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    靴磨き職人明石優さんが教える、正しい靴の磨き方と育て方

    新しいことが始まる春は、新しい靴が欲しくなる季節。きれいな靴を履いていると足取りも軽くなり、楽しいことに出会えそうな気がしてきます。流行りの靴も良いですが、そろそろ大切に履き続けられる上質な革靴も欲しいのです。でも革靴のお手入れってなんだか難しそうでハードルが高い…。

    そこで靴磨き職人の明石優さんに靴の磨き方・靴との付き合い方について伺ってきました。なんでも革靴はきちんとお手入れすれば、20年履き続けることができるんだそうですよ。

     

    靴磨きは、人間の肌と一緒

    さっそく靴磨きを教えてもらおう!と思ったところ、明石さんの前には道具がぎっしり詰まった道具箱が。初めて見るものも多く、やっぱり靴磨きって難しいのか…とちょっと弱気になりながら「難しそうですね。自宅で靴磨きってできるんですか?」と尋ねてみました。
    「簡単に言ってしまえば、靴磨きは人間のお肌と一緒です。洗顔して保湿するというスキンケアをイメージすれば、難しいことはないですよ。実際に磨いてみましょう!」と明石さん。

    【道具】

    • 1.豚毛のブラシ
    • 2.馬毛のブラシ
      3.汚れ落とし
      4.クリーム
      5.ワックス
      6.水
      7.布(ネル生地)

     

    【磨き方】

    1.馬毛のブラシでホコリを落とします。

    (※スキンケアでいうと)洗顔の前にホコリを落とすイメージです。

    2.汚れ落としを布に湿らせて、拭きます。

    (※スキンケアでいうと)洗顔のステップです。

    3.クリームを指でなじませます。

    (※スキンケアでいうと)化粧水や乳液など保湿のステップです。指にクリームを取って塗ってあげると、体温と摩擦でなじんでいきます。靴用のクリームとハンドクリームの成分もほとんど同じなんだそう。

    4.豚毛のブラシでブラッシングします。

    ブラッシングすることでクリームを革になじませます。(※スキンケアでいうと)保湿クリームを塗ったあとに顔になじませまるイメージです。

    5.余分なクリームを布で拭います。

    左がクリームまで塗った状態で、右がなにもしていない状態

    普段の自宅でのお手入れも、クリームで保湿(磨き方の1~5)までできるといいとのこと。

    6.ワックスを塗ります。

    ワックスはスキンケアでいうとお化粧です。つま先とかかとを中心に光沢をプラスしていきます。光らせたり陰影をつけたり、防水性を高めたりとワックスは様々な種類がるので、目的に合わせて選びましょう。ちなみに無色のクリームは、革製のお財布やバッグのお手入れにも使えるそうです。

    ワックスまで塗った状態

    ワックスを塗って満足のいく輝きになったら完成です。明石さん曰く、「磨いているうちにもっとこうしたい!という欲が出てきて、なかなか終わりのタイミングが分からないという人が多いんです。なので、満足したところで終わればOK。」とのこと。

    明石さんが目の前でひとつひとつの作業するたびに、靴の質感がどんどん変わっていくのが印象的でした。

     

    靴の変化を指で感じ、育てていく

    「僕は靴を磨き手入れすることを“靴を育てる”と言っています。手入れをしているとどんどん革の中に油分と水分が浸透していって光りやすくもなるし、強くもなるしきれいにもなる。本当に革自体が育っていくんです。革靴は買った時はまだ赤ちゃん。履いていくうちにシワや傷ができて、それが味になるように革を変化させていくという感じですね。」

    靴磨きをすることで、もちろん汚れ予防の効果や革を長持ちさせる効果もあります。ただそれ以上に、普段から靴に触れ、靴の状態や革の質感の変化を感じられることも靴磨きの重要なポイントだそうです。

    正直、靴磨きは汚れた靴を“きれい”にするということだと思っていました。でも、どうやら靴磨きで目指すのは“きれい”ではなく、汚れも傷も“いい味”を出しながら使い込んでいくことなのかも。

     

    20年履ける靴を買う時は、20年後の自分をイメージして

    きちんと手入れして、育てていけば20年履けるという革靴。長く履くとなると買う時、迷ってしまいそう…。

    「長く履ける靴を買う時、この靴なら長く大切に手入れできるかなというのは大事です。あと、20年後の自分が履いていることを想像できるかということ。そうなるとデザインの流行りにも流されず、“自分に合う”という目線で靴を選ぶことができるのではないでしょうか。
    いい靴は履き主をいい場所に連れて行ってくれるなんて昔から言われています。20年後の自分をイメージしながらちょっと背伸びした靴を買って、その靴にふさわしい自分を目指すのもいいですよね。靴磨きって靴を磨き育てるだけじゃなく、自分も一緒に磨き成長していくことができる気がしています。」

     

    靴磨きは“丁寧に生きる”の入り口

    「靴磨きは、“丁寧に生きる”という生き方の入口だと思っています。自分の手でできる靴磨きから始まって、もっと人を大事にするとか、自分を大事にするとか、時間を大事にするとか、自然を大事にするとか。それぞれイマジネーションを広げて、自分の周りのことを自分のこととして感じられるようになる。靴磨きがそのきっかけのひとつになることが理想です。」

    汚れてしまったら、新しいものを買う。そういうサイクルが当たり前のようになっていたような気がします。けれど次々と新しいものを買うことで、ものと向き合うことがなくなるだけでなく、もしかしたら自分や周りの人と向き合ったり、イマジネーションを働かせる“時間”もなくなっていたのかもしれないなと感じました。

     代々木公園でのaozora shoe shine schoolでの様子

    でも、やっぱり大事な革製品だし、いきなり靴磨きに挑戦するのは怖い…という方も多いはず。明石さんは自由大学の「20年履ける靴に育てる」や代々木公園でのaozora shoe shine schoolなど様々な場所で講座やワークショップを行っております。実際に教えてもらうと「こんなに簡単にきれいになるの!?」というくらいシンプルな作業です。

    まずは靴を手に取って磨いてみる。靴磨きは靴を磨く以上のものをくれそうです。

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