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平澤まりこさんに聞く、旅の思い出と日々のこと

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平澤まりこさんに聞く、旅の思い出と日々のこと

雑誌、広告、装画などのイラストなど、幅広い活躍をしているイラストレーターの平澤まりこさん。世界各国へ旅する中での出会いや経験をご自身のイラストと文章で綴ったエッセイも多数出版されています。10月には、小川糸さんの文章に銅版画を添えた、ラトビアが舞台の物語の発売を控えている平澤さんに、これまでの旅の思い出やお仕事について、そして日々の暮らしについて伺ってきました。

 

ホームステイで現地の暮らしを体験するのが好き

平澤まりこさんの書籍平澤さんの書籍の数々

−平澤さんの書籍を拝見すると本当にいろいろな国々を旅しているなとびっくりしました。先日は、フィンランドへ行ってらしたんですよね?

平澤まりこさん(以下、敬称略):今回は、ラトビア、エストニア、フィンランドの3カ国を巡ってきました。田園ツーリズムに関するお仕事だったので、エコな体験をいろいろとしてきましたね。きのこ狩りの時期だったので、きのこ博士と森の中へ入って、苔の間ににょきにょき生えているのを採って。用意してくれていたオーガニック食材と一緒に夜ごはんを作ってもらったりして。盛りだくさんな旅行でした。

−平澤さんはこれまでもいろいろな国へ行かれていますよね。

平澤:そうですね。旅は本当に大好きです。15歳のときに初めて海外に行ったのですが、それがアメリカのサンディエゴでのホームステイでした。急に英語の環境にポーンと入れられる感じだったんですが、それがきっかけで楽しいなと思うようになりましたね。

そこからホームステイが好きになり、パリやイタリア、他の国でもホームステイしています。

−エッセイ『1ヶ月のパリジェンヌ』もホームステイをされていましたね。

平澤:一緒に買物したり、料理を作ったり。現地のリアルな暮らしが楽しいですよね。もちろん、観光名所も巡ったりはするのですが、お母さんのちょっとしたアイデアなど、暮らしの部分に心ときめくことが多いですね。

−エッセイ『1ヶ月のパリジェンヌ』にも細かく描かれていましたが、確かに観光でマルシェに行くことはできても、どうやって買い物をするのか、どんなものを買っているかは現地の人たちと一緒じゃないとわからないところもありますよね。

平澤:きっとフランス語が話せたら自分でも行けるとは思うのですが、全然フランス語が話せないから。やっぱり一緒に行ってくれる人がいるとお店の人たちが心を開いてくれるので、心強いですよね。

−ホストファミリーはお知り合いのご家庭が多いのですか?

平澤:知り合いの家ということもありますが、ネットで調べて探すこともあります。本当に「はじめまして」という感じで、待ち合わせ時間と場所が送られてきたり、家の住所が送られてきたりして、自分で行くということもありますね。最初はドキドキします。

ホームステイだと、ホストファミリーの友人ともつながることができたりするので、次に行くのが楽しくなるんですよね。パリの家族は今でもつながっていて、パリへ行った際は遊びに行きますし、手紙のやり取りも続いています。

 

パリの人たちは時間の楽しみ方を知っている

平澤まりこさん

−パリは結構行かれるのですか?

平澤:最近はあまり行けてないんです。『1ヶ月のパリジェンヌ』が出たのが10年くらい前で、そのあと何度かホストファミリーの家に遊びに行ったり、乗り継ぎでパリを通ったときは寄ったりしたんですけどね。最近また、すごく行きたくなっているんです!

−そうなのですね!パリの思い出があったら教えてください。

平澤:本当にみんな時間の楽しみ方がうまいですよね。それが一番印象的でした。日本人はどうしても「もてなす」となると、過度にがんばっちゃうところがあると思うんですけど、フランスの人たちは「散らかってるけどいいよ」という感じで全然隠さないんです。ちゃちゃっと野菜をちぎってオリーブオイルで和えた簡単なサラダを出して、プリッツとか乾き物など手のかからないものを並べておいて、そのあいだに料理を作るという感じが普通で。そういう風にもてなすことにすごく慣れていますよね。全然気構えることなく「遊びにいらっしゃいよ」と言ってくれるんです。ちょっと会っただけの人も呼んでくれます。そう言ってくれると行きやすいですよね。いろんな方の家へお邪魔して、インテリアや料理を見させてもらって楽しんでいました。

お店の情報はネットでいくらでも見られると思うんですけど、一般の個人の家はなかなか見られないので、それを見られるのはすごく楽しいですよね。

平澤さんのスケッチブックと『1ヶ月のパリジェンヌ』平澤さんのスケッチブックと『1ヶ月のパリジェンヌ』

−なるほど。『1ヶ月のパリジェンヌ』でも、いろいろな方のお宅に行ってホームパーティしていましたよね。

平澤:よくこんなに!と思うくらいホームパーティをしていました。ちょうど季節が夏の終わりくらいのすごく開放的になっているときだったので、何か理由をつけては家の中でも外でもパーティをする感じでした。

お金を使わないで、あれだけ楽しめるのは、すごくいいなと思います。みんなも料理を作って持ってくるので、買ってくるということもあまりないみたいでした。日本で忙しく働いている人だったりすると、中途半端にやるよりはおいしいところで買って行こうとなるじゃないですか。

フランスでは、パイとかもちゃちゃっと30分くらいで作っちゃったりするので、そういう習慣はすごく豊かだなと思いました。

−パリでお気に入りの場所はありますか?

平澤:公園がお気に入りです。大きな公園がたくさんあるので、そこで布を広げてワインを飲んだりしました。みんなそれぞれの楽しみ方をしているんですよね。滞在していたところが運河の近くだったので、みんな川のヘリに座ってワイン飲んでいました。そんな感じでラフに飲んでいるのにグラスだけはちゃんとどこからか持ってきていたりして(笑)。

最初、そういう過ごし方は若い人たちだけなのかと思っていたんですけど、年配のご夫婦がそんな感じで楽しんでいることも珍しくなくて。そういうお金を使わずに気軽に楽しめる方法を知っているというのはいいですよね。

 

旅の楽しみはお菓子とデザート

平澤まりこさん

−フランスに限らずですが、旅先ではこれは外せないというような楽しみ方はありますか?

平澤:甘いものがすごく好きなので、おやつやデザートですかね。本を作っちゃったくらいなので(笑)。でも、ケーキ屋さんというよりは、地元の人が普段食べるおやつ的なものが好きなんです。アジアや中東へ行くときは車をチャーターして一緒に回ってもらうこともあるんですけど、ドライバーさんと仲良くなって、おいしいものを教えてもらいます。「あんまり観光客は行かないよ」と言われるようなところにも連れて行ってもらって、そうすると本当に素朴で、噛めば噛むほどおいしさを感じるデザートに出会えたりもしましたね。

−これは別格!というようなデザートはありますか?

平澤:スリランカの水牛のヨーグルトがすごくおいしかったです。素焼きの器に入っているんですが、素焼きなので消毒のために1回燻蒸するみたいなんです。だから器からスモーキーな香りがして水牛独特の臭みがないんです。それで乳製品なのに常温なんですよ。冷蔵庫もなく売店の棚にそのまま並んでいて、「え!?ヨーグルト…?」って一瞬びっくりしましたね。

でも、すごくよくできているんです。素焼きなので空気の通り道があって、気化熱で冷やされるらしいんですよ。冷え冷えではないんですけど、ほんのり冷たくて。醗酵が進んだヨーグルトにクジャクヤシの花から採れた蜜をかけて食べます。すっきりした甘さで、ビタミンが豊富で、かつ脂肪になりにくい糖分なのだそうで罪悪感もなくて(笑)。すごく衝撃的なおいしさでした。

平澤まりこさん

−すごいですね!日本では絶対食べられないですもんね。

平澤:そうなんですよ!スリランカの街の中にも同じ名前の食べ物は売っているんですけど、私が食べたのはかなり田舎のドライブインだったんです。周りに何もないのにそこだけが行列になっていて。どうやら隣に牧場があって、しぼりたてのお乳で作っているみたいなんです。ここはドライバーさんの本当におすすめのお店で、「これはなかなか食べられないよ!」って言われましたね。

−今回の『ミ・ト・ン』の舞台にもなっているラトビアもお菓子などありそうですよね。

平澤:ラトビアは本当に素朴で(笑)。リガという首都は世界遺産なので、少しずつ観光客は増えているのですが、まだあまり知られていなくて。だから昔から食べられているものが多いです。

黒パンが日常の食べ物で、旅行のときも持っていくくらいラトビア人にとって大事な食べ物なんですけど、逆に白パンは特別なパンなんですね。白パンを作って余ると、その生地を使って作るお菓子があるのですが、すごくもちもちしたドーナツみたいな感じなんです。それをクリームと砂糖とバターを混ぜたもので和えるんですよ。だからもちもちのベタベタな食感になるんですけど、発酵の香りもよく、すごくおいしくて!いつも作るわけじゃくて、特別なときに白パンを作ったあまりで作るので、特別なお菓子みたいです。

ぜひみなさんにも食べてもらいたいので、今度原画展をやるときに併設のカフェで再現してもらえたらいいなと思っています。

 

ラトビアとミトンの深い関係

平澤まりこさんがイラストを担当する、小川糸さんの著書『ミ・ト・ン』

−『ミ・ト・ン』はどんな本になるのでしょうか?

平澤:『ミ・ト・ン』は、ラトビアの歴史をベースにした物語です。ラトビアには大変な時代があったのですが、そんななかでも明るくたくましく生き抜いた女性の一生を、ミトンと共に歩んでいく様子を描いた物語です。ラトビアでは、みんな、ミトンをお守りのようにして持っているんですね。お嫁に行くときは、人生のなかでお世話になる人たちに配るために、大きな長もちいっぱいにミトンを入れてお嫁に行くんです。女性は編み物ができないと嫁に行けないと言われているくらい。現代の人だったら結構たいへんだなと思うんですけどね(笑)。

−小川糸さんとはもともと交流があったのですか?

平澤:今回の書籍がきっかけでお会いしたのですが、それが3年前になるのかな。それぞれと交流があった編集の方が、ラトビアに行かれた際にすごくイメージが沸いたらしいんです。それで糸さんと私と絵本を作りたいと思ったそうなのですが、とりあえず行かないとわからないので3人で行ったんですね。そのときに現地の方に国のさまざまな歴史や風習や文化を教えていただいて、すっかり魅せられて「これは本だね」となったんです。はじめは1つのミトンを巡る子どもも読めるような絵本かな、と考えていたのですが、歴史があまりにも深すぎて。

あとラトビアの人々が魅力的すぎて、これは絵本よりもちゃんと書きたいということで、こういうかたちになりました。糸さんは今、ベルリンに住んでいるので、雑誌で続けていた連載が手紙のやり取りのような感じで…。ついにそれがまとまりました。

平澤まりこさんの原画

−かなり初期からミトンというのはキーワードとしてあったんですね。

平澤:そうですね。むしろ1番はじめがミトンだったんです。ラトビアでは子どもが生まれたときにミトンを編み、自分が死んだときお葬式で棺を担いでくれる人のミトンも生前に編んでおくんです。このシーンで使うミトンには、これというように模様や色、かたちが決まっていて、葬式のときには黒地に緑と青の模様、結婚式は五本指で飾りが付いているものを使います。

ラトビアでは、その昔「YES」を表す言葉がなかったので、結婚を申し込まれた女性は編んできたミトンを渡すことで「YES」の気持ちを伝えたという話があるんです。そのミトンの大きさが手の大きさにぴったり合うと、その結婚はうまくいくとも言われているみたいで。そういう逸話がたくさんあるので、それを紡いでいった物語になっています。

これが挿絵の着彩前のものになります。今回は銅版画で描きました。

−模様も細かく描かれていますね。

平澤:模様は本当にたくさんあって、そのひとつひとつに意味があるんです。あと、それぞれの人に自分の模様というものがあるんですよね。それをいつもどこかしらに身につけています。ミトンを直接手に着けなくても、腰に付けたりアクセサリーのように使うこともあるみたいです。

平澤まりこさんの原画

−今回は銅版画で描かれているんですよね。繊細な線が綺麗で見入っちゃいますね。銅版画で描かれることはこれまでもあったんですか?

平澤:銅版画は『ミ・ト・ン』がきっかけではじめたんです。はじめてラトビアに行ったときにあまりにも衝撃がありすぎて、この物語を絵にするなら今までの画風じゃないなと思ってしまって。ずっと銅版画もやってみたかったので、このタイミングではじめようと思い、工房に通いはじめたんです。

時間もすごくかかるし、はじめたばかりで技法もまだまだなんですけど。でも、やっているうちにだんだんわかってきて、はじめの頃と最後の方で2年くらい間があるので、ちょっとずつ変わっているかと思います。最終的に本にするときはまた刷り直して調整するんですけど。

平澤まりこさんの原画

−そうやって新しい技法に挑戦されることはよくあるんですか?

平澤:ここまで全然違うのはあまりないですが、挑戦はいつもしていますね。これまでの本を見ていただいてもわかるかと思うんですが、そのときどきで描き方は違っています。紅茶とコーヒーの本は男性にも見て欲しいと思っていたので、とにかくシンプルに線画でと思って作りました。

『1ヶ月のパリジェンヌ』は、自分の日記を見せる感じだったので、手軽に線画で、1日1枚描いている大きなイラストはコラージュしたり、塗りつぶしたりしてその日の気分を表すようにしています。『旅とデザート、ときどきおやつ』も、線で描かずに面で描いていて、中の説明のところは細かく表現するために線と水彩で描いていたり、いろんなタッチで描いていますね。

平澤まりこさんがイラストを担当する、小川糸さんの著書『ミ・ト・ン』

—今回の『ミ・ト・ン』は表紙のイラストもかわいいですよね。

平澤:デザイナーさんから「ミトンらしさを」というお題をいただいていたんです。当然、表紙も銅版画だと思っていたので、ミトンの柔らかい感じを銅版画の硬い線で表現するのは難しいので。じゃあ、中と外で全然違う雰囲気になるのか〜と迷ったんですが、結局、表紙は色鉛筆で描いています。色鉛筆の柔らかいラインがミトンらしいかなと思って。

—この模様も実際にある模様なんですか?

平澤:そうですね。この物語にまつわるモチーフを散りばめています。この「E」という文字が背中合わせになっているようなモチーフは旅人の神様と言われているものです。どれが自分の神様かわかるための儀式があるのですが、それをやってもらったとき、私のマークがこれだったんです。

−旅人だったんですね!平澤さんにぴったりですね。

平澤:旅人とミツバチと光の神さまを表しているらしいんですけど、なんかいいな〜と思いました。この「E」が2つ重なった部分が馬車を引く馬を表しているんです。6頭の馬が太陽を乗せて引いているということで、太陽を地球に導く神様と言われているようです。自分の模様とかわかると楽しくなりますよね。

平澤まりこさん

−今後行ってみたい国はありますか?

平澤:アイスランドにずっと行きたいと思っています。すごく寒がりなんですけどね。でも、昨年ラップランドに行ったときマイナス26度だったんですけど、耐えられたので。これは行けるかな?と思い、友人と計画しています。

 

愛犬との散歩がリフレッシュタイム

−さきほど、フランスでインテリアをチェックするというお話をしていただきましたが、ご自宅もこだわっているそうですね?

平澤:そうですね。そういういろいろな記憶を活かしながら作りました。やっぱり日本だと狭いので、その狭さを解消したいと思っていたんです。でもフタを開けてみると、窓を大きく開けるということはすごくお金がかかることだと気づいて。(笑)あと光の周り方がきれいな空間で暮らしたいと思っていたので、漆喰を選びました。職人さんによってできあがりが随分変わってくると聞いたので、探してもらって、いい職人さんにお願いすることができたのですが、その窓と漆喰の壁についてはこだわりました。

平澤まりこさん

−わんちゃんも一緒に暮らされているんですよね。

平澤:はい。3歳のペッカという名前の犬と暮らしています。4ヶ月まで野山をかけずりまわっていた保護犬で、6ヶ月のときうちにきました。もう2年半くらいになるかな。

−一目惚れしたそうですね。

平澤:そうですね。パリとか歩いていると「何犬!?」というような、なんとも言えないかわいい雑種の犬たちがいっぱいいて、それを見て私は純血よりこういう犬がいいなと思っていたんです。誰の家にもいないような犬がよかったのですが、いい子と出会うことができました。

毎日朝晩2回40分〜1時間ほど散歩をしていますが、それがすごく自分の身体や精神的なリフレッシュにも合っています。犬がいないとなかなか毎日早起きすることってできないので。どんなに飲んで帰ってきても、ちゃんと朝起きますし。

深呼吸しながら散歩をするようにしているのですが、朝の光を浴びていると本当に身体が目覚めていくので、そこからスッと仕事に入れるんですよね。ウォーミングアップとしては最高だと思います。ペッカが来てから健康になった気がします。

−なるほど〜。お仕事もお忙しいかと思いますが、リフレッシュの方法ってありますか?

平澤:そうですね。やっぱり一番身近なリフレッシュとしては、お散歩ですね。あとは旅ですね。仕事で旅をすることもありますが、プライベートでも旅が好きです。1泊とかの短い旅もよく行きます。

ペッカが来てから車を買ったんです。10代に免許を取ってからずっとペーパーで結構年月は経っていたのですが、いろいろと必要に駆られて、悩むより買ってしまえ!と車を購入しました。買ってしまったら、車がすごく楽しくて。思いつきで友人の別荘へ行っちゃうときも、車ならペッカと一緒に気軽にできちゃいますからね。すごく便利です。

−国内旅行もされるんですね。

平澤:国内旅行もよく行きます。だいたいの県は行っているかな。キャンプも好きなので、昔からいろいろと行っています。

 

導かれるようにつながっていく旅での出会い

−最後に、平澤さんにとっての旅の魅力を教えてください!

平澤まりこさん

平澤:やっぱり人に出会いに行くというのが大きいです。もちろんはじめから会う人が決まっていることもあるのですが、偶然の出会いがどんどんどんどんつながっていくことがすごく多いですね。そうすると自然と導かれるというか、そのときに自分が必要としている言葉をかけてくれる人に出会えたり、無意識の中で少し引っかかっていたことに答えをもらえたり。「そうか、いいんだ」と気付かされる出会いが、旅の中には多い気がします。ただ新しいものを見に行くというよりは、気付きをくれたり、そういう出会いが自分の人生の一歩を踏み出させてくれたりするということが毎回ありますね。だから自分で決めて動いているようで、本当に導かれているようなところもあると思います。

『ミ・ト・ン』で訪れたラトビアも本当にそうです。ラトビアの人たちが大切にしている10箇条があるんですけど、そこに「おしみなくあげる」というものがあるんですね。すべてはひとつだから、自分のことだけを考えるのではなく、自分が持っている一番いいものを旅人にあげなさいと。

そこにある教えは普遍的で叡智にあふれていて、本当にすごいなと感じました。編集の方に声をかけてもらったことがきっかけでラトビアへ行ったけれど、やはり訪れるべくして行ったんだな、と感動しました。

平澤まりこさんの原画

−そういう旅先での出会いが、また新しいことへ挑戦するきっかけにもなったりするんですね。

平澤:本当にそうですね。どうしても、自分の中で勝手に枠を作っていることってあると思うんです。例えば今回の銅版画も、「時間がかかるから、今の自分には余裕がない」と決めているのも自分じゃないですか。でも、あれをやっている時間を銅版画に費やせばいいよねって思えばいいわけで。こうやってちょっと角度を変えるだけで、いろんな可能性が広がっていくと思うんです。

「旅で仕事するなんてそんな楽しい幸せなことは続くわけがない」と思っちゃえば、そこまでだけど、「これだけ楽しいのだから、どんどん続くはずだ」と思ったら、私自身、本当にそうなっているので。そういう気付きや物事の違う見方も旅がくれる気がします。

 

平澤さんのたくさんの旅のお話から旅の新しい楽しみ方を教えていただくことができました。ラトビアでの経験が銅版画という新しい挑戦にもつながったという平澤さんの最新書籍『ミ・ト・ン』もぜひ、チェックしてみてください。

平澤さん、すぐにでも旅に出たくなるようワクワクする素敵なお話どうもありがとうございました!

 

  • ■書籍情報
  • 書名:ミ・ト・ン
  • 著者:小川糸
  • イラスト:平澤まりこ
  • 出版元:白泉社

★10月31日より柴崎『本とコーヒーtegamisha』、11月4日より吉祥寺『gallery feve』にて原画展を開催

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