PARIS magが気になる方々へ会いに行き、「小さなしあわせ」のヒントを教えてもらうインタビュー企画。今回のお相手は、モデルや女優として活躍中の青柳文子さんです。
2016年に結婚し、現在は2児の母でもある青柳さん。今年5月には日々の想いを赤裸々に綴ったフォトエッセイ『あか』を出版。素直で飾らない等身大の姿が、同世代の女性を中心に支持されています。「実は私、フランス人っぽいって言われたことがあるんです」と話す彼女に、毎日を心地よく過ごす秘訣や「小さなしあわせ」について話を聞きました。
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モデル・女優 青柳文子
独創的な世界観とセンスで20代女性の支持を集める。雜誌の他、映画、TVドラマ、バラエティ番組、アーティストMVと多方面で活躍中。企業商品プロデュースや執筆業など様々な分野で多彩な才能を発揮している。2021年にはフォトエッセイ『あか』を上梓。
自分が心地よいと感じるものを意識的に取り入れるように
―書籍の出版おめでとうございます!家族や子育てに対する青柳さんの想いが率直に綴られていて、読むと心が晴れる1冊だと感じました。
青柳さん(以下、敬称略):昨年の春に本を出さないかという話をもらって、それから少しずつ書き始めました。ヨーロッパ旅行についての部分も、当時を思い出しながら形にしていって。旅行していたときにもInstagramで旅の写真を載せようと思っていたんですけど、なかなかできずにいたので、こうやって本に詳しく書くことができてよかったと感じています。
―仕事や家事、育児の間の息抜きについて書かれた「羽の伸ばし方」という章がとても心に残りました。最近はどんなときに「小さなしあわせ」を感じますか?
青柳:寝る時間です(笑)。子どもが大きくなって以前よりゆったり過ごせるようになったので、休みたいときにちゃんと寝るようにしています。私、本当は息抜きをするのが下手なんですよ。1回何かを始めちゃうと、息をしないほど集中しちゃうようなタイプで。集中力がすごいから人と話すと神経がすり減っちゃうし、疲れやすいし…。
だからこそ、自分が何をしたら心地よくなるのかを考えて、意識的に取り入れるようにしています。普通の人よりキャパが狭いから、めちゃくちゃ自分を甘やかしちゃってますけど(笑)。
―仕事と子育てをうまく両立しているように感じるのですが、どのようにバランスを取っているのでしょうか。
青柳:いやいや、全然バランス取れてないです。日々試行錯誤していますよ。今は家でできる仕事を優先して、なるべく子どもたちと一緒にいられるようにしています。前まではいっぱい働いて上を目指したいという気持ちもあったのですが、今は大事なものが少し変わったというか。
―その時々の気持ちで割合を変えるというのも大事な視点かもしれないですね。
青柳:やりたい時にバーっと働いて、休む時に休むのが理想ですね。そういうところもフランス人に近いのかな?平日はしっかり働いて、長いバカンスを取るみたいな。日本もそうなったらいいのにと思います。
子どもたちには、自分で答えを見つけて羽ばたいてもらいたい
―青柳さんの子育てのモットーや、大切にしている点について教えてください。
青柳:「可能性を潰したくない」と常に思っています。自分で考えて答えを見つけていってほしいなって。親の言うことってけっこう影響が大きいと思うので、あまり価値観を押し付けないようにしたいですね。伸び伸びと、自分の見た世界で羽ばたいてくれたらうれしいです。
―なるほど。何でもかんでも答えを与えないようにするのは大事かもしれません。
青柳:何も教えなくても、いろいろな体験をする中で自ら気づいてわかっていくと思うんですよ。「こういう道もあるよ」と誘導はしますが、選択肢をたくさん提示した上で、最終的にはちゃんと自分で考えてほしいです。うちの子どもはけっこう頑固なので大丈夫かなと思うんですけど。
―自分で考える力は、将来とても大切になりそうですよね。
青柳:コロナ禍によってこれまで当たり前だったものが崩れて、ある意味自由になっている部分もあるのかなって感じています。自分にとって心地良い場所を自分で探していけるようになった気もするんです。子どもたちには、世の中の物事に対して自分がどう感じて、何をしたいのかをきちんと理解した上で、自分に合う居場所を見つけていってほしいですね。
―青柳さんを見ていると、時には周りから影響を受けつつも、とても強い芯があるんだなというのを感じます。
青柳:私、すっごいしならせても、すぐ真っ直ぐに戻るんです。いろんなところに寄り道してもすぐに戻ってくるというか。だから、子どもたちにも今は自分の芯を育ててもらいたいと思っています。
我慢するのではなくちゃんと意見をすることから始まる
―ヨーロッパ旅行で現地のライフスタイルに影響を受けた部分も多かったと思うのですが、子育ての面で何か変化はありましたか?
青柳:昔の自分は、いろんな考えに囚われて「こうしなきゃいけない」って思いが強かったと思うんです。でも、海外の自由な子育てを目にして「日本の当たり前に従う必要はない」ということに気づけたので、すごく気が楽になりました。
―具体的にどんなところに魅力を感じましたか。
青柳:ヨーロッパは、社会全体が子どもに対しての受け入れ体制が整っている感じがしたんです。周りにいる知らない人たちも子どものことを気にかけてくれるし、何かにつけて助けてくれて。優しいけれど、注意すべきことはちゃんと注意してくれるんです。変によそよそしさがないというか、ちゃんと関わり合いがあるように感じました。
―日本の、特に都市部ではあまりそういうコミュニケーションがないですもんね。「手伝った方がいいのかな」と思ったときに「声をかけたら嫌がられちゃうかも」という遠慮が勝ってしまうことも多そうです。
青柳:ヨーロッパの人は嫌なことは嫌だとはっきり言うイメージがあるんですけど、何かしてほしくないときにきっぱり断ることができるのも大きな違いかもしれませんね。日本は感情表現がストレートじゃないから「本当はこう思ってるんじゃないかな」ってお互い勘繰ってしまうというか。私はとても正直なタイプなので、正直すぎるゆえに「逆に裏があるんじゃないか?」と思われてしまったこともあるくらい(笑)。
ー「フランス人っぽいと言われたことがある」とおっしゃっていましたけど、そうやって思ったことを正直に口に出すところもヨーロッパ的なのかもしれませんね。
青柳:ちゃんと言わないと、結局無理が溜まってしまうから…。はっきり言ってあげたほうが親切だなと思っています。みんなが少しずつ無理して我慢するより、それぞれの意見をぶつけ合って着地点を見つけるほうがヘルシーですよね。それができるようにならないと、多様性を尊重することもできない気がします。
―たしかにそうですね。
青柳:みんなもっと社会に意見していいと思います!たまにフォロワーの方々からお悩み相談を受けるんですけど、みんな悩んでいるだけのことが多くて。でも、「意見したら何か変わるかもよ」って私は思うんです。1回試してみたら意外とイケたりもするし。私、高校時代に校則を変えたことがあるんですよ。
―え、すごい!
青柳:寒くてスカートの下にタイツを履いていたら、校則違反だと注意されて。でも、そのほうが暖かいし、他の学校はOKだし…って合理性をプレゼンしたら、校則を変えてもらえたんです。あとは、とある行事を作って欲しいと校長宛に手紙を書きました。そしたら無事に認めてもらえて、今も母校ではその行事が続いているみたいです。
―後輩たちにとって“伝説の先輩”みたいになってそうですね(笑)。アクションを起こすことの大切さを感じます。
青柳:ちゃんと筋道立てて意見を主張すれば、変わることもあるんだなって。何も言わないのは何も思ってないのと一緒にされちゃうから、みんなもっと意見していいのにって思います。自分にとって心地良い場所を探すのも大切だけど、自分の力でその場所を心地良くすることも時には必要なのかなと。
「完璧じゃなくていいんだよ」ってことを伝えたい
― 書籍の中の「底辺でいさせて」という章もすごくおもしろかったです。遅刻が多かったりしてダメなところもあるけれど、他の部分でカバーできることもあるし、それぞれが自分の得意分野を伸ばしていけばいいんじゃないかって。
青柳:何かが苦手な人にも他に得意なものがあったりするし、大切だと感じるものも人それぞれ違うと思うんです。私は、器用じゃない人の気持ちはよくわかるので、そういう人には優しくありたいですね。「羽の伸ばし方」で書いたこともそうですけど、もっと力を抜いて自分なりのやり方でいいんだよってことを伝えたい。私が発信することを通じて、「がんばりすぎなくてもいいんだ」って気持ちを楽にしてもらえたらうれしいです。
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インタビュー中もまっすぐに自分の言葉で話す姿が印象的だった青柳さん。無理をせずに自分らしく、強い芯を持っているところが “フランス人っぽい”と言われる所以なのかもしれません。「完璧じゃなくて底辺でもいい」という考え方にも勇気をもらいました。
青柳文子さん、素敵なお話をありがとうございました!
撮影:忠地七緒
- ■書籍情報
- 『あか』
- 著者:青柳文子
- 発売元:三栄書房
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