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真似したいかわいさがいっぱい!短編ドラマ『ひとりごとエプロン』の世界

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真似したいかわいさがいっぱい!短編ドラマ『ひとりごとエプロン』の世界

 

北欧をはじめとする様々な国で作られた生活・インテリア雑貨、作家さんの丁寧な手しごとによる日本製の雑貨、オリジナル商品ブランドのアイテムを販売している「北欧、暮らしの道具店」。

生活に取り入れたくなる素敵な雑貨の販売のほか、真似したくなる暮らしのアイデアを紹介する読み物やインタビュー記事も人気。そして最近ではドラマ『青葉家のテーブル』や素敵な暮らしをしている方々の朝を切り取った『モーニングルーティン』などのオリジナル映像作品も注目を集めています。

その「北欧、暮らしの道具店」が、2019年のクリスマスに配信をスタートさせたのが『ひとりごとエプロン』。主人公・夏希の家でのささやかな食事を映し出した短編ドラマです。

「こんなお部屋に住んでみたい!」と思わずにはいられないインテリア、「作ってみようかな?」と思わせる手軽なのにおいしそうな料理、そして、心地のよい音楽と料理をするときの生活音。

「北欧、暮らしの道具店」の店長の佐藤友子さん

そんな『ひとりごとエプロン』誕生の裏側を「北欧、暮らしの道具店」の店長の佐藤友子さんに教えていただきました。ものを作り、届ける中での想いもお聞きすることができたので、合わせてお楽しみください。

 

『ひとりごとエプロン』で描きたかったもの

『ひとりごとエプロン』で描きたかったもの

―今回の『ひとりごとエプロン』のはじまりは、佐藤店長のメモがきっかけだったそうですね。

佐藤:そうですね。もともとは、パンクな割烹着を着た女の子が、踊りながらごはんを作るという企画だったんです(笑)。結果的にあまりパンクな表現はしなかったんですけど、1話は割とそれに近いかもしれません。

この作品では、「本当の自分というのがみんなあって、それは大事にしていいものだし別に人に見せる必要もない」ということをドラマを見てくださる方と共有したいという個人的な思いがありました。自分だけが本当の自分を知っていればいいっていう。それを、真面目なスーツで仕事から帰ってきた玄関シーンと、着替えて音楽を掛け踊り出すキッチンのシーンとのギャップで表現したいということをスマホのメモに書いたのがはじまりでした。

―前回のドラマ『青葉家のテーブル』は家族を描いていましたが、今回、一人暮らしの女性を主人公にしたのにはなにか理由があるのでしょうか?

佐藤:一人暮らしの設定はいろいろ理由があるんですけど、ひとつには一人暮らしのお話にすることで共感していただける層が広がるじゃないかっていうのがありました。『青葉家のテーブル』以上に若い世代の方や毎日仕事を頑張っている世代の方に届く作品にしたいというのもあったんですけれど、現在40代のわたし自身にもかつて若い時代があって、ああいう一人暮らしをしていた時期があったり、あるいは憧れていた時期がありました。誰より私自身が『ひとりごとエプロン』をつくりながら若かった頃の自分を思い出していました。

主人公を一人暮らしをしている若い女性にすることで、今まさに若い自分、そこを少しだけ通り過ぎた世代にいる自分、かつて若かった自分を幅広い世代の方に投影しながら見ていただけたらうれしいなと考えました。

世代を問わずに、共感できたり、憧れる部分がある作品に

―確かに世代を問わずに、共感できたり、憧れる部分がある作品になっていますよね。

佐藤:私も20代の終わり頃に一人暮らしをしていたときに、自分のキッチンとかを好きに飾って暮らしていたんですよね。お金もないからトマト缶に穴を開けて植木鉢にしてハーブを植えたり、いろいろな工夫をしていました。そういうエッセンスを『ひとりごとエプロン』にも入れています。

当時の部屋って、本当に自分の城だったから。もちろん寂しかったり、失敗したり、いろんな苦い思い出もあるんですけど、そういうことを含めて、年を重ねて振り返ると尊いんですよね。

いろんな人生のフェーズのお客様がいらっしゃると思うんですけど、きっとみんなどこかで「自分って何だろう」ということを考えているのかなって。年を重ねても自分を探す旅は終わらないということをドラマの中で描ければ、見ていただける世代は問わないのではないかという仮説があったんです。

音楽や料理の音とかもあって、5〜6分と短い動画でも受け取る情報はたくさん

―今回、登場人物は1人ですが、音楽や料理の音とかもあって、56分と短い動画でも受け取る情報はたくさんあったように感じました。

佐藤:『青葉家のテーブル』をやってみたことで、見ていただくお客様はそれぞれみなさん忙しい毎日を送っているんだろうなというのも感じていて。短い時間でも楽しんでいただけるものを作りたいっていうのと、その短時間が癖になって何回も再生するっていう状況を作りたいという考えもありました。

お話は分かっているのに、何回も再生してしまう動画って何だろうってとことん考えましたね。見て気持ちいい美術の側面と、浸れる音楽のように五感に対していい刺激になることと、あまり心を揺さぶられすぎないこと、料理や家事のやる気が出ることを大切にしました。インテリア、料理、音楽、ファッションという複数の要素を短いドラマのなかでそれぞれ走らせることで「繰り返し見てしまう」というリッチさをつくれないだろうかと。

―家事をしながらなど、全部映像を見なくても、聞いて成立するっていうのがいいですよね。

佐藤:そうなんです。“見る”と“聴く”の間を作りたいという想いがありました。何か作業をしがら聴いているだけでも気持ちいいし、見てももちろん楽しめるような。ラジオと動画の間、フィクションとミュージックビデオの間にいるような存在を動画で立ち上げたいと考えていました。

―選曲もすごくちょうどいいんですよね。

佐藤:最初に私とスタッフで、私たちがいいと思っているミュージシャン、曲をリストにして出しました。「北欧、暮らしの道具店」のスタッフや私が好きな音楽であれば、きっと共感してくれるお客さんが多いんじゃないかと思って。

1話のクラムボンはスタッフが出していて、2話の七尾旅人、3話のSpangle call Lilli line4話のSpecial Favorite Musicは、私が最初に出したアーティストです。最終的な選曲は、ストーリーに合う視点で監督と音楽プロデューサーで選び直してくれています。選び直してくれた選曲がまた本当によかった!

万人が好きな音楽ではないかもしれないんですけど、ある層の人たちが好きな音楽を選んでいて、知っている、知らないに関わらず音楽がなんかツボ!という風になったらいいなと思っていました。

 

フィクションとリアルの間を作る

フィクションとリアルの間を作る細部まで“かわいい!”が詰まったインテリア

―夏希の部屋のインテリアもすごくかわいいですよね。雑貨は販売しているものなんですか?

佐藤:そうですね。でも『青葉家のテーブル』のときほど、弊社の商品であることにはこだわってないんですよ。本当に新しい世界を作って、そこから新しいお客さんとのコミュニケーションを広げていきたいという気持ちがあったので、『青葉家のテーブル』と違う色を出すことしか考えていなかったです。

―ポップな色味も結構使われていて、印象は結構違いますよね。

佐藤:『青葉家のテーブル』は淡いトーンが多いですが、今回は原色を結構使うように意識しています。ちょっと映画『アメリ』のようなイメージも参考にしたりして。ちょうど私が一人暮らしした頃に『アメリ』が公開されて、当時かなり影響を受けて、部屋を赤くしたりしていたんですよね。会社から帰ってきた夜の話なので、濃い原色を使って、ちょっと奇抜なファッションにしようというのは、そういうところから立ち上がっていたイメージですね。

あと、少しリアリティは欠けつつも、押さえるリアリアリティは押さえるということはすごく意識しています。27歳ぐらいの人があれだけのものを所有するというのは、本当はあり得ないですけど、「そこはフィクションだから」という感じで、あえてありえない世界を作りました。

でも、あの部屋には高価なものはほとんどないんですよね。高価な作家さんのものなどはあまり置いてなくて、むしろ旅が好きな彼女がいろんな国で買い集めてきたユニークなものが散りばめられています。

フランスで人気だった『レイチェル・クーのパリのキッチン』のような世界観も

―ちょっとキッチュな感じもあってそれがかわいいですよね。料理をする動画でいうと、フランスで人気だった『レイチェル・クーのパリのキッチン』のような世界観もありますよね。

佐藤:そうですね。レシピがしっかりテキストで公開されてなくても、見ているだけで作り方が分かるというのは意識したポイントでもあります。

料理を作るドラマだけど、ただの料理ドラマにはしたくなくて、料理や音楽を中心にしながら、見る人の内省的な部分に触れていくためには、どういう脚本を書けばいいかということも監督と話し合いました。だから、SNSにセリフを引用して「あのセリフ好きなんです」とあげてくださるのを見るとすごくうれしいですね。イメージしていた以上の脚本に仕上げてくださった脚本家さんや監督にはリスペクトしかありません。

思わず作ってみたくなる簡単でおいしそうなレシピも注目思わず作ってみたくなる簡単でおいしそうなレシピも注目

―先日、4話目が公開されて、1シーズンは一旦終わりですが、今後の公開予定はどのような感じなのですか?

佐藤:年内にシーズン2は制作できたらと思っています。このドラマがミュージックビデオだとした場合、1枚の音楽アルバムみたいに、12曲、12レシピ溜まるというのがひとつの完成系のビジョンとしてあったので、そこまではできたら作りたいですね。12話で成立する『ひとりごとエプロン』の世界を作ったときに、どういう方がファンになってくれて、どういう企業の方が興味を持ってくださるのかってところまで確かめてみたいです。

『ひとりごとエプロン』という世界をお客さまと共有できたことによって、いろいろまだやりたいことが出てきています。私たちの主力事業である物販にも繋げていきたいですし、あの世界を好きだって言ってくれた人に対してどういうことができるかということもそうですし、これからの展開のイメージを妄想してはすごくワクワクしています。

 

喜んでもらえるにはどうしたらいいかを考える

喜んでもらえるにはどうしたらいいかを考える

―『ひとりごとエプロン』の他にも動画だったり、オリジナル商品だったりを作られていますが、今後やってみたいことはありますか?

佐藤:先日、雑誌を読んでいて、アンパンマンの生みの親である作家のやなせたかしさんが「人生は喜ばせごっこだ」と言っていたというエピソードを知って、個人的にすごくその言葉が刺さりました。

自分が「北欧、暮らしの道具店」というものを使ってやりたいのも、同じだなと。おこがましいけど“誰かを喜ばせるごっこ”ですよね。だからドラマごっこをしてみたり、映画ごっこをしたり、もの作りごっこをしたりということをしてきていて。その根底にはもちろん真剣さが切実さが常にありますし、ビジネスとして展開していきたいっていうこともあるんですけど、それより先にこれで誰かがワクワクしてくれたらうれしいとか、喜んでいただけたらうれしいとか、悩んでいる人に対して何か情緒的な触れ合いでちょっとでも楽にしてあげられたらとか。そういうものを作りたいということでしかないんです。

―新しいことがやりたいということではないんですね。

佐藤:喜んでもらえるにはどうしたらいいかを考えて、自分もそれをやったらワクワクするということを実行してということを繰り返しやっている感覚です。

―そうだったんですね!多分皆さんがワクワクしている感じがメディアから伝わってくるから、見ている私たちも一緒にワクワクできるんでしょうね。

佐藤:そこがなくなっちゃったら終わりですよね。いいと思ってないものを扱ったり、全然気持ちが乗ってないけど乗っている風を装うということはしない。そうすれば、お客様に見つけてもらえるんじゃないかって。

最近、ドラマを作ったり、ラジオをやったり、いろんなことに挑戦させていただく中で、ある価値というものは、作ったりとか伝えたりするのではなく「見つけてもらうもの」だっていうことをすごく思ったんですよね。もちろん私も価値があるものを作りたいと心から願っている1人ではありますが、それを一生懸命に伝えて、伝えて分かってもらう“伝える努力”をするんじゃなくて、やっぱりお客様がその価値を見つけてくれるものを作るための“伝わる努力”をすることを意識していこうと最近自分の中で気づけて。

『ひとりごとエプロン』ももちろんいろいろな想いや構想がありますが、それを伝えなくても、お客様に見つけてもらえたということがすごくうれしかったです。

―ついつい「見て!」と、伝えたくなっちゃうところを、お客様から気づいてもらうようにする。難しいですよね。

佐藤:そういうことをどの分野でもやりたいんです。やっていくためにはスタッフと一緒にどうやっていけばいいのかってことを常日頃考えています。だからやっていること自体は、本当にひとつなんですよね。

あと、どのプロジェクトも結局主語をやっぱり人に委ねずに責任を持つということはものすごく意識しています。「誰かを喜ばせたい」と思ったとき、自分の感覚に責任を取るということが本当に大切だなと。『ひとりごとエプロン』は私が主語でしたが、別のプロジェクトであればスタッフに“私”になってもらい、主語を使う責任を取って欲しいと思うんですよね。

「大丈夫、私はこれが好きだ」と思うことに責任を持つというのは、実はすごく勇気がいる仕事でもあると思います。もちろん自分の好きがお客様の好きと外れることもありますし、毎回ホームランになるわけじゃないじゃないですか。でも、自分の感覚で責任をもって作ったものの今最大限だせる結果が、これなんだなと受け止めていくしかないですよね。

佐藤店長、素敵なお話どうもありがとうございました!

―そうなんですね。佐藤店長は日頃どうやって情報や自分の興味をインプットされているんですか?

佐藤:私そんなに新しいことをインプットできるタイプじゃないんですよ!『北欧、暮らしの道具店』の代表でもある兄から以前、「強みがあるとすれば、自分が感じたことの解像度が異常に高いから、感じることに集中したほうがいい」と言われたことがあって。新しいことをインプットするよりも、いろんな気持ちを感じること。それが多分お客さんのインサイトを突いた発信に変わるからと言ってもらえて、気持ち的に楽なったんですよね。

自分の限界をどう使うかっていうことを、この4年ぐらいよく考えています。成熟はできたらいいなと思いますけど、これ以上成長というのはもうないだろうと思うので。自分個人の成長がなくても「北欧、暮らしの道具店」が成長したりしていくことには貢献したいから、自分の持っているものの使い方を工夫するよう意識しています。だから、新しくできるようになっていることはあまりなくて、同じことをやっているだけなんです。

 

佐藤店長、素敵なお話どうもありがとうございました!

『ひとりごとエプロン』は、「北欧、暮らしの道具店」のYou Tubeチャンネルアプリで配信中(4話はアプリ限定)。ぜひ、チェックしてみてください。

 

  • ■ドラマ情報
  • ひとりごとエプロン
  • あらすじ:朝8時に家を出て、夜6時に帰ってくる。そんな、ルーティンな日々を過ごす26OLの林夏希。普段はスーツに身を包む彼女も、家に帰ってくればそこは彼女のお城。学生時代から収集してきた雑貨類に囲まれ、2DKの団地に住んでいる。そんな彼女の日課は、音楽を聴きながら晩御飯を作ること。レシピは全て頭の中。その日の出来事、気になるもの、懐かしい思い出。頭に浮かんだものを、そのままリズミカルに料理にしていく。ひとりごとをつぶやきながら、音楽に身を任せ、今日も新しいレシピが生まれていく。
  • キャスト:松本妃代
  • スタッフ:監督・撮影 杉山弘樹/照明 染谷昭浩/録音 桐山裕行/美術 加藤小雪/フード瀬戸口しおり/ヘアメイク URI/スタイリスト 新関陽香/脚本 山科 有於良
  • 「北欧、暮らしの道具店」のYou Tubeチャンネルアプリから視聴できます。
  • Copyright 2019 ©︎Kurashicom. All Rights Reseaved.

 

■協力

北欧、暮らしの道具店

 

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