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    パリのブロカントショップ『Brocante Petite LULU』に聞く、アンティークの楽しみ

    長い時間を経て独特の風合いを得たカトラリー、当時の暮らしを感じさせるデザインが施された食器、職人の手仕事による不揃いさや温かみを感じさせるグラス…。

    フランスでは、100年以上前に作られたものをアンティーク、それ以降のものをブロカントと呼び、どちらもフランス人の日常に欠かせないアイテムとなっています。

    日本でも最近では、蚤の市が開催されたり、ブロカントを扱うお店が増え、古いものに魅力を感じる人が増えてきているのではないでしょうか?

    先日『MOON mica takahashi COFFEE SALON』で開催されたイベント「3人のパリジェンヌ+いたずらパリジャン」の様子

    そこで今回は、パリでアンティークやブロカントを扱うお店『Brocante Petite LULU』を経営しているビエルサ綾子さんにアンティークやブロカントの魅力を教えていただくことにしました。

     

    アンティークに興味をもつきっかけとなった1枚のお皿

    フランスに住むようになって約20年という綾子さんは、パリ中のホテルを撮影しているフォトグラファーのクリストフさんと「今週末はどのブロカントに行く?」と聞くほどブロカント好きな5歳の女の子LULUちゃんと共にパリに隣接するヴァンセンヌの森の近くに暮らしています。

    「もともとは古いものにそこまで興味はなく、むしろ新しいものが好きだった」という綾子さんがアンティークやブロカントを好きになったきっかけは1枚のお皿なのだそう。

    綾子さんが最初に興味を持ったというプレート

    それがこちら。今は存在しないパリのモニュメントがグリザイユ(モノクロームで描かれた絵画)で描かれている、1810年頃にクレイユ窯で作られた変形オクトゴナル(八角形)のお皿です。

    「クリストフはモンマルトルに住んでいた骨董好きの祖父の影響もあり、子どもの頃からクリニャンクールの蚤の市に行っており、古いものが大好き。彼と一緒にときどき蚤の市へ行っていたのですが、正直私はあまり興味がなかったのです。でも、この1枚のお皿に出会ったのがきっかけで興味を持つようになりました。

    洗練されたデザインとファイアンス・フィーヌでできた軽さに驚くとともに、この建物はどこにあったのだろうという興味がわき、フランスの歴史・文化がギュッと凝縮したものが自分の目の前にあることに、とにかくワクワクしました。絵画や写真以外の方法で200年前の風景などを知ることができるんだ!と感動し、そこからのめり込んでいったんです」と綾子さん。

    200年前というと日本では江戸時代。その当時のお皿を実際に手に持つことができ、重さや軽さ、職人の手仕事によるあたたかみを感じられるものというのはそうそうないですよね。

    そこからすっかりアンティークやブロカントの魅力に夢中になり、現在は自宅の一部をアトリエとしてオープンしています。お店に売っているものはフランス各地の蚤の市、ブティックで購入したものを中心に、オークションで手に入れたものも。

    当時の手仕事ならではの質感や同じ模様、サイズでも少しずつ異なる表情には、今の大量生産品にはないブロカントやアンティークならではの魅力があります。

     

    フランス人が大切にする「アール・ド・ヴィーヴル」

    「フランス人はとにかくブロカントが大好き」と綾子さん。毎週末のようにそこかしこで蚤の市が開かれており、朝から蚤の市へ行き、それぞれが好きなものを探していると言います。

    「フランスには、『Art de vivre(アール・ド・ヴィーヴル=フランス流生活美学)」という言葉があるんです。そんなArt de vivreを楽しむのがフランス人。

    ついスーパーなどで買ってしまいそうなものも、『そんなんじゃだめよ。簡単すぎる!』と時間をかけて、好きなものを探すんです。その過程も楽しむんですよね。そうやって、フランス人は人生を豊かに楽しんでいるのだと思います」。

    とはいえ、蚤の市やお店などで、自分好みのものを見つけるのは至難の業。「これ!」というものを見つけるために、何年も蚤の市へ通ったなんていう話も珍しくないのだとか。

    蚤の市でお気に入りも見つけるコツを聞いてみたところ、「朝一番に行くことですね!」との答えが。いいものは1時間もしないうちになくなってしまうとのことなので、旅行でフランスの蚤の市を訪れる際は朝一を狙ってみると◎。

    ちなみにおすすめの蚤の市を聞いてみたところ、綾子さん一押しは5月1日にシャンボールで開催される蚤の市とのこと。

    蚤の市は街によって売っているもののラインナップが違うのも見どころのひとつ。「特にお城のある街がおもしろい」と教えてくれました。

    また、パリの『ヴァンヴの蚤の市』や『クリニャンクールの蚤の市』といった常設の蚤の市は世界中から観光客が集まるため、どうしても値段が高くなっているのだそう。綾子さんたちは、蚤の市の開催情報がまとめられているWEBサイトなどで探しているとのことでした。フランスでは必ずどこかで蚤の市が開かれているので、チェックしてみると◎。

    「蚤の市に行けばかならず、お気に入りに出会えるというわけではありません。今日はいいものを見つけた!という日もあれば、ない日もある。フランス人もそういう積み重ねでお気に入りを見つけています。

    自分で苦労して見つけたから大切にするし、思いがこもるんですよね。それを代々受け継いでいくことも珍しくありません」と綾子さんが言うように、なかなかお気に入りが見つからないからこそ、見つけた喜びがあり、愛着も芽生え、いつまでも大切にしようと思うのかもしれませんね。

     

    不便なときもあるけれど、だから特別なものに

    長い時間を経て、出会えたブロカントやアンティークのものは、壊れやすいので扱いに注意が必要なこともあります。食器洗い機、電子レンジには使えないものも多く、食べ物を置いたまま冷蔵庫に入れておくと色移りしてしまうこともあり不便な一面も。でもだからこそ大切にできますし、大切な食器で楽しむ食事は特別なものになります。

    「食器洗い機に入れられないブロカントのお皿は忙しい朝に正直面倒ではあるけれど、お気に入りのお皿で1日をスタートすると心が豊かになります。日常使いがもったいない大切なアンティークもありますが、そういうものは週末に家族が揃う食卓や誕生日やクリスマスなどに使っています。

    お気に入りのものがあると気持ちが和らぐような気がしますよね。生活に少しずつ取り入れていくことで、豊かになっていくのだと思います。難しく考えず、見た瞬間に直感で『これはいい!』と感じたものを選んでみてください。そのお品がご自身にとって ご縁のあるアンティークだと思います」。

    暮らしの中に、「自分で見つけたんだ」と思えるお気に入りのアイテムがあると、ふっと目に入ったとき思わずにんまり笑顔になります。忙しい毎日の中でも丁寧に扱おうと少し行動を緩めたり、大切なお皿で楽しむ食事は特別なものになったりもするかもしれません。

    アンティーク、ブロカントは、古い歴史を感じさせるということ以上に、長い間大切にされてきた想いを教えてくれ、そして、毎日に豊かさや彩りをプラスしてくれる存在にもなり得るのです。

    Photo by Christophe BIELSA , Ayako BIELSA

     

     

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