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    花生師 岡本典子さんの花と緑に囲まれた生活。

    フランスやヨーロッパのおうちでは花を飾る習慣が定着していると言われていますが、ここ数年日本でも、駅中の花屋さんが増えたり、スーパーで季節の花束が買えるようになったりと花がぐんと身近なものになってきていますね。私も仕事帰りに季節の花を買って自宅で飾ることが習慣になってきました。

    花が日常的なものとなると、いろいろなところで花に目が行くように。その中で花生師(はないけし)の岡本典子さんの存在を知りました。展示やイベント等で「素敵だな」と思う花がすべて岡本さんの作品だったのです。

     

    そこからSNSでチェックするようになり、岡本さんの花の取り入れ方はもちろん、お料理やインテリア等、普段の生活もとても素敵ですっかりファンに。

    花のことや日々の暮らしについてお話を伺おうと、岡本さんのご自宅にお邪魔してきました。

     

    花が身近にある環境で育ってきた

    —まず岡本さんが花の仕事をしようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

    岡本典子さん(以下、岡):もともと花は好きだったのですが、実は別の夢があって花を仕事にするという意識はなかったんです。ただ、進路を決めるタイミングで園芸という選択肢が出てきたのは、ハイカラでおしゃれな祖父の影響があったのだと思います。祖父の庭はおしゃれな畑や花があり、それこそ絵本に出てきそうなイメージで。その影響もあり母も花や庭いじりが好きでした。そういった花が身近にある環境で育ってきたので、園芸という選択肢が出てきたのは自然なものだったかもしれません。

    —そこから花の道に進み始められたんですね?

    岡:はい。まず日本で短大の園芸学部に進学しました。そしたら案の定花の世界にすっかりはまってしまって。

    もともと海外のアンティークや英語が好きで、いつか海外留学をしたいと決めていたこともあり、短大を卒業後にイギリスへ留学しました。イギリスでは花屋さんで働きながら国家技能資格の最高レベルを外国人としては最年少で取得して、帰国しました。

    —最年少取得者!すごいですね!そして、そこから帰国して実際に仕事を始められる経緯はどういったものだったのですか?

    岡:日本での花屋さんの経験はゼロだったのですが、友人の行動力のおかげもあって、大手の花屋さんで勤めることになりました。六本木という立地もあり同僚やお客様に外国人の方も多かったので、英語を生かしながら花の仕入れや買い付けなど、たくさんのことを任せてもらい充実した毎日でしたね。

    その頃、たまたま友人の紹介で教会の生け込みをしたのですが、それがライフスタイルショップのプロデューサーの目に留まり、一緒にやらないかと誘っていただいて、花のフロアを任せてもらうことになりました。家具や雑貨の世界で活躍されている方々と一緒にお店を作り上げていく作業はとても刺激的で貴重な経験でした。

    しかし、そのうち目の行き届く範囲で自分のこだわりを表現してやっていきたいという気持ちも芽生え始め、独立しすることにしたんです。

    その後、これもまたご縁があり、とても小さなスペースで私個人の花屋さん『Tiny N(タイニーエヌ)』を二子玉川にオープンすることができました。「Tiny」という言葉は小さい、狭いなどの意味があるんですが、小さなことの積み重ねを大事にしていくという意味を込めてつけました。

    —現在はどういったスタイルでお仕事されているんですか?

    岡:お店は6年ほど続けた後に閉めました。今は店舗を持たず世田谷にアトリエを構え、撮影やワークショップ、展示や生け込み等の仕事をフリーでやっています。完全に1人というスタイルになり、よりこだわりを通せるということはやはり精神的に助けられていますね。いざという時は友人知人に声を掛けてチームでやることもできるので。基本的に1月と8月は仕事をセーブして家族との時間を過ごす様にしています。実は、二子玉川に店舗を構えていた頃から1月と8月はお休みしていたんですけどね(笑)。

     

    周りを巻き込み、理解してもらう

    お話を伺っていると、岡本さんが何か新しいステージに立つタイミングで友人や色々な人とのご縁が絶妙なタイミングでぴたっとはまってスタートしているよう。その吸引力は岡本さんの独創性のあるセンスと魅力的な人間性なのかなと話していて思いました。

    自然体でありながらもあふれる独創性や感性、こだわりがとても魅力的でますますファンに。また、仕事だけでなく家族の時間を大切に楽しんでいる姿も同じ女性として印象的でした。

    「フリーで活動されているとプライベートと仕事の境目が分かりにくくなるのでは?」と伺ってみたところ、「仕事も家事も家族を巻き込んじゃいますね。子どもにもお母さんは仕事だからって理解してもらって、できることは自分でやるように言っています」とのこと。ちなみに取材の日、娘さんがいらっしゃいましたが、ケーキを切ってくれたりとしっかりとお手伝いをしてくれていました。いろんなことに家族を巻き込む。それを家族みんなが楽しんでいる、そんな空気が岡本家には漂っていました。

     

    アンティークな家具と花と緑があふれるインテリア

    ご自宅のインテリアもとても素敵で、どこをとっても絵になるお店のような雰囲気。空間になじむ花の取り入れ方が詰まったご自宅を紹介したいと思います。

    アンティークのキャビネットの中や上にうねりのある枝もの、ドライフラワーが無造作に置かれています。アンティークのキャビネットとドライフラワーならではのカラーがベストマッチ。

    窓際の花は、お庭から摘んできてそのまま活けたような、ラフな雰囲気が外国っぽいですね。花の高さを変えたり、吊るしたりと高低差を出すことで、バランスよくまとまるのだとか。

    イベントで使った花の中には希少なものもあるので、ドライにして飾ることもあるのだそうです。

    壁面にかけたりガラス棚に飾ったりと多様な見せ方は参考になります。

    窓際のウッドベンチに置かれた大ぶりの枝ぶりがダイナミックな雰囲気の鉢もの。切り花だけじゃなく、手入れが簡単で育てやすい鉢ものは気軽に取り入れやすいですね。

    ベランダのウッドデッキは旦那様がDIYしたのだそう。鉢ものの花やグリーンが溢れます。シャビーな鉢にフレッシュなグリーンが映えますね。

    玄関には生花とドライフラワーがたくさん。異質同士の組み合わせも岡本さん独特の感性で一体感が。咲いている花、朽ちて行く過程、ドライになった状態とそれぞれの美しさを感じられます。

    たくさんの花やグリーンが溢れるご自宅には、活ける、吊るす、キャビネットの中や上に置く、と空間をフルに使った真似したくなる花の活け方や楽しみ方がたくさん。

    岡本さんのライフスタイル同様、がんばりすぎず、変化をも楽しむ花との関わり方が垣間見えたような気がします。

    次回は、岡本さんにお部屋で花を飾るときの生け方を教えてもらいます。お楽しみに!

     

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