずつ食べながらクリスマスを楽しみに待つ習慣があります。4週間かけて少しずつ食べるため、シュトーレンは日持ちするよう作られています。そして、少しずつ時間をかけて食べることで、フルーツやナッツがしっとりと生地に馴染み、時間とともに熟成し味わい深くなっていきます。そんな食感や味の変化を味わうのもシュトーレンの楽しみのひとつです。
シュトーレンのレシピはお店や家庭によって様々ですが、一般的にはずっしりと重く、しっかりと甘いのが特徴です。生地には洋酒に漬け込んだドライフルーツやスパイス、ナッツ類が練り込まれ、たっぷりのバターを加えて焼かれます。焼き上がるとまた表面にバターをたっぷりと塗り、粉砂糖をまぶして真っ白にコーティングします。生地にふんだんにバターが使用されていること、また仕上げのバターと砂糖のコーティングにより、酸素との接触が抑えられることから、長期間の保存が可能になっているのです。
もともとシンプルなお菓子だった!?シュトーレンの歴史
シュトーレンの歴史は1400年代から始まったと言われています。もともとは小麦粉、酵母、油(甜菜油のようなもの)、水だけで作られた素朴な味わいのパンでした。というのも、中世の時代はクリスマス前の約4週間が断食期間にあたり、その期間に口にすることが許されていたのがこの4つの食材たったからです。その後、ローマ教皇によってバターと牛乳の使用が認められるようになり、次第に現在のようなドライフルーツやナッツも入った豪華なお菓子に変貌を遂げたのです。
お店ごとに個性いろいろ。お気に入りのシュトーレンを探そう
日本では、ここ数年で一気に知名度を上げたシュトーレン。人気のお店のシュトーレンは予約が必須です。今年は残念ながら間に合わなかったとしても、来年のためにぜひメモしておいてくださいね。
今回は有名店のシュトーレンを紹介します。
・フロインドリーブ 「シトーレン」
神戸に店を構える、ドイツ菓子の老舗『フロインドリーブ』。本格的なドイツパンを日本に広めたとされるお店で、ドイツ人の夫と日本人の妻の2人の歩みは後にNHKの連続テレビドラマ『風見鶏』のモデルとなり、全国にその名が一気に広がりました。
そんなドイツ菓子専門店のシトーレンは、フレッシュバター、ナッツ、ドライフルーツをふんだんに練り込み、煉瓦窯で2時間かけて丁寧に焼き上げた上品な味わい。まず一切れ口に含むと、生地からジュワーッとバターが溶け出し、バターの香ばしい香りが口いっぱいに広がります。濃い目のストレートの紅茶と抜群の相性。午後のティータイムにおすすめです。
・ジョエル・ロブション 「シュトーレン ショコラ」
東京の三つ星フレンチレストラン『ジョエル・ロブション』のシュトーレンは2種類。通常の「シュトーレン」と「シュトーレン ショコラ」。今年はショコラを試してみました。
甘口のデザートワイン「ソーテルヌ」に漬け込んだレーズンやビターチョコレートを、カルダモンやアールグレイで香り付けした生地に練り込んだチョコレートのシュトーレン。
しっかりとした甘さの中にビターチョコレートのほのかな苦味がアクセントになっていて大人の味わいです。これはぜひ、食後にお酒と合わせたい。赤ワインや白ワイン、ブランデーやウイスキーとぴったりです。
真ん中から食べるのがシュトーレンの食べ方
最後に、シュトーレンをおいしく食べる方法をお伝えしたいと思います。
初めてシュトーレンを見た人は固くてゴツゴツしたこのお菓子をどうやってカットして食べたらよいのか悩んでしまいますよね。
シュトーレンは、まず横長に置いたら真ん中で半分にカットします。そして真ん中から左右交互1センチくらいの薄さにスライスして食べます。食べた後は、切った断面を貼り合わせるようにくっつけて、上からラップやアルミホイルなどで包み冷暗所で保存します(寒い時期なので冷蔵庫に入れる必要はありません)。こうすることで乾燥を防ぎ、最後までおいしく食べることができます。
この季節だけのお楽しみ、シュトーレン。味の変化を楽しみながら、ちょっとずつ食べる時間は贅沢なひとときです。紅茶やワイン、コーヒーと合わせてマリアージュを楽しんだり、ホイップを添えてみたりしても◎。冷やしてみたり、あたためてみても違った味わいが楽しめますよ。
ぜひ、とっておきのシュトーレンを味わいながら素敵なホリデーシーズンをお過ごしください。
- ■お店情報
- フロインドリーブ:http://freundlieb.jp/
- ジョエル・ロブション:https://www.robuchon.jp/
■その他のおすすめシュトーレン
PARISmagでご紹介してきたパン屋さんでも、シュトーレンが販売中!こだわりの詰まったシュトーレンばかりです。食べ比べしたり、お持たせにしてみんなで楽しんだり、毎日の楽しみにしたり。この時期だけの特別なお菓子をごゆるりとお楽しみください。
・『bricolage bread & co.』(六本木、渋谷)
六本木、渋谷にあるベーカリー『bricolage bread & co.(ブリコラージュブレッド&カンパニー)』からもシュトーレンが登場。
国産全粒粉小麦をメインにライ麦を配合した生地はスパイスやフルーツ、洋酒の風味をおおらかに包み込む濃い小麦が特徴です。熟成が若いときからならではの味わいも、熟成が進んでからの味わいも、その変化を楽しみながら時間をかけて楽しむと◎。
ワインはもちろん、ブリコラージュのパンを使用したビール「bread」とのペアリングがおすすめ。
▶詳細はこちら
・『Comme’N』(九品仏)
パンの世界大会である「2019年モンデュアル・デュ・パン」で総合優勝した大澤シェフが手掛ける『Comme’n(コム・ン)』のシュトレン。
毎年大人気のシュトレンが今年も登場です。大澤シェフこだわりのフルーツとバターをたっぷり使用した、スペシャルなシュトレンになっています。限定パッケージも高級感があり、ギフトにもおすすめです。
▶詳細はこちら
■一緒に読みたい記事