PARISmagは、「上質でシンプルなライフスタイル」をコンセプトにしていますが、その生活は「小さなしあわせの積み重ね」で実現できるのではないかと考えています。
今回から新しくスタートする連載は、いろいろな方々の「小さなしあわせ」を教えていただくインタビュー企画です。PARISmagが気になる方々へ会いに行き、「小さなしあわせ」のヒントを教えてもらいます!
第1回目である今回は、モデル・女優として活動し、また同時に国連のお仕事もされている知花くららさんにお話を伺ってきました。
- 知花くらら(ちばな くらら)
- 1982年生まれ。モデル、女優。多数の女性ファッション誌でモデルを務めるほか、TV・ラジオ・CMに出演している。2015年12月、NHK大河ドラマ「花燃ゆ」津田梅子役で女優デビュー。2016年10月9日よりスタートのフジテレビ系「キャリア~掟破りの警察署長~」では、ヨガインストラクターの加納理香役として連続ドラマレギュラー初出演。ほか、BSジャパン「未来EYES」(ナレーション)、JFN「Precious Life」に出演、「週刊朝日」、「Marisol」にて連載中。
- また、国連WFP日本大使としてアフリカや東南アジアなど食糧難の地域への現地視察を行い、日本国内で積極的に現地の声を伝える活動を行っている。30ヶ国以上の海外への旅で得た経験、高い社会性と知性、また女性からの強い支持を受けている自然体な内面性・ファッション面、語学力を活かし国内外で活躍中。
- WEB:http://chibanakurara.com
- Instagram:@chibanakurara.official
フランスで体験した日常生活
−知花さんは大学在学中にフランスへ留学されていたとのことですが、そのきっかけはフランス映画だったそうですね。
知花さん(以下、敬称略):大学3年生のときに9ヶ月ほどパリに留学していました。ヌーベルバーグの映画がすごく好きだったんです。そこから、フランス語の響きにハマって。
フランスでの生活は「もう帰りたくない!」となるくらい、すべてが楽しかったですね。朝パン屋さんでおばさんと会話をして、焼き立てのバゲットを買うというような、日常のひとつひとつがすごく楽しかったです。
—その後ミス・ユニバースに出場されたり、国連WFP(WFP国連世界食糧計画)の活動をしたり、海外とのつながりがすごくあるイメージがあるのですが、海外への興味はかねてからあったのですか?
知花:大学生の頃、留学から帰ってきたあとは、日本で仕事をしようと思っていました。編集者になりたかったので、そういった会社への就活もしましたし。そうやってごく普通に就職する予定が、偶然にもミス・ユニバースが転がり込んできたというか…予期せずまいこんできたことだったんです。それをきっかけにモデルというお仕事と国連WFPの活動もはじめさせていただきました。
本当に私としては予期せず、巡り巡って、海外とご縁があるようなかたちになっているという感じですね。
新しいことに挑戦する怖さとモチベーション
−モデルとして活動する一方、国連WFPに携わり、さらに女優としての活動も本格的にスタートさせ、プライベートでは写真や短歌もしているということをブログで拝見したのですが、活動もご趣味も本当に幅広いなという印象がしています。新しいことに挑戦するモチベーションはどこから来るのでしょうか?
知花:それぞれちょうどいいタイミングに出会い、興味をひかれて、もっと知りたい、もっとやってみたいという思いが膨らんで、それぞれちょっとずつハマっていく感じなんですけど。そのときどきで物事との出会いがきっとちゃんとあるのでしょうね。
—著書『くららと言葉』でも、新しいことに挑戦するときの不安になっている部分と挑戦した結果見えたものというのが書かれていますよね。
知花:新しいことに挑戦するのはやっぱり怖いですよね。年齢を重ねれば重ねるほど新しいことに挑戦する怖さも増えていきますし。今の私で言えば、お芝居への挑戦がまさにそうです。お仕事を初めて10年くらい経つと、できないことやったことないことって減っていくと思うんです。そういう頃に、新しいことに挑戦するというのは、恥もかくだろうし、失敗もするだろうし、落ち込むだろうし。この年齢になってはじめてのことに挑戦するという怖さはすごくありました。でも、そういうことも全部ひっくるめて、お芝居に挑戦したいと思っていたので、今、すごくハッピーですね。
—たとえばどういったことがハッピーなのでしょうか?
知花:今はドラマの現場に行くのが、すごく楽しくて!もちろんお芝居の経験は全然ないので、台本とにらめっこして緊張していたりするんですけど(笑)。現場の空気感とか、ひとつの作品をみんなで作っているんだという感じが何だかあたたかくて。共演の方々も優しいですし、すごく楽しいです。
お芝居に対しても、もっとこうしたいなとかこうできるのかなとかいった思いも少しずつ出てきて。とりあえず、もっとうまくなりたいという気持ちもあります。日々、そういう新しい刺激をもらっています。
国連WFPの活動を通して海外で見てきたものを伝える
—新しいことに挑戦することもそうですが、海外の知らない土地へ行くことも新しい発見がありそうですよね。
知花:海外には国連WFPでの活動で行くこともあり、発展途上国に行くことが多いです。だから、旅といっても旅行の感覚とは全然違いますね。
そういう土地に行くといつもいろいろと考えるのですが、自分の悩みがすごくちっぽけに思えてきます。たとえば、出発前に誰かと喧嘩したりしてモヤモヤ考えているようなことも、現地では吹っ飛びますから。世界は広いし、太陽は大きいし、地平線はまっすぐだし。建物のドアの数だけ人の人生があって。「なんだ、私の悩み、すごい小さい!」と素直に思えるんです。飢饉や紛争といったギリギリの状況下で、生命を保ちながら生活している人を見ていると、私の悩みなんて命に関わることでもない。そういう意味じゃ、いろいろな土地を見るたびに勇気をもらいますね。
—『くららと言葉』に書かれている「ワインを1杯飲むたびに私の観てきた国の話をひとつする」というエピソードがすごく印象的でした。自分ができることは伝えることだという思いが詰まっていますよね。
知花:昔、就活のときに内定をいただいた会社の方に「完璧主義者って言われることない?」って言われたことがあったんです。そのときは全然、ピンとこなかったのですが、国連WFPの活動を始めた頃にとても葛藤していたのは「100やらなくちゃいけない」と思っていたからなんです。
完璧主義な自分がいるんだと改めて気付かされましたし、「100やらなくてもいい」と気づくことができたときのすっきり感というか、自分の気持ちに片がついた瞬間は、今でもありありと覚えています。それからは、「自分にできることはなんだろう」と考えながら、時間を過ごすようになりました。
毎日アフリカのことを考えるかと言われればそうではないし、なかなかそのために時間を割くということは難しいけれど、毎日の日常生活の中で自然と考えられたらいいなと。例えば、お友達とお酒を飲むときのおしゃべりの中で、私が見てきた国のことを少しでも伝えることができたらいいかなと、いつも思っています。
—もしかしたら「100やらなくていい、できることをやろう」という心の余裕が、新しい何かに挑戦するときも心を少し軽くしてくれるのかもしれないですね。
知花:そうかもしれないですね。最初はできないのが当然ですから。やっぱりできないと悔しいですけど、1つずつ重ねていって、いつか何かにつながるかもしれないと思っています。
プライベートタイムは古筆に夢中
—ナチュラルな美しさが本当に魅力的ですが、どんな美容法や健康法を実践しているのか気になっている読者も多いかと思います。少し教えていただけないでしょうか?
知花:美容に関して特別なことをやっていないので、答えることが苦手なのですが、いつも健康でありたいとは思っています。食事に気をつけたり、今出演しているドラマ『キャリア~』でもヨガの先生の役なのでヨガを始めました。体を動かしていると前向きな気持ちになりますよね。そうすると、表情や体の動きひとつとってもいろんなことが変わってきて、美しさにつながっていくのかなと思っています。
—体を動かすことはお好きなんですか?
知花:すごく好きです。あと、ジムに行くといつも泳いでいます。小さい頃トライアスロンをやっていたこともあって。そういうスポ根みたいなのが、私の中に残っているのかもしれないですね。
—他に趣味やプライベートでの楽しみってありますか?
知花:とても地味なんですけど、古筆という昔の和歌を綴っていたような字を学ぶ書道をやっています。私も最初、古筆というジャンルがあることを知らなかったんですけど、ゼロからはじめて1年ちょっとになります。もう書いているだけで「うわ!楽しい!」ってなっています。でも、この趣味、他の人に話してもなかなか伝わらないんですよ(笑)。
なんだろう…筆の動きのリズムとかが本当にゆったりしていて、それに身を委ねるような感じが心地よいというか。時間を忘れる感覚ですね。
1回教室に行くと6時間くらいはやっています。宿題や課題も結構出るので、日々戦いながらも楽しんでいますね。私の場合は、短歌をはじめたことがきっかけで古筆を習いはじめたんですけど、いつか自分で短冊に自分の歌を書き付けたいと思っています。
—短歌からということですが、短歌をはじめたきっかけは?
知花:もともと読書が好きで、与謝野晶子をきっかけに現代歌人の本も読むようになりました。古い言葉使いじゃなくても短歌って詠めるんだ!ということに気づいて。自分にもできるかも?と思ったことはじまりですね。
—知花さんというグローバルな活動をされているイメージだったので、「和」のことに関心があるんだというのが少し意外でした!
知花:私もこんなに和の世界にハマるとは思っていなかったのですが、やっぱりなんだか落ち着くみたいです。海外に出て、違う言葉でコミュニケーションを取りながら、違う文化に触れるのもよい刺激ですが、それとはまた違う方向性の楽しみかもしれないです。
古筆の世界は、とても奥が深い世界でびっくりしています。でも、本当に楽しいので、自分の字が書けるまでは古筆は続けたいです。
—それがリフレッシュになっているんですね。
知花:そうですね。6時間も集中しているので、終わった後は気が抜けてリラックスしているかもしれないです。でも、清書の作業は墨で絶対間違えられないガチンコですから。ゆるんだり、緊張したりしながら楽しんでいます。もう、本当に私、根っこが地味なんです(笑)。
−笑。でも著書などで語られている知花さんの言葉を拝見すると、「私の考えを知って!」という華やかさよりは、「私が観てきたもの感じてきたものをよかったらお話します」という謙虚さが溢れていますよね。
知花:ありがとうございます。
どちらかと言うと、ミス・ユニバースの方が私の中では異文化でした。私の中にないものを求められている世界だったので、大会中は苦しい部分もありましたし、なんでこんなことしているのだろうという葛藤もありました。
だから本当に「私が!」というよりは、もっとマイペースに一歩一歩自分で進んでいきたいっていう気持ちが強いタイプなんだと思います。
ミス・ユニバースからモデル、そして女優へ
—そうだったんですね。その異文化である、ミス・ユニバースに出場した経験が今につながっているのでしょうか?
知花:まず日本大会で1位になるとは思っていなかったので、本当に驚きました。でも、大会自体は色々な国の人と交流することもできたので楽しむことができました。同世代の女の子たちが集まって話す内容って、ボーイフレンドの話だったり、将来の夢だったり、ガールズトークは世界共通なんだと知ることができたのも面白かったです。
そんな中でも国によっていろんな情勢があって、それをひとりで背負って来ている子もいて。そこでの経験が今の国連WFPでの活動につながることもあり、とても素敵な経験でした。
—ミス・ユニバースの後、日本でモデルの活動をスタートさせたということですが…
知花:私の場合、いきなり表紙モデルに抜擢していただいたので、中ページの経験があまりなかったんです。ですから、ポージングを雑誌で研究したり、他のモデルさんの撮影を見学させてもらったり。普通、表紙モデルはそんなことしないんだけど…って驚かれながらも編集の方にお願いして見学させていただきました。
—なんだか、知花さんのお話を伺っていると、タイミング、タイミングで全然知らない世界に飛び込んでいく瞬間がありますよね。
知花:本当にそうですよね。ドラマもレギュラー出演は今回がはじめてですし。昨年出演させていただいた大河ドラマは今まで経験したことのないくらい、本当に緊張しました。みなさんが1年間積み上げてきたものの中にいきなり初演技で、最終話だけ出演するというプレッシャーが…。ドキドキしているのが見えるんじゃないかっていうくらい緊張していました。
—前回はできあがっている場に入るという感じだったということですが、今回は一緒にイチから作り上げていくという関わり方になるんですね。
知花:一緒に何かをイチから作り上げていくことがこんなに楽しいんだなと実感しながら、現場の雰囲気を楽しんでいます。
雑誌のお仕事はひとりなので、共演者がいるというのが、本当にうれしいです。
—今後も演技は挑戦していくのですか?また、役者以外に挑戦したいことありますか?
知花:もっと演技経験を積んで、色々な役に挑戦したいです。
他にもすごくいっぱいあるんですけど…旅先で撮った写真で写真展をやりたいです。表情が本当にかわいいので子どもの写真が多いです。写真を見返して、「これはアフリカのどこの子だっけ?」ということもあるんですけど(笑)。でも、その子にまつわる細かなエピソードは覚えていたりするんですよね。絶対に戻ってこない瞬間を写真の中に残せるのは、とてもロマンチックだなと思っています。そんな瞬間を集めた写真展ができれば…。
あと、古筆ももっとがんばって、いつか海外で展覧会やってみたいな…とか野望ばかりです。
−最後に、知花さんにとっての「小さなしあわせ」とはなんでしょうか?
知花:古筆をはじめてからは、墨の匂いがしあわせですね。古筆をしている時間自体が小さなしあわせではあるんですが、「さあ、やるぞ!」と墨をする時間が何よりしあわせです。墨の濃さをみながらすって、そのとき漂う香りにすごく癒やされるな〜と。
あとは、最近ちょっとはまっている、ポップコーンが鍋の中でうまく弾けたときもしあわせ。フライパンに種を入れて火にかけると、ポコポコポコポコできるんですよ。蓋が透明なので、「ポコポコポコポコしてくる愛おしい〜!」って(笑)。できたかな?って開けると、ポコっとまだいたり!その時間がしあわせですね。やっぱり、私地味だな〜(笑)。
知花さん、素敵なお話どうもありがとうございました!
- ■作品情報
- フジテレビ系『キャリア~掟破りの警察署長~』
- 毎週日曜 夜9時放送
- 出演:玉木宏、髙嶋政宏、瀧本美織、白洲迅、田中美奈子、柳沢慎吾、近藤正臣
- 脚本:小山正太、関えり香
- 制作:フジテレビ
■一緒に読みたい記事