バレンタインや卒業、入学、就職など、これからの季節プレゼントを贈る機会が多くなります。雑貨やお菓子などもいいけれど、なんだかいつも同じパターンになりがち…。そんな時は本をプレゼントしてみてはいかがですか?
本はその中に描かれている物語や言葉、そして読む時間をも一緒に贈ることができます。
今回はそんなプレゼントにおすすめの本を駒沢公園の近くにある本屋さん『SNOW SHOVELLING(スノウショウべリング)』の中村秀一さんに教えてもらいました。
想いを込めたおせっかいなプレゼント
「本を贈るという行為は、贈り手の勝手な想像で贈るので、実はすごくおせっかいだったりしますよね。贈る側の品格も問われるし。だけど、本のプレゼントはアクセサリーやモノなどの物質を贈るよりも、相手のことを考えたり、選ぶ本にメッセージを込められたり、想像力を使う行為だと思うんです。
想いを共有する時、誰か他人の言葉を通じて伝えた方が伝わる時があります。私はこう想っているということを伝える時、本を贈るのは適しているのではないでしょうか。現代的ではないけれど、それが一周して深いコミュニケーションになるのではないかと思うんです」という中村さんに、贈る相手別におすすめの本を選んでもらいました。
BOOK1:パリが好きなあの人に贈る本
ジェレミー・マーサー『シェイクスピア&カンパニー書店の優しい日々』
パリ、セーヌ左岸の、作家や詩人なら泊まれる本屋。パンとスープも出てくる「書店を装った社会主義的ユートピア」。古今東西、数々の作家の溜り場でもあった店に、偶然住み着くこと となったライターの滞在記、希代の書店の物語。本好きにはもちろんおすすめですが、人生に必要なエッセンスも見つかると思います。
本好き・本屋好きやお店をやりたいと考えている方へ贈るのもおすすめです。
- ■ 書籍情報
- 書籍名: シェイクスピア&カンパニー書店の優しい日
- 著者: ジェレミー・マーサー
- 訳:市川 恵里
- 出版社:河出書房新社
BOOK2:お互いの事を知りたい時に贈る本
田中未知『質問』
「一度しか渡らなかった橋を思い出せますか」「走る事は時間をかせぐためですか」など、365の質問が書いてあるだけの本です。楽しい質問もあれば、答えようのない質問もあります。答えられなくても考える事に大きな意味があり、その行為が読者の眠っている何かを呼び覚ますことがあるかもしれない。自己覚醒本です。
日頃は左脳ばかり使っている、右脳を鍛えたい、仕事に行き詰まっているなど、いつも難しく考えがちなあの人へのギフトにも◎。
- ■ 書籍情報
- 書籍名:質問
- 著者:田中未知
- 出版社:アスペクト
BOOK3:ユーモアの練習がしたい!?そんなあの人に贈る本
KANO『愛の英語問題集』
割と恥ずかしいタイトルです。英語の本なのか、愛の本なのか、それは読んだ人が決めれば良いのですが、なるほどこんな本もあるのかと。
英語のテストのような書式に、様々なユニークな回答が記されています。
読めば読むほど愛は分からなくなり、読めば読むほど英語のスキルはあがります。おそらく。
英語を楽しく学びたい方にもぴったり。
- ■ 書籍情報
- 書籍名:愛の英語問題集
- 著者:KANO
- 出版社:バクサム語学教室
BOOK4:村上春樹が苦手なあの人に贈る本
村上春樹|安西水丸『ランゲルハンス島の午後』
村上さんのエッセーに安西さんのイラストレーション。ランゲルハンス島がどこにあるのか知りませんが(調べてみてください)、どこかここではない場所で、なんだか心地良く、だからといって何も起こらない。でも何かは少しだけ前と違う気分にさせてくれます。安西さんのイラストも素晴らしいので単行本もおすすめです。
ちょっととっつきにくいイメージのある村上春樹作品。こちらの本ははじめての村上春樹としてもおすすめです。
- ■ 書籍情報
- 書籍名:ランゲルハンス島の午後
- 著者: 村上 春樹、安西 水丸
- 出版社:新潮社
BOOK5:何かから抜け出したい!そんなあの人へ贈る本
サン=テグジュペリ『夜間飛行』
自身の飛行機乗りの経験を活かしたリアリズムにあふれる作品。夜間飛行という危険きわまりない事業の中で浮き彫りにされる、人間の尊厳と勇気が主題になっている。新潮文庫のイラストを宮崎駿さんが描いています。『星の王子さま』で有名なサン=テグジュペリですが、こちらもぜひ一度飛んでみてください。
何かを始めたいと思っている方にもおすすめなので、新生活のプレゼントにも最適です。
- ■ 書籍情報
- 書籍名:夜間飛行
- 著者: サン=テグジュペリ
- 出版社:新潮社
BOOK6:紳士淑女の第一歩を踏み出すあの人に贈る本
W.ホービング『ティファニーのテーブルマナー』
ティファニーの宝石を購入した人に配られたというテーブルマナーの入門書。美しいイラストとウィットにとんだ文章。ティファニーブルーの装丁の美しさも愛でながら、子どもも大人まで様々に楽しめる。とにかくかわいので押し付けがましくなくギフトに最適な一冊です。
お洒落にマナーを学ぶことができるので、紳士淑女の入口には欠かせない1冊です。
- ■ 書籍情報
- 書籍名:ティファニーのテーブルマナー
- 著者:W.ホービング
- イラスト:J.ユーラ
- 訳:後藤 鎰夫
- 出版社:鹿島出版会
BOOK7:本とファッションが好きな人へ贈る本
Karl Lagerfeldなど『PAPER PASSION』
ファッション界の重鎮、カール・ラガーフェルド曰く 「印刷されたばかりの本の香り、それはこの世で一番素晴らしい香りなのです」。
こちらは『Paper Passion』と名付けられた香水ですが、れっきとした本でもあります。ドイツの老舗出版社Steidlが装丁(香水ケース)を手がけ、中には印刷したての本の香りがする香水が収蔵。
BOOK LOVERへのギフトにぴったり。
- ■ 書籍情報
- 書籍名: PAPER PASSION
- 著者:Karl Lagerfeld
- 出版社:Steidl
BOOK8:読みたい本が見つからない人へ贈る本
岡本仁『果てしない本の話』
本のガイドブックのようで、いろんな街や物の話も出てきて、それでいて文中に登場する本たちは、どれも魅力的に写り、読んでみたくなる。でも次から次へと話はながれて、まさに「果てしない」。本はあまり読まない人に何となく読んでいただき、1冊でも興味のある本に出会ってもらいたいですね。そこからは果てしない旅の始まりですが…。
- ■ 書籍情報
- 書籍名:果てしない本の話
- 著者:岡本 仁
- 出版社:本の雑誌社
本を選ぶ時間も想像力を働かせて
今回は、本、物、人との偶然の出会いを楽しむスペース、自称出会い系本屋の『SNOW SHOVELLING』に訪れ、棚にびっしりと並んだ本を眺めながらお話を伺いました。ところ狭しと並んだ本や雑貨から、とっておきの1冊を探すのはまるで宝探しをしているよう。贈る相手も想いながら、本を探すのも楽しい時間です。
とはいえ、なかなか相手に合った1冊を見つけるのは難しいのも事実。
そんな時は中村さんに相談してみるのもおすすめです。「普段誰かと会話している時もこういう本がいいだろうなと勝手にシュミレーションしちゃう」という中村さんならきっと素敵なアドバイスをくれるはず。
「分かりやすく言うとお医者さん気分ですね。この人は今こういう状態だから、この本を読めばこっち側向くかなとか、この人は今いっぱいいっぱいだからちょっとブレイクダウンした方がいいからこういう本を。そういった想像をして選びます。悩みだったり、気迫だったり、今度どこかに旅行するだったり。人それぞれにいろんな状態があると思うので、それに合わせて処方するイメージです」
本にどんなメッセージを込めて贈ろう?あの人はどんな本が好きだろう?と、想像を巡らせ選ぶ1冊。想いを伝える本のプレゼントをしてみませんか?
- ■お店情報
- SNOW SHOVELING(スノウショベリング)
- 住所:東京都世田谷区 深沢4-35-7 深沢ビル2F-C(地図)
- TEL:03-6432-2576
- 営業時間:13:00頃~19:00くらいまで
- 定休日:火・水曜日
※記事の内容は取材当時のものです。 最新の情報は、お店のHP、SNSなどをご確認ください。
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