日本ではここ数年パンブームが続いていますね。東京にもおいしいパン屋さんがたくさんありますが、そこで販売されているパンはフランスやドイツ、イタリアなどのものが多いのではないでしょうか。しかし、世界にはまだまだ知られていないパンがたくさんあります。
また、パンを取り巻く食文化も国によってさまざま。そんな世界のパンや食文化に出会いたくて、いろいろな国に旅をしています。私は普段、PARISmagのレシピ記事を一緒に作っていますが、今回はちょっとだけ世界のパンについてご紹介したいと思います。
フランス:朝ごはんの定番パン・オ・ショコラ
まずはパンの国フランスから。以前フランスの友人の家を訪れた時のこと、週末の早朝、朝ごはん用のパンを買いに一緒にパン屋さんへ行くことになりました。
田舎の小さなパン屋さんには朝早くからたくさんのご近所に住む方々がパンを買いに来ていてびっくり!でも、フランスではこれが普通の光景なのだそう。店内はパンの焼ける匂いに包まれていて、朝から幸せな気分になることができました。
朝食はパン屋さんで買った焼きたてのクロワッサンとパン・オ・ショコラ、それにコーヒーを添えたシンプルなものでしたが、それが最高においしくてとっても贅沢な時間でした。
バターをたくさん使ったパンはパンの中でも高価なもの。フランス人にとってはそれが週末の朝のちょっとした贅沢なのだとか。やはりフランスは偉大なるパン大国!パンに対するこだわりが感じられますよね。
そんな経験もあり、パンを食べるシチュエーションはとても大事なのだなと実感するように。それからというもの週末の朝、近所でおいしい焼きたてパンを買うのが、私にとってのちょっとした贅沢となりました。
モロッコ:タジンのお供に食べるホブス
ところかわって次は、北アフリカのモロッコ。
タジンやクスクスのイメージが強いモロッコですが、主食はパン。モロッコでは、パンのことをホブスと言います。ホブスは丸くて平たいパンでタジンには欠かせないもの。
街のサンドイッチ屋台では、野菜やツナを詰めたものやじゃがいもとゆで卵に塩とクミンとオリーブオイルをかけた豪快なものまで、おいしいものがいろいろあります。
食事パンのホブスは料理の味も相まってついつい食べ過ぎてしまうのですが、あとでお腹が膨れて大変なことになってしまうのでご注意を!
さらに、モロッコのパン事情でおもしろいのは、パン屋さんはパンを購入するところではなくて、パンを焼くところという点。みんな家で生地をこねてパン屋さんに持って行き、焼いてもらいます。職人さんは、それぞれの家の生地の特徴をすべて把握しているそうです。
リトアニア:ライ麦を使った黒パン
昨年、訪れたヨーロッパのリトアニアで出会ったのは黒パン。リトアニアは寒冷地のため小麦ではなくライ麦の産地。
そのため、主食はライ麦を使った黒パン。イーストは使わず、酵母種から作るとても時間のかかるパンです。
昔は家で手作りしていたそうですが、今はパン屋さんやスーパーでいろいろな種類の黒パンが売られています。酸味がマイルドで独特の旨味があり、とてもおいしいです。
甘みのあるもの、ないもの、シードを使ったものなど種類もたくさんあります。黒パンは栄養がある上に、日持ちもするそう。
黒パンを発酵させて作る飲み物、「GIRA(ギラ)」は夏の定番ドリンク。アルコールのないビールのような味わいが特徴。ほんのり甘くておいしいです。
ジョージア(グルジア):チーズ入りのハチャプリ
今年、訪れた南コーカサスのジョージア(グルジア)もパンが主食。
食事系のパンはインドのナンのように長く、釜にペタッと貼って焼くものが主流。
私のお気に入りはハチャプリというチーズ入りのパンです。チーズを包んで丸く焼いたものや舟形でちょっとピザのような見た目のパンなど、地方によっていろいろあります。塩気のあるチーズともっちりしたパンが最高です。
街のパン屋さんにはハチャプリかがいっぱい
トルコ:実はパン大国!個性豊かなパンがたくさん
そして最後はトルコ。トルコとパンってピンとこない方もいるかもしれませんが、実はトルコはパンや粉もの大国。
街にはパンを売る赤い小さな屋台が点在しています。
シミット(ごまパン)、アチュマ(ふわふわパン)、ポアチャ(惣菜パン)など、豊富な種類が揃います。どこか懐かしい味で親しみやすいのがトルコのパンの魅力。
また、日本でも人気のバルック・エキメッキ(サバサンド)をはじめとする、サンド系もたくさんあります。サンドに使われるエキメッキ(主食用パン)は、品質や値段が国で管理されており、どこのお店で買ってもおいしいです。
ロカンタ(食堂)はエキメッキ食べ放題。
それからトルコはトルコ人いわく、ピザの発祥の地。そのため、ピデやラフマジュンと呼ばれるトルコ風ピザも。
ピデは舟形をしており、白チーズやほうれん草、ひき肉などシンプルな具材のものが多く、釜で焼かれます。
ラフマジュンはもともと遊牧民の食べ物と言われ、薄い生地にスパイシーなひき肉をのせて焼き、レモンのしぼり、イタリアンパセリをのせてくるくるっと巻いて食べるもの。私のお気に入りのひとつです。
今回は5カ国のパンを紹介しましたが、パンとひとことで言っても国によってとっても個性豊かですよね。材料やパン屋さんの形態、一緒に食べるものなどもさまざまです。海外を訪れる際は、その国のパンを食べてみては?パンを通してその国の食文化に触れることができますよ。
■お知らせ
まだまだ紹介したいものがたくさんありますが、この度『トルコのパンと粉ものとスープ』という本が発売となりました。なんと今ご紹介したトルコのパンや粉ものが自宅で作れるレシピ本です。
トルコの家庭でも作られているおやつパンやストリートにあるサンドイッチ、マントゥ(トルコ風水餃子)などの粉ものやお菓子、そしてパンにもぴったりにスープレシピまで。トルコに行った事がある方はもちろん、行ったことのない方にもちょっとした旅気分を味わっていただける内容となっています。
ぜひ、この本でトルコのパンと粉ものの食べる歩きイメージトリップをしてみてください。
- 書名:トルコのパンと粉ものとスープ
- 著者:口尾麻美
- 販売元:誠文堂新光社
■一緒に読みたい記事
次に来るサンドはこれ!代官山『Bird』で見つけた”もの凄い鯖”のサンドイッチ