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    市川実和子さん「映画や暮らしにまつわることは、心の栄養補給」

    PARISmagが気になる方々へ会いに行き「小さなしあわせ」のヒントを教えてもらうインタビュー企画。今回、登場いただくのはモデル・女優の市川実和子さんです。

    ECサイト「北欧、暮らしの道具店」が手がける短編ドラマとしてスタートした『青葉家のテーブル』。600万回を超える再生回数を誇り、衣食住のディテールまでときめく世界観とどこか親近感のわくストーリーに惹かれた人も多いはず。

    2021年6月18日(金)公開の映画化にあたって追加キャストとして参加したのが市川実和子さんです。「日常の延長線上で演じられた」と朗らかに話す市川さんに、撮影現場のエピソードや最近のしあわせ時間について教えていただきました。

    女優 市川実和子

    1976年生まれ、東京都出身。モデル・女優。近年の出演作に、『八日目の蝉』『はやぶさ/HAYABUSA』(11年)『まほろ駅前狂騒曲』(14年)『ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判』(15年)『猫なんかよんでもこない。』『溺れるナイフ』(16年)など。

     

    素の市川実和子に不思議とリンクしていた

    ―「北欧、暮らしの道具店」初の映画『青葉家のテーブル』。ゆるやかな空気の中に葛藤や成長が描かれており、鑑賞後は清々しい気持ちになれました。オファーをもらったときはどんな気持ちでしたか?

    市川さん(以下、敬称略):脚本を読んだとき、国枝知世という役柄と私の世代が重なっているように感じました。映画は20年という時の流れが1つのテーマなのですが、自分の若かりし頃を思い起こしたんです。混沌としていて、若さ特有のぐちゃぐちゃっとした感じを…。

    ―市川さんにもそんな時期があったんですか?

    市川:みんな、そういう時期ってありませんか?(笑)気恥ずかしい感じがなんだか愛おしくてご縁があれば演じてみたいと思いました。

    また主演の西田尚美さんはモデル時代の先輩。当時、一緒にお仕事をしていたので同じ時代を共有してる感覚があって。生意気だけど、どこか“同士”という感覚があったので、キャスティングにも親近感を抱きました。実際、モデル時代から20年の月日が経っていたんです。

    ―まさにご自身の20年とリンクしたんですね。

    市川:はい。お話自体も新鮮でした。青葉家って昔ながらの家族ではなくちょっと不思議な形。シングルマザーの春子とその息子と、春子の飲み友だちとその彼氏が共同生活をしていて、お互いゆるやかにつながりつつ1人ひとりを受け入れあっている。

    今って“家族とはこういうもの”みたいな風潮があって、息苦しいじゃないですか。青葉家は常識から離れているかもしれないけれど、やわらかくて多様性があって心地いいなって。人と人との関係がいずれこうなっていったら理想的だと感じました。

    ―撮影していくなかで、印象的だったことはありますか?

    市川:映画を構成する要素が、わりと普段の生活に近くて、自分の中にするっと入ってきたのは驚きでした。言葉であれこれ説明をしてもらわずともしっくり来る瞬間が多かったんです。たとえば監督がイメージしている人物像がピンと来たり、映画に出てくる町中華『満福』のロケ地を個人的に知っていたり。

    ―そういうことは珍しいですか?

    市川:あんまりないですね。「北欧、暮らしの道具店」が暮らしにまつわることを届けていて、私自身もそういうことが好きだからかもしれません。普段の私に近い感じで現場にいられました。

    余談ですが松本監督がおしゃれで。しかも分かりやすいおしゃれではなく「よーく見たらいい色のトレーナー着てますねえ」みたいなニッチな感じというか(笑)。そのセンスが好きだったし、なんとなくですけど、世代が変わったんだな、という雰囲気があって、それがとても印象的でした。

     

    日常の延長線上で演じた個性派キャラ

    ―市川さんが演じた知世は町中華『満福』の店主かつライフスタイリストという役柄。”ちょっとした有名人”なだけあってなかなかユニークなキャラクターでしたね。演じる上で心がけたことを聞かせてください。

    市川:役作りについてはあまり深く考えませんでした。知世のように料理や暮らしを仕事にしている人が周囲に多いのと、映画の空気感も普段の私に近いものだったので、日常の延長線上で演じられた気がします。

    ―現場はどんな雰囲気でしたか?

    市川:なんか、すごく良かったんですよ。もちろん慌ただしいんですけど、終始おだやかでしたし、もしかしたら「そこまでこだわらなくてもいいじゃん」って妥協しそうになる瞬間もちゃんとこだわっていたことがあって。

    市川:たとえば本番直前に助監督さんが『満福』店内のイスの色を「こっちがいいかな?」とか「いや、ちょっと待って、やっぱりこっちにしよう」って迷ったことがあって。そんなふうに、少しでもいい絵を作るために自然に動いている人がいて、私はそれがうれしかった。そんなふうに丁寧に作りあげられる世界観にいることがとても心地よかったです。

    ―たしかに花柄のカーテンやテーブルクロス、衣装の細かな部分までかわいさがあふれていました。

    市川:個人的にうれしかったのはフードスタイリングが料理家・冷水希三子さんだったことです。以前からファンで、衣装合わせのときに「劇場版の料理はどなたが担当しますか?」と質問し、冷水さんだと知ってガッツポーズしたくらい(笑)。特に『満福』の看板メニュー「はあちゃんライス」のおいしさには唸りました。

     

    パンとピクニックが最近のしあわせ時間

    ―映画の世界観と近いから自然体で演じられたのかもしれませんね。そんな市川さんが最近、暮らしで大事にしていることはありますか?

    市川:料理に関することは変わらず好きです。特にレシピを見たり、料理道具を見たり、食べたりすることがすっごく好き。こういう話をすると料理すること自体が好きだと思われるのですが、作るのは腰が重いタイプです(笑)。

    でも昨春、料理研究家・内田真美さんがシェアしていた「高加水パン」のレシピに挑戦してみたらパンを焼けるようになりました。強力粉・薄力粉・砂糖・塩・ドライイースト・ぬるま湯をぐるっと混ぜて1日発酵させるだけでおいしいパン生地になるんです。簡単でうれしかったな。

    市川:あとは友だちと公園へ行って、レジャーシートを敷いてのんびりする時間が至福です。おいしいパンをテイクアウトしたり、料理を持ち寄ったりしてゆるゆる過ごしています。特に朝の公園は人が少なくて最高なんです。

    ―今は制限されることが多いので、何気ないしあわせが際立ちますね。

    市川:コロナ禍になったことでピクニック文化がきっちり根付きました(笑)。キリキリしているときこそ、緑が美しいとかご飯がおいしいとか、そういうことにふれる時間が大事だと思うんです。ニュースをずっと見ていても気が滅入っちゃいますしね。

    だから『青葉家のテーブル』も自分への栄養補給のような気持ちで楽しんでいただけるとうれしいです。

    市川実和子さん、素敵なお話をありがとうございました!

    撮影:忠地七緒
    ヘアメイク:ナライユミ
    スタイリスト:岡本純子
    衣装協力:ロングシャツ/フランク リーダー、シューズ/トレイシーニュールズ(共にマッハ55リミテッド)、パンツ/ハウス オブ ロータス(ハウス オブ ロータス 青山店)、ピアス/チェリーブラウン

     

    • ■作品情報
    • 『青葉家のテーブル』
    • 6月18日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか、全国順次公開
    • ■出演:西田尚美、市川実和子、栗林藍希、寄川歌太、忍成修吾、久保陽香他
    • ■監督:松本壮史
    • ■脚本:松本壮史、遠藤泰己
    • ■エグゼクティブプロデューサー:佐藤友子(「北欧、暮らしの道具店」店長)
    • ■プロデューサー:杉山弘樹
    • ■企画・製作:北欧、暮らしの道具店
    • ■製作プロデュース:THINKR
    • ■制作協力:株式会社ギークピクチュアズ
    • ■配給:エレファントハウス
    • ■公式サイト:https://aobakenotable.com
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