PARISmagが気になる方々へ会いに行き、「小さなしあわせ」のヒントを教えてもらうインタビュー企画の第2弾。
今回は、ドラマや映画、舞台などで活動され、NHKのフランス語講座のナビゲーターを務めていたこともある俳優の渡部豪太さんにお話を伺ってきました!
渡部豪太(わたべ ごうた)
1986年生まれ。俳優。2006年のデビュー以来、ドラマ・映画・舞台等多方面で幅広く活躍している。近年の主な出演作に映画『海難 1980』、舞台明後日プロデュースVol.1『日の本一の大悪党』、ドラマ『警視庁機動捜査隊216・6 絶てない鎖』、『怪盗山猫』、『信長燃ゆ』など。今冬には舞台『磁場』に出演予定。
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フランス人の大雑把だけど芯があるところがかっこいい
—渡部さんというと、ドラマや舞台を中心に活動されているイメージでしたが、おととし放送されていたNHKのフランス語講座にも出演されていましたね。この番組をきっかけにフランス語を学びはじめたということですが、実際学んでみていかがでしたか?
渡部さん(以下、敬称略):新しい語学を勉強することの楽しさに改めて気づくことができましたね。この楽しさというのは、フランス語に限ったことではないことですが、単語を覚えて、聞き取れるようになったり、通じるようになるのってやっぱり楽しいなって。
フランス語に関しては、英語に似ている部分もたくさんあって。知っている英語をフランス語っぽく話すと通じることもあるんですよ。あと、フランス語の音も好きですね。
—フランス語というとやっぱり難しいイメージですよね。どのような勉強法で習得していったのですか?
渡部:とにかく使うことが大事だなって思います。覚えたことをすぐ使うことで、「これでよかったんだ」と覚えていくんですよね。その繰り返しで習得していった感じです。最初は、通じないんじゃないかって思うんですけど、そうやって尻込みしちゃうと身に付いていかないので、どんどん使っていくことが大切だなと感じました。
—ちなみに…フランスを訪れたことはあるのでしょうか?
渡部:1度だけ行きました。3日間しかいなかったんですけど。朝、パリの街をランニングしたんです。セーヌ川を渡って、ルーブル美術館を通って、凱旋門の方をまわって。それくらいしか観光できてないし、フランス語を勉強する前だったのでまた行きたいです。1ヶ月くらい暮らしながら、ゆっくりフランス語を勉強できたらいいなと思っています。
—渡部さんにとってのフランスはどんなイメージがありますか?
渡部:行く前は高貴で清潔なイメージがありました。でも、カナダに留学していたときにフランス人の男女とルームシェアしていたことがあったんです。そのときは、「なんて大雑把な人たちなんだ…」と思いましたけど(笑)。
そこから10年経って、フランス語講座でフランス人と触れ合うと、みんなそれぞれの意見を持っていて、円熟した人間というか文化レベルが高いなと感じました。大雑把だけど、深く考えるところは考えるといった部分は憧れますね。
—例えばフランス語の勉強はお仕事がきっかけかと思いますが、プライベートでも使えるものですよね。逆に普段の生活での気づきが俳優のお仕事に影響することもあるのでしょうか?
渡部:もう普段の生活が仕事に影響することだらけですよ。日常生活でできないことは、舞台の上でも絶対できないし、普段の生活で身についていない動きは仕事でできないです。 だから、役で身につけなくてはいけない動きがあったら普段からやったりもします。周囲の人を観察したり、歩き方や姿勢を意識したり。
役作りも結構前からするので。自分のここが使えるなというときもありますし、ここが欠けているからどこかから引っ張ってきてやろうというときもありますけど。幸いにしていろんな友達や仲間がいて、それぞれ趣味趣向も違うし、表現方法も違うし。いろんな人がいるから、作品に合った人に話を聞きにいくこともできるし。そうやって役作りすることが多いかな。
なので、プライベートとお仕事の境目は結構あいまいになりますよね。だから、オン・オフというのも、「あ〜今オフになってたかも」ってあとから気づくこともあるけど…。誰か他者がいるとどうしてもオン状態になりますよね。でも、家族といるときは自然とオフになるのかな。
—忙しい中でもこの時間は大切にしているというような時間はありますか?
渡部:ひとりになる時間は大切にしています。あと、何も考えない時間も作るようにしていますね。何も考えない時間なんて本当はないんですけど、ほんの5分でもいいから静かにする時間も必要だなと。
稽古場や現場に行ったら、どうしたっていろんなことが慌ただしく錯綜していますから(笑)。ああいう場にポンッと飛び込んで、演技をするということは神経が太くないとできないことなので。現場で図太くいるためにも、あえて何も考えないという時間は必要なんじゃないかなと思っています。床に寝そべって深呼吸したりしています。これは絶大なリラックス効果がありますよ。
そう、呼吸って大事なんですよ!からだの中って悪い空気が溜まってくるんです。それを吐いて、いい空気を入れるというか。呼吸というとみんな吸って吐くんですけど、漢字で書くと逆なんですよね。なので、吐いてから吸う。それだけでだいぶ気分が変わるので、呼吸は大事だなと、意識するようにしています。
舞台のお仕事を控えて、今の気持ち
—年末には舞台『磁場』の出演が控えていますが、最近はドラマ、映画、舞台とさまざまなフィールドで活動されていますよね。それぞれ俳優として演じる上での違いはあったりするのでしょうか?
渡部:ありますし、ないですしって感じですかね(笑)。それぞれ表現方法も違うし、ニーズもウォンツも違うし。この現場で自分の歯車は何色で、どれくらいの大きさなのかということを把握して、都度対応していくっていうことですかね。
—今回は舞台ですが、演じる場として「舞台はここがおもしろい!」あるいは、「逆にここが大変だ…」というものはありますか?
渡部:舞台ははじまってしまうと止まらないですからね。幕が上がったら、幕が下りるまで役者だけの力でなんとかしなくてはいけない。そこにお祭り感があるというか。舞台上での責任と物語が進んでいく臨場感と、1人じゃないからこそのやりとりとかがおもしろいですね。
1公演、1公演、毎回、新鮮な気持ちに切り替えてやるので、毎回少しずつ演技も変わります。僕は弱い人間だから、あそこがうまく行ったから次もああやってみようとか、つい踏襲しようとしちゃうんですけど、それじゃダメなんです。美空ひばりさんの『柔』という歌じゃないけど、勝つと思うな思うと負けよという感じで挑戦していかなきゃいけないですね。
—なるほど。俳優というお仕事の魅力や大変さ、モチベーションなどを教えていただけますか?
渡部:体調管理は大変ですよね。楽しさは、いろんな人たちとお仕事できることに尽きます。あと、演劇している時間は僕にとって最高の時間なので、ご褒美みたいなものですね。ちゃんと考えて、ちゃんと作り上げることができて、それをお客さんたちにちゃんと届けることができたら、それは最高の幸せですね。
—今回の『磁場』という舞台は、あらすじを拝見したところ会話劇のようですが、意気込みなどはありますか?
渡部:このキャストと演じられるということが、もう楽しみですよね。この出演者陣の中に僕を入れてもらえたワクワク感もあります。稽古がもうすぐはじまるので体調管理をしっかりして、心して挑みたいです。
脚本が来るのを待っている今は、漫画の発売日を待つ少年のような気持ちですよ。ワクワクしていますね。
—最後に渡部さんにとっての「小さなしあわせ」を教えてください。
渡部:やっぱ呼吸ですかね。ずっと続けることであり、止めることのできないことだし。なんらかの2次的な要因ですごくストレスがかかることってあるじゃないですか。これをやらなきゃ、あれやらなきゃ…って。でも、呼吸に戻れば、そういうストレスも緩和できる気がするんですよね。楽になるというか。楽にならないと自然な動きはできないですからね。いつでも楽になる方法を身に付けておけば、大切なことを聞き逃さなくなるし、逆に誰かの嫌な言葉はスルーできるようになるし。
常に楽でいることで小さなしあわせに気づくことができるようになるんじゃないかな。じゃあ、常に楽でいるためにはどうしよう?呼吸を見直そうという感じですかね。呼吸できる空間や場所を見つけることも大切ですよね。
渡部さん、素敵なお話どうもありがとうございました!
- ■作品情報
- 直人と倉持の会 vol.2『磁場』
- 作・演出:倉持裕
- 出演:竹中直人、渡部豪太、大空祐飛、長谷川朝晴、黒田大輔、玉置孝匡、菅原永二、田口トモロヲ
- 【東京公演】2016年12月11日〜25日 本多劇場 他、大阪、島根、愛知、神奈川公演あり
- 主催・制作:(株)M&Oplays
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