インテリアや家具もおしゃれで、センス溢れる憧れのパリジェンヌたちのお部屋。実際にどんな収納をしているのか、どんなこだわりがあるのか気になるところ。そこで今回は、整理収納コンサルタントの本多さおりさんにお話を伺ってきました。9人のパリジェンヌ・パリジャンの収納をぎゅっと集めた『もっと知りたい パリの収納』の著者でもある本多さん。実際にパリで見てきた収納のお話と、本多さんが実践する収納のコツを教えていただきました。
アート感覚なパリの収納
―『もっと知りたい パリの収納』では、9人のパリジェンヌ、パリジャンたちのお家を見てきた本多さんですが、パリには何度か訪れたことがあったのでしょうか?
本多さおりさん(以下、本多さん):実は、このときはじめてパリに行きました。パリは全く別世界のイメージだったので、この本の企画ではじめてパリとご縁ができたんです。現地のライターさんやコーディネーターさんを介してパリのお宅の写真を送っていただいて、一般の家庭にもヒントになるような、真似できるようなアイデアがあるといいなという目線で選んだ9軒です。
―実際にパリの収納を見てどんな印象を持たれましたか?
本多さん:日本とは考え方がまるで違うので驚きました。パリの土地柄、地震もないので、高い場所にものを置いたり、まるでテトリスみたいに本を積み上げていたり。でも、その1つ1つの収納がアートのような感覚なんです。
―アートというと?
本多さん:たとえば日本の収納は、動線や使い勝手を考えて、収納場所を決めたり配置を決めたりしますよね。でも、パリのあるお宅でリビングにどーんとチェストを置いていて、そのうちの1段にだけ靴下が収納されていたんです。きっと、そこに靴下があると使いやすい理由があるんだろうな…と思って尋ねると、「ここにチェストを置くのがいちばん美的に好きだから。靴下にちょうどいいチェストがこれだったの」と!
―収納というよりも、まず1つのインテリアとして考えているんですね。
本多さん:そうですね、インテリアと収納が背中合わせというか、同じ感覚なんです。日本だと、インテリアはインテリア、収納は収納と分かれているイメージがあったので、この2つは時に共存して、そしてインテリアが勝つんだ!と驚きました。
―発想として、収納のために家具を置くのではなく「この家具をこの場所に置きたい」というのが先に来るんですね。確かに、日本とは逆の発想かもしれません。
本多さん:パリの方々は視覚的に美しいということをすごく大切にしているんです。パリのキッチンを見てみると、目に入って嫌だと思うものはとことん排除していました。ラベルを剥いだり、容器に移し替えたり、木箱に入れたり、足元にしまったり…。見えないようにするということが徹底されていて、そのためには使い勝手を考えて置かないような場所にあえて置いていたり。
視界に入って来るものは全てアートという感覚みたいです。「目に入って来るものは美しくないと嫌」と、どの方もおっしゃっていたのが印象に残っています。きっと、美しいものを見たり、そういうことを大切にしている文化の中で暮らしてきたからこそ培われたセンスなのかもしれません。
長く大切に、受け継がれていく文化
―日本では新生活を始めるタイミングで、家具などの生活用品を新しく買うことも多いでですが、本を見てみると、かなり古そうな家具も登場していますね。
本多さん:そうですね、どのお宅に行っても感じたのは、家具自体にストーリーがあるということです。「両親からの贈り物で、オーストラリア製の古い裁縫入れ」や、「祖父が1945年に買った冷蔵庫」など、その場所に来るまでにストーリーがあるんです。自分で使っている家具の歴史をみんなスラスラと話して教えてくれたのが印象的でした。
―パリには、もともと家具を受け継ぐ文化があるのでしょうか?
本多さん:パリやフランスには、不用品を寄付できるような場所があって、それをまた必要な人が持ち帰って使うことがあるそうです。だから、家族から受け継いだものだけでなく拾ってきたものまで、本当にさまざまな古いものをインテリアに取り入れていました。
―そうなのですね!
本多さん:ほかにも、ホテル裏に捨てられていたもの、道端に捨てられていたもの、蚤の市で見つけたもの…など、いろいろなストーリーがありました(笑)。そうして受け継がれた家具が違和感なく、ちゃんと家の中で働いているというのがいいなと思いました。もちろん、何が自分の家に合うのかみんな分かっているからこその部分もあるとは思います。
オリジナルのアイデアや発想で楽しむ余裕を
―パリの収納やインテリアを見て、本多さんが影響を受けた部分はありますか?
本多さん:私はどちらかというと真逆で、見た目より使いやすさを優先させてしまいます(笑)。片付けやすいかどうか、物が取り出しやすいかどうか。でもそればかりだと楽しくなくなってきちゃうので。生活はしやすいけれど、楽しむ余白をもう少し取り入れられたらいいなと思いました。
―収納のテクニックというよりも、インテリアとして楽しむマインドでしょうか?
本多さん:そうですね。パリのインテリアでは、色に触れる機会も多くて、でもそれがまったく嫌ではなかったんです。色使いなど、自分もやってみたいなと思って取り入れたりしています。あとは、あるご家庭でお子さんの写真をモノクロにして大きなパネルにして飾っているのを見て、それもすごくいいなと。私も子どもの写真も飾るようになりました。遊び心を加えるというか、インテリアの刺激になりました。
―パリのお宅のインテリアは、色使いも素敵ですし、収納アイテムもとてもユニークな印象です。
本多さん:「どこで買ったの?」と聞いてもその答えも本当にいろいろ。棚をDIYしたり、卵パックや竹串を使ってインテリア収納にしていたり、家庭ごとにまったく違う、オリジナルのオンパレードなんです。収納用品を買って解決しようというだけではなく、「今あるものでなにかできないかな?」と考えて工夫していて、そういう部分を私も真似したいなと思いました。
インテリアを楽しむためにも、片付けやすい収納を
なにかと物が多くて収納に頭を悩ませられるキッチン周り。本多さんが実践する、取り出しやすく片付けやすい収納術を教えていただきました。
まず本多さんが実践するのは、使用頻度で収納場所を分ける方法。よく、食器はまとめて1箇所に…なんて、ジャンルごとに収納を分けてしまいがちではありませんか?同じ食器でも毎日使うものやたまにしか使わないものなどさまざま。キッチンに限らず、よく使うものはすぐ手の届くところに、使用頻度の低いものはまた違う場所に分けて収納するのがポイントです。
本多さんは、使用頻度が高いものから「ワンアクションで取れる場所:メインの食器→引き出し収納:小鉢→キッチン上の吊り戸棚:大皿」というように食器を3箇所に分けて収納していました。
引き出しには、ラベルシールを貼っておくことで自分以外の家族でも一目瞭然。片付けが苦手な人にとっても、使いやすく片付けやすくなるポイントの1つです。
また、乾きにくいタッパーの蓋などは、洗ってすぐ吊るすことで、乾きやすくなるうえ次に使うときもワンアクションで済みます。
収納スペースが少なかったり、戸棚が高い…など悩みも多いキッチンだそうですが、少しの工夫とアイデアで片付けがラクになるそう。1度収納に失敗したからと言って、落ち込む必要はないそう。「どうすれば片付けが続くかな?」と、失敗から学び、無理なく片付けられるやり方を見つけることが大切なのだそうです。
まずは、取り出しやすく、しまいやすい収納ですっきり整頓した状態をキープ。そうやって収納へのストレスを解消することで、パリジェンヌたちのようにインテリアを楽しむ余裕も生まれそうですね。
本多さん、ありがとうございました!
■書籍情報
書名:『もっと知りたい パリの収納』
著者:本多さおり
出版社:株式会社KADOKAWA
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