年に一度パリで開催される美と香りの祭典『Rives de la beauté(リーヴ・ドゥ・ラ・ボーテ)』が9月19日〜23日に開催されていました。今年は10周年にあたる年。コスメをテーマに開催された『Rives de la beauté』を紹介したいと思います。
コスメブランド各社が協力し合い、マレ地区のメイン会場を中心に4つのエリアを巡りながら楽しめるようになっているこのイベント。新しいブランドが立ち並ぶなど、新作コスメ好きにはたまらない5日間です。
目玉プロジェクトは香りと写真で巡る世界への旅
今回目玉のプロジェクトの1つに、「A World Tour Throuh Scent(香りを巡る世界の旅)」と題された写真と香りをテーマにした展示がありました。
世界各地の11カ国に、国籍の違う13人の調香師を6ヶ月間派遣。その経験の中で感じたものを香りに表現し、今までにない香水を作ります。その後、香りの専門雑誌『NEZ』のジャーナリストと写真家グループTendance Floue (タンダンス・フル)のカメラマンがその場所へ出向き撮影するという、旅から感じ取ったものを香りに封じ込め、その香りを写真と文章とともに表現するという壮大なプロジェクトでした。
選ばれた国や街は、シンガポール、上海、セヴィリア、パリ、ドイツ、ドバイ、東京、アメリカなど、世界各地。それぞれ香りに対する感覚がまったく違う国々。実際に展示の一部を少し紹介したいと思います。
こちらは、ドイツの展示。自然と化学的なものの融合というテーマの中で生まれてきた森の写真です。ここでは湿気や木の香りなどと共に、それだけに終わらない複雑な香りがしました。
上海で展示されている写真は、中国旅行でイメージするようなものとは、違ったアプローチの写真たち。生活してみてこそ感じる上海なのでしょうか。
日本は、やっぱり桜。でも、華やかで優しい香りという訳でもなく、どこか知的で、ざわめきのある香りでした(私の経験の中でのさくらの記憶は桜餅やさくら茶のような香りだったので、ちょっと違う…?)。
私は、旅先を思い出すとき、香りを良く思い出すので、この展覧会を見ているとなんだか旅をしたような錯覚にもなりました。逆に自分の旅の記憶と展示されている香りがまったくかけ離れていて「びっくり!」なんていうことも。その場所を訪れた人によってそれぞれの感じ方があることを知り、とても楽しむことができました。
注目ブランドも新しいアプローチで展示
こちらは、香水の老舗『Guerlain(ゲラン)』で開発部のディレクターを勤めたSylvaine Delacourte(シルヴァンヌ・ドゥラクルト)さんが去年立ち上げたブランドの香水を紹介するエリア。
彼女の新作は、バニラをベースにした5つのテーマのある香り。今回、チョコレート屋の「Edwart(エドワート)」とコラボし、新作の香水とフレーバーチョコレートとのマリアージュを楽しむという試みが注目を集めていました。
たとえば、少しスパイシーなバニラ香のVangelisには、カルダモンが入ったチョコレート、柑橘系の香りをもつバニラ香のValkyrieには、レモン風味のチョコレートを合わせるなど。自分の好きな香水を選び、それとマッチするチョコレートを口に含めば、また新しいマリアージュの世界が開けそうです。味覚嗅覚を両方刺激するアプローチでとても勉強になりました。
日本ブランド「ÉDIT(h) (エディット)」も発見!パリではまだキャンドルのみの販売ですが、今年『メゾン&オブジェ』というフランスで開催される見本市で発表したばかりのブランドです。
印鑑に使う朱肉の老舗が、同社の朱肉に使用する香料を応用して、今回、フレグランスブランドとしてデビュー。昔からある日本の技術に着目して生まれた香水なのです。
現代の生活に合うように、生活空間にはアロマキャンドル、そして身につける香水と練り香というラインナップ。香りは、どれもつけ心地よく、大人な印象でありながら、どこか日本らしさも。落ち着く、そんな香りの印象でした。
最後に注目したいのは、「Roberto Greco(ロベルト・グレコ)」のしおれた花と裸体の写真シリーズと香水がセットになったボックス。
写真家であるロベルトさんが、枯れた花と人の肌をテーマに写真を撮り続けていたところ、この2つを結ぶ何かがないかと考え、香水で世界観を表現する方法を思いついたそうです。
最初にご紹介した「A World Tour Throuh Scent」とは、また違ったアプローチですが、どちらも香りが写真を読み解く鍵になっているような感じがしてなりません。
今回の「第10回リヴ・ドゥ・ラ・ボーテ」では、従来の体臭を消すための香水の役割に停まらず、多種多様なコラボレーションで表現していて、フランスにとって、香りがとても重要な存在だと感じることができました。
このイベントは、毎年9月にパリの右岸左岸に渡って開催しています。タイミングが合えば、ぜひおすすめしたいイベントですが、そうでないときも、イベントで配布されるマップを参考にしながら巡ってみるのもおすすめです。ぜひ、香りをテーマにパリを巡り、香り文化を感じてみてはいかがでしょうか。
- ■イベント情報
- Rives de la beauté(リーヴ・ドゥ・ラ・ボーテ)
- https://www.rivesdelabeaute.com/
■一緒に読みたい記事
豊富な香りと抜群の使い心地!フランスのマルセイユ石けんの魅力