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    漫画で見つけるフランスの魅力。漫画メディア「ネゴト」ライターが推す4作品

    フランスが大好き、フランスをもっと身近に感じたい、フランスのことをもっと知りたい!

    そんな方におすすめの漫画4選をご紹介します。今回はそんな“フランス漫画”を漫画メディア「ネゴト」ライターのyukikoさんに教えてもらいました!

    フランスの歴史に触れる漫画から現代のフランス文化を感じることができる漫画まで、私たちのまだ知らないフランスを覗きにいきませんか?

    Hermès(エルメス)の歴史が描かれた新版『エルメスの道』竹宮 惠子 (中央公論新社)


    ⓒ2021 Keiko TAKEMIYA
    新版『エルメスの道』中央公論新社

    180年以上続くエルメスの歴史を、『少年の名はジルベール』などで知られる漫画家・竹宮惠子さんが描いた作品です。創業者であるティエリ・エルメスが築いたもの作りに対する想いや高い技術を、何世代にも渡って引き継いできた歴史は圧巻の一言。「さすが世界のトップメゾン!」と唸ること間違いなしです。

    1837年、パリのマドレーヌ寺院付近で馬具工房から始まったエルメス。ティエリの確かな技術を受け継ぎ、オーダーメイドの馬具を作るうちにフランス全土に名が知られるようになりました。その後、人々のライフスタイルの変化に合わせ皮革製品も製作するようになり、現在までも数々の流行を生み出すこととなります。

    作中には、時代ごとにファッションの流行を鋭く捉え、新しい商品を生み続けるエルメスの挑戦とともに、たくさんのファッションが描かれています。時の経過と共に変化していくファッションを覗けるのも本書ならではの魅力です。

    変わりゆくファッションのモードとは裏腹に、今のフランスと変わらない人々の暮らしも本作では描かれています。それはずばり、ピクニック!今も昔も、フランス人はピクニックが大好きなんです。


    新版『エルメスの道』竹宮 惠子 (中央公論新社)P38-39
    ⓒ2021 Keiko TAKEMIYA
    新版『エルメスの道』中央公論新社


    参考記事:「暮らすように旅するなら、登るよりエッフェル塔のふもとでピクニック!

    おしゃべりが大好きなフランス人にとって、日差しを浴びてまどろみながら過ごす時間は、何にも代えがたいもの。劇場やカフェと同じように「社交の場」と化した緑の芝の上、話に花を咲かせる風景は変わりないですね。

    新版『エルメスの道』竹宮 惠子(中央公論新社)P168
    ⓒ2021 Keiko TAKEMIYA
    新版『エルメスの道』中央公論新社

    エルメスを代表する商品のひとつである、シルクスカーフ「カレ」の製造工程も詳細に知ることができます。テーマ決定から製品になるまで18か月もの月日がかかるカレ。創業者ティエリ・エルメスの物づくりへの情熱や誠意をもっとも引き継いできた商品だということも頷けるはずです。

    こちらは私が祖母から譲り受けた2枚のカレ。エルメスの象徴である馬のモチーフが印象的な2枚です。


    オレンジとグリーンのカレにはナポレオン、そして淡いピンクのカレには”La PROMENADE DE LONGCHAMPS”(ロンシャンの散歩みち)の文字が。

     何十年経っても色褪せないデザインと心地良いシルクの肌触りは、本作で読んできたエルメスの歴史を感じさせます。一枚一枚思いのこもった品だとわかると、より大切にしたくなりますよね。

    本作はエルメス一族が紡いできた家族の絆の物語としても十分に楽しめるのが魅力でもあります。ものづくりの精神に触れたい人や家族ドラマを楽しみたい人におすすめです。ブランドの発展の礎となる”人の想い”がじんわりと心温めてくれるはずです。

    パリのレストランで働く青年の成長物語『Artiste(アルティスト)』さもえど太郎(新潮社)

    こちらの作品は、パリのレストランで働く主人公ジルベールが、周囲の人々との絆を築きながら仕事に奮闘し、成長していく物語です。

    味覚と嗅覚が抜群に優れていたジルベールは、すぐに料理の才能を発揮していきます。しかし、その腕前とは裏腹に彼は人とのコミュニケーションが極度の苦手。黙々と自分の仕事をすればいいからという消極的な理由で料理人を志望したほど。そんな彼の人生が、人との出会いを通じて彩られていきます。

    印象的なのが友人・マルコとの出会い。マルコは器用貧乏であるがゆえに、どの職にも打ち込めず、さすらうような日々を送っています。そんなマルコが不器用な生き方のジルベールと出会い、凸凹コンビの友情が育まれていきます。2人の不思議な友情を見ていると、人と出会い絆を結ぶ素晴らしさを改めて感じることができます。

     


    『Artiste(アルティスト)2巻』さもえど太郎(新潮社)P127


    参考記事:「ダヴィンチやフェルメールがぎゅうぎゅうに展示!名画だらけのルーブル美術館

    作中ではフランスの風景も堪能できます。
    料理を盛りつけるセンスがないとシェフから指摘されたジルベールは、盛りつけのヒントを探しにルーブル美術館を訪れます。


    『Artiste(アルティスト)2巻』さもえど太郎(新潮社)
    (左)P129、(右)P131

    さすが、アートが日常にあるパリ。あるものすべてが創作のアイデアや手がかりとなっていく様子は、読者の感性も刺激してくれそうです。


    『Artiste(アルティスト)2巻』さもえど太郎(新潮社)P49


    参考記事:「朝食にもブランチにも。濃厚チーズが決め手のクロックムッシュレシピ」

    作中の料理はどれも垂涎もので、夜中に読むのはご注意!特にジルベールが作るクロックムッシュがとってもおいしそうで自分でも真似してみたくなるほどです。フランス料理は手間のかかるイメージがありますが、必要な材料は決して多くありません。こちらのクロックムッシュレシピを参考に、フレンチな朝食で始める休日なんていかがでしょうか。

    わたしたちの知らないパリの素顔が見える『パリ、愛してるぜ~』『かかってこい パリ』『パリが呼んでいる』じゃんぽ~る西(飛鳥新社)

    3作からなる本作は、漫画家・じゃんぽ~る西先生のフランス滞在記。この作品は、今までパリマグが紹介してきたパリとは一味違う、フランスの素顔を味わえる作品になっています。  


    『パリ、愛してるぜ~』じゃんぽ~る西(飛鳥新社)P8

    西先生の飾らない言動やエピソードは、より一層フランスに対する好奇心を刺激します。ガイドブックでは知ることのできないパリの素顔が露わになる、パリが好きな人にこそ手にしてほしい作品です。

    誰もが知るような定番スポットのはずなのに、西先生の視点だとちょっぴりヘンテコで無造作なパリがお目見えします。


    『パリ、愛してるぜ~』じゃんぽ~る西(飛鳥新社)P18


    参考記事:「おしゃれをしてオペラ座ガルニエ宮へ!豪華絢爛な空間で楽しむ観劇

    バレエの本場・オペラ座ガルニエ宮に足を運んだ西先生。劇場あるあるにクスリと笑い、オペラ座の天井の緻密過ぎる作画に圧巻されるエピソードです。そのちぐはぐさがまたリアルに感じます。

    2012年、西先生はパリで毎年開催されている国際ブックフェア「サロン・ド・リーブル」に招待されます。ワーキングホリデーをしながらパリ滞在中の珍エピソードを描いた本作が、フランスでも話題になったそう。「サロン・ド・リーブル」では、これまで西先生が体験してきたローカル感のあるパリとは違い、華やかで眩しいできごとばかり。西先生があたふたするエピソードが楽しめます。


    『パリが呼んでいる』じゃんぽ~る西(飛鳥新社)P106

    西先生が描くフランスは、日常のフランスを感じられるエピソードが多数あります。数々の日本人女性と恋を楽しむフランス人男性や警察にお世話になった話など、人間味があふれるフランスの文化や人々に親近感が沸いてしまうはず!フランスの素顔をどんどん見つけてみてください。

    明治期の日本とパリの交流が描かれた『ニュクスの角灯』高浜寛(リイド社)

    舞台は開国が進み、パリから最先端の物が次々とやってくる明治期の日本。触れた物の過去や未来の持ち主がわかる少女・美世(みよ)が、奉公先を求めて鍛冶屋町の道具屋「蛮」で働くところから物語は始まります。煌びやかな街・パリから届く新しくて未知な品々と人々の豊かな交流が描かれた作品です。

    本作の見どころのひとつは、物語の要所要所に挿絵と共に綴られた高浜先生のコラム「Cabinet of Takahama」。そこでは高浜先生が実際に収集しているアンティーク雑貨や物語に登場するアイテムたちが紹介されています。


    『ニュクスの角灯 2巻』高浜寛(リイド社)P164


    『ニュクスの角灯 2巻』高浜寛(リイド社)P148

    長い時間が経っていても、当時の人々と同じくらいワクワクさせてくれる魅力的なものばかりなのです。また、「洋服」の製作を試みる場面では、ソーイングマシンが登場します。


    『ニュクスの角灯 1巻』高浜寛(リイド社)P84


    yukikoさん愛用のソーイングマシンをアレンジしたデスク

    私が愛用している作業デスクは、まさにソーイングマシンをアレンジしたものです。用途は違えど、かつて時代を彩ったものを今こうして日常的に使う習慣を持つことは、物に対する愛情も深まるような気がしています。

    高浜先生の創作活動は、念入りな取材や研究を主軸においています。完全なフィクションではなく、日本が辿ってきた歴史を紐解き、明らかになった事実をベースに描かれているからこそ、登場人物に対する共感が自然と深まっていく…。そんな体験が味わえるなんて貴重なことではないでしょうか。


    『愛人 ラマン』高浜寛(リイド社)

    高浜寛先生は、フランス文学の不朽の名作『愛人 ラマン』(マルグリット・デュラス 著)をコミカライズしたことでも世界中から大きな注目を集めています。

    全編オールカラーで製作されている本作の舞台は、フランス占領下のベトナム。東南アジアに漂う西洋の空気感が色彩とともに沁みだし、物語をよりエモーショナルに響かせます。あとがきには、実際に現地に訪れ取材を重ねた様子が綴られており、この作品に込めた思いに触れることができますよ。

     

    いかがでしたでしょうか?今回はフランスの歴史から現代のフランス文化まで楽しめる4作品をご紹介しました。まだまだ旅行に行けない日々が続いていますが、この機会に今回ご紹介した漫画をぜひ手に取って、フランスを身近に楽しんでみてくださいね。

     

    ■オウンドメディア「ネゴト」
    マンガライターたちが自由にマンガ愛を語っている漫画メディア。
    きっと、あなたが探していたマンガに出会えるはずです。
    https://negoto.jp/

     

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