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日仏で活躍するジャズバイオリニスト、レイナ・キタダさんに聞く“フランス人と音楽”

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日仏で活躍するジャズバイオリニスト、レイナ・キタダさんに聞く“フランス人と音楽”

今年9月に日本メジャーデビューアルバム『Dans L’AIr(ダン・レール)』をリリースしたレイナ・キタダさん。

ジャズバイオリニスト兼フレンチシンガー、さらにはソングライターとして、パリと東京を拠点に活躍しています。

フランスと日本の両国で音楽活動をされるキタダさんは、それぞれの音楽学校に通った経歴の持ち主。音楽の学びも活動も、2つの国のライフスタイルも知るキタダさんに、「フランス人の音楽の楽しみ方」についてお聞きしました。

レイナ・キタダ

3歳より音楽を始め、幼稚園、小中高と音大の付属を卒業。その後、18歳にして単身渡仏。フランスのジャズバイオリニスト、ディディエ・ロックウッドが主宰する音楽学校に通った後、パリの国立地方音楽院に入学。在学中にフランスと日本の両方で演奏活動を開始。演奏のほかに作詞・作曲・歌も手掛け、2023年9月には日本メジャーデビューアルバムとなる『Dans L’AIr(ダン・レール)』をリリース。2024年2月にはレコ発ライブを控える。

HP:https://reinakitada.com/

Instagram:@reinakitada_official

『Dans L’AIr(ダン・レール)』特設サイト:https://www.110107.com/reinakitada

 

バイオリンの“ケース”から始まり、18歳で単身渡仏

―キタダさんは、幼稚園から音大の付属に通われていたそうですね。幼少期から音楽に親しまれていたわけですが、音楽への目覚めはいつだったのでしょう?

レイナ・キタダ(以下、敬称略):目覚めなんて言うと、ちょっと語弊があるかもしれないのですが、初めてバイオリンに触れたのは3歳のときでした。幼心におしゃれだと感じたのか、テレビコマーシャルに映っていたバイオリンケースを見て母に「私、これが欲しい!」って(笑)。

私があまりにねだるものだから、3歳のクリスマスプレゼントに両親がバイオリンを買ってくれたんです。とは言え、私が欲しかったのはケース。

私は記憶がないのですが、バイオリンケースをバッグがわりにお出掛けしていた、なんて話を両親から聞かされました(笑)。

 

―なんと、バイオリンではなくケース(笑)!

キタダ:でも両親としてはケースではなくバイオリンを買い与えたわけだから、当然「少しは弾いたら?」と勧めてきますよね。

しかし、近所にバイオリン教室がなかったんです。なのでバイオリンを練習するためには、音大付属の幼稚園に進むしかありませんでした。

 

―きっかけはケースでしたが、そこから次第にバイオリンや音楽に魅了されていったのでしょうか?

キタダ:音大の付属幼稚園に入った以上、レッスン漬けはあたりまえ。魅了されるもなにも、私にとってバイオリンを弾くことは、食事をすることと同じくらいあたりまえの行為でしたね。

音楽に関しても同じように、生活に密着していました。特に父はジャズが好きだったので、それこそ母のお腹にいたときからジャズを聴いていたそうです。

 

―バイオリンケースをきっかけに、その後も小中高校と音大の付属に進学され、18歳のときに単身渡仏。フランスでも音楽学校に通われましたが、日本との違いは?

キタダ:もう、根本が違います。日本はテクニックに重きを置いていて、技術に対する日本の教えは一流だと思います。

一方フランスは、テクニックよりも表現に重きを置くんです。表現に関しては、フランスは本当にシビア。日本の場合は入学試験に受かりさえすれば、何歳からでも音楽大学に入学できますよね。

私もフランスの音楽学校でジャズを学んだあと、「コンセルバトワ-ル・ナショナル・ド・レジオン・オーベルビリエ・ラ-クルヌーブ 国立地方音楽院」に入学しました。

ちなみに国立の音楽院には「コンセルバトワール パリ国立高等音楽院」という学校もあり、楽器によって異なるもののバイオリン専攻は22歳未満でないと入学できません。ここに通うなら誰かの影響を受けた表現が染みついていてはダメで、まっさらな状態から学ばないといけないのです。入学に年齢制限があるのもそのためです。

 

子どもに文化を伝える、水曜日のコンセルヴァトワール

―フランスには年齢にとらわれない自由なイメージがあるので、意外です。

キタダ:自由さとは別のベクトルなんだと思います。コンセルヴァトワールは、公的な教育機関。音楽のほかに演劇や工芸の学校もあり、その目的は自国に築かれた文化の継承です。

 

―自国の文化継承を重んじた教育。どこか高尚にも感じられますが、実際にはいかがでしょう?クラシック音楽そのものが高尚なイメージです。

キタダ:コンセルヴァトワールは、確かに狭き門かもしれません。でも高尚というのとは違います。フランスの幼稚園や義務教育機関は、水曜日はお休みか午前中だけ。これに合わせて、コンセルヴァトワールは水曜午後の授業がお休みになるんです。

その理由は、学校が休みの子どもたちに音楽を教えるため。コンセルヴァトワールの先生は、国から認められたプロばかりです。でも、公的機関のためレッスン料はすごく安い。フランスでは子どものころからあたりまえに、ホンモノの音楽を学べるんです。

 

―芸術という文化が、深く根付いているんですね。

キタダ:特にいろいろな施設が充実したパリは、気軽に肩肘張る必要なく、芸術に触れられます。あの絢爛豪華なオペラ座も、1番安い席は10ユーロくらいなんですよ。

雰囲気は高尚でも、鑑賞する権利は平等。お金のない学生でもホンモノに触れられます。

同時に、聴かれている音楽も多種多様。クラシックばかりじゃありません。アメリカの文化であるHIPHOPやR&Bも人気だし、エド・シーランはフランスのチャートでもおなじみ。

最近はK-POPも存在感を強めていますね。そうしたポップも聴きつつ、オペラも身近。

またパリメトロで演奏しているミュージシャンは、流しの人もいますが、多くが自治体のオーディションを受けて、腕前を認められた人たちです。街のカフェやバーでも小さなライブが開催されていたり、店主がいきなりDJを始めたり。パリにはそこら中に音楽があります。

 

―すると、キタダさんもパリのカフェでライブをされたご経験が?

キタダ:もちろん!カルチエ・ラタンのカフェで、よくライブをしましたね。ただ、フランスの人たちは本当に正直。

いい演奏に対しては拍手喝采(かっさい)の一方、ちょっとでもダメだとブーイングの嵐ですから。そのシビアな反応に耐えられず、音楽の道を諦める人もいます。でも、シビアな分だけすごく鍛えられますね。私自身もかなり鍛えられました(笑)。

 

日本好きのフランシス・レイに捧げた、追悼公演ツアー

―パリの音楽院やオーディエンスに鍛えられ、認められ、キタダさんは2018年に亡くなったフランスの音楽家、フランシス・レイの追悼コンサートに参加されました。

キタダ:2021年のパリ公演に参加して、今年10月には日本での追悼公演ツアーを終えたばかりです。もう、率直に疲れた(笑)!その分だけ、達成感でいっぱいです。

フランシス・レイは、日本のことが大好きだったんです。週に3回はお寿司を食べていた、なんて逸話があるくらい。でも、彼は飛行機恐怖症だったので、来日したのはたった1度だけです。

日本のことが大好きなのに、飛行機というハードルゆえに1度の来日しか叶わなかった彼の追悼ツアーを日本でやるなんて、ものすごくロマンチックですよね。

このロマンチックな日本でのツアーに、彼の日本好きを誰よりもよく知る、レイの家族も同行したんです。しかも、一緒にツアーを回るのは、生前のレイとの関わり深いオーケストラの面々。

私は日本人唯一のゲストシンガーとして参加しましたが、これはもう本当に責任重大でした。予期せぬトラブルも多かったのですが、このツアーは大成功だったと思います。

来日したレイの奥さまも、最終公演日はずっと泣いて喜んでくれたんです。それにオーケストラの皆さんは、多くがご高齢。今しかできない、貴重な経験をさせてもらいました。

公演中のキタダさん

 

―ツアーは終わりましたが、9月に発売されたキタダさんの日本メジャーデビューアルバム『Dans L’Air』には、フランシス・レイのカバー曲も収録されていますね。

キタダ:「白い恋人たち」に「占領下のパリ」、「男と女」に「ママの想い出」をカバーしています。レイが生み出した楽曲たちは、世界中でカバーされています。

もはや、アレンジも出尽くしたくらい。でも、カバーするからには“私ならでは”じゃなくちゃいけない。これを実現するため、楽器構成で変化を付けています。

私と一緒にカバーに臨んでくれたミュージシャンは、誰もが唯一無二の音を持つ人。聞いた瞬間に「あ、あの人の演奏だな」とわかるくらい、その人にしか奏でられない音色を持つ人たちです。

もちろん、私が常に目指しているのも、自分にしか出せない音。唯一無二の音色が集った結果、“私ならでは”のカバー曲に仕上がったと自負しています。

レイナ・キタダ『Dans L’Air』(¥2,500)

 

人が幸せであるためには、子どもが幸せじゃなくちゃ!

―そして、2024年2月2日には『Dans L’AIr』のレコ発ライブを開催。最後に、ライブへの意気込みをお聞かせください。

キタダ:私自身がすごく楽しみにしています。アルバムに参加してくれたミュージシャンも出演してくれるので、唯一無二の音をお届けできるはず。

だからこそ、多くの人に来ていただきたいと思います。音楽を聴いて、みんなに幸せになってもらいたい。

私は、人が幸せであるためには、まず子どもが幸せじゃなきゃダメだと思っているんです。でも、未就学児が入れるジャズクラブはほぼないじゃないですか。2月に公演を行う『JZ Brat Sound of Tokyo』も、基本的に未就学児は入場できません。

ただ、私は子どもにも音楽に触れてもらいたいし、子どもと一緒にパパもママも思いきり楽しんでほしい。

だから2月2日の17時から始まるファーストステージに関しては、未就学児の入場も可能!チケットも小学生までは無料、中高生は半額です。心が苦しくなるようなニュースの多い今だからこそ、親子一緒に音楽を楽しんでほしいんです。

 

―まるで水曜日のコンセルヴァトワール!キタダさんはフランスの音楽と文化を日本に伝える、架け橋のような存在ですね。

キタダ:架け橋だなんて、そんな大仰なことは考えていないんです。でも、私の取り組みが結果的に架け橋になっているなら、それはうれしいこと。

実際、フランスではオペラや高級レストランに子どもを連れて行くのも珍しくありません。ただ、そうした場所では騒いじゃダメ。騒いでしまうなら親はそれを理解して、連れて行きません。

ルールにとらわれるのではなく、フランスの人たちは自己判断します。自己判断できるのは、みんながあたりまえに芸術の楽しみ方を知っているから。

音楽が身近にありながらも、音楽に対する評価や楽しみ方のマナーにはシビア。こうした姿勢があるからこそ、フランスは芸術の国であり続けます。すごくすてきなことですよね。

もちろん、日本だってすてき。何事も丁寧で、約束事をしっかり守りますよね。ただ、その丁寧さを窮屈に感じることもあるはず。

そんなときにフランス人の「私は私。だからこう行動する」という生き方に触れたなら、少し心が軽くなる。架け橋なんておこがましいけれど、そうしたフランスの文化を伝えられたらいいな、と思っています。

街の至るところに音楽があり、だからこそ、その文化に対する姿勢はシビア。フランスの自由なイメージは、むしろ、シビアな姿勢から生み出されているのかもしれません。

 

***

 

2024年2月2日に開催されるキタダさんのレコ発ライブは、そのフランス文化の一端に触れられる機会。

「みんなに幸せでいてほしい」というキタダさんの想いが唯一無二の音色によって紡がれ、会場を包み込むに違いありません。

 

  • ■撮影協力|Cafe de Sept 7
  • ※不定期でキタダさんのライブを開催しています。

 

  • ■公演情報
  • ●レイナ・キタダ
  • 「Dans L’AIr(ダン・レール)」レコ発ライブ
  • 日時|2024年2月2日(金)
  • 1stステージ Open 16:00  Start 17:00
  • 2ndステージ Open 19:30  Start 20:15
  • 場所|東京・渋谷JZ brat
  • 料金|¥5,000(予約)、¥5,500(当日)、中高生¥2,500(予約・当日)、小学生以下無料
  • ※1stステージのみ未就学児入場可
  • https://www.jzbrat.com/liveinfo/2024/02/index.html#20240202
  • ●Authentic Midget Orchestra
  • 出演:Authentic Midget Orchestra(Reina Kitada (Vo.&Vln.) / 田ノ岡三郎 (Acc.))
  • 2023年11月18日(土) 名古屋・L’école d’F
  • 2023年11月19日(日) 高松・RUFFHOUSE
  • 2023年11月20日(月) 高知・中町バー
  • 2023年12月02日 (土)青森・アトム
  • 2023年12月09日(土) 東京・アンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュ
  • 詳しくはこちら
  • Reina Kitada Official Site

 

 

日仏で活躍するジャズバイオリニスト、レイナ・キタダさんに聞く“フランス人と音楽”

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