暑すぎず、夜10時頃まで明るいフランスの7月。1年の中でもっとも気持ちのいい季節です。この季節のフランス人は、よく週末のショートトリップへ出かけます。こうやって、間もなく来るバカンスを心待ちにしているのです。
パリから3時間のショートトリップへ
私も先日、ショートトリップへ行ってきました。レンタカーでやって来たのは、ロワール地方にある古城、ヴィランドリー城(chateau de Villandry)です。パリから車で3時間ちょっと。1泊のショートトリップにちょうどよい距離感です。
ヴィランドリー城は、このフランス式庭園の素晴らしさが有名なお城のひとつ。
観賞用の「愛の庭園」(写真左)、野菜で作られた幾何学的なモチーフの菜園など、エリアによってテーマが作られており、どれもため息が出るほどの美しさです。
お城の3階を出たところから庭園を一望できる長いテラスに出ますが、庭園を上から眺めると、 ロングドレスを纏い、日傘をさして庭園を歩く紳士淑女をイメージせずにはいられません。
この華やかな庭園が「愛の庭園」で、赤やピンク色の花々が使われ、色鮮やか。モチーフは、それぞれ「L’amour tender(優しい愛)」、「L’amour passionné(情熱の愛)」、「L’amour volage(移り気な愛)」、そして「L’amour aragique(悲劇的な愛)」が表現されているそうです。
世界遺産にも登録されているフランス式庭園
「Donjon(ドンジョン=塔)」という要塞の一部として作られた塔に登ったところから見える風景。ここからの眺めは最高で、ユネスコの世界遺産にもこの景観が登録されているそうです。
庭園のちょうど真ん中を区切るようにお堀がありますが、この水は上段の「水の庭園」から流れてくる小川の役目も果たし、両脇にはブドウの木で作られた棚が。その中は適度な日陰になっており、歩くこともできます。なんてエレガントなのでしょう!
この庭園は、少しずつ高台に登って行くように設計されていて、立体的なのもまた素敵です。
このフランス様式の庭園は、フランス・ルネサンス様式と呼ばれる16世紀の造園様式を採用しています。
これは菜園です。幾何学模様を描きながら、内側の色やテクスチャーを野菜で表現しています。通路中央に作られているドーム型の休憩所は、薔薇の蔦が絡まり、とてもロマンチック。このスタイルはイタリア庭園の影響を受けているそうです。
芸術を愛した国王フランソワ1世の影響を受けたお城
ロワールの古城と言えば、フランスの当時の国王、フランソワ1世が建てさせたものや、その影響を色濃く受けたお城が多いことで有名ですが、ここヴィロンドリー城もまた、フランソワ1世の財務大臣、ジャン・ル・ブルトンによって建てられたものです。
フランソワ1世は『芸術をこよなく愛した国王』としても知られており、イタリア・ルネサンスに多大な影響を受け、フランスにイタリアの絵画や建築様式を広め、フランスの芸術が大きく花開くきっかけを作った人です。
晩年のレオナルド・ダ・ヴィンチも連れて来て、自分の城から歩けるくらいのところに彼専用の城を建てさせるのですから、やることのスケールが大きいのです!
庭園の話に戻ると、フランスでは19世紀にイギリス式庭園が一世を風靡した時代がありました。このお城でもフランス式庭園が一度壊されたそうですが、1906年、現城主の曽祖父にあたるジョアキム・カルヴァロがこの城を購入し、16世紀当時のフランス式庭園を再現させることにしたとか。彼は、学識の深い人で、芸術、建築、歴史に情熱を傾けた人だったので、城の修復にもとても熱心だったそうです。
このお城を購入したのも、彼が集めた絵画のコレクションを展示するためだったとか。どの時代にも、美しいものを守る人たちがいるから、フランスが美しくいられる訳ですね!
お城の中のことは次回にしたいと思います。お楽しみに。
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