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フランス人歌手・クレモンティーヌさん「お気に入りを長く愛することが私らしい暮らしにつながる」

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フランス人歌手・クレモンティーヌさん「お気に入りを長く愛することが私らしい暮らしにつながる」

CMソングやアニソンカバーなど、日本でも活躍されているフランス人歌手・クレモンティーヌさん。このコロナ禍で新たに発表したのが、昔のフレンチ・ソングをアレンジした最新作『ケル・タン・フェッティル?~お天気はいかがですか?』。

今回は、新しいアルバムに込めた想いはもちろん、コロナ禍で過ごした南フランスでの生活についてもお伺いしました!厳しいロックダウンの中、「いつでもポジティブ」とおっしゃるクレモンティーヌさんはどのように過ごされていたのでしょうか?

 

パリから南仏へ。娘とふたりきりで語り合う、コロナ禍だからこその貴重な時間

中世のお城と自然が豊かな街「レ・ザルク」中世のお城と自然が豊かな街「レ・ザルク」

―日本よりも厳しいロックダウンを強いられてきたフランス。長く苦しい1年でしたが、ようやく5月中旬から徐々に規制が緩和されていきます。

クレモンティーヌさん(以下、敬称略):やっと長いトンネルから出られる感覚です。映画館や美術館といった文化施設、そしてレストランやカフェがずっと閉まっていたので、娯楽がまったくない状態でした。また元の日常に戻れることはとてもうれしく、まるでルネサンスを迎えるかのようです。

南フランスのレ・ザルクにある別荘

―コロナ禍以降、南フランスのレ・ザルクに生活の拠点を移したと伺いました。自然に囲まれた暮らしはいかがでしたか?

クレモンティーヌ:前回(2020年2月)の来日公演を終えた直後、世界の状況が一変しました。フランスに戻ってからは、パリのアパルトマンではなく、南フランスのレ・ザルクにある別荘で、ほとんど家族にしか会わず2ヶ月ほど過ごしましたね。

そこでは、人々の暮らし方も時間の流れも、パリとはまったく異なりました。人口が少ない街なので、2時間犬の散歩をしても誰ともすれ違わない。パリでは考えられないですよね(笑)。

娘は自分の部屋で絵を描いたり、息子はガールフレンドと過ごしたりと、日中はそれぞれ別行動をしていましたが、夜はみんなで集まるっていうのが暗黙のルールだったんです。アペリティフやディナーを楽しみました。

1回目のロックダウンが始まった頃は不安でいっぱいでしたが、気を張り詰めた雰囲気のパリで過ごすよりも、南フランスでゆったりとした生活はとてもいい選択でした。

― ご家族との関係もその期間を通して変化はありましたか?

クレモンティーヌ:家族以外の人と会わないなんて、今までにないこと。少し不思議な感覚はありました。南フランスでは娘と2人きりで語り合ったり。今までそんなことはなかったので、すごく貴重な時間でしたね。もともと子どもたちとは仲がよかったのですが、コロナ禍以降はもっと心理的距離感が縮まった気がします。

ご家族との関係もその期間を通して変化

 

― 外出が制限されているなかで、どんな風に過ごされていたのでしょうか?

クレモンティーヌ:フランス人はおおらかというイメージを持たれることも多いですが、ロックダウン中のパリは、誰もがイライラしていて心に余裕がない様子でした。大好きな娯楽を全て奪われているわけですから、そうなるのも仕方がないですよね。パリは小さなアパルトマンに住んでいる方が多く、家の中での楽しみも限られる。ストレスを抱え込んでしまう人も少なくなかったのでしょう。

料理が好きなのでキッチンで過ごす時間が長い

私は料理が好きなのでキッチンで過ごす時間が長いです。そういう趣味があっても、それでもずっと家の中にいるのは息苦しくなります。だから、しょっちゅう犬の散歩を理由に外出をしていました。ペットの散歩であれば外出が許されるんですよ(笑)。それがいい気分転換になり、なんとか今日まで楽しく過ごせていますね。

 

90年代のパリが目に浮かぶような、時間旅行を楽しむ1枚

90年代のパリが目に浮かぶような、時間旅行を楽しむ1枚 (C) Kokopele

― そんなコロナ禍の中で生まれたのが、5月末に発売される新アルバム。以前のPARISmagのインタビューで「フランスの古い歌をラテンのアレンジで歌うアルバムを作っている」とお話しされていました。ついにそれが完成したわけですが、まずは、今回のアルバムを「忘れ去られたフレンチ・ソングに光をあてる」というコンセプトにした理由を教えてください。

クレモンティーヌ:数年前にラジオで『ケル・タン・フェッティル?〜お天気はいかがですか?〜』の原曲を初めて聴いたとき、歌詞に感銘を受けました。すぐに「自分で歌ってみたい!」と思ったんです。

フランスの映画監督ジャック・タチの映画『ぼくの伯父さんの休暇』で使われている有名な曲なのですが、歌詞をしっかりと聞いたことはなかったんです。「あなたが作詞したの?」と聞かれることもあったくらい、フランスでもこの曲の歌詞を知っている人はほとんどいません。曲は知られていても映画で流れる一部分だけ。そういう名曲をカバーするのは今までに例が少なかったので、挑戦してみたかったんです。

― 『フルフル』はMVも公開されています。アルバムのなかで最も古い時代の曲なんですよね。でも、MVではアニメーションを使って軽やかにアレンジされているため、全く古さを感じませんでした。

 

クレモンティーヌ:『フルフル』は1897年の曲です。20年ほど前にテレビで同名のバラエティ番組が放送されていて、語感がもともと好きでした。『フルフル』は、布地がこすれるときのかすかな音のこと。歌詞は女性が男性をよろこばせるという古風な内容です。男女平等がうたわれる現代とのギャップがおもしろいと思い、この曲を選びました。

― スカートが擦れる音を「フルフル」と表現するフランス語。とってもかわいいです!他にも、『外人部隊のマンボ』『アスピリンの歌』と、俳優ジャン・ヤンヌさんの曲が2曲入っていますね。

クレモンティーヌ:もともと俳優としてジャン・ヤンヌのファンでした。どちらも歌詞の表現が好きで選んだんです。『アスピリンの歌』は、少しでも不安を感じたら薬を飲んでしまう、不安症の女の子を描いた曲です。危なっかしい歌詞だけれど、不思議と共感してしまう力があります。

フランス人歌手・クレモンティーヌさん「お気に入りを長く愛することが私らしい暮らしにつながる」

― 新譜の歌詞には、パリの景色もたくさん登場しますよね。パリに行けた時期がとても懐かしく感じるような曲ばかりでした!

クレモンティーヌ:『エッフェル塔よこんにちは』は、ミスタンゲットが1942年に歌っていた曲です。エッフェル塔以外にも、オペラ座やポン=ヌフなど、今でも変わらず残っている風景もありますが、まるで当時のパリをポラロイドカメラで撮ったかのように、その様子が目に浮かんでくるような歌詞なんです。

その他の曲も、原曲そのままを歌うのでなく、明るく軽快なラテン・ジャズなど現代風のテイストにアレンジしています。なかなか自由に旅ができない状況のなか、歌を通してパリをはじめとするフランスの風景を想像しながら楽しんで聴いていただけるとうれしいです。

―音楽を通じて空想を膨らませば、時間も空間も超えてしまう。息抜きがしづらいコロナ禍において、改めて音楽の力はどのようなところにあると思いますか?

クレモンティーヌ:日本では、数多くの有料配信ライブが始まったと聞きますが、フランスでは「LiveはLive!」。生で見たいと言う声が多く、有料配信はあまり上手くいきませんでした…。数多くのアーティストが行った無料での配信は、ライブというよりは「みんなで乗り切ろう」というメッセージを伝えるためのものだったように感じます。

あるアーティストの配信の翌日には、「曲に共感。明日もがんばれる」と何千人もの医療従事者からメッセージが。まさに音楽の力ですよね。

フランス文化にとっては非常に厳しい1年でしたし、私自身も音楽の存在の大切さを改めて感じた期間でした。この夏にはフランス南西部のラ・ロシェルで200人のアーティストが参加予定の音楽フェスティバルが予定されていますし、アーティストたち達も音楽をもう一度取り戻すために奮闘しています。

徐々に規制が緩和され光が見えてきているので、これからまた以前のように音楽とともに日常を過ごせることを願っています。

 

軽やかな心持ちさえあれば、「小さなしあわせ」はそこらじゅうにある

軽やかな心持ちさえあれば、「小さなしあわせ」はそこらじゅうにある

― 以前のインタビューで「ポジティブに生きることを大切にしている」とおっしゃっていました。クレモンティーヌさんにとっての息抜きやリフレッシュ方法など、ポジティブに生きる知恵を教えてください。

クレモンティーヌ:先ほどもお話ししましたが、コロナ禍は誰にとってもつらい時期だったと思います。でも、なにごとも重く捉えすぎない。ただそれだけです。人生の残された時間を考えたら、ネガティブになるなんてもったいないですし、前向きに生きたほうがいいですよね。だから、落ち込むことがあっても「明日は明日の風が吹く」。軽やかに楽しく過ごせる方へと、自分の考えを持っていくんです。

― 最後に、クレモンティーヌさんにとっての「小さなしあわせ」とは?

ささやかなしあわせも見逃しません

クレモンティーヌ:「しあわせ」というと、社会的地位や人生における成功などを挙げる人が多いように思えますが、私は些細なことでもしあわせを感じることができるのでラッキーでした。これは祖母も母も同じなので、遺伝なんでしょうね。春の到来を感じたり、きれいに咲いている花を見たり。あまり重く考えすぎないようにさえ気をつけていれば、そういうささやかなしあわせも見逃しません。

あとはお金や物に依存しないことでしょうか。私は幼少期をメキシコで過ごしたのですが、そのときの家具を今もパリのアパルトマンで使っているんです。30年以上住んでいても、「この家、昔から全然変わっていないね」と言われます。両親から引き継いだものはどれもお気に入りです。私が少し保守的なのかもしれませんが、新しいもので自分を埋め尽くそうとせず、気に入ったものを長く愛する。そうすることで、周りと比べない私らしい部屋、私らしい生活に繋がっていくのではないでしょうか。

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「ロックダウンはつらかったよね、大変だったよね」と私たちにも声をかけてくださるクレモンティーヌさんの姿がとても印象的でした。無理にポジティブになろうとするのではなく、ありのままを受け入れること。そして、「今日は今日、明日は明日」と区切りをつけることで、あまり深く思い詰めないことが軽やかに生きるコツなのかもしれません。

クレモンティーヌさん、素敵なお話をありがとうございました!

 

  • ■アルバム情報
  • 最新アルバム『ケル・タン・フェッティル?〜お天気はいかがですか?』
  • 2021年5月26日発売
  • 定価 2600円+税
  • 品番 SICX-30104 ※Blu-spec CD 2でのリリース。
  • (P) 2021 Clémentine under exclusive license to Music Box Publishing
  • 再生・購入はこちらから:
  • https://SonyMusicJapan.lnk.to/QUELTEMPSFAITIL

 

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フランス人歌手・クレモンティーヌさん「お気に入りを長く愛することが私らしい暮らしにつながる」 (C) Kokopele

クレモンティーヌ

パリ生まれ。レコードコレクターの父親の影響でジャズに囲まれながら育つ。88年SONY FRANCEよりデビュー。以来、ジャズ、ポップス、ボサノヴァなど様々なジャンルで数々の作品を発表。

音楽だけではなく、オン、オフを自然体なスロー・ライフで実践する、ライフスタイルも注目を浴び続けている日本で最も愛されるフランス人歌手。今までのレコードセールスはトータル150万枚以上。

日本での実績をシラク前大統領より賞賛され、クレモンティーヌの活動はフランスの2大新聞「ル・モンド」と「フィガロ」の一面に掲載される事になる。それを機にヨーロッパでは主にジャズシンガーとして活躍していた彼女の存在は一気にヨーロッパ全土で注目されることになる。現在は韓国、台湾などアジア全土でもその人気を不動のものとしている。

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