豊かな自然に、移ろう美しい四季が輝くフランス北東部に位置するアルザス地方。フランスのなかでも、美食で名高い地方です。
©Frantisek Zvardon
アルザスの小さな村、ニーデルモルシュヴィルにある『メゾン・フェルベール』。日本では“コンフィチュールの妖精”として知られるクリスティーヌ・フェルベールさんとその家族が営む4代続くブーランジェリー・パティスリーです。小さな店内では、今日もアルザスの旬の味覚をふんだんに使ったおいしいお菓子やパン、コンフィチュールをていねいに作り続けています。
Bernhard Winkelmann.
そんな『メゾン・フェルベール』からアルザスの美しい四季とおいしい食にまつわるお便りをお届けする連載がスタートいたします。題して「カランドリエ・アルザス(アルザスのカレンダー)」。
フランスは今、パック(イースター/復活祭)の季節。初回はアルザスのイースターについてお届けいたします。
アルザスのイースターに欠かせない羊のお菓子
日本ではまだあまりなじみのないイースターですが、十字架にかけられて死んだイエス・キリストが3日目に復活したことを記念したお祝いということで、キリスト教においてもっとも重要な行事のひとつとなっています。
イースターの時期には、お菓子屋さんやスーパーマーケットなどの店頭には卵やウサギの形をしたチョコレートがズラリ。イースター当日は、このチョコレートを庭に隠し、子どもたちが探すというお楽しみもあります。
©Bernhard Winkelmann
アルザス地方でも、多くの家庭やお店でイースターをお祝いします。アルザス地方のイースターに欠かせないのが、アニョーパスカルと呼ばれる羊の形をした焼き菓子。アルザスの方言では「ラマラ(復活祭の子羊)」とも呼ばれます。
敬虔なアルザスの家庭では、イースターの40日前の四旬節の期間を長く尊重してきました。この間は卵を食べることができないため、その卵を保管しておき、イースターには卵を使って、たくさんのラマラを作ったという背景があります。
©Bernhard Winkelmann
卵や小麦粉、砂糖で生地を羊の形をした陶器の型で30〜40分焼き、仕上げに粉砂糖をふりかけるというとてもシンプルなもの。
『メゾンフェルベール』のお店にももちろんラマラは登場します。バター風味のビスケットに粉砂糖をまぶした素朴な味わいで、フェルベールのコンフィチュールとも相性◎。
アルザスの陶器の村スフレンハイム
©Bernhard Winkelmann
ラマラを焼く際に使う陶器の型は、『メゾンフェルベール』のあるニーダーモルシュヴィル村からほど近いスフレンハイムで作られているもの。スフレンハイムは、この地で出土する粘土を使い、伝統的な陶器を作り続けている小さな村です。
©Alexandre Marchi
「スフレンハイム焼き」と呼ばれる、かわいらしい絵付けがされた陶器もとても魅力的。アルザスを代表するお菓子クグロフの型も、このスフレンハイム焼きの型を使って作られます。メゾン・フェルベールのお店でも、クリスティーヌが選んだ、さまざまなスフレンハイム焼きが並んでいます。
アルザスは、素敵な陶器や鍋が多く生み出される場所。ニーダーモルシュヴィル村のすぐお隣、チュルクハイム村には、『ル・クルーゼ』と並ぶ鋳物ブランド『ストウブ』の本社もあります。
季節のおすすめコンフィチュール byメゾン・フェルベール
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さて、『メゾンフェルベール』のコンフィチュールもすっかり春のラインナップに。この季節のおすすめはルバーブのコンフィチュール。
日本ではあまりなじみのないルバーブ。ふきのような見た目の野菜の一種で、フランスではコンフィチュールにしたり、独特の甘酸っぱさを活かしてフォアグラと一緒に楽しんだりします。
コンフィチュールにするとフレッシュな酸味とピリッとした味に。『メゾンフェルベール』の作るルバーブのコンフィチュールは、マダガスカル産の最高級のバニラビーンズをふんだんに入れた甘いバニラの香りとルバーブの酸っぱさが楽しめるものや、相性の良いいちごと合わせたコンフィチュールなどバリエーション豊か。エメラルドグリーンに輝く透明な色合いも大切にしています。 爽やかなグリーンも春のぴったりの色合いです。
©Frantisek Zvardon
アルザスに春の訪れを告げる風物詩でもあるイースターのラマラとルバーブのコンフィチュール。
2022年のイースターは4月17日。やさしい味わいのラマラと爽やかなルバーブのコンフィチュールで、春の休日をお過ごしください。
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