世界各国からたくさんの人々が訪れる東京。今回ご紹介するのは、そんな観光や旅行、出張などで利用するホテル内に2018年8月にオープンしたベーカリーです。
JR新宿駅西口から徒歩13分、大江戸線都庁前駅から徒歩5分ほど。ホテル『The KNOT TOKYO Shinjyuku(ザ ノット東京新宿)』1Fにあるのが『MORETHAN BAKERY(モアザンベーカリー)』です。
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山口さん(左)、ベーカリーシェフの岩波さん(右)
ホテルに宿泊してもしなくても、誰でも利用できる同店。パンのこだわりや、お店のさまざまな楽しみ方を山口さんと、ベーカリーシェフの岩波さんに聞いてきました。
お客さんの声と共に進化し続けるお店
『MORETHAN BAKERY』は以前PARIS magが訪れた『EPEE(エペ)』の姉妹店でもあります。今回の新店舗では、『EPEE』とは違ったパンのラインナップが楽しめるのだとか。
「もともと『EPEE』では、フランスのパンをベースにしたパン作りをしていました。このお店でも、当初はそのベースをもとに作っていたのですが、ホテルを利用する方は、本当にいろいろな国の方がいらっしゃるんです。お客様の声などもあっていろいろ作ってみることにしました」と岩波さん。
現在お店に並ぶパンは、なんと40〜50種類。その日ごとにラインナップは異なるそうですが、訪れた日もベーグルにグリッシーニ、プレッツェル…と多国籍なパンがずらり!お客さんの「見慣れたパンが食べたい」「日本独特のパンが食べたい」などの声に応える形で、どんどん種類が増えていったのだそうです。
「カスクルート ブール」
ホテル1Fにあるということで、朝食をその場でさくっと食べていきたいというお客さんも多いのだとか。パン1つを食べて朝食が完成する「カスクルート ブール」もそうした方々に人気のメニュー。ブールに切り込みを入れて、中にエッグやハム、チーズなどいろいろな具材を入れています。ぱあっ!とお花が咲いたようなその見た目のこのパンは、朝からおなかも満たされ元気をもらえそうです。
そのまま食べる角食パン、トーストして楽しむ山型食パン
多種多様なパンのラインナップの中でも、『MORETHAN BAKERY』の人気は食パンです。山型と角食の2種類に加え、マスカルポーネやレーズンを混ぜ込んだものなど、なんと食パンだけでも7種類ほど!
「角食パンは湯種製法で作る、とてももちもちとした食感の食パンです。乳製品や卵を一切使用していないのですが、食材を工夫することで柔らかさを実現しました。アレルギーの方でも安心してお召し上がりいただけます。ぜひこちらは、トーストせずそのまま、この柔らかさともちもち感を味わっていただきたいです。
山型食パンはまた異なる生地で、こちらはトーストして食べていただきたいパンになっています。ハルユタカという北海道産の小麦を使っていて、サクッと歯切れのよい食パンです」と岩波さん。
お店の周辺にはマンションもあり、観光や旅行でホテルを利用する人のほか、近隣の住民の方も多く足を運んでくれるそう。いまや日本の食卓の定番の食パン。そのまま食べるときは角食パン、トーストするときは山型食パンと用途に合わせて使い分けできるのもうれしいですね。
3日間熟成させて作るレーズン食パン
岩波さんに食パンのお話を伺っていると、中でもイチオシの食パンがあるとのこと。気になるその食パンは「レーズン食パン」。
「レーズン食パン(raisin bread)」
「レーズン食パン」は、生地を3日間熟成させる長時間熟成パン!当然のことながら、今日仕込んだパンは、3日後にならないと食べられない…というとても手間がかかったパンです。なぜこんなに手間をかけて作るのでしょう?
「じっくり3日間低温熟成させることで、アミノ酸の旨味の甘さが出てくるんです。砂糖とは全く違う、深みのある甘さで、3日間寝かせることによってその甘さを引き出せるんです。『EPEE』でもこの食パンを作ろうという話もあったのですが、3日間寝かせるとなると保管のためのスペースも必要で。今回の店舗は厨房もかなり広いので、ようやくこの食パンをみなさんにお届けすることができました」と岩波さん。
ふんわりとやわらかく、そして甘みのある「レーズン食パン」。3日感熟成したという甘みを噛みしめずにはいられません。また、通常の食パンより小ぶりなサイズ感。これは、保存料などを一切使っていないため、おいしい状態で食べきってもらえるようにという心遣いから。まずはそのまま、そしてサワークリームを塗って食べてもおいしいのだそうです。
サンドイッチメニューも必食
ベーカリーのパンのほか、サンドイッチメニューも充実の『MORETHAN BAKERY』。人気のグリルサンドイッチをいただきました!パンは、カンパーニュと山型食パンから選べます。今回はトーストがおすすめだという山型食パンの「グリルドチーズ」をチョイス。店頭の鉄板にバターをひき、じゅわっという音ともに広がるその香りに食欲がそそられます。おすすめのトッピングは、なんとザラメ!
とろっととろけたチーズに、トーストした食パンのサクサクとした軽やかな心地よさ。チーズの塩味とザラメというコラボが生み出す絶妙なあまじょっぱさは、次のひと口をすぐさま誘います。
グリルサンドのほか、ショーケースに堂々とその存在感をはなつサンドイッチがありました。よく見ると、とても大きなカンパーニュにサンドされています!
「大きく焼いたカンパーニュを横にズバっとスライスして、具材を挟んでからカットしています。通常は小さくカットしてからサンドするのかもしれませんね(笑)」と山口さんが教えてくれました。
岩波さんも、山口さんのこの切り方を見たときには驚いたのだそう!写真手前の状態で、1/4くらいの大きさ。カンパーニュ1個がどれほどの大きさなのかを物語っています。
「海外からのお客様も多いということで、サンドイッチの食材には和食材や調味料を使うことを意識しています。人気メニューのひとつポテトサラダの鯖サンドは、お店でさばいて自家製の一夜干しにしてポテトサラダにするなど、ちょっとした和のアクセントを加えています」と山口さん。
今回いただいた、「サーモン カンパーニュ」のサンドは、サーモンの西京焼きに紫キャベツ、トマト、キャロットラペとたっぷりの野菜に、山椒や和風ジェノベーゼで和テイストに仕上げているのだそう!
こだわりの茶葉で淹れるミルクティー
ベーカリーの横には、ティースタンドも併設。『MORETHAN BAKERY』こだわりの茶葉を使ったオリジナルのミルクティーをいただけます。
「スリランカ産の茶葉で若葉だけを使うことで、茶葉本来の甘みを味わえます。こだわりの茶葉は、香りやおいしさ、味もしっかり残りミルクを加えてもよくマッチするので、ミルクティーがおすすめですね。ストロベリーなどのフレーバーティーもご用意しています。フレーバーの香りだけじゃなく、茶葉自体の香りを楽しんでもらえると思います」と山口さん。
店頭では、フレーバーの香りを試すこともできます
水出しもできるというオリジナルの紅茶は、ティーバッグのタイプと茶葉のタイプで購入することもできます。ホテル宿泊時のアメニティとして部屋にも置いているそうで、実際に飲まれてお土産に買っていくという人も。
12月から始まった「タピオカミルクティー」のストロベリーフレーバーをいただきました。しっかりとした茶葉の香りとともに、ふわっと広がるストロベリーの香り。主張しているわけではないのに、たしかに茶葉そのものの奥深い味わいがグッと伝わってきます。
ホテルを利用するお客さんや、日常のパンを求めてくるお客さんなどさまざまな人が行き交う、ホテルベーカリーという新しいかたちのパン屋『MORETHAN BAKERY』。朝ごはんのパンをテイクアウトしたり、ランチのサンドイッチをイートインしたり、はたまたミルクティーを楽しむカフェとしてなどさまざまな楽しみ方がありました。きっとこれからも進化し、私たちを驚かせてくれることでしょう。
- ■お店情報
- MORETHAN BAKERY
- 住所:東京都新宿区西新宿4-31-1 1F
- TEL:03-6276-7635
- 営業時間:8:00~19:00
※記事の内容は取材当時のものです。 最新の情報は、お店のHP、SNSなどをご確認ください。
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