日本各地、フランス各地にあるおいしいパン。おいしいパン、地元に愛されるパン、その土地の魅力が詰まったご当地パンとの出会いを探すのもまた、旅の楽しみのひとつです。
さまざまな旅の楽しみを提案するメディア『ことりっぷ』のイベント「ことりっぷ 旅するマルシェ」が先日開催され、そこでPARISmagでパリのパン旅を紹介していただいているモデルの山野ゆりさんのトークイベントを実施いたしました。
おいしいパンとの出会いを探すパン旅の魅力をお話いただいたこのトークイベントの模様をレポートします。
暮らすようにパンを食べてみたくてパリへ1ヶ月間のパン留学
−山野さんはパリへパンを食べるために行かれることもあるんですよね。
山野ゆりさん(以下、山野):お洋服も好きなので、パリは昔から好きで行っていたんですけど、パンに魅せられてからはとにかくパンばかりで。パリの小麦のおいしさやパンに付随するバターとかチーズとか、ジャムとか、そういうパンと楽しむもののバリエーションも豊富で、日本では食べられないくらいおいしいものが気軽に味わえるんですよね。パンを丸ごと味わえる感じがすごく気に入っていて、今は半年に1回はパリに行っています。
−パリへ「パン留学」をされていたんですよね?
山野:そうなんです、パン留学で1カ月間。今までは旅行みたいに短期で1週間とかで行くことが多かったんですけど、「暮らすようにパンを食べてみたい」というフラストレーションがずっとあって…。最近は、「Airbnb」などの民泊が流行ってきて、キッチン付きの場所で暮らすように旅ができるようになりましたよね。そういう時代の手伝いもあって「よし、今だ!」と思って。今年の1月くらいに1カ月「パン留学」と称して、向こうで暮らすようにパンを食べてみました。
−そこではかなりたくさんのパンを食べて来たというのを伺いましたが。
山野:そうなんですよー!滞在中に何かひとつのパンをとにかく食べてやろうって思って。「パリといえば!」なパンにしたくて、ハード系のバケット、ヴィエノワズリーやクロワッサンなどのデニッシュ系かなと思ったのですが、ヴィジュアルのかわいさから今回はクロワッサンにしました。
100個のクロワッサンの特徴や感想をまとめたノート
パリのパン屋さん100店舗を周り、100個のクロワッサンの食べ比べをしたんですけど、やっぱりどこもそれぞれ違うんですよね。クロワッサンひとつでも、味やバターの量、クラストのサクサクした感じにそれぞれ特徴があり、とってもおもしろかったです。
見るだけで「このクロワッサンって中の気泡が荒め」とか、「これは結構白っぽいから甘い感じ」とか目利きができるようになるくらい食べました!すごく楽しかったんです。
−100店舗ということは、有名店以外もいろいろまわったということですよね…?
山野:もちろん有名店も行ったんですけど、私は旅先では基本的に、歩きながらパン屋さんを巡るんですね。歩いている途中で見つけた小さなパン屋さんや「これ何て読むんだろう?」と気になる店名のお店なども行きました。パリって割と小さな町なんですが、パン屋さんはコンビニくらいある気がします。なので、それでも全然行ききれなくて!
−街歩きをしながらパン屋さんを巡る感じですね。
山野:そうですね。お目当てのパン屋さんをいくつかピックアップして、そのエリアごとに散歩しますが、歩きながら見つけたパン屋さんもどんどん入って行きました。
その土地の食文化と一緒にパンを楽しむ
−パリのパンの特徴だったり、パリならではのパンの楽しみ方があれば教えてください。
山野:バターが本当に安い!「エシレバター」などは、日本だとこの大きさで1,000円以上すると思うんですけど、フランスでは1.5ユーロ、100円〜200円とかで買えるんですよ。バターの値段が日本の3〜4分の1くらい。もうクロワッサンにまでバターを付けちゃおうかなっていうくらい、バターを楽しめる。
あとはおいしいビオワインなどもスーパーで数百円とかで手に入ります。パンを食べるだけじゃなくて、バター、チーズ、ジャム、ワインなどの食材とペアリングしながらパンを楽しめます。日本でやろうと思うと値が張ってしまうけど、それが安価にできるのはうれしいですよね。パリではここぞとばかりにバター!チーズ!ワイン!生ハム!と、いろいろ買って楽しみました。
−フランスの食文化も一緒に楽しむんですね。
山野:「パン旅」はパリだけじゃなくて国内でもしているんですが、「行った先々のご当地のおいしいものとパンを楽しむ」というのをひとつのテーマとしているので、パリだったら酪農が盛んなので乳製品を楽しんだり、ワインと一緒に食べたり。そういうものを楽しむようにしています。
−日本で「パン旅」をするとしたらおすすめのエリアはありますか?
山野:日本もすごく楽しいですよね。行きやすいのは京都とか大阪とか。京都ならあんこがおいしいから「あんパン」、大阪はグルメな街だからお惣菜パンみたいにご当地に関するものを食べます。
最近、鹿児島も行ったんですが、鹿児島のパンレベルも高かったです。鹿児島はサツマイモを使った酵母のパンや黒豚が入っているパンなど、鹿児島ならではのパンがありました。パリに限らず、日本全国どこにいてもパンと一緒にご当地で楽しめるものがあると思います。それが楽しいですよね。
−旅先ではどうやってパン屋さんを見つけていますか?
山野:やはり主な情報源はネットですね。「地名 パン おいしい」とか「地名 パン 穴場」とか、ありとあらゆる単語を使って検索して、気になるお店をピックアップしています。それで行くパン屋さんの途中に別のお店があれば寄り道をして入ったりして楽しんでいますね。
−都内にもどんどん新しい、おもしろいパン屋さんが増えていますよね。
山野:つい最近食パン専門店『考えた人すごいわ』という清瀬にできたお店に行ったんですけど、その『考えた人すごいわ』っていうネーミングがすごいわ!と思って(笑)。今までそんな名前のパン屋さんって聞いたことないじゃないですか。パン屋さんといえば、フランス語の「ブーランジェリーなんたら」みたいなネーミングが多いですよね。でも『考えた人すごいわ』もそうですし、食パン専門店で『午後の食パン これ半端ないって!』というお店もあるんですけど、これもなんか今っぽいなってすごく感じています。
−専門店も増えてますよね。
山野:そうですよね。2、3年くらい前からですかね。食パン専門店とコッペパンの専門店も最近増えていますよね。
私はバケットが一番好きで、何も塗らずにあのまま食べるんです。そのままかぶりついて1本なくなることもよくあります。でも、バケット専門店ってないんですよね。あったらいいなと思っています。
−最近気になっているパン屋さんはありますか?
山野:このあいだネットで見つけたんですけど。谷根千にパン屋さんとお花屋さんが併設されているお店があるらしいんですよね。パンとお花って絶対かわいいじゃないですか。間違いないじゃないですか!
パンを買って帰るのと同時に小脇に小花を抱えてって…なんか素敵ですよね。もちろんパンだけでも上がるんですけど、お花と一緒だとさらに上がりますよね。そこはすごく行ってみたいですね。
パン屋さんは身近なトリップ空間
−山野さんのパンのお話を聞いていると本当に愛が溢れていて、パンが食べたくなります。パンを食べているときに「一番テンションが上がる!」というのはどういう瞬間ですか?
山野:私は多分、ファーストインプレッションですね。最初、口に入るときの香りと味、そして食べるときに目に入るパンのかたち…そのときの最初の1口を食べる瞬間はすごいテンション上がりますね。たまに最初の1口でわからなくて、後になって「あ!これめっちゃおいしい!」みたいな「後からタイプ」のパンもあるんですけど、大体は1口目で「わっ!」テンションが上がるかな。
あとパン屋さんに入った瞬間もめっちゃ上がりますね。お店の雰囲気だったり、香りもそうですし。パン屋さんって生活の中で身近に行けるトリップ空間だなって思っていて。どこのパン屋さんもかなり作り込んで、「パン屋さん」というものをデザインしているじゃないですか。そういうパン屋さんのデザインもすごく好き。全部ウッド調のほっこりしたかわいらしいお店から、コンクリート調のシルバーでちょっとシャープなモダンなお店まで、いろんなバリエーションがあって、お店そのものもすごく楽しめる空間になっていると思っています。パン屋さんに入った瞬間の「あ、ここはいうタイプのパン屋さんね」っていうのと、香りにふわって包まれる自分みたいな、そのときはすごいテンションが上がります。
−「パン旅」を楽しむときの心得や楽しむ秘訣はありますか?
山野:必ず持って行くのはジップロックですね。あるととても便利です。写真も撮りたいけど今すぐ食べたいときに、1口かじってジップロックに入れます。1口食べちゃうと乾燥してきて劣化までが早くなるので、持ち帰る用のジップロックは必ず持って行きます。
楽しむ秘訣は、多分、今日来てくれている方々やPARISmagのコラムを読んでくださっている方たちは、パンが好きな方が多いと思うので、パンを楽しむハートは持っていると思います。「好き」っていう気持ちを大事に思うっていうことだけでいいのではないでしょうか。私も実際そうですし!
「パン旅」っていうと時間もお金もかかるし、遠くへ足を延ばすとなると負荷もかかってくると思うんです。人生になくてもいいけどあえてやるのって、「好き」という気持ちだけだと思うんですね。「パンが好き」っていう気持ちを大切に育んでいるというのが、パンやパン旅を楽しむための唯一の秘訣じゃないかと思います。
みなさんも、ぜひ“パン旅”を楽しんでみてくださいね。
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