PARISmagが気になる方々へ会いに行き、「小さなしあわせ」のヒントを教えてもらうインタビュー企画。今回はモデルやタレント、女優として幅広く活躍する三戸なつめさんです。
2018年から女優としても活動を始め、8月14日より公開の『ロックンロール・ストリップ』では、陰ながら兄・勇太を支える妹役を演じました。『前髪を切りすぎた』のデビュー当時のかわいらしさを残しながらも、美しく軽やかに歳を重ねていく三戸なつめさん。お仕事でのこだわりや私生活での「小さなしあわせ」をお伺いしました。
三戸なつめ(みと なつめ)
1990年生まれ。2010年に関西で読者モデルの活動を開始。2015年には中田ヤスタカプロデュースによる『前髪切りすぎた』でアーティストデビュー。2017年1stアルバム『なつめろ』をリリースし、全国9箇所でのワンマンライブツアーを開催。同年12月には、昔からの夢でもあった絵本作家としてのデビューを果たす。2018年からは本格的に俳優としても活動を開始し、ドラマ&映画『賭ケグルイ』や舞台『鉄コン筋クリート』などに出演。映画『パディントン』では日本語吹き替え声優も務めるなど、モデル、女優、タレントとして活動の幅を広げている。
“朋美”に教えてもらった本当の優しさ
―8月14日より公開の『ロックンロール・ストリップ』で後藤淳平さん演じる木村勇太の妹役・朋美を演じる上で意識したことはありますか?勇太に関西弁で強く当たるシーンが印象的でしたが…。
三戸さん(以下、敬称略):強く当たるというか、ほとんどのシーンで怒ってましたよね(笑)。映画監督の夢を諦めない勇太に「ちゃんと働きなよ」って。もちろん勇太が精一杯がんばっていることは朋美もわかっているはずなんです。でも、朋美は最後まで自分の意見を曲げずに勇太に伝えつづけます。この役はブレちゃいけない、そこは強く意識しましたね。
『ロックンロール・ストリップ』の朋美
―三戸さんご自身の性格とのギャップは感じましたか?
三戸さん:もし私が朋美の立場だったら、きっと優しくしてあげたくなっちゃうと思うんです。ただでさえ凹んでいる人にそれ以上言ってもかわいそうって。でも、相手に優しくしてあげることが、はたして本当の優しさなのか。芸能界にいた朋美は、その世界で生きていくことの大変さをわかっています。だからこそ、勇太のことを本気で心配して、あえて突き放すんですよね。そういう「真の優しさって何なのだろう?」と深く考えさせられる役でした。
―朋美は誰にも迎合しない強さがありますよね。三戸さんもお仕事をする上でブレない軸のようなものはありますか?
三戸:基本的には臨機応変にやりたいタイプ。でも、うーん軸かぁ…。最近ではモデルとしてだけでなく、アーティストや女優として幅広くお仕事をさせてもらっていますが、やっていること全部に共通するのが「誰かのためを思うこと」。若い頃は自分のためという意識が強かったんです。でもちょっと歳を重ねてから、誰かのためとか、いつも応援してくれるファンの人のためとか、自分の利益だけではない部分をすごく考えるようになりました。
―いつ頃から「自分のため」から「誰かのため」へと意識が変わっていったのでしょう?
三戸:アーティスト活動を始めたくらいかな。読者モデルとしてのお仕事が多かったときは、等身大の自分で仕事をしていたんです。でも、アーティスト活動を始めてからは、お客さんの前で自分以外の何者かになりきったり、自分自身ではないものを表現したりするようになりました。
私自身は誰がどう見ても私だけど、表現ではいろんな顔を見せられる分、受け取られ方も人によって変わってきます。だからこそ、「表現で誰かにいい影響を与える」という軸を持っておかないと。多面的な表現をする分、そこだけは譲れないというか。むしろここを譲ってしまったら、人に影響を与えられる芸能界にいる意味ないじゃん!ってなっちゃう。
自分ではなく誰かのために。芯を持つようになってから迷いがなくなった
―誰かに何かしらプラスの影響を与える。何か軸が決まると、お仕事もやりやすくなりそうですね。
三戸:それはそうかも。誰かのためのほうが、がんばれる。なんかかっこいいこと言っちゃってるけど(笑)。若い頃は「この仕事は何のためにやっているんだろう?」と迷子になることが多かったのは、軸が漠然としていたからかもしれないですね。勇太もそうですけど、夢とか目標とかそんな大きなものじゃなくていいから、漠然とした憧れのようなものは常にあったほうがいいのかなって。たとえ失敗してしまったとしても、向かう方向が明確であれば迷わず進むことができます。それがないと「あれ、どこに行けばいいんだろう?」となってしまう。
―三戸さんは上京してから、アーティストやセルフプロデュース本の出版など、ジャンルを超えて活躍されています。チャンスを逃さないコツのようなものはありますか?
三戸:基本的には運が良かっただけ。でも、よっぽど無理だと思わない限りは、できないってあんまり言わないようにしています。がんばれそうと思える範囲が結構広いかも。何事も経験しないとわからない。やってダメでもやらないよりはマシだし、やらないままできない理由を探すのは避けたいんです。
―大切なことですね。何事にも挑戦する三戸さんが今後やってみたいお仕事はありますか?
三戸:うーん…やってみたいお仕事かぁ。占い師やってみたい。
―占い師!?(笑)
三戸:はい(笑)。私占いが大好きなんですよ。今までいろんな占い師のところに行きましたが、生年月日と名前を言うだけですごい見透かされるんです。霊感がある人もいて羨ましいなって。
―三戸さんは何て言われることが多いんですか?
三戸:だいたい将来について聞くんですけど、「あなたは将来に向けて計画を立てるのが得意じゃない。だから、今やるべきことを真面目やってください」ってよく言われます。誰にでも当てはまる気がしてきましたが(笑)。
私、前世は魔女だったんですよ。魔女狩りにあって、やりたいことをやれずに死んでしまった。だから、今は何でもやってくださいって言われます。私も未来のことをくよくよ考えるより、今を真剣に生きることが大事だと思うから、「私もそう思います!」と思わずテンションが上がってしまいました(笑)。
歳を重ねて知る、生活を整える楽しさ
―三戸さんの私生活についても聞かせてください。撮影が入ってくるとお忙しいかと思うのですが、暮らしの中で何か意識していることはありますか?
三戸:深呼吸をすること、たまには空を見上げること、動物の動画を見ることですかね。あと、昼間に洗濯機を回すこと。昼間に洗濯機を回して、ゴウンゴウン鳴っているのをBGMに、漫画を読むと充実した気持ちになれます。洗濯機の音がしあわせの音色というか。
―理想の休日は?
三戸:誰からも誘われなかったらお家にいて、7時に起きておしゃれな朝ごはんを作って食べる。ヨガに行って帰ってきて、洗濯機を回しながらお菓子を食べてちょっと昼寝して、みたいな。
―お昼に洗濯機を回すことは、まさに三戸さんにとっての「小さなしあわせ」ですね。
三戸:そうですね。あとは、ささくれがないことも小さなしあわせです。小さすぎますかね(笑)。ささくれができているときは野菜不足らしいんですよ。食生活をちゃんとしていると、ささくれもなくて手もきれいだし、肌も整っている。そういうとき、「あ、ちゃんと生活できているんだなあ」とハッピーな気持ちになれます。
―肌って露骨に生活環境が出てしまいますもんね。
三戸:昔はポテチをひと袋食べても次の日ニキビはできなかったんですが、アラサーになってからはそうはいかなくなっちゃって(苦笑)。それでヨガを始めたり、自炊したり、ちょっと健康志向になりました。
―以前はかなりの汚部屋に住んでいらしたと聞きましたが、変わってきている様子ですね(笑)。
三戸:はい、めっちゃ変わりました。身体をケアするためにちゃんと生活しようと気持ちが変わってからは、自然と部屋を綺麗にするようになりましたね。
―それは大きな変化でしたね(笑)。以前より、整える楽しみみたいなのも感じるようになったのですね。
三戸:自粛期間中もごはんを作ったり、お菓子作ったり。スーパーに行ったときにズッキーニを見つけて、「ズッキーニってどんな味なんだろう?そういえば知らないな」と思って買ってみました。レシピサイトで調べて作った「ズッキーニと豚バラのとろみ塩炒め」みたいなのがすっごいおいしかったんです。自粛期間中はズッキーニに完全にハマってましたね(笑)。そういう小さい発見だけど自分にとっては新しい楽しみを感じるようになったのは、アラサーになってから。これからも歳を重ねて変化していく自分が楽しみです。
三戸さん、素敵なお話どうもありがとうございました!
ドレス/パーミニット(perminute.net/)、ピアス/ジェンマ アルス(gemmaalus.com)、シューズ/ダイアナ(ダイアナ 銀座本店 03-3573-4005)
- ■作品情報
- 8月14日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次公開
- 公式HP:http:www.rocknroll-strip.com
- 出演:後藤淳平(ジャルジャル)、徳永えり、三戸なつめ、坂口涼太郎etc.
- 製作:「ロックンロール・ストリップ」製作委員会
原作:木下半太「ロックンロール・ストリップ」(小学館文庫刊)
エグゼクティブプロデューサー:石田誠
プロデューサー:皆川拓也 三好保洋
音楽:Calmera 撮影:曽根剛 照明:本間光平 美術:秋元博
録音:山本タカアキ 装飾:寺尾淳 衣装:鈴木まさあき ヘアメイク:田鍋知佳
キャステイング:森川祐介 出版プロデュース:新里健太郎(小学館)
監督・脚本:木下半太
配給:ベストブレーン 企画:株式会社タッチアップエンターテインメント
©木下半太・小学館/タッチアップエンターテインメント
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