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    横浜美術館30周年記念!『ルノワールとパリに恋した12人の画家たち』へ

    コンコルド広場の隣、チュイルリー公園のセーヌ川沿いに位置するオランジュリー美術館。チュイルリー宮殿のオレンジ温室だった建物を美術館にしたオランジュリー美術館には、ルノワールをはじめ、マティス、モディリアーニといった印象派の名作が所蔵されています。

    横浜美術館(撮影:笠木靖之)

    そのオランジュリー美術館が所蔵する印象派および、エコール・ド・パリの画家たちが描いた作品を紹介する展覧会『横浜美術館開館30周年記念 オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち』が2019年9月21日(土)〜2020年1月13日(月・祝)まで開催中です。

    横浜美術館開館30周年を記念したこの展覧会の魅力をお届けします!

     

    伝説の若き画商ポール・ギヨームの貴重なコレクション

    セーヌ川のほとりにある瀟洒な佇まいのオランジュリー美術館は、クロード・モネが睡蓮を描いた大型連作を展示する場所として使われるようになりました。美術館が所蔵する作品は、146点の印象派から近代美術の名作ばかり。

    横浜美術館での展示の様子。ポール・ギヨーム邸の写真を壁一面に飾るなど、当時を想像させる展示空間

    その名作の数々は画商でありコレクターでもあったポール・ギヨーム(1891-1934)のコレクションです。ギヨームは20世紀初頭のパリ・モンマルトルに住む前衛芸術家たちと交流を持った若き画商でした。アメデオ・モディリアーニやシャイム・スーティンを発掘したギヨームは、42歳という若さで他界。その後は妻ドメニカが相続しますが、古典的な作品を好むドメニカにより抽象的な作品は売却され、シスレー、モネ、セザンヌ、ルノワールといった華やかな作品を新しく加えます。

    そのため、オランジュリー美術館の作品には伝統的なものから、革新的なものまで幅広く所蔵されているのです。

     

    ひとりの画商の生涯からパリの景色を垣間見る

    今回の『横浜美術館開館30周年記念 オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち』では、パリを感じる名作、69点が21年ぶりにまとまって来日。当時の時代の空気やエッセンスが詰まった数々の作品は画家ごとに展示され、画家のプライベートなエピソードやギヨームとの関係についても紹介されています。ここから展覧会の見どころを少しだけご紹介。

    「アルジャントゥイユ」(クロード・モネ|1875年)

    パリから北西へ10キロ離れたセール川沿いにある町で、モネは7年ほどこの地に住んだそう。水面の光を研究するため、船を水上アトリエに改造。この絵は、その水上アトリエからの風景だと言われています。

    左・「ピアノを弾く少女たち」(オーギュスト・ルノワール|1892年頃)右・「ピアノを弾くイヴォンヌとクリスティーヌ・ルロル」(オーギュスト・ルノワール|1897-1898年頃)

    本展覧会のシンボル的作品。「ピアノを弾く少女たち」は、「二人の少女の肖像」(同じくルノワールの作品)と同じモデルだと言われており、ルノワール家が舞台と考えられています。一方の「ピアノを弾くイヴォンヌとクリスティーヌ・ルロル」は画家アンリ・ルロルの2人娘。背景にはルロルが収集したドガの作品が飾られています。また、ルロルはドビュッシーとも親交があり、家に招いては演奏会を行なっていたそう。この絵の背後にはドビュッシーがいたのかもしれませんね!

    「アルルカンとピエロ」(アンドレ・ドラン|1924年頃)

    ギヨームの依頼により作成された「アルルカンとピエロ」は、ギヨームにとってもドランにとっても重要な作品になりました。陽気な衣装と音楽に似合わない真面目な表情には哀愁が漂います。本作はギヨーム邸の居間の中央に飾られていました。

    左:「大きな帽子を被るポール・ギヨーム夫人の肖像」(アンドレ・ドラン|1928-1929年)と右:「ポール・ギヨームの肖像」(アンドレ・ドラン|1919年)

    ドランはギヨームと長年にわたり強い交流がありました。ドランはギヨームと契約を結び、その関係はギヨームの没年まで続いたそうです。

    フランスらしい美的感覚を意識した、左右対称の整然とした展示風景も今回の見どころの1つ

    左:「わらひもを巻いた壺、砂糖壺、りんご」(ポール・セザンヌ|1890-1893年)と右「りんごとビスケット」(ポール・セザンヌ|1879-1880年頃)

    セザンヌの傑作のひとつと言われている「りんごとビスケット」は、セザンヌが静物画を熟知していたことを示す作品。ドメニカはこの作品を購入するために、巨額の費用を支払ったそうです。

    左:「人形を持つ子ども」(アンリ・ルソー|1892年頃)、中:「婚礼」(アンリ・ルソー|1905年頃)、「ジュニエ爺さんの二輪馬車」(アンリ・ルソー|1908年)

    独特のタッチが印象的なルソーの3つの名作。“プリミティヴィスム(素朴派)”と言われたルソーの作品は、当時の批評家たちに賞賛されました。

    「マドモアゼル・シャネルの肖像」(マリー・ローランサン|1923年)

    ファッションデザイナーとしての地位を確立したココ・シャネルを描いた作品。しかし、この作品を気に入らなかったシャネルは受け取りを拒否したとういう逸話も!

    オランジュリー美術館には古典的なポーズの裸婦像など“秩序への回帰”を特徴とするパブロ・ピカソの作品が多くコレクションされています。ギヨームコレクションには、ピカソらしいキュビズム期の作品がありません。それはギヨームの死後、妻のドメニカが売却したからだとか。

    会場にはギヨーム邸のミニチュアも展示。当時どんな作品に囲まれて暮らしていたのか、手に取るようにわかります。ギヨームの邸宅や画廊の場所がプロットされた地図も展示されているので、「パリのあの辺りね」と想像してみるのも楽しそう。

    また、取材に訪れた日は、音声ガイドを務めた女優・上白石萌音さんとピアニスト・福間洸太朗さんによるスペシャルコラボレーションが実現。なんと、パリの名曲、エリック・サティの『ジュ・トゥ・ヴ』を披露してくれました!

    福間さんが演奏したのは、ルノワール『ピアノを弾く少女たち』と同型であるプレイエル社のもの。現在は生産を中止している、貴重なピアノなんです。このピアノは11月20日(水)まで横浜美術館グランドギャラリー展示されているのでお見逃しなく。

     

    限定アイテムも!ミュージアムショップも必見

    美術館の最後のお楽しみといえば、ミュージアムショップ。今回の『ルノワールとパリに恋した12人の画家たち』に登場した作品の図録やポストカード、限定アイテム、お菓子などさまざまなグッズが並んでいます。

    トートバッグには、ルノワールとパリに恋した12人の画家たちの似顔絵が!

    横浜観光を楽しむリサとガスパールが描かれたクリアファイル(右)

    そして、パリと言えばリサとガスパールも横浜美術館で待っていますよ。この展覧会限定のマスコットキーホルダーやクリアファイルが登場!

    芸術の秋にぴったり!画家のまねっこをするリサとガスパールのキーチェーン

    また、カステラで有名な『文明堂』とのコラボ商品も会場にて先行販売!横浜の街が描かれた限定パッケージはお土産にもぴったりです。

    リサとガスパールの焼印がかわいらしいどら焼きも!

    パリの現代芸術界に多大な影響を与えたポール・ギヨーム。そのコレクションを辿れば、1800年代後半〜1900年代前半のパリの景色が見えてきます。その頃のパリは、1900年にパリ万国博覧会が開催され“ベル・エポック(良き時代)”と呼ばれた華やかな時代。芸術の秋、横浜美術館で当時のパリの香りに触れてみませんか?

     

    • ■イベント情報
    • 『横浜美術館開館30周年記念 オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち』
    • 会場:横浜美術館(横浜市西区みなとみらい3-4-1)
    • 会期:2019年9月21日(土) 2020年1月13日(月・祝)
    • 休館日:毎週木曜日(12月26日は開館)、2019年12月28日(土)~2020年1月2日(木)
    • 詳しくはこちら→https://artexhibition.jp/orangerie2019/

     

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