チョコレートの季節がやってきました。意中の誰かがいてもいなくても、この時期だけはちょっと奮発しておいしいチョコレートを買ってみたいという方、多いのではないでしょうか?
有名ショコラティエのアートなチョコレート、Bean to Bar(ビーン・トゥ・バー)専門店の素材重視のチョコレート、和酒とコラボレートした変わり種チョコレートなど、街中にあふれるチョコレートはみなとてもおいしそうで、どれを選んだらよいのか迷ってしまいます。
そこで、今年はストーリーのある個性派チョコレートを集めてみました。どんな人が、どんな想いで作ったチョコレートなのか、ひとつひとつのチョコレートの裏側にあるストーリーも合わせてご紹介します。
天才ショコラティエによるチョコレートは芸術作品
ショコラの本場フランスで高い評価を得ているパティシエ&ショコラティエ小山進さんのブランド『パティシエ エス コヤマ』。お店は緑豊かな兵庫県三田市にあります。
小山さんはチョコレートに限らずお菓子を作る際にはいつも「どんなものを作りたいか」よりも「どんな想いを伝えたいのか」を考えるため、『エスコヤマ』にはコンセプトのない商品はないと言われています。
そんな小山さんが今年のバレンタインにおすすめするのは“香り”に注目して作ったチョコレート「SUSUMU KOYAMA’S CHOCOLOGY 2018」。自然が育んだ夢のように儚い香りを1粒のチョコレートに閉じ込めた渾身の作品は、フランスの最も権威あるショコラ愛好会『Club des Croqueurs de Chocolat(通称C.C.C.)』の年間ベストショコラティエの格付けで、8年連続「最高位“ゴールドタブレット”」を受賞しています。
4粒のボンボンショコラはそれぞれ個性が異なりつつも、順番通りに食べることでひとつのストーリーが生まれる構成に。
- NO.1:台湾でお茶として親しまれている野生の小野菊のエレガントな香り。
- NO.2:和歌山県産の赤紫蘇の爽やかで凛とした力強さを持つ芳醇な香り。
- NO.3:カシスの新芽のスパイシーな香りとロマネ・コンティのフィーヌを合わせた複雑な香り。
- NO.4:メキシコの燻製された唐辛子のマイルドな辛味、甘味とスモーキーな香り。
さらに言うと、ボンボンショコラを一口で食べるのではなく、まず半分にカットして、No.1~No.4まで1度ひと通り食べた後に、再度No.1に返って食べれば、1度目に味わった香りや味わいを2回目でより深く堪能することができるそう。芸術作品を鑑賞する気持ちで食べたいチョコレートです。
フランス老舗コンフィズリーが作る大人のチョコレート
南西フランスのポーに位置するヴェルディエ社は、1945年にトゥロン (フルーツや木の実入りヌガー)、キャンディー、チョコを手掛ける コンフィズリーとしてスタートしました。ARTISANAL(職人芸) をモットーに昔ながらの製法で作られるヴェルディエ社のチョコレート菓子「レザンドレ・オ・ソーテルヌ“貴腐”」は、20年ほど前に日本に輸入されてから少しずつ口コミで人気が広がり、今では知る人ぞ知る人気のお菓子となりました。
ブロンド色のドライ・レーズンをボルドー産の貴腐ワイン・ソーテルヌに漬け込み、カカオ分が70%のチョコレートで包んだ「RAISIN DORE AU SAUTERNES」。ソーテルヌ酒に数日間漬け込まれたレーズンは、水分を保つために薄く粉砂糖をまぶし、銅製の大きな鍋に入れます。この銅鍋を回転させながら溶かしたチョコレートを少量ずつ加え、丁寧にコーティングして出来上がり!まさに「職人の手」が 生み出す逸品です。この甘酸っぱい小さな一粒は、紅茶や白ワイン、フルーツを使ったカクテルと相性抜群。一度食べたら必ず記憶に残る、そんなチョコレートです。
デザート界の巨匠は優しい味のチョコレートが好き
ピエール・エルメとならんでフランスで活躍するパティシエ、フィリップ・コンティチーニ。クープドモンドの優勝を始め、数々の時代を築きあげてきたデザート界の巨匠です。
先日、来日していたフィリップ・コンティチーニさんに直接お話をうかがうことができました。彼が常にこだわっているのは、「人と違うものを作りたい」ということ。そして、「おいしいお菓子をつくることは簡単だけれど、食べる人に感動を与える、エモーションのあるお菓子を作るのは本当に難しいよ」とコンティチーニさん。デザート界の頂点にありながら、常に積極的に創作をつづける巨匠の謙虚な人柄にふれた瞬間でした。
また、意外にも彼は、カカオ豆を追求した酸味や苦みが強いチョコレートよりもやさしい味わいのチョコレートが好きだとか。そんなわけで今年は、見た目も味も他のパティシエとはひと味もふた味も異なる個性的なチョコレートがお目見えしました。
「噛んだ時の音に耳を澄ませてほしい」という思いから名付けられた「クラックネ」。それぞれに味や香り、食感の違いはもちろん、口の中で響く音も楽しむことが出来る新感覚の噛んで味わうチョコレート。サクサクという食感となめらかな口溶けが口の中で共存するのはさすが巨匠のなせる技。ショコラ・オ・レ、ピスターシュフランボワーズ、ショコラカフェ、ヴァニーユ、ノワゼット、ピスターシュシトロンの6個入り。一個ずつ大切にいただきたいチョコレートです。
大航海時代の製法をそのままに、素朴な古代チョコレート
『アンティカ・ドルチェリア・ボナイユート』は、1880年にイタリア・シチリア島南東の街モディカに創業された老舗のチョコレートショップ。乳化剤などの食品添加物は一切使わず、カカオ、砂糖、各スパイスのみから作られたチョコレートはジャリジャリとした不思議な食感です。
おいしさの秘訣は、45度以下の低温で温める製法。砂糖が溶けずに残るため独特の食感を生み出し、カカオのもつ300種類とも言われる香りを最大限に引き出しています。そのレシピは16世紀の大航海時代、シチリアを統治していたアステカ帝国の時代とほとんど変わらないそう。古代チョコレートと言われる所以です。
「プラリネ・アル・ピスタッキオ」は最高の品質と評されるブロンテ産ピスタチオをふんだんに使用した、ピスタチオが主役のチョコレート。
ピスタチオを練り込んだホワイトチョコベースのプラリネにダークチョコレートをコーティング。ほんのり塩を効かせシチリアらしさを感じさせます。見た目の素朴さは古代チョコレートならでは。エスプレッソや深煎りのコーヒーと合わせていただきながら、遠き異国の地シチリアに思いをはせてみてはいかがでしょうか?
石臼で挽いて作るチョコレート
東京・世田谷にある、カカオ豆からチョコレートを作る小さな工房『xocol STONE GROUND XOCOLATE(ショコル)』。オーナーの君島香奈子さんは厳選したカカオ豆を自家焙煎し、なんと昔ながらの石臼構造のもので挽いてチョコレートを作っています。それは、道具こそ作者の手であり考えである、という想いがあるからです。
「美しい鳥 QUETZAL NOTE(ケツァール ノート)」は、甘さ控えめで、カカオ豆本来の味と香りを前面に打ち出したショコルのチョコレートは乳化剤や人工香料を使わず、油脂の追加もしない自然なチョコレート。甘いものが苦手と言う大人の男性にもおすすめです。
ゆっくりと時間をかけて挽いたカカオ豆に砂糖を加えただけのシンプルなコイン型チョコレートは『ショコル』の看板商品。産地別に4種類あります。写真はすっきりした酸味が特徴のVIETNAM 72%と後味に心地よい苦みが残るCOLOMBIA 72%。シンプルなだけにカカオ豆のそれぞれの個性が際立ちます。赤ワインやブランデーとの相性もよさそう。
香ばしく煎られたアーモンドをチョコレートで包みカカオパウダーでコーティンングした「TANE」。開封すると上質なカカオの香りが広がります。香ばしいアーモンドは食べ始めたら止まらなくなってしまうこと間違いなし!
今や日本で手に入るチョコレートはおいしいのが当たり前。だからこそ、それぞれのチョコレートに込められた造り手の想いを知れば、よりおいしく感じられるのはないでしょうか? 今年のバレンタインは、チョコレートの裏側にあるストーリーも合わせてお楽しみ下さい。
- ■お店情報
- パティシエ エス コヤマ http://www.es-koyama.com/ ★
- ショコル http://xocol.jp/ ★
- ボナイユート(輸入食材屋PORCO BACIO)http://www.porcobacio.info/ ★
- フィリップ・コンティチーニ http://conticini.jp/
- ヴェルディエ http://www.aimons-net.com/brand/verdier.html ★
- (★はオンラインショップでの購入が可能です)
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