今年4月、下町の風情が残る根津の静かな住宅街にオープンした『Cise(チセ)』。
パンとワインと北海道の食材をふんだんに使った創作料理が楽しめる小さなビストロです。
とりわけおいしいと評判の自家製パンはテイクアウトもできるため、地元では既にパン屋さんとしても人気だそう。そんな噂を聞きつけ、さっそく訪問。オーナーシェフの宮武郁弥さんにお話をうかがってきました。
『Cise(チセ)』とはアイヌ語で「家」
オーナーシェフの宮武郁弥さん
「昔から友達や家族に料理を作ってふるまうのが好きだったんです。家でみんなと食事をするのって楽しいじゃないですか。だから、気楽にふらっと立ち寄って、家のようにくつろいで食事を楽しんでもらえるようなお店をつくりたかったんです。そんなわけで、店名もアイヌ語で家を意味する『Cise』にしました。」と宮武シェフ。
パンにもワインにも造詣が深い宮武シェフは、北海道出身。新富町にある創作料理の名店『Coulis(クーリ)』で長年修行した実力派です。『Cise』では料理はもちろん自家製酵母のパンもすべて1人で作っているというのですから驚きです。
取材中も手際よくディナーの下ごしらえをしているシェフに、『Cise』の料理のベースはフレンチですか?と質問すると、「料理のジャンルにこだわりはなくて、自分が作りたい料理を作っています。お客さんが喜んでくれれば何でも出します」とニッコリ。
そんなシェフの手元を見ると、何やら餃子の皮でタネを包んでいる様子。実はこの水餃子が人気のメニューとのこと。後ほどいただくことにしました。
ワインがすすむパン
ランチタイムが終了すると、カウンターにパンが並びます。ブリオッシュや食パン、バゲット、チャバタ、フォカッチャなど常時4〜5種類と種類は多くはないものの、料理にも朝食にもおすすめのパンばかり。不定期に登場するチーズや青のりのチャバタ、くるみのリュスティックは想像するだけでもワインがすすみそう。地元でも大人気だそうです。
厨房にはパン焼き用に本格的なオーブンが設置
パンはいずれも「春よ恋」や「キタノカオリ」など北海道の小麦を季節によって使い分け、バターも北海道産の発酵バターを使用。酵母はレーズン等から手作りし、手ごねで低温長時間発酵と、なんとも手の込んだ作り方をしていて、いったいシェフにいつそんな時間があるのだろうかと疑ってしまうほど。
けれども、宮武シェフは「パンの生地が発酵してふくらんでいくのを見るとかわいいなぁと思うんですよ」と一言。パン作りが楽しくて仕方ないようでした。
『Cise』のパンは通常のパンより水分量の多い高加水のパンなので、外側はパリッと、内側はもっちりとした食感。バゲットやチャバタはソースやスープに浸して食べるとさらにおいしい。ブリオッシュや食パンはバターの香りがより豊かなので朝食におすすめです。
パンとワインと自由な料理
そうこうしているうちに、先ほど下ごしらえしていた水餃子がテーブルに。飾られた香菜の香りの他に、スパイシーな香りやドライフルーツのような甘い香り、海の幸の香りもします。
「水餃子にはホタテやオクラ、青唐辛子が入っています。ホタテは北海道で漁師をしている友人から新鮮なものを送ってもらっているんですよ」とシェフは誇らしげに教えてくれました。
水餃子にはフランス・ロワール地方の爽やかなロゼがぴったり
大きな水餃子を頬張ると、ジューシーなスープが口いっぱいに広がります。そして、水餃子にかかっている自家製ラー油がまた絶品。辛さはほとんどなく、クミンやコリアンダーのエスニックな風味と、丸ごと入ったカシューナッツやレーズンのゴロゴロとした食感が、もっちりとした水餃子と絶妙にマッチ。お皿に残ったラー油はパンで拭って、最後まできれいにいただきました。
一緒に、パン3種盛り合わせもオーダーしました
メジマグロの冷汁も驚きの1皿。鯵を干して干物にしてからミキサーにかけ、ほぐして胡麻と味噌でソースに仕立ててあります
『Cise』のメニューは野菜や魚が中心ですが、ランチにはカレーも登場するとか。ワインは常時グラスで10種類ほど楽しめるそう。自然派のワインもクラシックなワインも取り揃えていて、お客様のご希望に合わせて提案しているそうです。
「自家製レモンサワーもおすすめです」と教えてくれたのはソムリエの大橋さん。
ノーワックスのレモンと一緒に唐辛子やグローブ、ローリエをジンに漬け込んだもの。コーラのような風味の大人のカクテルといった感じです。
カンパリのソルベがのった桃のコンポートといただきました。ほろ苦く大人味な桃のコンポート。デザートとしてはもちろん、お酒との相性も抜群!
今回のようにアラカルトはもちろん、おまかせのディナーコースもあります。軽めの3,800円のコースと、デザートにコーヒーもついたしっかりめの4,500円のコース、どちらも『Cise』のお料理を満喫できるコースなのだとか。リーズナブルな価格設定もうれしいですね。
宮武シェフとお姉さんの愛理さん(右)、ソムリエの大橋あゆみさん(左)。気さくで笑顔の絶えないサービスも魅力です
オープンから半年。多忙を極める宮武シェフですが、まだまだやりたいことがあるそう。
「これからはもっとパンのバリエーションも増やしたいし、いろんな所へ行って食材を調達したいですね。気軽に人が集まれるような、呑めるパン屋が理想です」。
これからがますます楽しみな『Cise』。ぜひ、気軽に訪れてみて下さい。
- ■お店情報
- Cise Bread & Wine
- 住所:東京都台東区池之端3-4-19 1F
- 電話:03-6884-1989
- 営業時間:[lunch]12:00 a.m. – 14:30 p.m.(L.O)、[dinner]18:00 a.m. – 22:30 p.m.(L.O)
- 定休日:不定休
※記事の内容は取材当時のものです。 最新の情報は、お店のHP、SNSなどをご確認ください。
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