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    世界の味を家庭に『LIKE LIKE KITCHEN』小堀紀代美さんのひとさライス

    富ヶ谷でカフェ『LIKE LIKE KITCHEN』を手がけた後、現在は同名の人気料理教室を主宰し、料理家として活躍する小堀紀代美さん。この度、出版された『ごはんにかけておいしい ひとさライス』は、小堀さんが考案した、フライパン1本だけで15~30分程度で完成する絶品ワンディッシュなど全65レシピが詰まっています。今回のレシピ本に込めた思いや小堀さんの料理のインスピレーション源、おすすめ料理をご紹介します。

    料理家・小堀紀代美さん/写真:邑口京一郎

    ごはんにかけておいしい ひとさライス』に掲載されているのは、フライパンだけで手早く完成するワンディッシュ。ごはんにかけるだけで、野菜もたんぱく質もしっかり摂れて大満足。見た目も華やかで、1品だけで食卓が映える料理ばかり。忙しい日々の中で毎日のごはんに悩む人やひとり暮らしで料理を始めようとしている人、さまざまな人の暮らしをサポートしてくれるレシピ本になっています。

    今回65レシピを監修した料理家・小堀紀代美さんは、「食材や味にバリエーションを持たせ、和洋中エスニックのジャンルをまんべんなく入れることにこだわりました。ある意味、いままででいちばん自分が使いやすい本になったかもしれません(笑)」と、話してくれました。

    基本的な調味料や食材、作り方のワンディッシュといえど、和洋中エスニックまでいろいろな味を考案できるのは、世界中で味わった料理をアレンジして提案している小堀さんだからこそなせる技。旅先の料理の思い出やおうちフレンチのコツ、今回の本からパリ好きの読者にもおすすめしたい料理2品を伺いました。

     

    忙しい人にも時間をかけずにおいしい料理を

    フライパン1本で作れて、ごはんにかけていただく「ひとさライス」。絶妙なネーミングですが、どんな人たちに向けて考えた本ですか?

    小堀さん(以下、敬称略):この本は、料理が得意というわけではないけれど、おいしいごはんを作りたいという人たちに読んでほしいと思って作りました。コロナ禍で料理を始めたという人も増えていると思うんですね。そんな人たちに、時間をかけずに料理を楽しんでもらえたらいいなという気持ちを込めています。

    ―各カテゴリに基本の作り方が紹介されていて、料理初心者にも優しいなと感じました。

    小堀:塩コショウを振る、料理酒を入れる、肉を焼くなど、そういう基本的なことって繰り返しが大事なんです。身体が覚えてインプットされると、材料が違っても同じ手順を繰り返せばいいので、応用が効くようになります。この本では、炒める、煮るなど、カテゴリごとに基本の作り方を書きました。頭に入れることで、より料理が楽しめるようになると思います。

    ―日々忙しい中でも、料理をする時のコツってありますか?

    小堀:みなさん、日々忙しい中で本当によくやっていらっしゃると思います。1週間まとめて作っておく「作り置き」をしている人が多いと思うのですが、「ひとさライス」も取り入れてもらいたいですね。身近な食材や調味料だけでも、組み合わせ次第でいろんな味のバリエーションを楽しむことができるし、難しい作り方の料理は入れていないので、限られた時間の中でも試してもらいやすいと思います。

    炒め物であれば、実際の加熱時間って5分、10分程度。時短の鍵となるのは、頭の中で手順を整理して、最初に材料をすべて用意しておくこと。加熱しながらしょうゆを出す「ながら準備」ではなく、調味料を入れる順番や基本の作り方に目を通して準備を整えておくことで、効率良く料理ができるようになります。

    ―いろんな料理を作ろうと思うとスパイスをたくさん用意しなければならない気がしてしまうのですが、代用できることもありますか?

    小堀:スパイスは代用できるものもあるし、使わなくても味が整うこともあります。特に今回の本では、手に入りにくい調味料を使っているわけではなく、輸入食材店などでさっと購入できるスパイスばかりです。カレーでおなじみのクミンやローリエなど、また次に使う機会がある、他の料理にも応用が効くものにしています。

     

    旅先で食べた料理からテレビで見た料理までインスピレーションに

    ―料理を考える時、インスピレーション源になっているものはありますか?

    ベルリンでの食事

    小堀:食材を見て料理を考えることが多いですね。あとは、ドラマの中に出てきた料理がおいしそうだったらメモしたり、レストランで食べた料理を参考にしたりしています。そのまま作るというのではなく、この食材の組み合わせはおもしろいな、あの味も合いそうだなと膨らましていきますね。

    でも私は飲食店を営んでいるわけではなく、みなさんにレシピを伝えるのが仕事なので、どのようにアレンジすれば家庭で楽しめるかということを一番大切にしています。コロナ禍で時間があった時は、Netflixで食の番組を見たり、自分の写真を見返して旅の思い出を振り返ったりすることもありましたね。

    ―世界中を旅してきた小堀さんですが、どれくらいの国を訪れたのでしょうか?

    小堀:国としては40ヵ国、都市でいうと80都市くらいですね。

    ―世界の料理をアレンジしてレシピを考える時、心がけていることはありますか?

    ベルリンにて

    小堀:食べたときの記憶を掘り起こして、味を頭の中で分解し、こういう作り方だったのではないかなと、想像しながら試作します。実際に作ってみると、頭の中でイメージしていたものとは違っていたりするんですが、おいしければいいかなと。おいしいと思った料理は、お店の人に作り方を聞いて帰ることもあります。

    ―旅をしてきた中で、特に思い出に残っている料理はありますか?

    ベルリンのレストラン

    小堀:旅先だと揚げ立ての魚のフリットみたいなシンプルな料理が意外とおいしく感じる気がします(笑)。記憶に残っている料理というと、良い思い出とともに食べたものなのかもしれませんね。

    実は、私は旅に出ると、大体同じものばかり食べているんです。次の料理教室では何をテーマにしようかなと考えながら旅していて、そういう仕事ベースになってしまうので、アメリカに行ったら毎日フライドチキン、ギリシャに行ったら郷土料理のムサカばかりみたいな(笑)。何カ所か店を巡ることで、こんな味や作り方があるんだと料理の傾向がわかってきて、自分が好きな味の方向性が見えてくるんです。

    ―フランスでは、どんな料理の思い出がありますか?

    フランスでの食事

    小堀:フランスは、パテ・ド・カンパーニュですね。あまりのおいしさに感動して、カフェを始めた時にどうしてもメニューで出したいと試行錯誤しました。友人にスタッフとして手伝ってもらっていたんですが、実際に食べてみないとわからないという話になり、オープンの1カ月前に再びみんなでパリへ行き、食べ歩きしました。弾丸だったけれど、5〜6軒の店で食べたと思います。あとは、フランスで食べたクスクスも本当においしかった。フランスは一人旅でよく訪れた場所なので軽食になりがちなんですが、サンドウィッチだけでも大満足。星付きのレストランはもちろんですが、気軽な料理もおいしい国ですよね。

    ―おうちフレンチを楽しむ時のコツを教えてください。

    小堀:ローリエはあるといいですね。あとは、ディジョンマスタード。粒マスタードは常備しているけれど、ディジョンマスタードは持っていないという人も多いのではないでしょうか。粒ではない普通のマスタードがあると、フランス料理を作る時には役に立つはず。煮込み料理やサラダなど、身近なフランス料理もたくさんあるし、そこにマスタードがあれば、自宅でもフランスの香りを楽しめると思います。

     

    ***

     

    さらに小堀さんに『ごはんにかけておいしい ひとさライス』からフランスの香りがする2皿のレシピを教えていただきました!

     

    牛肉ときのこのソテー ハニーマスタードソース

    写真:邑口京一郎/スタイリング:城素穂

    ハニーマスタードソースは、粒マスタードのさわやかな食感とまろやかなハチミツの味わいが肉料理にぴったり。そのままでも炒め物として楽しめますが、さらに生クリームを加えることでビーフストロガノフ風に。こっくりとしたソースで、ごはんとの相性抜群です。

    【材料】(2人分)
    牛薄切り肉:200g
    マッシュルーム:5〜6個
    玉ねぎ:1/3個(70g)
    グリーンピース(冷凍):80g
    潰したにんにく:1かけ
    バター:10g
    生クリーム:3/4カップ

    <A:ハニーマスタードソースの材料>
    粒マスタード:大さじ1
    はちみつ:大さじ1/2
    しょうゆ:小さじ2
    水:大さじ1

    <B>
    塩:小さじ1/4
    粗びき黒こしょう:少々
    白ワイン:大さじ1

    【作り方】

    1.石づきを落としたマッシュルームは半分に、玉ねぎは薄切りに、牛肉は一口大に切ります。<A>のハニーマスターソースの材料を混ぜます。

    2.フライパンにバターとにんにくを入れ強火にかけ、バターが溶け始めたら牛肉とマッシュルームを入れて焼きます。肉の色が変わってきたらBを順番にかけて、さっと炒めます。

    3.玉ねぎを加えて中火でさっと炒め、生クリームを加え煮立ったら、グリーンピースとハニーマスタードを加えて炒め合わせます。

    ※生クリームはしっかり煮立つまで火を入れるとコクが出ます。

    写真:邑口京一郎/スタイリング:城素穂

    4.器に盛ったごはんにかけ、お好みでパセリのみじん切りをかけてできあがり!

     

    豚肉とフルーツハーブの蒸し煮

    写真:邑口京一郎/スタイリング:城素穂

    すっきりした風味のハーブと柑橘系フルーツとともに豚肉を蒸し煮。フルーツの酵素で肉が柔らかくなり、肉の塩気とオレンジと季節のフルーツの酸味を煮詰めたソースがごはんに合わせやすく、暑い季節にさっぱりと食べられてエネルギーにもなる一品。今回はオレンジときんかんで作りましたが、オレンジと組み合わせるフルーツは、チェリーやプラムなど、これから旬をむかえるものに変えるのもおすすめです。

    【材料】(2人分)
    豚肩ロース(とんかつ用):2枚(260〜300g)
    オレンジ:輪切り2枚
    ぶどう(皮ごと食べられるもの):5〜6粒
    きんかん:5個
    玉ねぎ:小1個(150g)
    塩・砂糖:各小さじ1/2
    オリーブオイル:大さじ1/2
    白ワイン:大さじ1
    バター:5g
    タイム:2〜3枝
    ローリエ:2枚

    <A>
    レモン汁:小さじ1/2
    オリーブオイル:小さじ1

    【作り方】

    1.筋切りした豚肉に、両面に塩・砂糖を振って<A>をかけ、上下を2〜3回返しながら10分おいてマリネにして柔らかくします。ぶどうは縦半分に、きんかんは横半分に切って種を取ります。玉ねぎは4等分の輪切りにします。

    ※バットに事前に塩・砂糖を振ってから豚肉をのせ、その上から塩・砂糖を振ることで、手を汚すことなく、まんべんなく肉に味がつきます。

    写真:邑口京一郎/スタイリング:城素穂

    2.フライパンにオリーブオイルを熱し、豚肉と玉ねぎを入れて強火で焼きます。玉ねぎに塩1つまみ(分量外)を振って、肉の色が変わってきたら白ワインを振って肉を返します。

    3.火を止め、フルーツを加え、豚肉の上にバターをのせて、タイムとローリエを加え、蓋をして弱火で8〜10分蒸し煮にします。火を止め、そのまま1〜2分おきます。

    4.器に盛ったご飯に肉をのせ、少し煮詰めたソースとフルーツをかけてできあがり!

     

    ***

     

    「食べるという体験があるからこそ、自分の味が見つかる。新しい料理に出合うため、旅に出ることは大事ですね」と語る小堀さん。また海外へ旅できるようになったら、次はフランスのバスク地方に行きたいそうです。そんな小堀さんのアイデアが詰まった『ごはんにかけておいしい ひとさライス』で、毎日、手軽にいろんな味わいを楽しんでみてはいかがでしょうか。

     

    ■書籍情報

    ごはんにかけておいしい ひとさライス(西東社)

    著:小堀紀代美

    2022年6月30日(木)までに書籍を購入+書影や掲載レシピを実際に作った写真をSNSに投稿すると、「ひと皿」が当たるキャンペーンを開催中。応募者全員にはプラスワンレシピも!

    詳しくはこちらをチェック▼

    https://www.seitosha.co.jp/hitosarice.html

     

    文:鈴木桃子

     

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