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    本を片手に素敵なコーヒータイムを。神保町の喫茶店6選

    “神田神保町”は、およそ180軒の古書店が軒を連ねる世界屈指の古書店街。そして本の街に欠かせないのが、おいしいコーヒーが飲める喫茶店です。近くには大学も点在しており、昔から喫茶店文化が栄えてきたという背景があります。今回は昭和の時代から息づく神田神保町の喫茶店から、個性豊かな6店をご紹介します。

     

    囲炉裏席もある古民家風自家焙煎珈琲屋『神田伯剌西爾』

    神保町のメインストリート・靖国通りを1歩入った路地、「ぶらじる」と書かれた暖簾が目印の『神田伯剌西爾(かんだぶらじる)』。アート系の古書店『小宮山書店』の地下に続く階段を降りていくと、古民家にワープしたような空間が広がっていました。

    店内で目を引くのは喫茶店には珍しい囲炉裏。インテリアも民芸風で、なんだか民話の世界に迷い込んだ気分になります。控えめに流れるBGMと、お湯が沸くコポコポとした音が心地よく、ついうとうとしてしまいそう。

    こちらのお店は、店名にもある通り自家焙煎のお店。オーダー後に豆を挽き、1杯ずつドリップしていきます。豆の種類は浅煎りから深入り、ブレンドからストレートまで幅広いラインナップ。なかでも5種の豆をブレンドした「神田ぶれんど」が1番人気で、コクと深い香り、その先に感じる甘みが特徴です。

    「学生時代に通ってくれたお客さんが、大人になってからうちのコーヒーが忘れられず、定期的に豆を買ってくださるんです」と店長の竹内さん。カップを温め、丁寧に淹れられたコーヒーはコクもありつつすっきりとした口当たりです。

    コニャックショコラのケーキセット

    コーヒーのお供は甘いもの!若い女性だけでなく、意外と年配の男性も甘いものがお好きなんだとか。「コニャックショコラ」は、最高級のチョコレートを使ったビターなガナッシュと芳醇な香りのバニラが楽しめるケーキ。素朴なヴィジュアルなのに、濃厚で大人なチョコレートケーキでした。こちらのケーキは茨城県の隠れ家『菓譜え』から取り寄せているそうです。おいしいコーヒーと甘いものを楽しむなら、神田伯剌西爾がおすすめです。

    • ◼️お店情報
    • 神田伯剌西爾(かんだぶらじる)https://brazil.nobody.jp/index.html
    • 住所:東京都千代田区神田神保町1-7 小宮山ビルB1
    • 電話:03-3291-2013
    • 営業時間:11:00〜21:00(日祝11:00〜19:00)
    • 定休日:無休

     

    神保町の真ん中でヨーロッパに浸る『壹眞珈琲店 神保町店』

    銀座に3店舗を構える『壹眞珈琲店(かづまこーひーてん)』の本店が、神保町店。クラシックが流れる店内は、花で彩られヨーロピアンな雰囲気です。

    美しいテーブルや椅子が並ぶなかでも、1番目を引くのが美しいカップ&ソーサーの数々。これらは全てオーナーがヨーロッパで買い付けてきたもの。イタリアやドイツ、イギリスなどに出かけた際、マイセンやウェッジウッドなどお気に入りの食器を購入してくるそう。神保町店はイタリアのジノリ社製のものが中心で、各店舗で異なったカップが楽しめますよ。

    食器好きのオーナーのこだわりは、お冷用のグラスにも。持った時に手に馴染む様、楕円形にしたグラスはオリジナルで製造。水滴でつるつるしないように表面加工したり、持ち手の部分をデザインするなどの工夫が施されています。こちらのオリジナルグラスは購入もできますよ。

    お店の奥に進むと10人ほど入れる個室がありました。このお部屋は会議室としても使用できるということで、近所で働くビジネスマンの方達にも愛用されているのだとか。

    キャラメルポワールとコーヒーのセット

    壹眞珈琲店でいただけるのは、昭和3年創業の老舗珈琲店・萩原珈琲のコーヒー。クセがなく、飲みやすいコーヒーはついついおかわりしたくなります。そんな人のために、壹眞珈琲店では2杯目は280円で提供してくれるうれしいサービスも。また、紅茶やソフトドリンク、アルコールのメニューも豊富なので、コーヒーが苦手な人も楽しめますよ。

    随所にオーナーのこだわりが垣間見れる壹眞珈琲店で、ちょっぴりヨーロッパの風を感じてみては?

    • ◼️お店情報
    • 壹眞珈琲店(かずまこーひーてん)
    • http://www.hh.e-mansion.com/~kazuma-cafe/index.html
    • 住所:東京都千代田区神田神保町1-8
    • 電話:03-3292-2961
    • 営業時間:
      月曜日〜木曜日:11:00〜23:00、金曜日:11:00〜23:30、土曜日:12:00〜23:00、日曜日:12:00〜22:00
    • 定休日:なし

     

    コーヒーの真髄に触れる、エイジングコーヒーの名店『カフェ トロワバグ』

    ラーメン屋さんと立ち食いそば屋さんに挟まれた雑居ビルの地下1階、一見入りづらい雰囲気の場所にあるのが『カフェ トロワバグ』。ドアを開けると、素敵な女性が「いらっしゃいませ」と声をかけてくれました。

    この方が『カフェ トロワバグ』代表の三輪さん。お店の名前はフランス語でトロワ(=三)バグ(=輪)。そう、和名にすると「喫茶三輪」なのです。

    照明を落とした店内は、バーのよう。磨かれたカウンター、ビロード張りの椅子など、大人の雰囲気が漂います。

    「お店の内装は、喫茶店を多く手がけているインテリアデザイナー松樹新平さん。木をふんだんに使った内装は40年経った今でも色褪せません。松樹さんは今でもお店に立ち寄ってくれるんですよ」(三輪さん)

    こちらでいただけるのが3年熟成させた“エイジングコーヒー”。最近ではあまり見かけなくなったネルドリップで1杯ずつ淹れてくれます。コーヒーコンサルタントの肩書きも持つ三輪さんが淹れるコーヒーはとても情緒的。

    「豆は1杯につき18g、88度のお湯でドリップします。ネルはペーパーよりゆっくりドリップされるので、コクと甘みが引き立つんですね。もちろんペーパーが適した豆もあるので、種類によってネルとペーパーを使い分けています。ハンドドリップは繊細な作業なので、メンタルの状態がそのまま味に影響しちゃうんです。イライラしながら淹れたコーヒーは角が立ってしまいおいしくありません。スタッフには『恋人と接するときみたいに、心を込めて』と指導しています(笑)」(三輪さん)

    茶道ならぬ“珈琲道”によって淹れられるトロワブレンドは、どっしりとした重厚感と深みがあります。「うちのコーヒーはしっかりとしているので、少量でも満足できるはず。じっくり味わってほしいですね」と三輪さん。

    チーズがとろりと溶けるグラタントースト

    そして、このコーヒーと一緒に食べてほしいのが、創業時からの人気メニュー「グラタントースト」。ベシャメルソースから具、添えられるサラダまで全て自家製。ひとつひとつのメニューが丁寧に作られていて、女性ならこれだけで十分満腹になるボリューム感です。

    『D’RENTH CHOCOLATE』のチョコレートとトロワブレンドのセット

    また、他店舗とのコレボレーションも積極的に行っていて、現在はチョコレート専門店『D’RENTH CHOCOLATE』のチョコレートとトロワブレンドのセットを提供中。店頭販売されないチョコレートを味わえる貴重な体験です。

    三輪さんとお話ししていると、なんだかすっかり行きつけのお店にいるような気分に。「若い方こそ“行きつけ”を作るべき。この時代だからこそ、人と顔を向けて接する空間が大事だと思います」という三輪さんの言葉通り、トロワバグには長居したくなる空気が漂っていました。

    • ◼️お店情報
    • カフェ トロワバグ
    • https://troisbagues.com/
    • 住所:東京都千代田区神田神保町1-12-1 富田メガネB1
    • 電話:03-3294-8597
    • 営業時間:10:00〜21:00
    • 定休日:日曜日

     

    “静寂”を楽しむ喫茶店『茶房きゃんどる』

    神保町最古参と言われる『茶房きゃんどる』は、昭和8年創業の老舗喫茶店です。この喫茶店を一言で表すと“静寂”。BGMはなく、通話の使用もNG。お店にはカップとソーサーがぶつかる「カチャン」という音しか聞こえません。

    「この辺は出版社も多いし、昔は活版印刷屋さんも多かったんですよ。そこにお勤めの方が一息ついたり、打ち合わせのためによく来てくださったの。場所柄、古書店帰りの作家や画家の先生もいらしていました。当時学生さんだった方が、懐かしがってふらりと訪れてくれることもあります」

    歴史ある『茶房きゃんどる』ですが、現在はタワーマンションの1階にあります。以前は別の場所で営業していましたが、再開発の波を受け今の場所に平成15年移転。現代的な建物にあるにも関わらず店内には年季の入った椅子や、マントルピースがありました。

    柱に埋め込まれたマントルピース

    「椅子もマントルピースも創業当時のもの。椅子は東京藝術大学を卒業された方が作ってくれたました。今の建物では実際には使えませんが、暖炉は前のお店で実際に使用していたんですよ」。

    少し小ぶりの椅子は時を経て、美しい艶が出ています。以前のお店の床は全てレンガ作りだったそうで、そこで使用されていたというマントルピースは威厳を放っていました。戦前を感じる空間でいただけるのは、濃いめのクラシックブレンドと定番のハウスブレンド。そしてコーヒーが苦手な方のために緑茶も用意されています。

    ハウスブレンドと手作りのチーズケーキ

    また、手作りのチーズケーキもおすすめ。シンプルで優しい味わいのチーズケーキは、さっぱりめのハウスブレンドとの相性が抜群です。

    ほっとひと息。和菓子と緑茶

    「新聞や本、最近ではスマホなど、みなさん思い思いに1人の時間を楽しんでいます」とおかみさん。コーヒーを1杯飲んで、ドアを開けると静寂から喧騒へ…。なんだか白昼夢を見ているかのようなひと時でした。

    • ◼️お店情報
    • 茶房きゃんどる
    • 住所:東京都千代田区神田神保町1-103 東京パークタワー1F
    • 電話:03-3291-6303
    • 営業時間:10:00〜19:00
    • 定休日:土曜日・日曜日・祝日

    元祖“のりトースト”、純喫茶ブームの火付け役『珈琲専門店エース』

    ちょっと神保町から歩いて場所は神田駅前。ここに話題の人気喫茶店『珈琲専門店エース』があります。こちらはPARISmagにも登場した東京喫茶店研究所2代目所長・難波里奈さんが懇意にしているお店。

    「難波さんは学生時代から来てくれているからね。もう娘みたいなもんだよ(笑)」とマスターの清水さん。気取らないお人柄に引き寄せられるのか、店内はいつも超満員。観光で来ている若者から、地元の常連客、そして他媒体の取材クルーまで!賑やかな笑い声に包まれています。

    店名に“珈琲専門店”とあるように、ストレートからブレンド、世界各国で愛されるアレンジコーヒーに至るまで約40種のコーヒーが揃っています。

    「ここは父親と昭和46年にオープンしたお店。当時新橋に日本喫茶学院という学校があったんだけど、そこの先生にコーヒー豆のこと、コーヒーのアレンジについて教えてもらったんだよね」(清水さん)。メキシカンバターコーヒー、ミントコーヒーといった珍しいものまで、本当にバラエティ豊かなラインナップです。

    多種多様なコーヒーが味わえる『珈琲専門店エース』ですが、コーヒーに対する姿勢は実直。創業以来サイフォンで1杯ずつ淹れられるコーヒーは、雑味がなくすっきりとした味わいです。

    そして『珈琲専門店エース』を語る上で外せないのが「元祖のりトースト」。

    「母親が作ってくれたのり弁のご飯をパンにしたらどうかな?って考えて作ったメニューなんだよね。使うのは8枚切りの食パン、バター、しょうゆ、のりだけ。どこの家にもある材料で作ってるの」(清水さん)。

    カリッとトーストされたのりトーストを口に含むと、のりとしょうゆの香ばしさ、そしてバターのコクと香りが広がります。調理器具も家庭用のトースターのみ、と特別なことはしていないそうですが、家で再現しようと思ってもなかなか上手には作れません。やはりのりトーストは『珈琲専門店エース』でしか味わえない味なのでした。のりトーストに添えられるかわいいのぼり旗はお客様へのプレゼント。

    「たばこ吸う人少なくなっちゃったからマッチいらないでしょ。だから手作りでのぼり旗作ってプレゼントしてるんだよね」(清水さん)

    ちなみに、のりトーストだけでなくサンドウィッチや他のトーストメニューも豊富。午前10時まではブレンドとのりトーストで550円のモーニングサービスをやっていて、しかもコーヒー1杯まで無料なんです。マスターとの楽しいおしゃべり、気持ちのよいサービス、ついつい通いたくなる喫茶店ですね。

    • ◼️お店情報
    • 珈琲専門店エース
    • 住所:東京都千代田区内神田3-10-6
    • 電話:03-3256-3941
    • 営業時間:7:00〜18:00
    • 定休日:日曜日・祝日

     

    淑女の気分が味わえるロマンティックな空間『カフェ&ビアパブ セブンズハウス』

    最後にご紹介するのは、学士会館の1階にある『カフェ&ビアパブ セブンズハウス』です。学士会館は旧帝国大学(東京・京都・東北・九州・北海道・大阪・名古屋)のOBの社交場であり、東京大学発祥の地という由緒ある場所。 店名の『セブンズハウス』には“7つの旧帝国大学”という意味が込められています。

    荘厳な建物は大正15年に着工した当時では珍しい鉄骨鉄筋コンクリート製。日本における耐震建築の第一人者・佐野利器(としかた)と一番弟子である高橋貞太郎(ていたろう)が設計した当館は、1928年(昭和3年)に竣工し、90年以上経った今でもしっかりとした躯体。東日本大震災のときもほとんど被害を受けなかったそうです。建物のデザインはロマネスクとゴシックをベースにした折衷スタイル。モダンでありつつ、クラシカルな雰囲気も漂います。

    2003年に復元した大灯籠が左右にある南玄関を入ると右手にあるのが、『セブンズハウス』。訪れたのは夕刻。美しく磨かれた窓から見えるオレンジからネイビーに移りゆくグラデーションが見えました。マネージャーの岩佐さんによると「海外の方もいらっしゃいますが、どこの国の人が見てもノスタルジーを感じる空間」なんだそう。

    そんな『セブンズハウス』は喫茶店というよりカフェバーという趣。バーカウンターもあり、ウィスキーからワイン、カクテルも楽しめます。今回は1月からの新メニュー・田舎風お肉のパテとグラスワインをオーダー。

    パテ・ド・カンパーニュ

    「パテはシェフ渾身の1皿。お肉の仕込みから、火入れに至るまで、とことんこだわりました。お酒に合うように、旨味を熟成させています。セブンズハウスの隣にはフレンチレストラン『ラタン』がございますので、食後はこちらに移動していただき、アルコールと一緒に気軽に召し上がるのもおすすめです」(岩佐さん)

    ブルーベリータルトのケーキセット

    お酒やおつまみメニューが豊富な『セブンズハウス』ですが、スイーツにも注目。専任のパティシエが毎日地下の厨房で作るスイーツは、定番のものから季節を感じるものまで豊富。美しい空間で、おいしいティータイムを過ごすのは至福の時間です。

    絨毯の上を歩くと自然と背筋がピンと伸びるような気が…。大正モダンな空間で、ちょっぴりレディな気分を味わってみては?

    • ◼️お店情報
    • 学士会館 セブンズハウス
    • 住所:東京都千代田区神田錦町3-28
    • 電話:03-3292-5935
    • 営業時間:9:30〜22:00
    • 定休日:無休(夏期・年末年始の学士会館の休館日は休み)

    ※記事の内容は取材当時のものです。 最新の情報は、お店のHP、SNSなどをご確認ください。

     

    本の街・神保町の影の立役者“喫茶店”。大好きな本を片手に喫茶店へ赴けば、たちまち空想の世界に浸れます。素敵な古書を見つけたら、ぜひ近くの喫茶店でとっておきの時間を過ごしてください。

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