パリのルーブル美術館に隣接する『装飾芸術博物館』では、今、ディオールの70周年を記念した回顧展が開催されています。創業者であるChristian Dior(クリスチャン・ディオール)が生み出したドレスはもちろん、モード写真や歴代デザイナーの作品が紹介されており、モードの歴史を見ることができる一大イベントです。
今回、初の試みとして、美術館のモード部門と反対側の企画展部分をひとつにつなげ、3,000㎡近いスペースを使って展示しているので、いつも以上に大迫力の展示を楽しむことができるのです。
20世紀のモードの立役者、1905年生まれのディオール
20世紀初頭のパリというと、写真や映画で娯楽作品が作られ、絵画は印象派からシュールレアリズムが流行る頃。まさに芸術が花開いていた時代でした。
左奥にディオール氏、右にダリ。同じ時代を共にしてきた仲間だったのですね!
そんな時代だったこともあり、ディオール氏はとてもアヴァンギャルドなアートが好きで、ギャラリー経営をしていたのだそう。
回顧展の中には、当時のディオール氏のギャラリーを再現しているところもあります。このメトロノームはそのギャラリーで展示されていた作品。シュールレアリズムの芸術家、マン=レイ作のメトロノームです。
あまり知られていないディオール氏の過去の顔ですね!ギャラリーの名前にDiorと付けていないのは、家族の反対を押してギャラリーをオープンしたので、名前を名乗らせてもらえなかったからだとか。
時代を追って、ディオール氏のクリエーションを紹介
1937年に帽子職人の「Claude Saint Cyr(クロード・サン・シー)」のために描かれた帽子のデッサンです。これがムッシュー・ディオールのモードへの入り口ともいえる作品。これから、ドレスデザインに入っていくのですが、そういえば、確か、ココ・シャネルも帽子アレンジからこの世界に入ったはず。有名デザイナーのおもしろい共通点を見つけてしまいました。
こちらが、1942年に描かれたクロッキーです。エレガントさをたもちながらも、シャープなライン。今でも着られそうなくらいモダンです。
この写真は、1947年2月12日に初めてディオールコレクションを発表したパリコレの風景。これが、「le Bar」というディオールの代表作の発表の瞬間!パリコレは多少規模が変わっても、この時からスタイルは変わってないようですね。
ディオールの歴史の幕開けとなったこのスーツは、オリジナルも展示されているので、必見です!パリのルピック通りで、『ニュールックNew Look』に反対してデモするマダム達に、モデルが服を引っ張られる写真もありました。当時、どれほどセンセーショナルだったのかが伺いしれます。
オートクチュールのドレス300点あまりを展示
赤のドレスを中心に、バックや靴、香水からコートまでフルコーディネートを提案しています。
デザインを発表し、注文を取って作られるオートクチュールですが、実際にどんな素材で作るのかなどは、ミニチュアを作って試作します。そのミニチュアも展示されていました。
黄色がテーマの展示。ミニチュアのドレスがかわいいのです!
こちらは、『パリ』をテーマにしたコレクション。パリジェンヌと言えば、ブラックミニドレスということなのでしょうか?華やかなロングドレスが多いディオールの世界観の中で、この黒一色のコレクションはとても印象的でした。
50年代から、「Miss Dior」のドレスへと続くフラワーモチーフ時代は、乙女な気分に。来場者の女子率が高く、話している内容を聞いていると、「このドレスの写真、部屋に貼ってあったわ」とか、「Miss Diorの香水が好きで、使っていた香水ラインが廃盤になった時は泣いたのよ」とか、マダム達が口々に自分の思い出と交えて話していました。目はキラキラ輝いて、みんな高揚しています。
こちらが、1949年発表の「Miss Dior」。香水のイメージを形にしました。全身、お花で埋め尽くされています。
そういう気分にさせてくれるのもモードの楽しさですね!女の子同士で行くと300点以上もあるドレスの中で、「どれが着たい?」という会話も出るのではないでしょうか。
マリア・グラツィア・キウリのコレクション
ひとつを選ぶなんてことはできませんが、特に印象に残っているのはこれかな?マリア・グラツィア・キウリがクリエイティブディレクターを務める2017年春夏コレクション。
「Miss Dior」の広告でナタリー・ポートマンが着ているドレスです。近くで見ると、凄い刺繍!スワロフスキーのクリスタルを使っていて、ため息が出る美しさ。Dior初の女性デザイナーであるマリア・グラツィア・キウリのコレクションは、深い森を歩くようなどこかミステリアスな部分もあって、心がくすぐられます。
ディオールの歴代デザイナーの系譜
これはイヴ・サン・ローランがディオールにいた頃のお仕事。ディオール氏引退後、エスプリを引き継いだのは、彼でした。女性のシルエットを描くのがとてもうまかったんですよね。
この後に、ジョン・ガリアーノのグラマラスなドレス時代へと続いていくのです。本物のドレスを通してディオールの歴史を見ると、それぞれの時代の迫力やエネルギーが伝わってきます。
これまで数多く作られてきたトワルが展示されていました。展示の最後には、そんなディオールを支えてきた職人さんと刺繍の工房への感謝を忘れないプレゼンテーションが美しく展示されていました。迫力の展示とドレスの美しさはぜひ、間近でみてもらいたいと思います!
- ■ 開催情報
- クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ展(Christian Dior, Couturier du Reve)
- 会場:パリ装飾芸術美術館(107 rue de Rivoli, 75001 Paris)
- 会期:2018年1月7日まで開催
- HP:http://www.lesartsdecoratifs.fr/
- ホームページで優先入場のチケット購入が可能。待ち時間短縮になりますよ。
■ 一緒に読みたい記事