東京・日本橋。江戸時代からの職人文化が息づくこの街に、今年3月『ル・ショコラ・アラン・デュカス 東京工房』がオープンしました。そう、フランス料理の巨匠アラン・デュカスさんがプロデュースするショコラ専門店です。
最寄りの日本橋駅からお店に向い歩くこと数分、きびきびと働く数人の職人さんの姿がまず目に入ります。近づくと職人さんの手元には、艶やかに美しく成型されたショコラがずらり。見ているだけでも幸せな気分になるのは私だけでしょうか?
通りからも内部を見渡すことができるガラス張りの工房にブティック、サロンまで併設された店内に一歩踏み入れると、ショコラというひとつの素材の多様性と奥深さに驚かされます。
今回は、そんな『ル・ショコラ・アラン・デュカス 東京工房』の甘美なショコラの世界をご紹介致します。
カカオ豆の選別、粉砕から一粒のボンボン・ショコラまで
アラン・デュカスさんの料理哲学は良質な素材を厳選し、その素材本来の味わいと香りを十分に表現すること。それはショコラについても同じで、パリにある彼の工房では、カカオ豆の粉砕から全ての行程をショコラティエが手作業で担っています。選び抜かれた様々な産地のカカオ豆は味や香りの個性が異なるため、それぞれに調整され、複雑な工程を経てまずクーベルチュールに加工されます。そして、職人達が使ってきた年代物の機械を用い、昔ながらの製法でボンボン・ショコラを一粒一粒作りあげていくのです。
『ル・ショコラ・アラン・デュカス 東京工房』では、パリの工房で作られたそのクーベルチュールを使用して全ての製品が作られています。
工房奥の棚には産地の異なるクーベルチュールがぎっしりとストックされています。
日本には海外のショコラ専門店が数多く出店していますが、日本で販売している商品全てをクーベルチュールから国内で手作りしているところはまずないそうです。
ガラス張りの工房へのこだわり
ル・ショコラ・アラン・デュカス 東京工房はパリの工房と同様にガラス張りになっており、店内からだけでなく街路からも工房内を眺めることができます。アラン・デュカスさんが工房をガラス張りにすることにこだわったのは、ショコラの持つ感覚的、そして官能的な世界を多くの人に再発見してもらいたかったから。
また、近年、特別な技能をもった職人はどの分野でも少なくなってきていると言われていますが、ショコラの世界もそうで、焙煎の技術を持ちカカオ豆からショコラを作ることができる職人が少なくなってきていることから、工房を造って職人を育てたいという思いもあるそうです。
そして、東京に出店を決め、工房も作ることにしたのは、日本人が繊細で丁寧で探究心があるからとのこと。アラン・デュカスさんが日本人の職人気質を信頼して下さっていると聞き、何だか私もとてもうれしく思いました。
『ル・サロン』でショコラを堪能
左からジュリアン・キンツラー、アラン・デュカス ©Pierre Monetta
東京工房のシェフ・ショコラティエには、銀座の『ベージュ アラン・デュカス 東京』でシェフ・パティシエを務めた経験もあり、アラン・デシュカスさんからの信頼も厚いジュリアン・キンツラーさんが就任されました。
ブティックに並ぶショコラはもちろん、店内のル・サロンでいただける彼のデセールはまるで芸術作品のよう。人気のメニューをいただいてきたので紹介したいと思います。
【ムース・オ・ショコラ】
乳製品を使わず、卵白のみで作ったショコラのムースはとても軽い口当たり。
花びらのように薄く削ったショコラと一緒に頬張ると、ショコラが溶けてムースとからまり、口の中で消えていきます。雑味のない洗練されたショコラならではの口溶けに感動する1品。
【ミルフィーユ・トゥ・ショコ】
ほろ苦く香ばしいココアのパイ生地と、パンチのあるペルー産カカオのクリームとの相性は絶妙で、驚くほど軽い食感です。
パイは通常のミルフィーユと違う向きで火入れしてあるので、焼き具合が均一でナイフを入れても気持ち良いほどサクッと切れます。
【ショコラ・ショー】
ペルー産カカオ100%のクーベルチュールと、アラン・デュカスオリジナルのクーベルチュールを1:1でブレンドした程よい甘さのショコラ・ショー。濃厚すぎず、ふんわりとカカオの香りがする上品な味わい。温かいショコラ・ショーは心も身体もほっとさせてくれる飲み物です。
【ル・テ・ブラン・アラン・デュカス】
アラン・デュカスさんとクスミティーとのコラボレーションによってうまれたホワイトティー。手もみされない茶葉の清涼感のあるクリアな風味にローズとフランボワースの香りがブレンドされています。優雅なホワイトティー×ショコラは、コーヒー×ショコラの定番マリアージュに勝るとも劣らない衝撃の出会いでした。
ル・サロンのデセールはいずれも、砂糖や脂肪分を極力使用せずに作られているせいか
想像以上に軽い味わいでした。上質なショコラは過度に甘くする必要がないということがよくわかりました。
甘美なショコラの世界
ブティックには、ボンボン・ショコラをはじめ、ショコラバー、果物の砂糖漬けをコーティングしたフリュイ・コンフィやショコラ・スプレッドまで、多彩なショコラの品々が整然と並べられています。
中でもタブレットの品揃えは圧巻です。マダガスカルやベネズエラ・チュアオ、ペルー・ポルチェラーナなど、世界12の産地から混じりけのない異なる味わいが作られています。
グラフィックデザイナーのピエール・タションによりデザインされたタブレット。工房の煉瓦を思わせる様な凹凸がユニークで斬新。
焼き菓子は日本限定で、クッキーやフィナンシェなどその特徴に合わせて個性あふれるカカオ豆のクーベルチュール・ショコラを使用し作られています。
生地にショコラとカフェを練り込み、しっとりと焼き上げたフォンダン・ショコラ・カフェ
ジャワ産、マダガスカル産、ペルー産の3種のガナッシュを楽しめるマカロンオリジン3個入りが発売になりました。通常より大きめのサイズがうれしい。
ブティックに並ぶ、手間と時間を惜しまずに作られた美しいショコラの数々を眺めていると、まるでショコラの博物館にいるような気分になりました。
店内は木、レンガ、ガラス、鋼が印象的な機能美を追求したクラフトマンシップ溢れる空間。アラン・デュカスさんがプライベートで所有するアンティークの家具もディスプレイされています。
秋も深まり、ショコラがぐんと身近に感じる季節になりました。ショコラがお好きなら、ぜひこの機会に『ル・ショコラ・アラン・デュカス 東京工房』を訪れて、甘美なショコラの世界を堪能してみてはいかがでしょうか?
- ■お店情報
- ル・ショコラ・アラン・デュカス 東京工房
- 住所:東京都中央区日本橋本町1−1−1(地図)
- 電話:03-3516-3511
- 営業時間:11:00〜20:00(19:30 L.O.)
※記事の内容は取材当時のものです。 最新の情報は、お店のHP、SNSなどをご確認ください。
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