こんにちは。菓子・料理研究家の山本ゆりこです。
今回訪れるのは、前回のバラ色の街トゥールーズのある「ミディ・ピレネー」から、遠く北東へ向かったところにある「ブルゴーニュ地方」。
ブルゴーニュ地方は、いわずと知れたワインの一大産地ですよね。
現在は、お隣のフランシュ・コンテと合併し、ブルゴーニュ・フランシュ・コンテ地域圏となっています。
今回は、ブルゴーニュワインで作る赤ワインソースを添えた卵料理「ウッフ・アン・ムーレット(Œuf en meurette)」をご紹介します。
では、フランスのなかでも美食エリアとして名高いブルゴーニュの旅へ。
ウッフ・アン・ムーレット(Œuf en meurette)の作り方
フランスでは、卵1個の場合「ウッフ・アン・ムーレット」といい、複数になると「ウー・アン・ムーレット」となります。
ここでは日本でも知られている「ウッフ・アン・ムーレット」と呼ばせていただきます。
フランスでは前菜として供されますが、エッグベネディクトのように食べやすいイングリッシュマフィンと合わせたバリエーションもご紹介します。
【材料】(4人分)
<赤ワインソース用>
・ベーコン(厚切りのもの):100g
・玉ねぎ(小):1個(150g)
・バター:20g
・薄力粉:大さじ1
・赤ワイン:350ml
・水:100ml
・ブイヨンキューブ:1個
・砂糖:大さじ1(約10g)
・ローリエ:1枚
・粗挽き黒こしょう:適量
<ポーチドエッグ用>
・卵:4個
・水:700ml
・酢:大さじ2
・チャイブまたはパセリ:適量
【作り方】
1.赤ワインソースを作ります。
・玉ねぎは薄皮を除いて薄切りにし、ベーコンは1㎝幅の拍子切り(厚めの短冊切り)にします。
・鍋を弱めの中火にかけ、バターを入れます。バターが半分溶けたところに玉ねぎとベーコンを加え、玉ねぎがしんなりするまで炒めます。
・薄力粉をふり入れ、粉っぽさがなくなるまで炒めます。
・赤ワイン、水、手でくずしたブイヨンキューブ、砂糖を加えて強火にし、木べらでときどき混ぜます。沸騰したら、ふたをしないで中火で15分、とろみがつくまで煮込みます。
・黒こしょうを加えて軽く混ぜ、火からおろします。
2.ポーチドエッグを作ります。
・小鍋に水と酢を入れたら軽く混ぜ、沸騰させます。
・卵1個を小さな容器に割っておきます。
・沸騰した熱湯を木べらで勢いよくかき混ぜたらすぐに、渦の真ん中にゆっくりと卵を落とし、3分加熱します。
・3分後、固まった白身を整えるようにしながらすくい、キッチンペーパーの上にのせます。
・残りの卵を1個ずつ同様に加熱し、4個分のポーチドエッグを作ります。
<POINT>
勢いのある渦の中に卵を落とし、そのあとはなにも触らないのがきれいに作るコツです!
3.仕上げます。
・チャイブ(またはパセリ)を細かく刻みます。
・皿に温めた赤ワインソースを入れたら、ポーチドエッグをのせ、チャイブをちらして完成です。
【エッグベネディクト風にアレンジ】
・イングリッシュマフィンを半分にスライスし、トーストします。
・カット面にバターを塗り、ポーチドエッグをのせます。
・赤ワインソースをかけ、チャイブをちらしたら完成。
寄木細工のような美しい屋根瓦が連なる街並み
中央2つはブルゴーニュのかご。これを大きくしたものがワインのぶどうの収穫に使われます
最高級ワインを生み出すぶどう畑が広がるブルゴーニュ。
その昔、ローマ人によってもたらされたワイン作りは、中世の頃、クリュニー派とシトー派という2つの修道院によって発展したそうです。
僧侶たちは、畑ごとにぶどうの個性が異なることを見抜き、区画分けしていったのだとか。これが、現在ブルゴーニュワインが村単位や畑単位で格づけされることにつながっています。
また、ブルゴーニュワインは、ぶどうをブレンドして作るボルドーワインとは異なり、基本は単一品種のぶどうで作られるのが特徴。
同じ品種でも育った区画によって味わいが異なるため、その個性を活かしたワイン作りが行われてきたというわけです。
ブルゴーニュ地方のボーヌにあるブルゴーニュ公国の公爵邸が、現在はワイン美術館に
パリに住んでいた頃にブルゴーニュを旅しました。
ブルゴーニュの古い街並みの中で、ひときわ目を引いたのが、カラフルで艶のあるモザイク屋根です。
釉薬(ゆうやく|陶磁器などの表面を覆うガラスの層)をかけて焼かれた黄色、赤茶、グリーン、黒などの瓦を寄木細工のように組み合わせた屋根は、伝統的なブルゴーニュ建築の特徴なのだとか。
屋根瓦が鮮やかであればあるほど所有者の豊かさを象徴していたそうです
赤ワインにまつわる美食の街
『MAILLE(マイユ)』の本店に並んでいた手描きのオリジナルマスタード入れ
食前酒キールを飲むこと、ブッフ・ブルギニョン(牛肉の赤ワイン煮)、コック・オ・ヴァン(鶏肉の赤ワイン煮)、エスカルゴ、ウッフ・アン・ムーレット(ポーチドエッグの赤ワインソース)、ジャンボン・ペルシエ(ハムとパセリのゼリー寄せ)、グジェール(チーズ入りシュー)など……。
今思い返すと、数あるブルゴーニュ料理を、ブルゴーニュワインと共にできるだけ食すという食いしん坊な旅でした。
ブルゴーニュ産のフロマージュ(チーズ)エポワスやシトー修道院が造っていたフロマージュも欠かせませんし、ブルゴーニュの中心都市ディジョンでは、特産品であるマスタードの老舗『MAILLE(マイユ)』の本店や、郷土菓子のパン・デピス屋さんへも寄らなくてはと、楽しみがとにかく盛りだくさんなのです!
パン・デピスにはいろいろな形があり、こちらは食パンのような形のもの
ブルゴーニュは白い毛の肉牛「シャロレ」が有名。ブルゴーニュの農場でシャロレを探したのですが、出会ったのは茶色いブチの乳牛でした
ブッフ・ブルギニョン(牛肉を赤ワインで蒸し煮にしたビーフシチュー)やコック・オ・ヴァン(鶏肉の赤ワイン煮)はパリでも食べたことがあったのですが、同じ赤ワインを使った料理で初めていただいたのが、今回ご紹介したウッフ・アン・ムーレットです。
バターで炒めた玉ねぎやラルドン(フランス版ベーコン)でこっくりと煮詰めた赤ワインソースの中に浮かぶポーチドエッグ。
ふわっと固まった白身を割ると流れ出す黄身と赤ワインソース(ブッフ・ブルギニョンのソースのような味わい!)との相性が抜群です。
ぜひブルゴーニュの赤ワインと一緒にご賞味ください。
だんだんと肌寒くなる季節、ほっこりする卵料理とブルゴーニュ産の赤ワインを楽しんでみては?
- ■一緒に読みたい記事
クレープの進化系?ミディ・ピレネーの郷土料理「パスカード」レシピ - パリのお惣菜屋さんの人気デリ!クランブル・サレ、タブレ、キャロットラペ
- 夏のヴァカンス地のブルターニュ料理、白いブイヤベース「コトリアード」