前回、素敵なイラストとともにパリジェンヌのライフスタイルをわかりやすく教えてくれる米澤よう子さんに、パリで生活するまでの経緯や現地で見てきたパリジェンヌのファッションについてお話を伺うことができました。
今回は、パリジェンヌの美容や食事のことについてご紹介いたします。また、米澤さんがパリでの生活を経て感じた気持ちの変化などもお話いただきました!
- 米澤よう子(よねざわ ようこ)
- 女子美術短期大学卒業。大手企業広告のグラフィックデザイナーとして勤務。その後、イラストレーターとして独立。化粧品パッケージや広告キャンペーン、女性ファッション誌、CMなどで多数の女性イラストレーションを手がけたのち、渡仏。パリの高級百貨店、LE BON MARCHÉでの個展を開催するなど、多彩な活躍を経て、帰国。現在はパリ在住4年の経験を生かした著書、商品企画を手がけるなど活動範囲を広げている。著書に『パリ流おしゃれアレンジ!3靴からはじまる着こなしの魔法』(KADOKAWA)、『パリジェンヌ流シンプル食ライフ』(文藝春秋)など多数。
- ブログ:パリ流ダイアリー
パリジェンヌの美容がスキンケア重視の理由
ーパリジェンヌというとナチュラルメイクのイメージがありますが、美容に関してはみんなどのようなことをしているのでしょうか?
米澤さん(以下、米澤):パリの水は石炭が多いんです。なので、スキンケアをせざるをえない。パリジェンヌはあんまりメイクをしないけれど、それはメイクよりスキンケアに時間をかけなくてはいけないからだと思います。普段はナチュラルメイクの人が多いけど、時間があるときやお出かけする際はきれいにお化粧したりしていますよ。
日本にいると朝電車に乗りながらお化粧をしている女性がいますが、日本の社会が「女性は常にきれいでいるべき」というような環境を作ってしまっているのかもしれませんよね。パリジェンヌだったらそんなことは微塵も気にしませんから。
ーそうなんですね。こういうスキンケアやメイクが流行っているというものはあるのでしょうか?
米澤:季節ごとに店頭に並んでいるものなどは日本と変わりませんよ。夏は紫外線やダイエットの商品が並んでいたりね。栄養豊富な旬のお野菜を食べようと意識したり、日本人の女性と同じですよ。
パリジェンヌはなぜたくさん食べるのに細い!?
ーずっと気になっていたんですが、パリジェンヌはたくさん食べるのにスタイルがいいですよね。パリジェンヌは普段どんなものを食べているんですか?
米澤:すごく質素ですよ。意外に朝とお昼はそんなに食べないんです。朝はシリアルやヨーグルトなどごく軽くで済ませることが多く、お昼もサラダだけとか、サンドイッチとか。夜は家族で食べる習慣があるので、そのときは前菜、メイン、デザートをゆったりと食べることが多いですね。
ーでも、パンにチーズにお肉などのメイン、デザートまで食べますよね。なんとなく太りそうなメニューだなという気もするんですが…。
米澤:それが、フレンチのコースってすごく理にかなっているんですよ。前菜などの軽いものをちびちび食べてお腹を満たしつつ、メインを待つんです。メインのお肉も基本的には赤身。全然霜の入ってない赤みだったり、脂身を取り除いてあったりするので、高タンパクなんですよ。最初は「物足りないな〜」とも思ったんですけど、赤身の方がパンに合いますしね。
野菜もゆるく煮てあることが多いのでエグみがなくて甘くて、もりもり食べられます。なので、カロリーを計算すると和食とそんなに変わらないんですよ。ナイフとフォークで切って食べたり、前菜とメインの間が空いていたり、ゆっくりと食べざるを得ない食事なので満腹感も得やすくなりますしね。
あと、和食は砂糖を使うけど、フレンチはデザートまで基本的に砂糖は使わないので、血糖値も上がりません。野菜とお肉をきちんと食べたあとに激甘のデザートを食べても太らないんです。
ーなるほど〜。謎が解けたような気がします!
米澤:もちろんフランス人と日本人では、やはり消化力も違うと思うし、合う合わないは個人差があるとは思いますが、私の場合はフレンチが健康的な食生活に導いてくれたなという感じがしています。
もちろん食事での失敗もたくさんありましたけどね。おしゃれなカフェでサラダを頼んだら結構なお値段がして…。メニューに書いてあるとおりの内容ではあったんですけど、日本だったら1000円でももっと豪華なのに!と悲しくなったりもしました。
でも、毎日毎日そういう悲しさや失敗を繰り返していくうちに、悲しくなったり、それに対して文句を言うよりは、気持ちの良いテラスでみずみずしいサラダを食べて「あ、これは青菜だな。鴨だな〜」と味わうことの方がしあわせなんじゃない?と思うようになって。そしたら、全部おいしくなっちゃったの!この場が楽しければいいや!って。クレームを言ったりして、おいしく味わえないほうがやだなって。
ーすごい!価値観ががらりと変わったんですね。
米澤:そうですね。その変化はすべてに対してで。食材やメニュー選びだけでなく、おしゃれのアイテム選びで失敗したとしても、「まあいいや!今を楽しもう」ってざっくばらんに思えるようになりました。そうなると誰も責めなくなるし、気持ちがいいんですよ。フランスでは「セ・ラ・ヴィ(これが人生さ)」「ケ・セラ・セラ(なんとかなる)」という言葉がありますけど、こう言うことなんだなぁってわかったんですよね。
どうしても神経質になりすぎたり、ナイーブだったり、人は気にしていない細かいことを気にしてくよくよしてしまうけど、そんな気持ちは持たなくてもいいんだなあと思いました。もちろんそういう風に繊細な思考の人がいたとしても、それもひとつの考え方として受け入れてくれるおおらかさがフランスにはあるんですよね。
パリは刺激的でマンネリに喝を入れてくれる場所
ー私たち日本人からしたら、そういうおおらかな思考にも憧れるのかもしれませんね。
米澤:前回もお話しましたが、パリはポンコツなところも多いのでイライラしてしまうこともありましたし、頑固な部分も多いんですよね。だからこそ身を委ねて、自分が変えられるところは変えていこうとしたんです。そうすると、受け入れてくれる街でもあります。誰もが快適に暮らせる街ではないとは思いますが、これだけ人々をひきつけてやまないパリには“なにか”があるんじゃないかと思っています。行ったら行ったでアクシデントにたくさん遭うんですけど、それでも行きたいのでパリは魔性の女です(笑)。
年を取ると思考が固まってしまって「こういうものだ」と決めつけるところが出てきちゃうと思うんですけど、だからこそうまくいかないことがあるとホッするというか。アクシデントに遭って泣きながらも「人生ってこういうものなんだな」と改めて痛感して、マンネリに喝を入れられているような感じです。大人になると恥もかかなくなるし、かっこつけちゃうけど、パリではそれが通じないから、思いっきり子供になれます。
ーまさに「セ・ラ・ヴィ(これが人生さ)」ですね。最後に米澤さんにとってフランスってなんですか?
米澤:私には故郷がないんですけれど、その故郷に代わるものがフランスなんだと思います。ときどきフランスに帰りたくなっちゃうんです。フランスに行くとホッとします。
ただ、何度も言いますがやっぱり日本に比べると不便なことが多いので(笑)。無理に行ったり、住んだりしなくてもいいと思います。私の本やWEBサイトなどでパリの空気を味わってもらったり、パリジェンヌのライフスタイルを知ってもらえるとうれしいですね。
日本の女性もパリジェンヌと同じひとりの女性。私たちが日頃、無意識に感じている「こうあるべき」という縛りを解くことでパリジェンヌに近づけるのではないかと思います。すっぴんであろうと、服に毛玉がついていようと、優先するのは周りの意見よりも「自分自身が気持ち良い」かどうか。そこに迷いや不安がないから、胸を張って歩き、自信ありげに見えるのかもしれませんね。これからもそういうパリジェンヌのマインドを紹介していけたらと思います。
米澤さんのお話を聞けば聞くほど憧れのパリジェンヌのかっこよさの秘密は「毎日を楽しむ」ということなのかもしれないという気持ちになってきます。それはお金をかけて贅沢をすることでもなく、日々の生活の中でのちょっとしたアイデアの転換。米澤さんの著書には、そんなパリジェンヌが教えてくれる「毎日を楽しむ」ヒントがたくさん詰まっています。ぜひ、参考にしてみてください。
- ■書籍情報
- 書籍名:1/3の服で3倍着回す パリのおしゃれ術
- 著者:米澤よう子
- 出版社:幻冬舎
- 書籍名:パリ流おしゃれアレンジ! 自分らしく着こなす41の魔法
- 著者:米澤よう子
- 出版社:KADOKAWA
- 書籍名:体も心も暮らしも心地よくする美習慣 パリジェンヌ流シンプル食ライフ
- 著者:米澤よう子
- 出版社:文藝春秋
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