デートで行ったレストラン、旅行で出会った現地の料理、みんなで楽しむホームパーティ、お散歩の途中で見つけたおいしいパンなど、おいしいものに出会うとその思い出を残すべく、写真を撮るという方は多いのではないでしょうか。でも、料理をおいしそうに撮るのって実は結構難しい…。
instagramなどのSNSで「いいね!」が付くようなおいしそうな写真を撮りたい!ということで、今回は 料理専門の写真教室「フェリカスピコ」の佐藤朗さんにスマホでの写真テクニックを教えてもらってきました!
まずは撮りたい写真のイメージを膨らまそう!
佐藤さんが主宰する「フェリカスピコ」のinstagram(@felica_spico)にはたくさんのおいしそうな写真が。おいしそうな写真を撮る上で、まず大切なことは何なのでしょうか?
「多くの方が料理を前にすると、『わ〜!おいしそう!』と言いながらその場でパシャパシャ撮り始めるんですよね。でも、大切なのは『どんな写真を撮りたいかイメージする』こと。何を撮るのか、どんな写真を撮りたいのか、誰に見てもらいたいのか考えて、そのためにはどう撮るのかを逆算して撮っていくことが大切なんです。プロのカメラマンもいきなりシャッターを切っているわけではなくて、はじめに撮りたい写真をイメージしてから撮っていますから」と佐藤さん。
とはいえ、パッと「こういう写真が撮りたい!」とイメージするのはなかなか難しいものですよね。そんなときは、instagramを見たり、写真集や雑誌を見て「この写真いいな」と思うアイデアを見つけておくことが大事なのだそう。
「ただ『いいな』と思うだけじゃいい写真は撮れないので、この写真はどういう光の使い方をしているのか、『こういう写真を撮るにはどうしたらいいだろう?』と分析することも大切ですね」とのことでした。
ポイント:写真のできあがりをイメージする!
光の向きは斜め逆光か横から!
撮りたい写真のイメージが膨らんだら、いよいよ撮影。ですが、その前に確認すべきポイントは光。お料理が運ばれてきたら、席に座りながらその場で撮り始めるという方、多いのではないでしょうか。
「撮影時、特に重要なのは光。横から光が差している状態か、斜め逆光での撮影がおすすめです。写真を撮る前に光が差している方向を確認するようにしましょう。
おいしそうな写真というものには、『立体感』と『照り』があります。『立体感』を作るには、影になる部分と明るい部分を作る必要があるので、逆光(手前に影が落ちる)や横からの光(光が刺していない方に影ができる)がポイントになってくるんです。逆に、順光(光が当たっている面)で撮ると、全部ハイライトになっちゃうので、のっぺりした写真になります。
また、『照り』を作るには斜め逆光にする必要があるんです」とのこと。
プロのカメラマンは斜め逆光から撮ることが多いそうですが、instagramにおいては横からの光の写真も人気とのことでした。横からの光、斜め逆光、それぞれ違った印象になるので、試しながら自分のお気に入りのテイストを見つけていくとよいかもしれませんね。
佐藤さんはこんな裏技も教えてくれました。
メニューや白いハンカチなどを光の方向と逆の方向に置くと、レフ板効果になるのだそう。真逆光の位置に置くと一番効率的ですが、カメラ側と重なり撮れなくなるので、斜め逆光から撮るのが◎。
また、蛍光灯などの照明よりは、自然光のやわらかい光で撮る方がおいしそうに撮れるとのこと。自宅で撮るのであれば、照明は消して窓辺から入る光に対して逆光か横から撮るとよいですよ。
ポイント:やわらかい斜め逆光か横からの光を利用する
カメラでできることを知ろう!
【明るさに関する機能】
さて、次は撮影するカメラの設定です。正確なかたちで、明るめにすることでおいしそうに撮ることができます。
まずは明るさについて。先ほど、「斜め逆光から撮る」と教えてもらいましたが、逆光から撮るとどうしても写真は暗くなってしまうもの。
そんなとき、iPhoneではピントを合わせたときの四角い枠の横に出てくる太陽(☀)のマークをタッチして、上にスライドすると明るくできます。飛び過ぎないように注意しながら調整するとよいでしょう。
※Android機種にも「±」や「露出補正」、「EVシフト」という機能が付いていることが多いので、そちらで補正できます。
光が変化する場所など、向きを変えると明るさやピントがコロコロ変わり、明るさを調整しにくい場合は、明るさやピントを合わせたい場所をタップし続けると、固定できる明るさ「AE/AFロック」という機能も便利。明るさもピントもロックできるので、固定した状態で好みの明るさに調整するとよいでしょう。
【正確なかたちで撮る機能】
instagramで、目を引くのが寄りの写真。スマホで見ることの多い写真は、寄ったアングルの方が被写体の魅力を伝えやすかったり、インパクトを与えます。しかし、画面いっぱいに撮りたいからといって、被写体に寄って撮影するのは「正確なかたちを撮る」という点では、あまりよくないのだそう。
「iPhoneなどのスマホカメラのレンズには広角レンズが付いていることがほとんど。広角レンズは広く撮れる一方、かたちが歪みやすいのが特徴なので、寄れば寄るほどかたちに歪みが出てしまいます(左の写真)。
歪みのない正確なかたちは望遠で撮ると可能になります。少し離れた状態からカメラのズーム機能を使い、プラスとマイナスの中間くらいにするといいですね(右の写真)。
画質は多少落ちてしまいますが、大きく引き伸ばしてプリントしたり、大画面で見るのではなく、スマホ画面で見るのであれば気にならない程度だと思います」。
確かに比べてみるとかたちはもちろん、印象も全然違いますね!
画質を落としたくない場合は外付けレンズを使用するとよいそうです。
佐藤さんのおすすめは「momentレンズ」。これを付けると画質を下げることなくズームすることができます。
ポイント:カメラアプリの設定を知ること!
構図を決めて、いざ撮影!
カメラの設定がわかったところで最後は構図を決めましょう。
「ときどき『あとでトリミングすればいい』と思っている人もいますが、instagramに載せる用の写真なら最初からスクエアで、縦の写真なら縦で撮るようにした方がいいです」と佐藤先生。お料理をどのように配置するのかというのは、撮りたい構図の中で検討する方がよいとのことです。
構図は写真の印象も左右しますし、センスが問われる難しいところですが、まずはinstagramなどで参考にしたい写真を真似するところからスタートでもよいのだとか。
「最初にお話した『撮りたい写真のイメージ』や真似したいinstagramの写真があるのなら、そのレイアウトを真似することは意外と簡単にできます。
右の写真は、真ん中にグラノーラがあって、その横に脇役としてのスプーンがくしゃっとさせた布の上に置いてある。その通りにやってみると構図は簡単に真似できるんです。光についても、影の方向を見ると光が来ている方向がわかりますよね。グラノーラの写真だと器の左側に影があるので、右側から光が来ているということになりますね。
そういう『撮りたい写真のイメージ』があると、構図やどちら側から撮るかなどが必然的に決まってきます。撮りながら悩むのではなく、撮るときにはやるべきことが決まっている状態にしておくのがいいですね」。
また、被写体を真ん中に配置すると整然とした印象、かわいい印象、物撮りっぽい印象になり、どちらかに少し寄せるとテーブルの様子が入り、周りの雰囲気も写すことができるとのことです。
余白の空け方ですが、上の写真では、サンドイッチが開いている方に余白を持たせていますが、このように口が開いている方や向いている方に余白を作るのもポイントなのだそう。具材がよく見えるように向きを調整したり、撮る高さを変えたり。ちょっと角度を変えるだけでいろんな面が見えるのが分かります。
今回撮影したカフェの床が芝生だったということで、芝生に置き真上から撮ったもの。
「このサンドイッチを撮ることで伝えたいことはなんだろうと考えたとき、今回は『Bird代官山』のサンドイッチを食べたということを伝えようと思ったんです。床が芝生というのもこのお店ならではですし、床に置いて撮ってみました。
さらに細かくバランス角度や位置を変えるだけで、印象がグッと変わるのが分かりますよね。どこから撮るかは自分の好きな位置でOKだけど、どの見え方がよいかを意識することが大切です」。芝生の上から撮るアイデアも、佐藤さんがさまざまな「撮りたい写真のイメージ」を持っているからこそ!と、思わず脱帽です。
ポイント:おいしそうに見える構図を研究すること!
加工でさらにおしゃれに!
せっかく撮った写真は、加工することでさらにレベルアップすることができます。
比べてみて歴然。雰囲気のある写真になっていますね。
「多くの場合、撮った写真はコントラストが低かったり、メリハリがないことが多いので
instagramなどで色や明るさ、コントラストなどを調整することをおすすめします。朝の光や蛍光灯など、光の関係で青みが出てしまうときがありますが、「暖かさ」で調整するだけで、格段に印象が変わります。アプリはいろいろ試してみたけど、instagramが一番使いやすく便利です」。
しかし、加工だけでは決しておいしそうな写真が撮れるわけではないことをお忘れなく。
「アイデア、光、カメラの設定、構図があっての良い写真ですので、アプリなどでの画像処理は良い写真を撮ってはじめて生かされるものです。今日お話したポイントをおさえ、おいしい写真を撮ってみてください」。
知っているようで知らない機能がたくさんあり、そして、ちょっとしたコツでびっくりするほどおいしそうに撮れることがわかりました。なんとなく撮るのではなく、「おいしい写真を撮る」ことを意識しながら撮りたいものです。ぜひ、おいしい食べ物や料理に出会った際は、今回のコツを思い出し撮ってみてください。
※★はすべてiPhone6sで撮影。
- 佐藤 朗(さとう あきら)
- 1978年生まれ。日本大学芸術学部卒業後、2003年にフォトグラファーとして独立。現在、書籍、雑誌、web、広告などで撮影。2011年に料理専門の写真教室フェリカスピコを立ち上げ、いままで約3000人が教室に参加している。
- 著書に「もっとおいしく撮れる!お料理写真10のコツ」(青春出版)
- Instagram:@felica_spico
- ■取材協力
- Bird 代官山
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