シンプルで上質なライフスタイルを提案するWEBマガジン “パリマグ”
  • PARIS

    クレープの進化系?ミディ・ピレネーの郷土料理「パスカード」レシピ

    こんにちは。菓子・料理研究家の山本ゆりこです。

    今回訪れるのは、前回の首都パリのある「イル・ド・フランス」から、一気に南下した「ミディ・ピレネー」。

    その名の通り、南部にはピレネー山脈がそびえ、山岳地帯、台地、渓谷など様々な地形が存在する広大な土地。現在はラングドック・ルシヨンと合併し、オクシタニー地域圏となっています。

    そのミディ・ピレネーの北部に「パスカード」という郷土料理があります。クレープとシューのハイブリットのような生地をオーブンで焼き、好きなものをのせていただく料理で、しょっぱい系も甘い系も楽しめるというもの。

    それでは、豊かな地形が育んだおいしいものとフランス第4の都市トゥールーズを有すミディ・ピレネーの旅へ。

     

    パスカード(Pascade)の作り方


    クレープというよりシュー生地に近い味わいのパスカード。おかず系だけでなく、甘いものを具材にしてもOKです。

    パスカードを作る上で少々面倒なのが型探しなのですが、15cmに近い直径の丸形のグラタン皿でも作れます。

    グラタン皿がない場合は、100円ショップで、少し深さのある紙、もしくはアルミ皿を購入しても◎。

    焼き上がった生地は型にくっつきやすいので、20cm角の正方形にカットしたクッキングシートを必ず敷くことも忘れずに。

     

    【材料】(2人分)※直径15cmの丸型2個分

    <生地用>
    ・薄力粉:50g
    ・卵:1個
    ・牛乳:100g
    ・溶かしバター:20g
    ・塩:2つまみ

    <トッピング用>
    ・鴨のハム:40g ※燻製されたハムなどの肉加工食品でもOK
    ・ロックフォール:20g ※その他のブルーチーズでもOK
    ・くるみ(ロースト/ホール):6個
    ・ベビーリーフ:30g

    <ヴィネグレットソース>
    ・レモン汁 or 白ワインヴィネガー:大さじ1/2
    ・塩:適量
    ・はちみつ:小さじ1/2
    ・オリーブオイル:大さじ1/2

    ・いちじく:2個
    ・粗挽き黒こしょう:適量

     

    【作り方】

    1.生地を作ります。

    ・ボールに卵を割り入れ、泡立て器でよくほぐします。

    溶かしバターと塩を加え、さらによく混ぜます。薄力粉をふるいながら加え、ある程度粉っぽさがなくなるまで混ぜます。

    ・牛乳を3回に分けて加え、混ぜすぎないように注意しながら、そのつど混ぜます。

    ・ボールにラップをかけ、室温で30分寝かせます。

     

    2.型に入れてオーブンで焼き、整えます。

    ・20cm角の正方形にカットしたクッキングシートを、できるだけ浮き上がらないようにして、型に敷きます。

    ・寝かせた生地をおたまで全体的に混ぜ、半量の生地(約100g)をそれぞれの型に流し入れます。

    ・220℃に熱したオーブンで、生地が膨らんでしっかりきつね色になるまで20~30分焼きます。

    ※上の写真は粗熱がとれた状態です。

    ・粗熱がとれたら、ティースプーンで押しながらくぼみを作ります。

     

    3.トッピングを作り、仕上げます。

    ・肉類、チーズ、くるみは見栄えがよく食べやすい大きさに切ります。

    ・小さなボールにヴィネグレットの材料を順に加え、そのつどよく混ぜます。

    ベビーリーフ加えて軽く和えます。

    ・お皿にパスカードを置き、その上にベビーリーフ、肉類、チーズ、くるみをのせます。

    ・いちじくをくし形に切り、パスカードの横に並べ、全体にこしょうをふって完成です。

     

    バラ色の街の特産品は「すみれ」

    ミディ・ピレネーの西にはスペインの影響を受けた「バスク」、東には「プロヴァンス」などの南仏と類似するラングドック・ルシヨン地域圏があります。

    南のスペイン国境付近にはピレネー山脈がそびえ、北にはフォアグラやトリュフの産地「ペリゴール」や「マシフ・サントラル」と呼ばれる山岳地帯が広がっています。

    薄いピンクから濃いオレンジまでレンガの濃淡が美しいトゥールーズの街並み

    隣接する様々なエリアの文化が交錯するミディ・ピレネーの中心都市「トゥールーズ」。

    フランス第4の大都市ながら、公共の建物も人々が住む集合住宅も、淡いピンクから濃いオレンジ色と濃淡が美しいレンガで造られているため、「La Ville Rose(ラ・ヴィル・ローズ)」、つまり「バラ色の街」と呼ばれています。

    これは、古代ローマ人がここ土地から豊富に採れる赤い粘土をレンガや瓦に使ったのが始まりだとか。


    トゥールーズのレンガはサイズが決まっており、薄いのが特徴。それを細い面が出るように積み重ねるため、独特の景観が生まれます

    このバラ色の街に、花にまつわる特産品があります。それは「すみれ」です。

    トゥールーズのすみれは花弁が幾重にもなった品種。すみれの糖衣がけやリキュール、マスタードやお茶など様々に加工され、市内には専門店がいくつもあります。

    「バラ色の街にすみれの花ってとてもすてきだなあ」と思いながら街を散策しました。

    すみれ専門店のショーウインドウには、すみれの糖衣がけやすみれのリキュールが並んでいます

    すみれ専門店のガラスにViolette(すみれ)と共に書かれたPastel(パステル)。これもトゥールーズの特産品で、インディゴ染料の原料となる黄色い花を咲かせる植物です

     

    ミディ・ピレネーの郷土料理「カスレ」「アリゴ」そして「パスカード」

    そして、トゥールーズの街並みやすみれ以上に有名なのが、ミディ・ピレネーの豊かな地形が育んだ「おいしいもの」かもしれません。

    1つは白インゲン豆と肉の煮込み「カスレ」。もう1つは、マッシュポテトと溶かしたチーズを合わせた「アリゴ」です。

    どちらも日本のフレンチビストロで食べたことがある方がいらっしゃるのではないでしょうか。


    トゥールーズのレストランでいただいた郷土料理カスレ。目の細かいパン粉がかかり、オーブンで焼いたあつあつの状態でサーヴされました

    そして、世界3大ブルーチーズの1つ「ロックフォール」はミディ・ピレネー北部にあるアヴェロン県ロックフォール・シュール・スールゾン村の名産品。

    羊のミルクを使い、この村の洞窟で熟成させたものだけが「ロックフォール」と名乗れるそうです

    今回ご紹介した「Pascade(パスカード)」は「ロックフォール」と同じアヴェロン県の郷土料理です。

    クレープのようなシャバシャバの生地をオーブンで焼き、さまざまな具材をのせていただきます(生地に具材を混ぜ込んで焼くタイプもあります)。別名「アヴェロン風クレープ」とも。

    アヴェロン県がオーヴェルニュ地方と隣接しているため、オーヴェルニュ料理として紹介されているものも見かけますが、正確にはミディ・ピレネーの料理です。

    今回はロックフォールを中心に、ロックフォールに合うミディ・ピレネーを意識した食材をのせてみました。よく冷やしたロゼワインや軽めの赤ワインと一緒にご賞味ください。

     

    バラとすみれに縁のある街・トゥールーズ。ロックフォールにこだわらず、「ゴルゴンゾーラ」や「ダナブルー」などホロッと崩れるタイプのブルーチーズが手に入ったら、ぜひパスカードを作ってみてくださいね。

     

     

    PARIS mag OFFICIAL Instagram
    キャラWalker