現代生活において目を逸らすことのできないエコロジーのこと。とはいえ、広いテーマなので難しかったり、なかなか実践するにはハードルが高かったり…。そんな中、音楽を通してエコロジーをわかりやすく伝える音楽ユニットHARQUA(ハルカ)の存在を知りました。
HARQUAは、夫婦として生活しながら、それぞれシンガーソングライターとして活動するHARCO(ハルコ)さんとQuinka,with a Yawn(キンカ ウィズ ア ヨーン)さんによるユニットです。音楽を楽しみながらエコを学べるイベント「きこえる・シンポジウム」を企画するなど、音楽を通してさまざまなメッセージを発信するお2人に、日々の生活の中でエコロジーにどう関わっているのかを伺うことができました。
また、東日本大震災から5年となる2016年3月11日の復興ライブ当日にお話を伺ったこともあり、この5年間、お2人がどのようなことを考え活動してきたのかについてもお話いただきました。
エコロジー、震災にまつわる想い、日常生活。私たちを取り巻く「環境」を考えるヒントになるお話をたっぷりとご紹介したいと思います。
- HARQUA(ハルカ)
- 夫婦として生活するHARCOとQuinka,with a Yawnからなるユニット。ゆったりとした雰囲気のなか楽しめる音楽とエコのイベント「きこえる・シンポジウム」を企画。それぞれ多くのCMソングでも印象的な声を残しており、ひときわ優しく人懐っこい混声ボイスが魅力。
音楽でエコロジーと人をつなぐ
−普段はどういった活動をされているのでしょうか?
HARCO(以下、ハ):お互いソロのシンガーソングライターとして、CDを作ったり、ライブをしたりしています。2人とも割とコマーシャルなどメディアの音楽にも携わっているので、そういう仕事もたくさんしていますね。
−ソロ活動の他、ご夫婦でのユニット活動もされているんですよね?
ハ:そうですね、2人での活動は2008年くらいにスタートして、そのときにエコロジーをテーマにしたCDアルバムを1枚出しました。
他に「きこえる・シンポジウム」というイベントの企画を2人でやっていて、20回近く続けています。HARQUAとしてイベントに出演することも多いですね。
−「きこえる・シンポジウム」はエコロジーをテーマにしたイベントということですが、どういった経緯で企画することになったのでしょうか?
Quinka,with a Yawn(以下、キ):私たちは2004年に結婚したんですけど、一緒に住んでいる中で自然と、エコについての話題が多くなってきたんです。その頃、世の中も地球温暖化のことが話題になり始めたり、似たような空気感だったこともありますね。
ハ:ちょうどその頃、 2人で何かイベントを企画してみようという話も出ていたんですよ。普通のライブイベントじゃないものがいいよね、なんて話して。家の中での会話も、ゴミをもっと減らすにはどうしたらいいかとか、今度の週末は自然の中に出かけてみようかとか、環境を意識した話題が多かったので、「じゃあエコロジーをテーマに盛り込んだイベントはどうだろう?」という話になりました。
普通、ライブイベントって2時間くらいですけど、ライブはそのうちの1時間だけで、残りの1時間で環境ジャーナリストなど専門の方をお呼びして、僕らが聞き手になってお話をしていただくという構成にしました。
キ:当時、そういった分野の先進的な活動をされている方と偶然知り合う機会があって、そこで興味深いお話を聞いたりしているうちに、トークとライブの合体したイベントって思いついたのかもしれないですね。
なんだか自分たちだけの話にしておくのは、もったいないというか。せっかく外に発信するライブという場があるので、お客さんに聞いてもらって、我々も一緒に勉強したいなと思ったんです。
−なるほど。エコと音楽がどうつながったのか気になっていたのですが、そういう経緯だったのですね。例えば、普段の生活で、エコを意識して行っていることなどありますか?
ハ:以前は庭が広い家に住んでいたので、家庭菜園をやっていましたね。水菜、なす、トマト、きゅうり、ししとうなど、比較的簡単なものを作っていました。でも、市販の野菜みたいになかなか大きく育たないんですよ。逆に収穫の時期が遅れて、大きくなりすぎちゃったりもして(笑)。
キ:あとコンポストもやったね。生ゴミや落ち葉を肥料にして、それを最終的には畑の肥料にしていました。
ハ:そうそう。生ごみと、お米屋さんでもらってきた米ぬかや公園で拾った落ち葉を混ぜて、自作のコンポストの容器に入れておくと、すごく発熱するんですよ。土の温度が50〜60度くらいになって。それが発酵して、やがて肥料になる。今まで見たことがないような大きな虫がわいてきたりもして(笑)。日々試行錯誤していましたね。
−お話を伺っていると、お2人とも楽しんでやってらっしゃる印象を感じました。エコロジーや環境問題っていうとどうしても難しかったり、ちょっとストイックになってしまう部分もあるのかなって思うんですけど…
ハ:まさにその通りで、「きこえる・シンポジウム」のときに、僕は自然エネルギーや地球温暖化など、真面目なテーマのみを取り上げたがってしまって…。でも彼女の方はもうちょっと暮らしに寄り添った、ソフトなテーマでいきたいといつも言っていました。その辺りはバランスをとってやっていたかな。
キ:そういえば、よく風車を見に行ったりもしました。どのくらいの大きさなんだろうって思って。半分旅行、半分勉強みたいな感じですよね。
ハ:そのひとつで、北海道で「きこえる・シンポジウム」を開催したおりに、市民風車を見に行きました。市民風車っていうのは今、日本に12基あるんですが、一般的な風車というのは主に企業が建てますよね。それに対して市民風車は、そこに暮らす人たちがみんなで1口いくらってお金を出し合って建てる風車なんです。
そういった活動に関わっている「北海度グリーンファンド」の方を、トークゲストにお呼びしてお話を伺うことができました。それがきっかけで僕らも市民風車に参加してみたいなと思い、能登半島の輪島市にある「のとりん」という市民風車に出資することになりました。
キ:風車の下に私たちの「HARQUA」っていうユニット名が刻まれているんですよ。定期的に利益分配もしていただいています。
ハ:あと僕のCDのうちのいくつかは、自然エネルギーで作っています。アルバム制作にかかった電力の総ワット数を計算して、「グリーン電力証書」を発行している機関に申告して、電力量に相当する金額を、通常の電気代とは別に上乗せする形でお支払いするんです。そうすることによって風力や太陽光、小水力といった自然エネルギーの分野に投資したことになり、「自然エネルギーを使用してこのアルバムは作られた」とみなす、そんな取り組みがあるんですよ。
同じようなことをラジオ局でも、「放送にかかる電力の一部を自然エネルギーに」という形でよく行われています。
−おもしろいですね。エコロジーと言っても知らないことが本当に多いですよね。どうやってその情報を集めているんですか?
ハ:「きこえる・シンポジウム」を続けるなかで、環境分野の専門の方と多く知り合えたこともあり、自然と情報が入ってくるようになりました。僕ら「エコ検定」というものも取得したんですが、それは結構勉強が必要で…。それで知識を得た部分もありますね。
キ:「エコロジー=難しい」と感じちゃうからこそ、ライブと一緒にして「音楽を聴きに来て、ついでにエコも勉強ができちゃった!」って、お客さんに感じてもらえたらいいなと思いながらイベントを続けていました。
ハ:環境にまつわるシンポジウムってたくさん開かれているんですけど、どうしても硬いイメージがあって。たとえば音楽が好きな人にもそういう話を気軽に聞いてもらえたらということで、僕らミュージシャンが開催する意味があるのかなと思っています。
イベントを手伝ってもらうお店選びは、東京でも地方でもおしゃれなカフェなんかをなるべく選んで、間口を広げることは意識しました。
−来てくださる方も楽しんで、そこでさらにちょっとエコについて考えられるというイベントなんですね。
キ:「難しい」と構えず、楽しめたらいいですよね。
ハ:金沢は町家再生プロジェクトが盛んなんですが、築100年以上の建物をリノベーションした「Collabon」というカフェで、古民家再生や昔ながらの景観づくりに携わっている方々をゲストにお呼びして、その話をしてもらったこともあります。
キ:ちゃんと古いものを後世に残しておこうという活動を、知らない人は多いと思ったので、良い機会になればと思って。
−なるほど。エコロジーといっても、自然環境だけじゃなくて、古いものを大切にするというのも含まれるんですね。
キ:そうなんですよ。続けていくうちにどんどんテーマが広がっていってしまって(笑)。
東日本大震災が起こった年は電気のことについて考えることが多かったので、著名な環境ジャーナリストの枝廣淳子(えだひろ じゅんこ)さんに、「コンセントのこちら側」「コンセントの向こう側」というコンセプトで、電気のことだけじゃなく「人にとっての本当の幸せ」についてなども語っていただきました。
ハ:震災後は、復興支援に取り組んでいる方達をお呼びすることも増えました。
「環境問題」について語り合う場ができ、そこから広がって、自分たちを取り巻いている環境すべてに、語り合う必要性を見出していけたんだと思います。
エコロジーに対して、広い視野で向き合い、楽しみながら取り組むお2人のお話。難しく考えすぎず、好奇心を持って向き合ってみるといいのかもしれませんね。
そして「環境」というテーマに向き合う中で、関わることになっていったという復興支援。次回は、震災後何を感じ、どのような思いから復興支援へ関わっていったのかなどを伺います。
- ■CD情報
- タイトル:HARQUA
- アーティスト:HARQUA
- タイトル:南三陸ミシン工房のうた
- アーティスト:HARCO
- タイトル:さよならトリステス
- アーティスト:Quinka,with a Yawn
- ■ライブ情報
- 「HARCOの春フェス2016 in TOKYO」
- 日程:4月19日(火)
- 会場:渋谷duo MUSIC EXCHANGE
- LIVE:HARCO、空気公団、 GOMES THE HITMAN
- DJ:行達也
- 18:00 OPEN / 19:00 START
- 「HARCOの春フェス2016 in KYOTO」
- 日程:5月28日(土)
- 会場:京都 元・立誠小学校
- LIVE:HARCO、空気公団、 GOMES THE HITMAN
- GUEST:ヨーロッパ企画
- 13:30 OPEN / 14:00 START
- ※イベント会場は12:00オープン。FOODなどの出店エリアをお楽しみください。
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