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    フランス文化にドイツ色豊かなアルザス文化がミックスしたロレーヌ地方の『Pâté Lorrain<パテ・ロラン/ロレーヌ風ミートパイ>』

    こんにちは。菓子・料理研究家の山本ゆりこです。今回で6回目を迎える「旅するフレンチレシピ」。前回のアキテーヌから大きく北東に移動した「ロレーヌ」へ向かいます。ヴォージュ山脈や深い森、モゼール川やムーズ川などの豊かな水源を有すロレーヌ地方の旅へ。

     

    ロレーヌではクリスマスよりも盛大?サン・ニコラ祭

    ナンシーの駅前にある、訪れるべき老舗ブラッスリーは、アール・ヌーヴォー調の室内装飾も有名

    ロレーヌは東隣にアルザス、さらにお隣はドイツという国境に近い街です。そんな立地から、正統派のフランスと、アルザス特有のフォークロアなドイツらしさの両方を感じることができるユニークなエリア。特にロレーヌ公国の首都だったナンシーは、18世紀には、ルイ15世妃の父で、甘いものが大好きなスタニスラス公が統治し、20世紀にはアール・ヌーヴォーが街を彩りました。

    近年公開されたばかりのアール・ヌーヴォーの家具デザイナー ルイ・マジョレルの家、Villa Majorelle(ヴィラ・マジョレル)は必見

    甘いもの好きのスタニスラス公のおかげでしょうか?ロレーヌはお菓子の宝庫です。『Lefèvre-Lemoine(ルフェーヴル・ルモワン)』は、ロレーヌの郷土菓子が何でも揃う、老舗のお菓子屋さん

    このナンシーで、サン・ニコラの祝日12月6日(サン・ニコラの命日)をはさむ11月中旬から1月初め頃まで開かれるのが、サン・ニコラの祭『Fête de Saint-Nicolas(フェット・ド・サン・ニコラ)』です。サン・ニコラは聖ニコラウスのことで、子供たちの守護聖人、そしてロレーヌ地方の守護聖人でもあります。だからでしょうか、ロレーヌでは、あのノエル(クリスマス)よりも盛大に祝われるのだとか。

    ルフェーヴル・ルモワンのサン・ニコラのパン・デピス

    ロレーヌの子供たちは、12月5日の夜にプレゼントやお菓子を届けてくれるサン・ニコラを心待ちにしています。赤い帽子と赤い服、顔中を覆った白いひげという風貌も相まって、サン・ニコラがサンタクロースのルーツという説も。そして、この時期に出まわるのが、サン・ニコラ形をした平たいタイプの「Pain d’épices(パン・デピス|スパイスブレッド)」です。お店ごとに形やデコレーションが少しずつ異なるサン・ニコラがショーケースを彩ります。

     

    ロレーヌ地方の郷土料理といえば『Quiche Lorraine(キッシュ・ロレーヌ)』

    マルシェに並ぶいろいろなパイ料理。左から順に、パテ・ロラン、手前がエスカルゴのパイで奥がカエルのパイ、手前がトゥルト・ロレーヌで奥が小さく焼いたキッシュ・ロレーヌ、細切りベーコンとコンテチーズのブリオッシュ

    ところで「ロレーヌ」と聞いて、ある料理を思い浮べませんか?そう、「Quiche(キッシュ)」の顔ともいえる「Quiche Lorraine(キッシュ・ロレーヌ)」です。仏版ラルース(仏仏辞典)によると、「キッシュ」という言葉そのものが、ゲルマン語を起源としたロレーヌ語で、キッシュ・ロレーヌのことを指すのだとか。

    では、正真正銘のキッシュ(=キッシュ・ロレーヌ)とはどんなものなのでしょうか?それは、「練り込みパイ生地に、卵とクリームで作ったアパレイユ(卵液)と細切りベーコンで作るタルト・サレ(甘いタルトに対してお惣菜タルト)」ことだそう。本場ロレーヌで伝統的なキッシュ・ロレーヌをいただくと、「ベーコンの塩気と脂の旨味はあくまでもアクセントであり、パイ生地とゆるく固まったクリーミーな卵液を純粋に味わうものなのだなあ」と、しみじみ感じました。

    ロレーヌには、このキッシュ以外にも、たっぷりのグリーンサラダと一緒に食べたくなるパイ料理があって目移りしていまいます。今回はその中の1つ、ロレーヌ風ミートパイ「Pâté Lorrain(パテ・ロラン)」をご紹介。パイ生地は市販のパイシートを使用するので、意外と簡単に作れます。ぜひ、アルザス産の白ワインと一緒にお楽しみください。

    パテ・ロランと同じくらいポピュラーなTourte Lorraine(トゥルト・ロレーヌ)。こちらはキッシュの細切りベーコンの代わりにパテ・ロランのようなひき肉を使って焼いた、キッシュとロレーヌ風ミートパイの合いの子のようなものです

     

    Pâté Lorrain<パテ・ロラン/ロレーヌ風ミートパイ>の作り方

    フランスのひき肉料理は2種類以上の肉を混ぜて使うのが一般的です。このミートパイも、適度に脂身のある豚の肩肉と仔牛の脂身の少ない部位を混ぜて使うのですが、日本では仔牛が手に入りにくいので、同じくらいさっぱりとした鶏のむね肉で代用しました。できるだけ細かく刻んだ肉を香味野菜と一緒に、白ワインでひと晩マリネするのがポイントです。

     

    【材料】(4人分)

    <フィリング>

    ・豚肉(肩ロース):250g ※トンカツ用でOK

    ・鶏肉(むね肉):250g

    ・エシャロット:2個(80g) ※玉ねぎでも代用可

    ・にんにく:2片(10g)

    ・パセリ(みじん切り)大さじ2 ※イタリアンパセリがおすすめ

    ・白ワイン(辛口):60~70ml

    ・塩:小さじ3/4

    ・粗びき黒こしょう :適量

     

    ・冷凍パイシート:250g

    ・卵:1/2個

     

    【作り方】

    1.フィリング用の材料をカットします。

    ・豚肉と鶏肉は、5mm角のみじん切りにします。

    ・エシャロットは薄皮を除いてみじん切りにし、にんにくは薄皮と芽を除いてみじん切りにします。

     

    2.混ぜて、ねかせます。

    ・ボールに[1]の肉を両方入れ、塩、こしょうを加え、手で2~3分よくこねます。

    ・エシャロット、にんにく、パセリを加え、全体に均一になるようによく混ぜます。

    ・ベチャベチャになる直前まで、白ワインを少しずつ加えながら混ぜます。

    ・ラップをして、ひと晩冷蔵庫でねかせます。

     

    3.パイ生地をのばして、包みます。

    ・パイ生地を30×30㎝の正方形、厚さ3㎜にのばし、フォークで全体に空気穴をあけます。

    ・中央にフィリングをのせ、長さ23×幅8cmの延べ棒状に整えて包みます。

    ・重なるところは、溶いた卵を塗り、軽く押さえ、クッキングシートを敷いた天板に、重なった部分を下にしてのせます。

    ・表面のどこかに2か所、直径1㎝の空気穴をあけます。

    ・溶き卵を塗り、冷蔵庫に30分入れます。

    ・再び溶き卵を塗り、ナイフの背で模様をつけ、再び冷蔵庫に15分入れます。

    ・再び溶き卵を塗り、ベーキングシートを敷いた天板の上にのせます。

    ・220℃に温めたオーブンで40分、 180℃に下げて20分、透明の肉汁が出てくるまで焼きます。

     

    焼き上がったら、4等分にカットして、サラダを添えたら完成です!

    食卓がちょっぴり豪華になるパイ料理で、楽しいひとときを過ごしてみませんか?

     

    ★イベント情報

    10th anniversary PANCAKE WEEKS 2022
    @CAFÉ POTTERS

    2022年11月12日(土)~11月27日(日) 14:00~

    今年10年目を迎える、菓子・料理研究家山本ゆりこさんのPANCAKE WEEKS。
    10周年を記念して、アメリカ式バターミルクパンケーキに挑戦。
    24時間ねかせて発酵させたバターミルク風の乳製品をパンケーキ生地に混ぜ、シンプルに焼き上げました。
    期間中、パンケーキは「All-You-Can-Eat Press」のペーパープレイスマットにのせてサーヴいたします。ペーパープレイスマットはお持ち帰り自由です!

    詳細はこちら

     

     

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