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多すぎるモノを整理することで時間を得た、私の断捨離生活

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多すぎるモノを整理することで時間を得た、私の断捨離生活

日々、溢れかえるモノや情報に囲まれ、多くのモノを所有しながらも大事なモノを見失いがちな現代人。そうした反動からか、不要なモノを手放す「断捨離」や最小限のモノだけで生活する「ミニマリズム」というライフスタイルにも注目が集まっています。

都内から海にほど近い神奈川県の鵠沼海岸へ住まいを移し、2年ほどかけて身の回りのモノを次々と整理した結果、それまで気付くことのできなかった大切なものを手に入れることができたというイラストレーターの兎村彩野さん。

その大切なものとは「13月の贈り物」。モノを減らし、生活を整える中で手に入れることができた「時間」のことを意味するのだそう。

「以前はカラフルなモノに埋め尽くされたお店のような部屋の中で、いつも忙しい忙しいと言って暮らしていた」と話す兎村さん。モノを減らしたことによって、本当に大切なものだけをきちんと選べるようになり、新たな視点で人生を見つめられるようになったそうです。そんな兎村さんに「13月の贈り物」を手にするまでの経緯をお話いただきました。

 

  • 兎村 彩野(うさむら あやの)
  • イラストレーター、アートディレクター。
  • 1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始し、17歳でフリーランスに。子どもや女性向けの絵を得意する。2014年よりドイツの万年質LAMY1本で描く「LAMY Sketch」が人気になる。
  • HP:TO2KAKU
  • HP:AYANO USAMURA
  • 今回のお話に関係するブログ:「13月の贈り物

 

多すぎるモノのせいで失っていた時間

—兎村さんが、「モノを減らそう!」と思ったきっかけは何だったのでしょうか?

兎村彩野さん(以下、兎村):今の夫と付き合い始めた当初、家に遊びに来た彼に「彩ちゃんの家は床が狭いね」と言われたんです。当時の私の住んでいた部屋は、映画のセットのように、雑貨や服が多くて。私自身もそれが自分らしさだと思っていました。

でも、彼の家に遊びに行ってみると、すっきりしたシンプルな部屋でびっくりしたことを覚えています。

その時、彼に「いつも『忙しい』と口癖のように言っているけれど、もう少し部屋を整理したり、モノを減らしていくとモノを探す時間が今よりも減るよね。毎日の5分10分が積み重なって数年も経つと、とても長い時間が手に入るんじゃない?『忙しい』と言って失っている時間は、もしかすると多すぎるモノのせいかもしれないよ」と言われたんです。それを聞いてハッとしました。

そこで、人生で初めて「モノを減らしてみよう!」と思ったのがはじまりです。

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—実際にどんなことからはじめたんですか?

兎村:着ていない服や使わない趣味の道具をレンタル倉庫に収納し、時間がある時にネットオークションやフリーマーケットで手放していきました。専用の通帳も作り、売れた分は一度全部貯金してみました。残高が増えていくのを数字で見ることで、いままでどれだけの着ない服や気分で始めた趣味にお金を使っていたか、クローゼットにしまい込んでいたか、理解できました。

貯金の金額を見て、この何倍もの金額を買い物という消費に費やしていたのかと思ったら、本当にゾッとしました。現実を知って目が覚めた感じです。

沢山買うために、沢山働いて、物で溢れた部屋で、いつも物を探して、いつも忙しい。私は消費するために、時間を失ってしまっていたことをリアルに実感しました。可視化して自分自身を客観的に捉えられたと思います。

冷静に客観的に現実が見えたことで、それまで消費で手に入れていたモノは、実は大したモノじゃないと思うようになりました。消費のために自分の「時間(人生)」を切り売りしていただけなのだと。

それなら、消費するだけのモノを減らすことができれば、自分の時間は増やせるのかもしれないと気付きました。人生の軸が「お金・物・消費」から「時間」へ切り替わった瞬間でした。

 

モノを手放す恐怖を乗り越えて、気づいたこと

—なるほど。世間で流行っている「断捨離」はモノを捨てなくてはいけない、買ってはいけないと言いようなイメージでしたが、それとも少し違う感じがしますね。

兎村:断捨離っていうと、モノを捨てたり減らしたり、買わないことだと思いがちですよね。私は、どちらかと言うと「整理整頓」に近いのかなと思っています。整理整頓していくと、結果的にモノが減っていくというだけだと。

SONY DSC兎村さんはマンガ、夫はレコード。お互いの譲れないモノは手放さなくてもいいと決めているそう。

—旦那さんと出会う以前にも、ご自身で整理整頓をしたり、モノを減らそうと思ったことはあるのですか?

兎村:全くなかったですね。それこそ「全部持っていたい」という思いが強かったです。それまでに集めたモノを手放してしまったら、私自身の個性も失うことになると思っていて…。モノを手放すことがすごく怖かったです。

でもそれって、モノの中に私を閉じ込めていただけなんだと気が付きました。夫と出会い「モノを持たないこと」を知り、整理整頓してきたこの2年間を過ごさなければ、きっと分からなかったと思います。

—当初、モノを手放すのが怖かったということですが、始めてからはスムーズにいったのですか?

兎村:最初の3ヶ月は毎日震えていました(笑)。大げさな話ではなく、不安で仕方がなかったです。私の場合、服ももちろんですが服以外の人間関係や仕事など、暮らしに関わるすべてをひとつずつ整理整頓していったので本当にしんどかったですね。半年経ってようやく「世界の酸素が増えている」と感じられるようになりました。

−「世界の酸素が増えている」とは、具体的にいうとどんな感じなのでしょう?

兎村:それまでモノも仕事も人間関係も何でもかんでも磁石のように自分の周りに吸い寄せてしまっていました。整理整頓の中でひとつひとつ外していきました。それらが減るに従って、いい意味でものごととの距離感を丁度よく保てるようになっていったんです。

私の周りにくっついていて息苦しくさせていた余分なモノが少しずつ剥がれていったことで、「酸素が増えたなぁ」と感じたんだと思います。呼吸しやすいって感じです。

 

モノを減らすことができ、芽生えた自信

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−「断捨離」をする際の心の持ちようなどありましたら教えて下さい。

兎村:「断捨離するぞ!」とあまり思いつめない方がいいと思います。私自身、もともと断捨離をはじめた時も、「ダメだったらやめればいいんじゃない」という話を夫としていたんです。そんな感じで「ダメだったらもとに戻そう」という気持ちの余裕があったから、取り組めたというのもあります。

1年が経った時にようやく、「こんなにモノを減らすことができたんだから、自分自身もちょっとは変われたかな」と、自信が持てるようになりました。以前は衣替えに2、3日かかっていましたが、今では1時間ほどで済ませることができます。手持ちの服がすっきりと一目で確認できるのはなかなか気持ちいいですね。最初は不安でしたが、2年経った今、あの頃の物に溢れた生活には戻りたくないです(笑)

  • 【兎村さんに聞く!断捨離時の心の持ちよう】
  • ・最初の3ヶ月は怯えてもいい
  • ・絶対に「買ってはダメ!」ではなく、いらないモノは買わない
  • ・「ダメだったらやめてもいいんだ」という気持ちではじめる

 

−断捨離を続けるコツなどはありますか?

兎村:断捨離と言っても、「何も買わない」ということではないと思っています。続けていくと物欲は減っていきますが、今でも時々は服を買ったりしています。
たとえば、去年は冬物のスカートを断捨離したんですが、ほとんどのスカートを一度手放して、1枚とびっきりお気に入りの質の良い物を探しました。きちんと試着して、手触りなども確認して、シルエットが流行に左右されないか検討して、迷いのない本当に必要な1枚を選びました。

−モノの選び方などは、「断捨離」していく中で変化しましたか?

兎村:モノや洋服に関して、以前は見た目のかわいさや一目惚れで選んでいましたが、今はそのものが持っている素材感や縫製、作り手などそうしたディテールや背景も踏まえて選ぶようになりました。物は少なくなりましたが、その分、1つずつへの愛情は深くなりました。手入れや扱いが丁寧になりました。

−モノを減らした結果、選ぶポイントや観点も変わっていったのですね。

兎村:そうですね。選ぶポイントが変わったことで、モノを買う前に一度立ち止まって「本当に必要か?本当に欲しいのか?」とゆっくり丁寧に検討するようにもなりましたね。

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世間で話題となった「断捨離」とも近いけれど、少し違う。兎村さんが実践された単にモノを減らすのではなく、必要なモノを選びながら整理整頓していくという方法は、あらゆる情報やモノに囲まれて生活する私たちに、新しい考え方を教えてくれました。

「断捨離」というとどうしても、「モノを捨てなければならない」という強い意思が必要に思ってしまいます。

しかし、兎村さんは「『断捨離』とは、あらゆるものごとに対して『〜しなければならない』という思い込みを捨てることでもあると思うんです」ともおっしゃっていました。「断捨離」に対する思い込みや既成概念を捨て、自分のできるペースで始めていくとよいのかもしれませんね。

 

後編(https://parismag.jp/life/3188)では、兎村さんが「断捨離」を経て、どのような変化があったのかを伺います。

 

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