京都有数のオフィス街、烏丸。中心部はビジネスマンでひしめき合いますが、一本路地を曲がると、落ち着いた住宅街が広がっています。
ここ、烏丸の姉小路通にあるベーカリー&カフェが、今回ご紹介する『Année(アネ)』。フランスで経験を積んだ店主・坪倉直人さんが焼き上げる、自家製パンを楽しめるお店です。
「姉小路通にあるから、『Année』(笑)。それと同時に、フランス語で『年』を表す単語でもあります。1年1年を大切に積み重ねていきたいと、そんな想いで名付けました」。
植木の緑が優しく揺れるテラス席に座って、にこやかに語ってくださった坪倉さん。もともと京都で20年以上の人気を誇る『CAFE KOCSI(カフェコチ)」で店主を務めていたなか、お店のあり方を考えるために渡仏。「もっとパンを気軽に楽しんでもらえる場所を作りたい」と、帰国後の2014年に、姉妹店として『Année』をオープンしました。
「駄菓子屋みたいに、地域から愛されるパン屋になりたいんです」。
そう笑顔を浮かべる坪倉さんから、メニューやお店のこだわりについて伺いました。
ランチからディナーまで。いつでも楽しめる豊富なメニュー
「まずはこれを!」と紹介いただいたのは、クロックマダム。
「本場のフランスの方にも、褒めていただいたことがあるんですよ」と少し照れくさそうに話す、人気のメニューです。
自家製のホワイトソースを塗ったパンに、ハムとチーズを重ねて焼いて、目玉焼きをトッピング。サクッとナイフを入れると、半熟の黄身がとろっとこぼれ落ちます。
日替わりのスープや、サラダとの組み合わせも相性抜群。ボリューム満点なので、ランチタイムに注文される方も多いそうですよ。
次にテーブルに運ばれてきたのは、フレンチトースト。
「ポイントは、外側のカリカリ感と、内側のしっとりさ。どちらも両立できるように、ちょうど良い厚みを何度も研究しました」。
ザクッと食べごたえのある、約3cmの厚切りパンの上には、たっぷりのハチミツと、自家製バニラアイス。「甘すぎないかな?」という心配はなんのその!散らされたアーモンドフレークがいいアクセントになって、ぺろりと完食できてしまいます。
最後に注文したのが、季節のフルーツサンド。
甘さの中にあるコクと爽やかさの秘密は、生クリームに混ぜ込まれたクリームチーズ。しっとりとした食感のパンに、フルーツが贅沢にサンドされています。
この日使われていたのは、イチジクとシャインマスカット、そしてキウイ。「なるべく、旬のフルーツを楽しんでもらえるようにしています。僕は柿が大好きなので、もうすぐ使えるようになるのが楽しみで仕方ないんですよ」。これからどんなメニューが登場するのか、お店に行くたびに、チェックしたくなりますね。
他にもショーケースにはさまざまな自家製パンがズラリ
その他にも、入り口のショーケースにずらっと並んだパンは、すべてテイクアウトOK。
もちろん、店内でレトロな雰囲気を味わいつつ、本棚に並んだ本を手に取るのも良し。晴れた日には、テラス席に腰掛けてリラックス。夜には、ワイングラスを傾けてパンを楽しむ常連さんも。1人でも、友達と一緒でも、それぞれが思い思いの時間を過ごすことができそうですね。
基本に忠実に、丁寧に作られたパン
「Annéeのすべてのメニューの土台になっているのは、ベーシック・クラシックなものを、きちんと作ること」と坪倉さんは言います。
「まずは基本に忠実に。おいしそうと思われることは大事ですが、過剰な盛り付けや色付けは絶対にしません。そして大切にしているのは、パンを『焼き切る』こと。小麦の中の水分を残しつつ、しっかりと飛ばしてあげる。パンをひと口かじったときに、小麦の香ばしさがあって、中のふわっと感が続くような、そんな生地のバランスを目指しています」。
流行を形だけ真似するようなことはせず、基礎を大切に、そして丁寧に。『Année』のパンを食べると、どこかほっとしたような気分になるのも、そんな心がけがあるからなのかもしれません。
パンを、もっと日常に。自由度の高いお店づくりを
ビジネスマンから地域の方まで、多くの方が訪れる『Année』を切り盛りする坪倉さん。しかしオープン前は、お店のあり方について、悩んだ時期もあったとのこと。
「僕は25年以上、パンを焼き続けています。ただ朝から晩まで厨房にいると、晴れているのか雨が降っているのか、天気すら分からないことも多くて……。お客さんとしっかりコミュニケーションを取れるお店にするにはどうしたらいいだろうと、フランスに行って考えることにしたんです。『CAFE KOCSI』で店主をやりながらの渡仏だったので、スタッフにはすごく協力してもらいました」。
1年に渡る現地での経験で、坪倉さんが目にしたのは、パンを日常的に楽しむ人々の姿。クロワッサンやバケット、カンパーニュは、まるで日本人にとってのご飯のような存在だと感じたそうです。地域に根ざして、もっとパンを気軽に楽しんでもらえる場所を作りたい。そんな想いが、『Année』の誕生につながりました。
パンを、もっと日常に。だからこそ、もっと自由度の高いお店であり続けたいと、坪倉さんは続けます。
「例えばフランスの方って、パンをカフェオレにじゃぽっと浸けて食べることもあるんですよ。僕もお客様に無理にやってくださいとは言いませんが(笑)、皆さんにもっと自由に楽しんでほしいな、と思います。小腹が空いたときに1人で来たり、お茶を飲みながら友達と過ごしたりしてもいいですし、もちろんテイクアウトだけでも大歓迎です。ハードルを上げすぎることなく、気軽にお店に足を運んでいただけたらうれしいですね」。
そして、「僕、駄菓子屋のようなパン屋がやりたいんです」と、坪倉さんは最後に語ってくださいました。
「目指しているのは、子どもでも楽しく遊びに来られるようなお店です。実際に、ひとりで食パンを買いに来たり、500円を握りしめて、どういう組み合わせで買おうか、あれこれ悩んでいる近所のお子さんもいるんですよ。そんな安心感とワクワク感を、いつでも提供できるようにしたいなと思います」。
取材中にも、次々と訪れるお客様に「こんにちは!」と声をかけている姿が印象的だった坪倉さん。25年以上のキャリアがありながら、「やっぱり最後は人と人とのコミュニケーションが大切」と言います。
オープンからの7年間の日々を、1日1日大切に積み重ねてきた『Année』。
一度訪れたら、たくさんの方から愛される理由が、きっとすぐに分かりますよ。
- ■お店情報
- Année(アネ)
- 住所:京都府京都市中京区姉小路室町西入ル突抜町139 プリモフィオーレ室町 1F
- 営業時間:11:00〜22:00(土曜日は10:00〜)
- 定休日:毎週木・日曜日、第3水曜日
- Instagram:https://www.instagram.com/cafe_kocsi_annee/
- ※最新の営業情報は、お店のSNSなどでご確認ください。
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