「フランスのパティスリーの巨匠といえば誰を思い浮かべますか?」そう質問されると、日本ではまず最初にPierre Hermé(ピエール・エルメ)を想像される方が多いかもしれません。同じ質問をフランス人にするとCyril Lignac(シリル・リニャック)と答える方がとても多いのに驚きます。今回はそんな彼の手掛けるパティスリー『La Patisserie Cyril Lignac』をご紹介します。
レストランシェフがオープンしたパティスリー
店名を掲げるシリル・リニャック氏は、もともとはレストランシェフとしてのキャリアをスタートさせました。その類まれなセンスと腕で現在41歳の若さで連日顧客の絶えない名店として知られているミシュラン1つ星の『Le Quinzième(ル・キャンズィエーム)』を経営。また多くのテレビ番組への出演や40冊を超える本に携わり、それらが出版されています。言わばシェフ界のスター的存在なのです。親しみやすいキャラクター含め、彼の虜になるファンが後を絶ちません。
そんな彼が2013年にオープンしたパティスリーもまた、大きな話題を呼んでいます。
斬新なデザインと繊細な味わいのケーキ
彼のパティスリーでは季節ごとの新作が数点に定番の人気商品が数点と、ほかのパティスリーに比べて決して商品数は多くありませんが、それでもどれも選び難いほどの美しいプレゼンスが魅力です。
ショーケースを眺めたとき、まず目がいくのは「エキノクス(昼夜平分時)」と名付けられたこちらのケーキではないでしょうか。色使いがこれまで見たどのスイーツにも使われてこなかったのではないかと思うほどに斬新で、一瞬手に取るのを躊躇してしまいそうなくらいです。勇気を持ってひと口頬張ると、まずとてもやさしい甘さのバニラムースが口全体に広がります。そしてふた口目で到達する中心部の塩キャラメルのムースがバニラムースと合わさり、ほど良い苦みと塩気のバランスで更に頬が緩みます。なるほど、色付けしたパウダー状のカカオバターで表面を装飾しているものの、本当はこんなに繊細でやさしいケーキだったのか、と一気にフォークが進みます。土台にはプラリネとシナモンクッキーを合わせたものが敷かれており、子どもから大人まで大好きな味に仕上がっていました。
こちらの「ババオラム」も『シリル・リニャック』のスペシャリテのひとつ。ババロアのような見た目の生地はとてもジューシーで、ひたひたにラム酒が漬けられた大人の味。上部に絞られたたっぷりのクリームが嬉しく、生地と一緒に食べたときの口福感はもう説明要らず。
季節のフルーツタルトもシリル・リニャック氏の手にかかればこんなにモダンで美しく仕上がります。こちらのフランボワーズのタルトは、ひとつひとつのフランボワーズの中にコンフィチュールのソースが注入され、フルーツ本来の酸味とソースの甘さが絶妙な組み合わせに。最後までうまく配分できるたっぷりのアーモンドミルクを使ったクリームも嬉しいです。
レストランやパティスリーのほかにショコラトリーをも構えるシリル・リニャック氏。1日かけて彼のスイーツを堪能するのもおもしろいかもしれません、きっとすぐにファンになってしまうことでしょう。
- ■お店情報
- La Patisserie Cyril Lignac (ラ・パティスリー・シリル・リニャック)
- 住所:133 rue de Sèvres, 75006 Paris(地図)
- 営業時間:7:00-20:00
- 定休日:月曜日 (パリ市内に他に4店舗あり、月曜オープン店舗も)
- HP:http://www.cyrillignac.com/galeries/la-patisserie/
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