スープとパン。この黄金の組み合わせについて、疑問を感じる方は少ないのではないでしょうか。反面、なんだか定番すぎて新しい発見を探すまでもなかったり…。そんなとき1冊の本と出会いました。
料理家の冷水希三子さんが昨年出版されたレシピ本『スープとパン』。ページを開いてびっくり!スープとパンという定番の組み合わせでありながらも、まだまだそこに楽しみがたくさんあることを教えてくれる本でした。
今回はそんな本『スープとパン』を冷水希三子さんのインタビューとともにご紹介いたします。
- 冷水希三子(ひやみず きみこ)
- 料理家/フードコーディネーター
- 季節の素材を生かした料理を心がけ、雑誌や広告などで活躍。
- 『ONE PLATE OF SEASONS 四季の皿』、『ハーブのサラダ』(ともにアノニマ・スタジオ)、『ちょっと贅沢なおもてなしレシピ』(家の光協会)、『おいしい七変化 小麦粉』『WECK COOKING』(ともに京阪神エルマガジン社)などがある。
- http://kimiko-hiyamizu.com/
季節の食材の旨みで作るスープ
季節の食材を使った料理を提案している冷水希三子さん。今回の『スープとパン』でも、春夏秋冬ごとにそれぞれの食材を使用したレシピが紹介されています。実際に1年かけて季節ごとの食材を使用して作ったのだそう。
「旬の食材を使用し、素材そのものの味を活かしてバランス良くすることを意識しています。届いた野菜はそのままの味で食べてみて、味を知ってから料理することも。季節のおいしい食材を使用すれば、調味料がなくとも十分おいしくなることも多くありますからね」という言葉の通り、『スープとパン』には、季節ごとの食材に塩やエクストラヴァージンオイルといったシンプルな調味料で味付けするレシピが並びます。
また、
“じっくり野菜の旨みと甘みを、最初にふるひとつまみの塩で、引き出しながら蒸らし炒めると、その後に水を加えても、とぼけた味になりません。野菜そのものやスープも、しみじみ美味しくなります。”
とあるように、素材の味を引き出す際、塩はとても重要なのだそう。
スープとパン。両方を楽しむレシピ
そんな季節の食材を使ったスープに合わせるパンですが、この本で紹介されているのはパンの作り方ではありません。
「アンチョビバターパン」、「ハムパン」、「ツナのクミンマヨネーズパン(トップの写真)」など、パンにつけるディップ、のせるサラダや具材など、パンをどうアレンジするかが掲載されています。
「スープだけよりパンもあったほうが豊かな感じがしませんか?それに、一緒に食べるパンも毎回普通のパンだけじゃさみしいかなと思って、両方アレンジがあればより満足できるかと思い、今回の『スープとパン』の組み合わせでレシピ本を作りました」とのこと。
各レシピの最後には、
“さっぱりと優しく温かいいちごスープと、ハムの塩気がほどよくお互いを引き立てる。”
“ココナッツの甘い風味が口の中のスープのスパイシーさをほぐす”
といった具合にそれぞれの組み合わせの妙が紹介されており、スープとパンは互いに補い合うものもあり、またどちらかの味を引き出すものもあり、寄り添うものもあるのだと教えてくれます。
「スープとパンだけじゃなく、料理において素材と素材の組み合わせはいつも意識しています。そしてそれは味だけでなく、食感や香りにおいても同様ですね」と冷水さん。
春野菜の甘みを楽しむスープとパン
ちょうど春ということで、『スープとパン』の「春」で紹介されているメニューの中でのお気に入りを教えてもらいました。
「ちょっと難しいけど、『鯛とキヌアのスパイスクレソンスープ&ココナッツオイルパン』ですかね。あとは『いちごとアーモンドのホットスープ&ハムパン』、『トルコの赤レンズ豆スープ&羊飼いのサラダパン』も。
今回は甘みのある春の野菜を使ったレシピが多いですね。『グリーンピースと新玉ねぎのポタージュ&卵サラダパン』のように、優しい甘さのグリーンピースとこちらも優しい甘さの卵サラダを合わせて、ほっとする組み合わせもいいですよ」。
なかなか思いつかないような組み合わせのものも多く、「どんな味のコラボレーションが生まれるのだろう?」と見ているだけでワクワクしてきます。「スープとパンの組み合わせについて、なにかコツがあったら教えていただけないでしょうか?」と質問してみたところ、
「感覚でいいと思いますよ(笑)。小さい頃から育ってきた味や食べ合わせの好みが、人それぞれにあると思うんです。スープとパンどっちを一緒に食べても嫌じゃなく、もっとおいしくなる、無理なく合わせられる瞬間があるはず。
あと、昔からある定番のレシピや伝統料理にもそういう組み合わせの妙が入っているので、そういう組み合わせを真似してみてもいいと思います。お肉だったら甘めの味付けをするお料理が多いので、シナモンなど甘い香りを合わせてみようとか生活の中のヒントを組み合わせて発想するといいんじゃないでしょうか。
味の組み合わせは、知識より記憶の方が大きいと思うんです。いろいろと組み合わせてみて、探してみてくださいね」。
合わせる食材同士、調理法はもちろん、パンを焼く、蒸す、焼かないなどでも一緒に合わせたときの印象が変わるので、楽しみは広がります。季節によって変わっていく素材の味を楽しみ、それに合うパンを探す。スープとパン、そして料理や食事の楽しみが広がりそうです。
- ■書籍情報
- 書籍名: スープとパン
- 著者:冷水希三子
- 出版社:グラフィック社
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