世界中の音楽が気軽に聴けるようになった昨今。さまざまな音楽をさまざまなシーンで楽しむことができるようになっています。もちろんフランスの音楽もより身近に耳にするようになってきていますね。日本でもよく知られるフランスのミュージシャンのひとり、クレモンティーヌさん。
CMの音楽やアニメソングのカバー、日本人ミュージシャンとのコラボレーションなど、日本でも活躍するクレモンティーヌさんが、この度来日されたということで、さっそく会いに行ってきました。
フランスと日本の音楽のことやフランスでの暮らしについてお話を聞いてきました。
ライブで歌う楽しみを実感
−昨年デビュー30周年ということですが、30年間歌を歌い続ける中で、気持ちの変化はありましたか?
クレモンティーヌさん(以下、敬称略):この30年で音楽業界がすごく変化しましたよね。30年前はCDアルバムが売れる時代でした。みなさんCDを買って音楽を楽しんでいましたが、今はほとんどが配信になってしまったので、「アルバムで音楽を聴く」というのがなくなったように感じます。音楽で生きていくというのが大変な時代になったと思いますね。
ただ、いいことといえば、みなさんがライブによく来てくれるようになりましたね。私自身もライブはかつてより増えましたし、ライブで歌う楽しみというのもますます感じられるようになっています。
−ライブの楽しみというのはどういうところなのでしょうか?
クレモンティーヌ:やっぱりお客さんのあたたかい反応を感じられるのと、お客さんと私の波長がピタッと合う瞬間を感じられることですかね。特に、日本は長い間、私の音楽を聴いてくれているのでライブの序盤から一緒に歌ってくれ、ホームのような感覚を年々強く感じるようになっています。
−今回の来日では、日仏交流ライブイベント『FESTIVAL TANDEM -MUSIC & FOOD-』へ出演され、元ピチカート・ファイヴの野宮真貴さんとのコラボレーションもありましたが、昔から日本のミュージシャンとの交流はあるのでしょうか?
クレモンティーヌ:たくさんあります。日本のミュージシャンやアーティストは、すごく働き者なので、ご自身でリハーサルをしっかりやってきてくれるんですよね。そのため、すごくスームズに進行できるのでうれしいです。
−クレモンティーヌさんも日本のアニメソングなどをカバーされていますが、フランスでは日本の音楽を耳にすることってあるのでしょうか?
クレモンティーヌ:やはりアニメ番組の影響があると思います。フランスではずいぶん前から日本のアニメを放映していたので、日本の音楽ということを知らずして耳にしていたんです。「キャンディ・キャンディ」などを聴いていましたね。
小さい頃はアニメで日本の音楽を耳にしていて、80年代、90年代はピチカート・ファイヴやコーネリアスなどを聴いていました。最近は特に、「japonism」というイベントが開催されるなど、日本のアニメへの注目はさらに高まっていると思います。
−クレモンティーヌさんは日本にも何度も訪れているとのことですが、日本に来た際に必ず訪れる場所やすることはありますか?
クレモンティーヌ:子どもが大きくなったとは言え、フランスでは子育てだったり、雑用がいろいろありますよね。日本に来ると仕事以外はのんびり休むようにしています。
ポジティブに今日を生きることを大切に
−フランスではお休みの日どんなことをして過ごすのでしょうか?
クレモンティーヌ:長い夏休みは南仏の別荘で過ごしますね。そこに友人を呼んだり、パートナーと愛犬と車で地方へ出かけたりしています。子どもが大きくなってからバカンスの過ごし方も少し変わりましたね。
パリでの週末の短い休みのときは、郊外にあるプロデューサーの家へ行くことが多いです。田舎へ行くのが好きです。空気もきれいですし、喧騒から離れていろいろ忘れられるので。ウィークデーのパリと週末の郊外というように、分けるようにしています。
−そうなんですね。ちなみにパリ市内でのおすすめのスポットはありますか?
クレモンティーヌ:今年8月にパリの7区にできた『Beaupassage』というパッサージュがおすすめです。ラグジュアリーな飲食店やブティックが連なっています。パリも2024年にオリンピックがあるので、それに向けて新しいお店も増えていますね。
逆に、私が生まれ育った16区は流行りなどもなく、あまり変わらない昔ながらのパリを感じるエリアなので、16区に行くと落ち着きます。
−今ハマっているものはありますか?
クレモンティーヌ:水泳ですね。1日500mくらい泳ぎます。ヨガやジムで体を動かすことも欠かしません。あと大きな犬を飼っているので、よく散歩しています。体を動かすなど健康は意識していますね。食事もストイックに「BIOじゃないとダメ!」というほどではありませんが、食べすぎないようにしたり、バランスを意識しています。どうしても年をとるにつれて太りやすくなりますからね。
−クレモンティーヌさんが思う、魅力的な女性というのはどういう女性でしょうか?
アニエス・ヴェルダ(映画『顔たち、ところどころ』より)
クレモンティーヌ:例えば、フランス人映画監督のアニエス・ヴェルダは魅力的だと思います。最近公開された映画『顔たち、ところどころ』でも描かれていますが、いくつになっても好奇心にあふれていたり、見た目の美しさだけにとらわれずに自由に生き生きしているところがとても素敵ですよね。
私自身も、くよくよ考えすぎずに今日は今日、明日できることは明日やると割り切って、ポジティブに今日を生きるということを大切にしています。
−そうなんですね。今日のお洋服もとても素敵ですが、クレモンティーヌさんのおしゃれのこだわりがあったら教えて下さい。
クレモンティーヌ:トータルルックでまとめないことですね。全身ブランドだけで揃えるのではなく、スーパーマーケットの『モノプリ』で買ったものとエルメスを合わせるなど、ブランドのものもシンプルに着こなすことは意識しています。ブランドロゴが入っているものなどは着ないですね。
新しいことをやり続けていきたい
−音楽でもジャズからボサノヴァ、ポップス、日本のアニメソングなどさまざまなジャンルに挑戦されていますが、これから挑戦したいことはありますか?
クレモンティーヌ:フランスの古い歌をラテンのアレンジで歌うアルバムを今作っています。間もなく発表になると思います。私たちアーティストは定年退職というものがないので、新しいことをやり続けていかなければいけないんですよね。なので、これからも新しいことには挑戦していきたいです。
クレモンティーヌさん、素敵なお話ありがとうございます!
クレモンティーヌ
パリ生まれ。レコードコレクターの父親の影響でジャズに囲まれながら育つ。88年SONY FRANCEよりデビュー。以来、ジャズ、ポップス、ボサノヴァなど様々なジャンルで数々の作品を発表。
音楽だけではなく、オン、オフを自然体なスロー・ライフで実践する、ライフスタイルも注目を浴び続けている日本で最も愛されるフランス人歌手。今までのレコードセールスはトータル150万枚以上。
日本での実績をシラク前大統領より賞賛され、クレモンティーヌの活動はフランスの2大新聞「ル・モンド」と「フィガロ」の一面に掲載される事になる。それを機にヨーロッパでは主にジャズシンガーとして活躍していた彼女の存在は一気にヨーロッパ全土で注目されることになる。現在は韓国、台湾などアジア全土でもその人気を不動のものとしている。
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