光沢のある木材が美しいダイニングテーブルや、しなやかな曲線が目を引くチェア。どこか品性を纏(まと)ったヴィンテージ家具が所狭しと並ぶ店内。
今回ご紹介するのは、表参道に店舗を構える『haluta tokyo』。1940〜60年代にデンマークで作られた家具を中心に取り扱うインテリアショップです。『haluta tokyo』では、遥々デンマークから希少な家具を買付け、再び使えるように修理したヴィンテージ家具を販売しています。
「この時代のデンマークはデザインの黄金期でした。木材の質もすごくいい。今ではもう作られることのない家具ばかりなんです。デンマークの人たちはそんなヴィンテージ家具を手入れしながら、ときに引き継ぎながら使い続けてきたんです」と、『haluta tokyo』店長の所直弘さん。
今回はそんなデンマークの暮らしが垣間見えるヴィンテージ家具の魅力をご紹介します。
住まいを豊かにするデンマークの話し合う文化
デンマークというと、今は“ヒュッゲ” を連想する人が多いのではないでしょうか。“ヒュッゲ”とはデンマーク人の暮らしや時間の使い方、そして心の持ち方をあらわす言葉。
「冬が長いデンマークでは、必然的に家の中で過ごす時間が長くなるので、家を大切にしている人たちが多いんです。ヒュッゲは、暮らしの中の自然な選択として生まれた価値観です」。
そんな家で過ごす時間を大切にする文化的背景もあり、家具やインテリアにこだわり、手入れをしながら大切に使っていくことも定着しているのだそう。“ヴィンテージ家具”というとインテリア上級者なイメージがありますが、デンマークではごくカジュアルに親しまれていると言います。
「デンマークでは、“一生もの”と思って家具を買う人って多くないんです。値が張るちゃんとした家具を買うのも、必要がなくなったときに売ることができるから。
日本人は高価なものを買うときどうしても“一生もの”と気負ってしまうんですが、海外では不要になっても売ることができる。という理由でいいものを選ぶ人もいるんですよ。そうやって人から人へと引き継いできたからこそ、80年近く前の家具が今も使える状態で残っているとも言えるかもしれませんね」
“一生もの”と考えると怖気づいてしまうのも正直なところ。後に引き継いでいくということも視野に入れた上での選択なら、ぐっと挑戦しやすくなりそうですね!そして、誰かから引き継いできた家具が、いつかまた誰かに引き継がれていくと思うとなんだかロマンも感じられます。
ヴィンテージ家具への興味が湧いてきたところで、ヴィンテージならではの魅力や、実際に購入する際に活用できる実用的なアドバイスも伺いました。
修理しながら使い続けるサスティナブルな家具
お気に入りの家具を長く使ったり、いつか引き継げるように使うには定期的なメンテナンスは不可欠です。メンテナンスと聞くと、「大変そう…」と後ずさりしてしまいますが、実はそんなに構えることもないのだそう。
「掃除などのタイミングで乾拭きしたときに、金具やねじの緩みや動きに違和感がないかを確認するくらいでいいと思います。緩みなどの小さな不具合がある状態で使い続けると壊れてしまうので、使っていく中で壊れそうな場所を早く見つけてあげることが大切なんです。
あとは、もともとの使用用途とは違う使い方をしないということですね。椅子を座る以外の用途で使わない、引き出しにものを入れすぎないなどを意識しながら使うとよいと思います」
わざわざメンテナンスの時間を取るのではなく、日常の中でちょっと意識することでできることばかり。この「ちょっと意識する」ということこそが、暮らしを大切にし、時間を大切にする“ヒュッゲ”にもつながるのかもしれません。
しかし、年代物の家具なのでどうしても壊れてしまうことがあると思います。ですが、多くのヴィンテージ家具は直すことが前提で作られているそう。「壊れたら捨てる」ということが当たり前の現代のリーズナブルな家具とは全く逆の考え方ですね。修理しながら使うことで愛着も湧いてきますし、サスティナブルな視点でも素敵な考えなのではないでしょうか。
選ぶ時間も楽しめるヴィンテージ家具
さて、ここからは購入するときの選び方のアドバイスを。色味の変化や光沢感といった経年変化により、一点一点異なる表情が生まれるヴィンテージ家具。一期一会の出合いは、ヴィンテージ家具を語る上で欠かせないものです。
「これ!」という家具と出合うために、お店に向かう前には、置く場所のイメージを膨らませて、購入したい家具のサイズ(高さ、幅、奥行き)を想定しておくことがポイント。置く場所で「だいたいこれくらいかな?」とサイズを測っておとよいでしょう。
そして、木材によって色味や雰囲気が異なってくるので重要な要素。オーク、チーク、ウォールナットなど、好みの木材も目星をつけておくと選びやすいそうです。
「シェルフは正面が“顔”なので、デザイナーたちは取っ手部分で独自のデザインを用いることが多いんです」(所さん)
また、お気に入りのデザイナーがいる場合は、先にチェックしておくのもおすすめ。デザイナーによって個性が出るのもまたデンマークのヴィンテージ家具の魅力のひとつです。特にシェルフの取っ手などは、さりげないならデザイナーによってさまざまな工夫が光っています。デザイナーがわかれば店頭にない場合も探しやすくなるので◎。
デザインや木の質感などについては、一度店頭でいろいろな家具をチェックしてから、心惹かれるものを見つけるのもよいでしょう。心惹かれるものから「このデザイナーのテーブルはあるかな?」「この木の色でこれくらいのチェストがほしいな」と、どんどん深堀りしながら探していくことができます。
思い巡らせながらとっておきの家具を探す時間は楽しいひととき。そうやって選んだヴィンテージ家具とのお付き合いはさらにとっておきの時間になるはずです。
今回、『haluta tokyo』で素敵な家具に触れ、お話を聞くことで、“ヴィンテージ家具”という言葉から想像していた敷居の高さから、すっと肩の力が抜けるような寛容な楽しみに出合うことができました。暮らしを豊かにするひとつのヒントにもなりそうです。
デンマークの人たちのようにヴィンテージ家具を迎え、あなたの思い描く“ヒュッゲ”が叶うかもしれません。
- ■お店情報
- haluta tokyo instock showroom
- 住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2-17-6 神宮前ビル2F
- TEL:03-6804-3331
- 営業時間:13:00~19:00 (18:00 最終入店)
- 定休日:不定休(営業日はInstagramにて告知)
- HP:https://www.haluta.jp/
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