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    夏のヴァカンス地のブルターニュ料理、白いブイヤベース「コトリアード」

    こんにちは。菓子・料理研究家の山本ゆりこです。段々と気温も高くなり、夏がもうそこまで、という季節になりました。

    前回のサントル地方から、さらに北西に移動し、今回訪れるのは「ブルターニュ」です。フランス最西端に位置し、シーズンを迎え、夏のヴァカンスを過ごす人たちでにぎわうブルターニュ。

    海沿いの街、夏のリゾート地らしく、魚介のうまみがぎっしり詰まった、じゃがいも入りブイヤベースのよう煮込み「Cotriade(コトリアード)」のレシピと共にお届けします。

     

    Cotriade(コトリアード|魚介とじゃがいもの煮込み)の作り方

    ブルターニュの家庭では、「フュメ」と呼ばれる魚と野菜の出汁を別でこしらえ、この出汁で魚介とじゃがいもを煮ます。魚介を入れたら煮過ぎないのがポイント。

    ここでは、フュメの代わりにブイヨンキューブと貝類を使い、魚はあらかじめオーブンで焼いて旨味を閉じ込めるなど、日本でも簡単においしく作れるようにアレンジしました。

    ひと手間かけられる方は、魚のアラで出汁をとると更においしく仕上がりますよ!

     

    【材料】(4人分)

    ・季節の白身魚2~3種(タラ、イサキ、スズキなど):計500~600g
    ・貝(あさり、ムール貝、ハマグリなど):適量(※)
    ・じゃがいも(小):5個(約400g)
    ・玉ねぎ:1個(約200g)
    ・にんにく:1片(約5g)
    ・長ねぎ:1本
    ・ローリエ:1枚
    ・パセリ(茎):2本
    ・タイム(枝):10本

    ・バター:20g
    ・白ワイン(辛口):200ml
    ・水:800ml
    ・ブイヨンキューブ:2個(8g)
    ・塩:適量
    ・パセリ(葉):適量
    ・バゲット(トーストしたもの):適量

    ※あさり・ムール貝の場合 約20個、ハマグリの場合 約8個

     

    【作り方】

    1.魚介類の下ごしらえをします。

    ・魚は火が入ると縮むことを考えて、食べやすい大きさに切ります。両面に軽く塩をふり、冷蔵庫に30分入れておきます。

    ・貝はもみ洗いをして表面の汚れをとり、塩水につけ、冷蔵庫に入れ砂抜きをします。

    ・魚から出た水分はキッチンペーパーで押さえながらとり、クッキングシートを敷いた天板に並べ、250℃のオーブンで、魚の皮がパリッとするまで20分程焼きます。

     

    2.野菜・ハーブの下ごしらえをします。

    ・じゃがいもは皮をむき、縦4等分のくし切りにします。

    ・玉ねぎは薄皮を除いて粗めのみじん切りにし、にんにくは薄皮と芽を除いてみじん切りにします。長ねぎは青い部分と白い部分に分け、青い部分は2等分にし、白い部分は薄切りにします。

    ・長ねぎの青い部分、ローリエ、パセリの茎、タイムをたこ糸で束ねブーケガルニを作ります。

     

    3.炒めて煮込みます。

    ・鍋を弱めの中火にかけ、バターを入れます。バターが半分溶けたところに、にんにくと玉ねぎ、長ねぎの白い部分を加え、色がつかないように注意しながら、玉ねぎがしんなりするまで炒めます。

    ・白ワイン、水、ブイヨンキューブを加えて強火にし、木べらでときどき混ぜます。沸騰したらじゃがいもとブーケガルニを入れ、ふたをしないで弱火で10~15分煮込みます。

    ・魚と貝を入れ、今度はふたをして弱火で10~15分、じゃがいもがやわらかくなるまで煮込みます。

     

    4.お皿に盛ったら完成。

    ・[3]をお皿に盛り、パセリの葉を飾ります。

    ・トーストしたバゲットを添えたら完成です!

     

    合わせるお酒はもちろん、ブルターニュ産シードル。りんご由来の甘味がコトリアードによく合いますよ。

     

    植物が育ちにくい“貧しい土地”だからこそ生まれた「ガレット」

    ブルターニュ地方の中でも最西端にあるフィニステール県の6月の海

    ブルターニュは、英仏海峡と大西洋とに細く突き出た半島で、土地の大半が海に面しています。海といっても、太陽の光が燦々と降り注ぐ陽気な地中海とは異なり、けわしい断崖が連なる海岸線が多く、日本海に近いイメージ。

    灰色の石を丁寧に積み上げた家、プレーンな黒いワンピースに純白のレース帽を合わせる民族衣装、重厚なブルターニュ家具など、きらびやかさはないけれど、素朴で飽きのこない魅力がたくさんあります。

    断崖に建つ教会の一部。灰色の石を積み上げた壁と、窓には錬鉄製のステンドグラスのアウトラインが見えます

    教会とは少し違うトーンの灰色の石を積み上げて造られたブルターニュの民家

    食に関しては、小麦はおろかライ麦も育たないほど土が痩せていたことから、「貧しい土地」と評されていたブルターニュ。そこに中世の頃、中東からソバがもたらされ、栽培に成功します。収穫したソバを粉にし、水で溶いて薄くのばして焼いたのがクレープの前身「ガレット」です。

    ブルターニュで小麦の栽培が可能になると、クレープも作られるようになりました。ブルターニュはどこに行ってもクレープリー(クレープレストラン)があって、店内は丸い鉄板で次々と焼かれるガレットやクレープの、焦げたバターの匂いで満ちていて魅惑的なのです。

    犬も歩けばクレープリー(クレープレストラン)に当たります。ブルターニュでガレットやクレープを焼くのは、伝統的に女性の仕事なのだそう

    ブルターニュはどこの街のマルシェにも、ガレット&クレープを屋台があります

    フランスのバターは一般的に無塩なのですが、ブルターニュのバターは有塩。その昔、バターの保存性を高めるために特産品の塩を加えたことがはじまりだといいます。「ガトー・ブルトン」や「クイニー・アマン」などのブルターニュ菓子に使われ、1口ほうばると、甘じょぱくて濃いバター味が口いっぱいに広がります。

     

    魚介をシンプルに味わうブルターニュスタイルのブイヤベース

    今回ご紹介したのが、この有塩バターが隠し味の「コトリアード」。


    ブルターニュ生まれの陶器カンペール焼。今回のスタイリングに使ったシードルカップは何軒もはしごをして、このお土産屋さんで見つけました

    もともとは、ブルターニュの漁師たちの料理で、タラ類やアナゴなどの細長い魚、カサゴやヒメジ、サバなどのとれ立ての魚を骨ごと輪切りにし、じゃがいもと一緒にごった煮にしたもの。

    家庭では、スープのみにパンを浮かべて前菜としていただき、魚やじゃがいもはヴィネグレット(酢・油・塩で作るソース)を添えてメインとして、2段階に分けて味わいます。

    南仏のブイヤベースも同じような食べ方をするのですが、同じ魚料理でもコトリアードにはブイヤベースに欠かせないトマトペーストやサフランが入りません。

    日本で紹介されているレシピのような生クリームや牛乳も入らないのです。白濁したスープは魚介とバターから生まれたもの。このシンプルな旨味を、ぜひ1度ご賞味ください。

     

     

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